麻耶の黒い下着(修正版) 第4回

沼 隆

おことわり: 登場する人物名、地名、団体名などは、
       実在するものと一切関係がありません。

登場人物  坂下大樹 アマチュア写真家 浩平の父親
      坂下麻耶 大樹の妻
      坂下浩平 大樹の先妻の子
      塩津美和 坂下家の隣人
      九鬼杏奈 浩平の同級生
     *   *   *
      浜部朱美 大樹の写真仲間
      篠田麻妃 大樹の写真仲間
      沢渡良太 大樹の写真仲間


(1)

浩平が、〈ロースン〉に行かなかったのは、こういうことである。
浩平は、塩津美和の家を出た。
ふと見上げた自分の部屋に明かりがついている。
消したはずなのに。
麻耶!
麻耶、オレの部屋で、何をしてるんだ!
部屋の中を動く人影が、カーテンに映る。
浩平は、慎重に家の中に入った。
スリッパを履かないで、足音を消しながら、そろそろと階段を上っていく。
ミシッ
浩平の身体が硬くなる。
耳を澄ませる。
麻耶は、気がつかなかった。
浩平の部屋から、小さな物音が聞こえてくる。
ドアの陰に隠れて、中を覗く。
浩平のデスクの上に、乾いた洗濯物がたたんでのせてある。
(洗濯物を置きに来たのか)
麻耶の姿は、ドアで死角になっている。
浩平は、音をたてないように、すり足でからだを移動する。
ベッドのわきに、麻耶がかがんでいる。
ピンクのシルクサテンの寝間着がはりついて、尻の凹みがくっきりと見える。
麻耶は、両手ではさむように、紙箱を持っている。
それを、ベッドの下の、元の場所に戻そうとしていた。
麻耶は、ゆっくりと立ち上がると、こちらを振り向いた。
浩平と視線が合い、ぎょっとしてからだをこわばらせた。
「見たの?」
「・・・・・・」
「その箱の中身、見たの?」
麻耶は、目を大きく見開いている。
「見たんだね」
麻耶は、うなずいた。
「そう、見たんだ」
「・・・・・・」
「オレの部屋に、勝手に入るなよ」
麻耶が、ごくりとつばを飲み込む。
「常識でしょ?」
麻耶が、うなずく。
「た、ただ、洗濯物を・・・」
箱の中には、通販で買ったものが入っている。
今日、届いたばかり。
そういう商品を売っている店は、この福岡市にもあるけれど、
通販なら、きがねなく、買える。
麻耶の写真を、撮ると決めて、
どんな写真を撮るか決めて、
買ったもの。
「ごめんなさい」
「ごめんなさいって?」
「勝手なことして」
「勝手なことって?」
「勝手に、部屋に入って」
「入っただけじゃ、ないだろ?」
「・・・・・・」
「どんなこと、したの?」
「浩平くんの、ベッドの下の・・・」
「そう、オレが、隠してるもの」
「勝手に、見て」
「オレが、隠してるもの、ずっと調べてたんだ」
「そんなこと」
「いつも、してるんだろ?」
「ううん」
「オレが学校に行っているあいだに、いろんなところ・・・」
「ううん、してない、そんなこと」
「へえ、ほんとかなあ」
「ほんとだよ、してないよ」
「してるよ、毎日、してるんだ」
「してないよぉ」
「引き出しとか、クロゼットとか・・・」
麻耶が、浩平の持ち物に好奇心を抱いていると、思っている。
浩平が、麻耶に好奇心を燃やしているように。
浩平は、麻耶が留守の間に、夫婦の寝室に入って、隅々まで調べていたのだ。
麻耶のクロゼット、麻耶のドレッサー、麻耶の下着入れ、
引き出しも、小箱も、みんな開けてみた。
麻耶への好奇心。
自分がしたことを、麻耶がしたと思っても、不思議ではない。
「してないの?」
「してないよ」
「今夜、した」
「そ、それは・・・」
「今夜、オレが隠しているものを見つけて」
本当に隠していたのだろうか。
浩平は、無意識に、麻耶の目にとまるのを
麻耶が開けてみるのを
まっていたのではないか。
「麻耶」
「なに?」
「罰を受けてもらうから」
「なんで!」
「オレの部屋に、勝手に入って、オレの秘密をかぎ回ったバツ」
「悪かった、悪かったけど」
「だから、罰をあげる」
麻耶は、ハッとなった。
浩平が、どんな罰を与えるつもりか、気づいたのだ。
「だめよ!」
「だめなもんか!」
「いけないよ!」
「麻耶、おまえが汚いこと、したんだよ」
「汚いことって」
「おまえは、汚い女だ」
「なんでよっ!」
「自分のしたことが、はずかしくないの?」
「・・・・・・」
「オレの部屋をかぎ回って、恥ずかしくないのか?」
「浩平くん、あやまる、あやまるから」
「恥ずかしいこと、したと思うの?」
「う、ウン・・・・・・」
「ひとに言えない、恥ずかしいことをした」
「う・・・・・・」
「男の部屋をかぎ回って」
「う・・・・・・」
「そうだね、麻耶」
浩平が、ゆっくりと近づいてくる。
浩平の手が、麻耶の腕をつかむ。
「浩平くん、ごめんなさい、二度としないから」
「わかった、約束だよ」
「うん」
麻耶は、ほっとして、笑みを浮かべる。
(かわいいよ、麻耶)
「でも、罰は受けてもらうよ」
「い、いやよ!」
「だめだね、罰は、罰」
「やめて」
「ちゃんと、お仕置き、しなくちゃ」
「いけないよ、そんなこと」
「怖がらなくて、いいよ」
「・・・・・・」
浩平は、麻耶の寝間着の胸ボタンをはずそうとする。
「だめっ! あたし、あんたのお父さんの・・・」
「オヤジのヨメサン、わかってる」
「こんなこと、いけないよ」
「そうかなあ」
「いけないよ」
「麻耶、汚れた下着、わざとオレに見せただろ」
「ううん」
「わざとだよ、わざと、エッチな下着、見せた」
「・・・・・・」
「オレを、からかったの?」
「ちがう・・・」
「じゃあ、なんで、パンティ、見せたんだよ」
「なんでって・・・」
そう、麻耶には弱みがある。
年頃の男の子を、ちょっとからかってみよう、
そう思った、それが、麻耶の正直な気持ちだ。
タオルの下に隠すこともできたのに、
脱いだものの一番上に、浩平の目につくところに、
まる一日はいたパンティを、置いたのだ。
ブラジャーも。
弱気になった麻耶につけいるように、浩平は麻耶の寝間着のトップをはぎ取る。
「だめっ」
麻耶は、両腕で胸を隠す。
「オッパイ、綺麗だ」
「や、やめてっ」
浩平は、麻耶の腕を力ずくではねのける。
「いたいっ」
「おおっ」
「いやっ」
「おなか、すべすべしてる」
「ねっ、やめてっ」
「わざと、スカートの奥、見せつけて」
「そんな、そんな、そんなこと」
「麻耶が、どんなパンティはいてるか、オレ、知ってるよ」
「・・・・・・」
「麻耶、ちゃんと見えるようにしてくれるからね」
「してないよ、そんなこと」
「ミニスカートはいてさ、パンティ、丸見えにしてさ」
「・・・・・・」
「見せたいんでしょ?」
「ちがう」
本当に、そんなつもりはなかったのだろうか。
麻耶は、挑発的な衣服が自分に似合うことを、知っている。
そういう服装をしたとき、いちばん引き立つことを知っている。
そんな姿を、浩平に見せたいと思わなかっただろうか。
この年下の男の子に、自分がどれほど魅力的なのか、見せたかったのではないか。
挑発的な衣服も下着も、浩平と暮らす前から着ていたもの。
そう、大樹と結婚する前から、着ていたもの。
浩平のために着始めたのではない。
普通にしていただけなのに。
大樹を挑発し、誘惑したように、
浩平を挑発し、誘惑した。
ほんのちょっとのいたずら心だった。
うそだ。
麻耶の心の奥底で、
この年下の男の子を、いたぶる誘惑が、ちらちらと
青白い炎を上げていたのだ。
「へえ、じゃあ、無意識にやってるんだ」
「ちがう」
「これも、脱いでもらうよ」
「いやっ、やめてっ」
浩平の指が、寝間着のボトムにかかる。
「どきどき」
浩平が、からかうように、言った。
「おおっ」
浩平が、驚いて、うめいた。
「いやっ」
「ヘア、手入れしてるの?」
「あうっ」
「毎日、毎日、麻耶に、どきどきさせられて」
麻耶は、全裸にされている。
「写真、撮るから」
「だめっ!」
麻耶は、悲鳴を上げてしまう。
「ばかっ! 大声、出すなよっ!」
浩平の声は、もっと大きかった。
麻耶が、浩平のわきをすり抜けて、部屋の外に逃げだそうとする。
浩平は、すぐに立ちはだかる。
「麻耶、逃げられないよ」
「許してよ」
「だめだ」
「こんなこと、許されないよ」
「麻耶が、オレにしたことは?」
「・・・・・・」
「許される?」
「・・・・・・」
「年下の男を誘惑しといて、さんざ誘っといてサ」
「・・・・・・」
「こういうの、いたぶる、っていうんじゃない?」
「・・・・・・」
「楽しんだんでしょ、麻耶?」
「そんな」
「オレをもてあそんでサ」
「・・・・・・」
「そうだな、麻耶が、逃げ出さないように」
麻耶は、浩平に押されて、ベッドに座り込む。
浩平は、麻耶をベッドに押し倒した。
それから、床にひざをついて身をかがめると
さっき、麻耶がベッドの下に戻した紙箱を引っ張り出した。
「やめて」
麻耶が、弱々しく言う。
「やめて、お願い、浩平くん、やめて」
浩平は、箱の中から、フェイクレザーの腕かせを取り出す。
「いやあ、いやあ、いやあ」
麻耶が、おびえながら這って逃れようとするのを
浩平は、ひざと腕で押さえ込みながら、
麻耶の腕をねじ上げ、痛みに抵抗する力が弱まったところを逃さず、
麻耶の両手首に、腕かせを取り付けた。
両手首を後ろ手に縛られて、麻耶は、おとなしくなった。
髪が乱れ、涙で頬が濡れている。
浩平は、カメラを構え、シャッターを押した。

麻耶は、涙に濡れた目で、浩平を見上げている。
シュパッ、シュパッ、シュパッ・・・・・・
フラッシュが光る。
よだれが、だらだらと流れていく。
麻耶の口は、ピンク色をしたラバーのボールをねじ込まれ
そのボールは、麻耶の首の後ろで、ベルトで固定されている。
ピンクのボールには、いくつか穴が空いていて、
あふれてくる唾液が、その穴を通って、流れ出す。
唇からも、だらだらと。
「んぐぅぅぅ、んぐぅぅぅ、んぐぅぅぅ」
足首には、さっき、サルグツワをつけられるとき
足をばたつかせた罰として
フェイクレザーの足かせが取り付けられていて、
両足を結ぶチェーンの長さだけ、自由がきくだけだ。
麻耶の肌は、いつの間にか、しっとりと汗ばんでいる。
浩平は、無言のまま、シャッターを押す。
アングルを替え、麻耶の身体の向きを変え、
何枚も、何枚も。

塩津美和は、自宅に戻っている。
そして、気がついていた。
浩平の部屋で、繰り返しフラッシュが光るのを。
なにをしているのか?
浮かんだ疑問に、すぐに答が浮かび、
その答の恐ろしさに、身震いした。
(麻耶さん・・・)

麻耶は、しだいに落ち着きを取り戻していた。
唾液が、だらだらと流れて、気持ちが悪いけれど、
無理矢理、口を開かされているので、飲み込むこともできない。
あごが、痛み出している。
はずして欲しい、それが、言葉にならない。
ただ、アウアウと、うめき声になるだけで、
浩平は、聞こうともしない。
浩平が、箱から取り出したのは、首輪だ。
それを、麻耶の首に取り付けようとしたとき、
麻耶が、激しく咳き込んだ。
浩平は、サルグツワの留め金をはずす。
唾液でべとべとになっているタマを、口から抜いてやると、
麻耶は、ゲエゲエと、むせかえった。
浩平は、麻耶の後ろ髪をつかむと、グイッと引っ張り上げた。
「散歩しようよ、麻耶」
首輪を取り付けると、浩平が言った。
「さんぽ?」
「ああ、散歩」
「散歩って?」
浩平は、首輪から伸びるリードをひいた。
「おいで、麻耶」
両手首を、背中で固定され、足首には、足かせがつけられて、
麻耶は、よろめきながら、起きあがる。
両足は、せいぜい30センチほどしか広がらない。
そろそろと、ベッドから下りる。
「どこに、行くの?」
「おまえの、ベッド」
「だめよ、それは、だめよ」
「どうして?」
「だって、大樹さん・・・」
「オヤジのこと、気にしてるんだ、ふふ、ふふふ」
「大樹さんに、知られたら、どうするの?」
「オヤジに、話すの?」
「話すわけ、ないでしょ?」
「そんなら、心配すること、ないよ」
「そんなこと、言ったって」
「うるさいなあ」
浩平は、リードを強く引いた。
「口答え、するなよっ!」

「麻耶、おまえの秘密、見せてよ」
「えっ」
「隠してるもの、見せろ」
「何も、隠してなんか・・・・・・」
「どうだか」
クロゼットを開け、引き出しを開けていく。
麻耶は、なんの反応も見せなかった。
「じゃあ、麻耶、お休み」
「ま、まって」
「ん?」
「こ、これ、はずして」
「だめだよ、麻耶、お仕置きだ、ガマンするんだ」
浩平は、明かりを消し、ドアを閉めて、自分の部屋に帰っていった。
麻耶は、首輪と、足かせと、腕かせをつけたまま、ベッドに倒れ込んだ。
しだいに冷えてきて、布団に、潜り込む。

(2)

麻耶は、拘束具で縛られて、ベッドに入っている。
足かせ、手かせ、首輪以外、なにもつけていない。
からだを動かすと、鎖がチャラチャラ音をたてる。
浩平が写真を撮っているあいだ、
性器を隠そう、胸を隠そうと、
もがき続けたからだが、痛い。
おしっこにも、行きたくなって、ベッドから起きあがった。
後ろ手に縛られて、からだが安定しない。
転ばないように用心してベッドを下り、
ドアに向かう。
足かせの鎖が、音をたてる。
部屋の明かりをつけたくても、両手が使えない。
廊下に出た。
浩平の部屋のドアは、開けはなってある。
パソコンを操作する音が、聞こえる。
「浩平くん」
「なに?」
「おしっこ、したい」
「そう」
浩平は、麻耶に関心を示さなかった。
キーボードをたたく音が、続く。
「浩平くん」
「なんだよ!」
「浩平くん、ドア、あけて」
「ん?」
「おトイレの、ドア、あけて」
「なんで!」
「だって、ドア、あけれないよ」
「麻耶、あけてください、っていうんだ」
「ドア、あけてください」
尿意が強くなっていく。
「ドア、あけて、ください」
ようやく浩平が出てきた。
お漏らししないように、股間を絞めている麻耶を、じろじろ見つめた。
ドアが開けられる。
浩平のわきをすり抜けるようにして、トイレにはいる。
「フタ、あけて」
「ん?」
「フタ、あけて、く、ださい」
便座にしゃがんだとき、
浩平が、
「麻耶、まだ、出しちゃ、だめ!」
と、きっぱりとした声で命じた。
「も、もう、がまんでき、ない」
「だめだ」
「お、おねがい」
「出したら、許さないから」
浩平は、自分の部屋に戻る。
「でちゃうよ」
「がまん、しろ!」
麻耶は、括約筋に力を入れて、ガマンする。
浩平が、カメラをむけて近づいてくる。
「やめて」
麻耶は、叫ぶ。
「やめて、おねがい」
「麻耶、足を開いて」
「いやよ、いやぁ」
「さあ、開け!」
「いやぁ」
「もっと!」
「いやぁ」
「もっと開いて!」
「うっ、うっ、うっ」
「そう、そうだよ、麻耶、ひざを広げて」
「やめて・・・」
「もっと、広げて」
「ねぇ、お願い・・・」
「広げろって!」
「・・・」
胸も、腹も、下腹部も、そして、顔も、カメラの正面だ。
隠しようがない。
「出して、いいよ」
「・・・・・・」
「出せよ」
「・・・・・・」
「出せって!」
恥ずかしさで、ぐっとガマンしていたのが、
とうとう限界を超えて、
ほとばしり出る。
バシャバシャと音をたてて。
浩平は、シャッターを押し続ける。

浩平が、自分の部屋に戻っていく。
麻耶は、後始末ができないまま、トイレから出る。
「拭いてください」と、言えない。
浩平のドアの前に立って、
「浩平くん、お願い、これ、はずして」
と言った。
「だめだ、麻耶、だめだって」
「あの・・・」
「うるさいなあ!」
「ぱ、パンティ、はかせて」
浩平は、麻耶を無視して、パソコンを操作しているようだ。
麻耶は、ドアを開けた。
「なんだよ!」
パソコンのディスプレイから顔を上げて、浩平が振り向きながら言う。
「パンティ、はきたい」
浩平は、陰毛を少しでも隠そうと、両ひざをすぼめて立っている麻耶を見つめる。
乳房が、綺麗な乳房が、突きだしている。
濃い褐色の乳首が、きゅんと出ている。
「はかなくて、いいよ」
「落ち着かないんだよ」
「ふふ、麻耶、わがままなんだね」
パンティだけでも、と麻耶は思っている。
落ち着かないし、
浩平の目から、性器だけでも隠したい。
「おやすみ、麻耶」
浩平は、麻耶を無視して、パソコンの操作に戻った。

麻耶は、ベッドに入った。
冷えた身体を、暖めようと、ひざを胸に寄せている。
きゅうくつな姿勢だけれど、疲れたのか、
うとうとした。
ドアが開き、明かりがつき、浩平が戻ってきた。
カメラと、あの箱を手に。
麻耶は、のろのろと起きあがる。
浩平は、腕かせと足かせをはずした。
両腕と両足が解放されて、麻耶はほっとする。
浩平の視線から性器を隠すように、ベッドに座り込む。
まだ、写真を撮るのだろうか。
「ねえ、浩平くん」
なに? と尋ねるように、浩平は麻耶を見る。
「まだ、写真、撮るの?」
「ああ、まだ、麻耶がつけていない道具があるからね」
「ああ・・・」
浩平が箱から取り出して、麻耶に見せたもの、
それは両手首と両足首を一カ所で固定する拘束具だった。
ほっとしたのは、ほんのつかの間のことにすぎなかった。
4つの腕輪、足輪は、短い鎖でつながっている。
浩平は、まず麻耶の足首に取り付けた。
麻耶は、おとなしかった。
浩平が、やめることなど、考えられなかった。
しかし、次に浩平がすることがわかって、
「いやっ、やめてっ」
あまりにも、恥ずかしい格好をさせられるのだった。
浩平は、麻耶の足首をつかむと、ひざを折り曲げさせながら、手首に近づける。
両足首と、両手首を、短い鎖でつなぐのだ。
麻耶の両ひざを、胸に引き寄せさせて、固定するのだ。
性器が、丸出しになる。
麻耶は、必死に押し返そうとする。
浩平は、許さなかった。
思いっきり力を入れて、麻耶のひざを乳房に押しつけ、
拘束具を装着させてしまう。
浩平は、麻耶のからだを転がしながら、
場所を変え、アングルをかえて、写真を撮り続けた。
浩平が、性器をのぞき込むようにしゃがむ。
「あ、いやっ、そこ、いやっ」
麻耶は、性器を隠そうと、からだをひねる。
無駄なことだ。
この拘束具を取り付けたときから、性器を隠そうにも、
隠しようがなくなっている。
麻耶が逃れても、浩平は悶える麻耶を撮る。
ピピピ
カメラの電子音がして、浩平は自分の部屋に行った。
麻耶をほったらかしにして。
浩平は、容量いっぱいまで記録したメモリーから、パソコンに写真をダウンロードする。
それから、メモリーを初期化しながら、麻耶の寝室に戻ってきた。
浩平が、箱をのぞき込む。
あれが、あの道具が、箱に残っている。
麻耶は知っている。
残っている道具が、なんなのかを。
「麻耶、これ、コンドームをつけてくださいって、書いてあるよ」
浩平が、麻耶に見せつけるように突きだしたものは、
ブサイクなほど大きな亀頭を持った、真っ黒なディルドーだった。
「いや、それ、いや」
「麻耶、コンドーム、つけなきゃ、いけないの?」
「それ、しないで、おねがい」
「なるほど、ふうん・・・コンドーム、つけると、衛生的、なんだね」
浩平は、自分の部屋から、コンドームをもってきた。
ディルドーに、コンドームを装着する。
それから、麻耶の性器をのぞき込むと、
先端をあてがう。
麻耶が、逃れようと、からだを動かすと、
浩平は、片方の手で麻耶の太ももを押さえ込む。
亀頭が、ディルドーの亀頭が、陰毛にふちどられた肉の裂け目に少しだけ入り込む。
麻耶が、尻をひいて、はずそうとするのを、亀頭はしっかり追いかけてくる。
コンドームに塗られたゼリーが、亀頭をなめらかに滑らせて、
淫裂を広げながら、粘膜の凹みに入り込む。
ああ・・・
麻耶は、とまどっている。
濡れている。
こんなに、こんなに恥ずかしいことをさせられているのに、
濡れている。
亀頭は、ぬるぬるした淫裂を味わうように這いまわったあと、
とうとう、入り口を見つけ、
ブルリと潜り込む。
グロテスクな亀頭が、入り口をグウッと押し広げ、
押し出そうとうごめく肉穴をぐいぐい押し返しながら、
するりとはまり込んで、
それから先は、グイグイ押し込まれていった。
浩平が、シャッターを切り始める。
「いやっ」
麻耶がからだをよじると、はさまったディルドーが肉つぼをこすり、
しだいに押し出されて、
抜け落ちそうになったところを、
浩平が、グイッと押し込むと、
麻耶のからだに快感がはしり、
「ああっ」
と、声を上げてしまう。
声というより、無意識のほとばしり出る、悦楽のうめき、
それは、もう何度も聞かされた、夫婦のイトナミのときに
麻耶があげるメスのヨガリ声。
浩平は、ディルドーの根元を握る。
それから、肉穴の中を前後に動かす。
ずいっ、ずいっ、ずいっ・・・・・・
挿しては引き、挿しては、引く。
ずいっ、と突き当たるところまで挿しこみ、
グイッと、亀頭の付け根が穴の入り口に見えるところまで引く。
「うおおおっ」
麻耶が、うめく。
浩平は、ディルドーが、びっしょりと濡れているのに気がつく。
挿しこむとき、肉穴が締め付けてくる。
引くとき、肉穴が引き戻そうとする。
肉の手応えが、浩平の指先に伝わってくる。
麻耶のほほが、しだいにピンクに染まっていく。
まぶたを閉じて、かすかに開いた口から、せつないあえぎ声を漏らす麻耶を、
浩平は見つめながら、手を動かす。
けさ、隣の家の寝室をのぞき見たとき、
美和が見せた、あのみだらな表情。
浩平は、手の動きを早めていく。
自分がマスをかくときの、あの手首の動きをまねて、
くいくい、くいくい、くいくい、くいくい、
麻耶の太ももが、ぴりぴり震える。
尻が、ぴくぴく動く。
肉穴が、ギュウウウウッとディルドーを締め上げ、
麻耶は、
「あううううううっ」
と、大きくうめき、
全身をぶるぶる震わせて、イッた。
イク、って、こういうことか、浩平は、写真を撮るのを忘れて、
麻耶を見下ろしている。
麻耶の肉がゆるんだ感触に、浩平はディルドーを抜いた。
シリコン製のそれは、ぐにゃりとねじ曲がり、
麻耶の締めつけがどれくらい強かったか、
浩平は、あっけにとられた。
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