麻耶の黒い下着(修正版) 第5回

沼 隆

登場人物  坂下大樹 アマチュア写真家 浩平の父親
      坂下麻耶 大樹の妻
      坂下浩平 大樹の先妻の子
      塩津美和 坂下家の隣人
      野口明菜 麻耶の妹 大学生
      真壁宗男 大学講師
      浜部朱美 大樹の写真仲間


(1)

ホテル〈ココナツミルク〉は、今泉にある。
人気のラブホである。
愛称〈ココミル〉
週末は、けっこう満室だったりする。
〈ココミル〉じゃなきゃ、いやっ!
なんて言われて、困ることもあるけれど、
満室のときは、周辺に、ホテルがいくつも並んでいる。
ホームページを見てもらうとわかるけれど、
おしゃれで、お値段、リーズナブル、
ロケーションもいいので、坂下大樹は、よく利用している。
今夜も、浜部朱美(あけみ)と、お泊まりである。
朱美の夫は、息子を連れて、一泊二日の釣り旅行に出かけた。
朱美は、大樹に早く抱かれたくて、待ちきれなくて、
ホテルまでの車の中でも、ハンドルを握る大樹の肉棒を握りしめ、
部屋にあがっていくエレベーターの中でも、肉棒をモミモミする。
できることなら、週に一度は、と朱美は思っているのだが、
大樹の都合もあるし、朱美の都合もあるわけで、
お泊まりするのも、思い通りにはいかない。
久しぶりにお泊まりできるので、朱美は、朝から欲情しているのだ。
昼間、結構はしゃいでいたらしく、
家まで車で送ってくれた篠田麻妃から、からかわれたのだ。

一度目は、互いのからだを激しくむさぼりあった。
ふたりの動きが激しくて、コンドームが裂けた。
2匹のどう猛な肉食獣が、噛みつきあっているみたいに
腰を突きだし、絡まり合い、汗を浮かべながら、
フィニッシュを迎えたのだった。
荒い息が、ようやくおさまる頃、
食欲に目覚める。
激しい全身運動のあと、腹ぺこなのだ。
ルームサービスが届くまでのあいだに、シャワーを浴びる。
朱美の肌が、ひりひりする場所は、激しく動いて、
大樹の肌とこすれた場所である。
赤くなっている。

大樹は、ベッドの脇に三脚を立てて、カメラをセッティングする。
で、リモコンは、ライターくらい小さい。
そいつを、すぐ手が届くところにおいて、朱美を抱き寄せる。
第2ラウンドは、ふたりのセックス写真の撮影会だ。
思いっきり大胆に交わって、
思いっきりわいせつな結合写真を、撮るのだ。
だらりとした肉棒に顔を近づけ、自分の髪を掻きあげて、
カメラに横顔を見せる朱美のショットから始まって、
フレームにおさまるように、からだを移動させながら、
フェラチオ、クンニ、本番へと、進んでいく。
もう、何度かしてきたことだ。
はじめは、ぎこちなかった朱美が、
回を重ねるたびに、大胆になっていき、
髪を掻きあげて顔が写るようにしたり、
背中を反らせて、乳房をつき出したり、
穴がばっちり写るように、太ももを大きく開いたり、
できるようになった。
夢中になると、カメラを忘れてしまうというか、
フラッシュが光っても、ちっとも気にならないというか、
がんがん、やれちゃうのである。
カメラに向かって、
「ねえ、見てよ!」
「もっと、あたしを、見て!」
「いやらしい、あたしを!」
「スケベな、あたしの、あそこを!」
と言っているように。
ふたりだけの秘密なのだ。
大樹が喜んでくれるのなら、あたし、どんなことでも、
どんな、いやらしいことでも、できる!
大樹のため?
それは、いいわけに過ぎない。
朱美の、いやらしい本性が、大樹の手で開かれただけだ。

カメラを、ホテル備え付けのテレビに接続する。
ビニールレザーのソファに並んで座る。
シャワーを浴びて、腰にバスタオルを巻いただけの姿である。
ビールの栓を抜く。
取り終わったばかりの写真の、鑑賞会が始まる。
画面に映し出される、自分たちのいやらしい姿に、
ふたりは刺激されて、3ラウンドに向かって、高まっていく。
「これ、いやらしい」
「ああ、朱美のこの顔、すごく」
「うん、ああん、って」
「キモチよさそうだね」
「キモチ、いいんだもん」
朱美は、大樹と出会って、女の悦びを知ったのだ。
とろとろに溶けてしまいそうなほどの肉の快楽を、
大樹は味わわせてくれる。
「おめこ、よく撮れてる」
「すごく、やらしい」
「ちんぽ、しゃぶってるよ」
「うふ」
「おめこが、ちんぽ、しゃぶってる」
「ああっ」
「これも、よく撮れてる」
「ああっ、ああっ」
「カメラマンがいたら、いろんな角度から撮れるんだろうけど」
「あうっ、あうっ、あうっ・・・そ、そうね・・・ううっ」
「この次は、誰か、雇おうか?」
「あうっ、ねっ、ゆび、抜いて・・・すご、く、かんじるっ」
「抜くよ」
「いやっ、いやっ、抜いちゃ、いやっ」
「どっちだよ?」
「あうっ、いいっ、いいっ、いいっ」
朱美の肉穴が、大樹の指をグイグイ締め付ける。
「ち、ちんぽ、いれてっ」
「ほしいか?」
「うん、うん、うん、おめこに、いれてっ!」

「どう?」
「ふうっ・・・なにぃ?」
「カメラマン、雇おうかって」
「もう、大樹ったらぁ」
「・・・・・・」
「本気?」
「・・・・・・」
「したいの?」
「・・・・・・」
「できる?」
「ああ、たぶんな」
「恥ずかしいよ」
「そうかな」
「だって、知らないひとに・・・」
「・・・・・・」
「知り合いに、頼むつもり?」
「ねえ、朱美、そういうこと、しないかって、相談してるヤツがいるんだ」
「そういうことって?」
「カップル同士で、撮影しあうんだ」
「だれなの?」
「朱美、どう?」
「いやだ、恥ずかしいよ、それに、誰なの、相手のひと?」
「朱美が、賛成してくれたら、教える」
「大樹の、よく知ってるひと?」
「ああ」
「あたしも、知ってるひと?」
「朱美が、賛成してくれたら、教える」
「そのひと、私たちのこと、知ってるの?」
「・・・・・・」
「大樹、したい?」
「ああ」
「へんなことに、ならない?」
「だいじょうぶだ」
「ホントに?」
「ああ」
「ぜったい?」
「ああ」
「じゃあ・・・」
「朱美、うれしいよ」
「大樹が、そんなに悦んでくれるなら・・・いつ?」
「いつでも。朱美の都合に合わせる」
「だれ?」
「後で、教える」
大樹は、コンドームをはずしながら起きあがる。

(2)

「おはよう、麻耶」
トイレから出ると、浩平がまっていた。
寝る前に、浩平は、拘束具を付け替えていた。
さすがに、眠るときは、少し楽にさせてやろうと思ったのだろう。
あの、最初に使った2つの拘束具、
手首用と、足首用の2つ、
それに、首輪。
その3つをつけている。
パンティは、はかせてもらえなかった。
「朝ごはんにするから、下りておいで」
階段を下りようとする浩平を、麻耶は、待って、と呼び止めた。
「なに?」
「これ、はずして」
昨夜の姿のままなのだ。
首輪と、足枷と、そして、背中に回した両腕の手首に、手かせをつけて。
両腕が、後ろに回っていると、胸を突きだす格好になる。
しかも、無駄なことなのに、恥部を隠そうと腰をひいているので、
ぶざまなこと、この上もないのだ。
「今日一日、この格好だよ、麻耶」
「そんな」
からだが、うずく。
拘束具をつけられたまま、一晩、過ごしたのだから。
「おねがい」
「おりておいで」
「行けないよ」
「なに、わがまま、言ってるんだよ」
「誰かに、見られて」
「ふふ、そうだね、塩津のオバサンに、見られたら、ことだね」
「顔も、洗いたい」
「ふふ、まってるんだよ、麻耶。カーテン、閉めてくるから」
「浩平くん」

下りていくと、リビングのカーテンは閉めてある。
ダイニングキッチンの窓も閉じて、外から覗かれる心配は、なかった。
裸で、ダイニングの椅子に座ると、お尻が冷たくて、ふるえる。
「浩平くん、寒いし、お尻、冷たい」
「麻耶、ホントに、わがままなんだね」
浩平は、からかうような目をして、2階に上がっていった。
まもなく、浩平が持ってきたのは、白いベビードールだった。
(さがしだしたのね)
(ああ、じゃあ、エッチな寝間着、みんな見られた)
(下着も、みんな・・・見られちゃった)
手かせをはずして、トップを着せられる。
丈が短い、ウエストまでしかないトップ。
ヒップが丸見え。
フリルの縁飾りがかわいらしいけれど、
生地はスケスケで、乳房が丸見えだ。おへそも。
ベビードールなんて名前、よくつけたものだ。
エッチ、しましょ?
と、お誘いモード、むき出しなんだから。
(なんだか、はだかの時より、恥ずかしい)
(だって・・・お尻も、あそこも、丸出しなんだもん)
それから浩平は、手かせを取り付けた。
今度は、身体の前で。
背中が、きりきり痛んだ。
「立って、麻耶」
浩平は、麻耶の足下にひざをついて、足かせをはずす。
それから、ベビードールのボトムを、麻耶の足下に差し出した。
「はいて、麻耶」
麻耶は、片足ずつ通していく。
フリルで縁取られたボトムを、浩平は麻耶のお尻まで引き上げる。
ボトムの前の部分に、すけすけの生地を透してヘアが丸見えだ。
それから、浩平はもう一度麻耶の足下にかがみ込んで、足かせを取り付けた。
浩平は、麻耶をまじまじと眺めた。
「いやらしいね、麻耶」
「いやん」
「ホント、いやらしい」
ふたりは、黙って食事をした。
カフェオレと、トーストと、ジュースと。
「顔、洗ってきて、いい?」
「いいよ」
麻耶は、洗面台で、顔を洗う。
唾液と、なみだと、鼻水で、顔がかさついていた。

「ねえ、麻耶、今日、模擬試験があるんだ」
(そうだった)
「オレ、出かけるからね」
「えっ、じゃあ、これ、はずしてよ」
「だめ、麻耶、だめだって。わかんないヤツだね、おまえは」
「浩平くんがいないあいだに、誰か来たら?」
「出なきゃいい」
「大樹さんが、帰ってきたら?」
「夕方まで、帰ってこないよ」
それが、お泊まり撮影会の日程なのだ。
せっかくの日曜日、一日、撮影に使うはず。
「オレ、午前中で終わりだから」
「だって」
「一時までに、帰ってくるから」

(3)

麻耶は、気がついていた。
いつの間にか、楽しんでいる自分に。
歩けないわけではないし、昨夜とちがって、手も使える。
手かせで両手が結ばれているけれど、
両手をつなぐチェーンの長さだけ、自由度がある。
それに、首輪だって。
2階に上がる。
もう一度、顔を洗ってすっきりすると、
ドレッサーの前に座って、目の回りにメイクさえした。
きゅんとつき出した乳房が、薄いベビードールに透けて、はっきり見える。
なんだか、自信たっぷりに、張り出しているみたい。
お尻がひんやりする。
そうだ、
麻耶は下着が詰まった引き出しから、パンティを選び出す。
足首が、足かせでつながれているので、普通のパンティは、はけない。
両脇を、ヒモで結ぶのがある。
これなら、ベビードールのボトムを少し引き下ろすだけで、はける。
でも、ちょっと手間取った。
両手首が、鎖でつながれているから。
だれも居ない家の中で、なにもすることがなくて、
ていうか、なにもできないんだけれど、
で、ベッドに入った。
ベッドに入って、雑誌をぱらぱら。
排泄したくなって、トイレにしゃがむ。
ボトムを下げるのは、ちょっと手間取った。
パンティを脱ぐのも。
なんだか、たくさん出した気がする、
ウォッシュレットで綺麗にして、
めんどうなパンティ、はくの、よそうかなって、迷って、
はかないことにして、ベビードールのボトムを引き上げる。
浩平の部屋のドアが、開けっ放し。
カーテンも。
ベッドの下から、あの紙箱が覗いている。
あの中に、まだ使っていない道具がある。
窓の外を見た。
塩津美和と目があった。
美和に微笑む。
美和は、うろたえた顔をしている。
どうして?
「あっ」
麻耶は、自分がどんな格好をしているか、つい忘れてしまっていた。
すけすけのベビードールに・・・
両腕に・・・
見られちゃった・・・
美和が、どぎまぎしながら、部屋の奥に消える。
口止め、しなくちゃ・・・
転ばないようにそろそろと寝室に戻る途中で、
電話が鳴り出した。
ベッドわきの受話器にたどり着く。
美和だった。
「おはよう、美和さん」
「おはよう、麻耶さん、あの・・・」
「ふふ・・・あたしの、これのこと?」
麻耶は、手首につけられた、黒いフェイクレザーの腕枷を眺める。
すぐ目の前の、受話器を握った手首と、
チェーンで結ばれて、もう片方の手首を縛る手かせ。
「どうしたの?だいじょうぶ?」
「大丈夫よ、心配しないで」
「ホントに?」
「ホントよ、ダンナさんは?」
「店に行った」
「そう」
「どうしたの?なにが、あったの?」
「浩平くんに、お仕置き、されてるの」
「お仕置き?」
美和は、ぞっとする。
浩平が、麻耶にお仕置きをして、その麻耶が、あたしに喋っている。
「ゆうべ、ひどいこと、したから、罰なの」
「そんな・・・なにが、あったの?」
美和の質問に、麻耶は答えなかった。
「ねえ、内緒にしてよ」
「えっ、そりゃあ、誰にも、言わないよ」
「お願いよ、美和さん」
「約束する」
「もし、喋ったら、あたし、あなたがしていること、
 レインコートの男のこと、喋るから」
「知ってたの?」
「ねえ、お茶しに、おいでよ」
「えっ、いいの?」
「浩平くん、お昼過ぎまで、帰ってこないから」

(4)

ダイニングテーブルに向き合って座り、美和が入れたコーヒーをすする。
「おいしい」
「そう?」
「ウン、おいしい」
美和は、麻耶が、化粧をしていることに気づく。
アイラインをくっきりひいて、アイシャドーも、ばっちりセクシー系にぬって、
浩平の帰りを待っているのか。
スケスケのベビードール。
はだかより、いやらしい。
オッパイ、丸見え、
ヘアも、
おマンコも、きっと、丸見えなのよ。
美和は、麻耶のいやらしい姿を、観察する。
こんな格好をして、ダンナをベッドに誘うんだ。
して、して、って、言うのかな。
こんな、いやらしい格好、あたし、できない。
「寒くない?」
「ううん」
麻耶は、ちょっと考えて
「そうね、お尻、ちょっと寒いから・・・さっき、パンティ、はくんだった」
「パンティ、はけないんじゃ?」
「ん? ヒモパン、持ってるから」
「ヒモパン?」
「サイドがヒモになってて、結べるヤツ」
「ああ・・・」
美和は、麻耶の乳房を見つめている。
麻耶は、美和より、5,6歳年下のはず。
乳房が、若い。
なんだか、くやしい感じ。
〈メルモ〉に通っているし。
経理の仕事で貯めたお金を、あたしも、使おうかな、
なんだか、まじめに貯めるばかりで、
経理なんて、地味な仕事してると・・・
キモチまで地味になって・・・
見た目も・・・!
美和は、ぞっとした。

「美和さん、そんなに見ないでよぉ」
「えっ・・・あ、ごめん」
「恥ずかしいよぉ」
「ちょっと、考えごと、しちゃった」
「なによぉ」
「あたしの人生、つまんないなあって」
「えええっ! そんなこと、ないでしょ? ダンナさんと、仲いいし」
「そういうことじゃなくて」
「どうしたの?」
「あたしの生活、地味すぎる」
「そんな・・・」
「仕事だって、陰気くさいし」
「仕事は、関係ないよ、美和さんが、地味にしてるんだよ」
「うん、そうだねぇ」
「下着だって、地味だし」
「もぉ」
「あはは」
麻耶は、ちょっとためらっている様子だったが、口を開く。
「あのね、浩平くんなんだけど」
「うん」
「あたしに、こんな恥ずかしい格好をさせたんだけど」
写真を撮られた、とは、言わなかった。
「エッチしないの」
「え?」
「エッチさせられるって、思ったんだけど」
「・・・・・・」
「あそこに、触ろうとしないし」
ディルドーを入れられたことは、言わない。
美和は、自分に対してもそうだったと、思い出す。
浩平は、美和が性器を広げた写真を撮ったのだが、
もっと広げろ、と命令したけれど、
自分では、触らなかった。
「で、インポかなって、思ったんだけど」
美和は、麻耶を見つめている。
「しっかり、堅くなってたし」
「そう?」
「ズボンの前、とんがってた」
「ああ」
「さっき、洗濯物、見たら、浩平くんのパンツがあって」
「うん」
「精液くさいの」
美和は、浩平に、オバサン、と何度も呼ばれて、
屈辱感を味わい、そして、オバサンのからだを求めないのかと、
思ったりもしたし、けれど、最後には、
エッチをさせる寸前まで行ったのだった。
「童貞かも」
と、麻耶が言った。
「えっ」
「女を知らなくて、知らないから、怖いのかも」
「そんなことって」
「わかんないんだけど」
「ダンナさんに、ばれない?」
「そうね・・・」
「心配じゃ、ないの?」
「もちろん、心配だよ、でも、エッチしてないんだし」
「・・・・・・」

(4)

麻耶の両腕は、チェーンでつながっている。
両足も。
首輪までつけている。
まるで、奴隷のように。
美和が食器を洗い始める。
麻耶が立ち上がったので、美和は振り返る。
よちよち歩きで、美和のそばに来る。
「いいよ、麻耶さん、あたしやるから」
「ううん、カップを拭くくらいは、できるよ」
ふたりの姿は、対照的だ。
美和は、おとなしい普段着。
麻耶は、スケスケのベビードール。
美和は、あらためて麻耶を見る。
手が止まる。
乳房が、ヘアが、くっきりと透けて見える。
つき出した乳首、ヘソのくぼみ、そして下腹部の黒い茂み。
「そんな目で、見ないでよ」
「あ、ごめん、麻耶さん」
ごめんと言いながら、美和は目を離すことができない。
「恥ずかしいよ」
「だって・・・ヘア、手入れしてるの?」
茂みが、きれいに逆三角形に浮かび上がっている。
「うん、レオタードとか、水着とか着るから」
「ああ、〈メルモ〉に通ってるんだよね」
麻耶は、〈メルモ・スポーツクラブ〉の会員である。
「そうだよ。レオタードも水着も、ハイレグだから」
「はみださないように。ってわけ?」
「うん」
「自分でやるの?」
「え?」
「ダンナさんに、やってもらうのかな、って思ったんだよ」
「もお・・・自分でやるに、きまってるでしょ」
「だって」
美和は、もしかしたら、浩平が・・・と思ってしまう。
まさか、ね。
でも、首輪と、手かせと、足かせが、
麻耶と浩平のいかがわしい関係を思わせて、
つい見つめてしまうのだった。
SMについて、ちょっとは知っている。
女性週刊誌で、読んだ。
浩平は、麻耶を責めるとき、
どんな言葉をかけ、
どんな行為をするのだろうか。
想像すると、美和は身体が熱くなり、
顔を赤らめていた。
麻耶と浩平のいやらしい関係。
年若い義理の息子との、みだらな関係。
地味な暮らしをしている美和に、それはあまりにも刺激的だった。
食器を、片付けてしまう。

美和は、あらためて麻耶を見つめる。
「きれい、麻耶さん」
「よしてよ、美和さん」
「ホントよ」
美和は、ふっと麻耶の乳房を撫でていた。
「んっ」
麻耶が、目を閉じた。
美和は、大胆になった。
両手で、麻耶の乳房を持ち上げる。
「あんっ」
(麻耶、あなたって、感じやすいひとなのね)
乳首をつまむ。
「ああっ」
美和の胸に抱かれるように、麻耶が身体をゆだねる。
美和は、麻耶を抱きしめる。
「感じるのね」
「んっ」
麻耶の背中から、腰へ、指をなで下ろす。
それから、尻の双丘を両手で包むようにして、
指先にゆっくり力を入れた。
「ああっ・・・ああっ・・・ああっ」
「すごい、こんなに感じるなんて」
美和は、どきどきしている。
女同士で抱き合うなんて、初めてなのだ。
麻耶の乳房が、美和の乳房にぐっと押しつけられる。
麻耶の熱い吐息が、美和の首筋にかかる。
麻耶の尻の弾力が、ひんやりとした尻の、
しっかりとした弾力が、美和を熱くする。
男と抱き合うときと、まったく別の感触。
唇を重ね、舌を絡め合ったとき、
美和の秘肉から、蜜がとろとろと流れ出す。
その感触で、美和は、我にかえる。
「ご、ごめん、麻耶さん、あたしったら・・・」
「いや、美和さん、やめないで・・・続けて・・・」
「えっ」
「さわって、美和さん」
「麻耶さん・・・」
「いま、やめるなんて、ひどい」
「う、うん・・・いいの?」
「して」
「でも・・・」
「いやなの?」
「・・・・・・」
「ひどいっ」
そう、美和が先に、麻耶の身体に触れたのだ。

(なんで、こんなに、どきどきするんだろう)
(どきどきするのって、久しぶり)
(こんなキモチになること、忘れてしまってた)
(それに、麻耶さん、あたしに抱かれて、キモチよさそう)
(あたしも・・・あたしも・・・キモチ・・・いい)
(ああ、どうしたら、いいの? この感覚)
(とろけてしまう、とろけてしまったら、どうするの?)

「脱いで」
「えっ」
「美和さんも、脱いで」
「あっ、でも・・・・・・」
「美和さんも、はだかになるの」
「・・・・・・」
「あたしだけ、恥ずかしいキモチにさせないで」
「わ、わかった」
美和は、麻耶の強い視線に逆らえなくて、
というより、逆らうキモチなど、ないのだ、
麻耶が、一押しすれば、いいだけだ、
麻耶の視線に、恥ずかしいと感じながら、
ブラウスを脱ぐ。
「きれいよ、美和さん」
フレアスカートを脱いで、ブラジャーとパンティ姿になる。
浩平が「おばさんパンツ」と呼んだ下着。
「恥ずかしいよ」
「脱いで」
「うん」
美和は、摩耶に背中を向けて、ブラジャーをはずし、パンティを脱いだ。
崩れたところがない、美しい身体をしている。
麻耶は美和に近づき、それからどちらからともなく抱き合い、
唇を重ねる。
「ね、これ、はずそうよ」
美和は、麻耶の手首の拘束具に触る。
「うん、はずして」
浩平が帰ってくる前に、つければ、だいじょうぶ、麻耶はそう思った。
そして、浩平のために、もう一度つけると思っている。
自然に、受け入れてしまっている。
そのことが、麻耶に甘美なうずきを、おぼえさせている。
美和は、麻耶の腕から、拘束具をはずしてやる。
それを、テーブルに置く。
「これも、はずす?」
首輪と、足かせ。
「うん」
それから、ベビードールのトップを脱がせた。
ボトムも脱いだ。
坂下家の日曜日、リビングで
ふたつの全裸の女体が、抱き合う。

美和が舌を挿しいれると、麻耶は応えた。
甘い吐息が、ふたりをいっそう熱くする。
折り重なるように、2つの女体が、床によこたわる。
「ああっ」
「んんん」
「ああっ」
「あうう」
「あうあうあう」
じゃれあう子猫のように、甘い鳴きごえが漏れる。
2匹のメス猫。
ふたりだけの世界。
だれも、のぞき見るものはいない。
乳房が触れあい、
下腹部が触れあう。
指で互いの身体をまさぐる。
なめらかで、しなやかな指の動き。
どんなオトコも、かなわない。
女の身体を知っている女の指。
それが、ふくらみを、凹みを、這う。
どちらがリードするわけではない。
麻耶も、美和も、互いの身体をむさぼる。
乳房を押し付け合い、
下腹部をこすり合い、
太ももをからませあって、
麻耶が、美和の乳首を吸う。
なんて、いいキモチなの・・・!
「ああ、美和さんの・・・おマンコ」
「ン、ン、ン、もっと、触って・・・」
「うん、うん、触るよ、触るよ」
「あう、あう、あう」
「すごい、びしょびしょ」
「ああん」
「ここ、いい?」
「うん、いい、いいっ」
麻耶の指が、美和の濡れた秘肉を撫でまわす。
「麻耶さん・・・すごく・・・いいっ」
美和は、せがむように、股間を麻耶の指に押しつける。
「美和さん、あたし・・・あたし、もう、ガマンできない」
「ああっ、どうしたの?」
「あたしの、触って」
「うん、うん」
美和は、指を麻耶の淫裂に挿しこむ。
「あああああっ」
麻耶は、床に仰向けになり、両ひざをたてる。
美和は、麻耶の股間をのぞき込むように覆い被さってゆく。
麻耶の淫裂が、美和の目の前数センチの場所にあった。
女の性器を、ナマで見るのは、初めてだ。
陰毛に縁取られた大陰唇が、わずかに口を開いている。
美和が指を挿入したからなのか。
ふっくらと柔らかい。
マシュマロ?
麻耶の淫裂を、左右に開く。
しっとり濡れた粘膜があらわになる。
蜜をしたたらせている肉穴が、淫裂の向こう端にある。
入り口のびらびらが、まるで生き物のようにひくひくうごめく。
金魚か、コイの口のように、ほわっ、ほわっ、と息づいている。
淫裂の手前の端には、充血して紫色に膨れあがったクリトリス。
美和は、口づけをした。
クリトリス、尿道口、淫門・・・
ちゅぅ、ちゅぅ。ちゅぅ・・・
「ああっ」
「キモチ、いい?」
「ウン・・・いい・・・いい・・・、ね、美和さんのも、見せて」
「うん」
美和は、片方のひざを浮かせて麻耶をまたぎ、
股間を麻耶の眼前にさらす。
赤く充血した美和の淫裂が、麻耶の目の前に口を広げる。
麻耶は、両手の親指で、穴を広げ、たまっている蜜を吸った。
じゅるっ
穴の奥から、蜜が流れ出してくる。
じゅるっ
麻耶は、それも吸う。
「あうっ」
麻耶は、うめき声を上げて、美和の淫裂に顔を埋める。
美和が、クリトリスを噛んだのだ。
そっと、歯をあてて、噛むというより、はさむという感じ。
甘噛み、とでも言おうか。
「んんんん、んん、んん」
快感のあまり、麻耶は顔面を美和の尻の割れ目に押しつける。
美和が、クリトリスを強く吸ったのだ。
「美和さん・・・じょうず・・・すごく・・・すごく・・・ああああっ」
美和の指と舌が、撫でるように、さするように、押すように、
麻耶の淫裂を這いまわり、
そして、舌の先が、穴に挿しこまれると、
麻耶は腰をわなわなさせて、イッた。
2匹のメス猫は、こうして男が与えることがない悦楽を知った。
麻耶と美和は、互いの性器をたっぷりと味わった。
時計が十二時を打つ。
ふたりは、我に返った。
我に返って、夢中でした行為に、恥じらいを憶え、
あわただしく股間の始末をした。
美和は、麻耶に3つの拘束具をつけてやり、
もう一度熱い口づけを交わして、帰って行った。
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