第二話「勝利へのVゾーン」


  基地を発進した超羞恥ロボ モロダスVは、新宿に向けて飛行していた。  その飛行フォームは、非常に斬新なものであった。  平泳ぎである。ひと掻きごとに、機体は数百メートルを一気に移動し、次第に減速する。  そして再び加速、減速を繰り返し、かなりのスピードで新宿へと向かっていた。  空を行くモロダスVの周囲には、自衛隊の偵察機が随行し、その一挙一動を全国に中継していた。  後方を飛行する偵察機のカメラは、これ以上無いほどリアルに作られた股間をズームで追い続けて  いる。見事な平泳ぎのフォームを見せる度に、股間に微妙な食い込みを見せ、まろやかなふくらみを  浮かび上がらせる濃紺のスクール水着が、全国八百万のファンの股間を熱くしていた。  数機の偵察機に囲まれて、平泳ぎで空を行くスクール水着の巨大美少女。  異様にシュールな光景だった。 「この飛び方も嫌だぁー!恥ずかしいよぉ、もう降ろしてぇ!」  思いっきり幼児体型の恵美が泣きべそをかきながら言う。  目の前に開いたいくつものスクリーンには、モロダスの飛行姿や、各コクピットに拘束された他の  連中の姿が映し出されていた。  そのどれもが、なんとも絶妙のアングルだった。斜め下から全身をとらえたローアングル。脚の  ラインからスクール水着に覆われた身体、そして恥じらいの表情を浮かべた顔までが、見事に一画面  におさまっている。  時折、サブ画面が表示され、それには股間や胸、お尻、顔などのアップが映し出されて少女達の羞恥心  を煽る。これが全世界にネットで流れているかと思うと、恥ずかしすぎて失神しそうであった。 「間もなく目的地だ、羞恥力エンジンは予想以上のパワーを見せている。これなら勝てるぞ!」 「どうでもいいから早く勝って!わたし達を降ろして下さいっ!」  美雪が妹の恵美の事を心配しながら叫ぶ。  スポーツ少女で、高校総体にも出た事のある美雪は、大観衆の目にさらされる事には慣れている。  すらりと引き締まった身体を持つ彼女の写真が、エッチな本に掲載された事も知っている。ある程度は、  そういう事に対する耐性が出来ていたが、妹の恵美はそうではない。  彼女は重症の、ピーターパンシンドローム・・・つまり、大人になりたくない病だった。自分の身体  が思春期を迎え、変わって行くのが耐え切れないのだ。  幼児体型とは言っても、胸はちょっとだけ膨らみ始めているし、他の所もそれなりに成長し始めている。  それを目の前に見せられるのは、恵美にとっては拷問に等しかった。 「・・・あのおっさん、帰ったら絶対にしばいたる!どつき回したるぞ!(あのおじさん、帰ったら絶対  に暴力に訴えてやる!連続で打撃をHITしてやるぞ)」  早紀はぶつぶつと同じ言葉を呪文のように繰り返している。  静香は得意の忍術で何とかしようとしているが、縄抜けの術とかは、まだ習っていないので結局何も  出来ずにうなだれている。 「とらわれのくの一の運命は所詮、こういうものと決まっている・・・」  何だか達観した事をつぶやいていた。  ジェニファーは白雪のような肌を朱に染め、眼を閉じてうつむきながらなにやら英語でぶつぶつと  つぶやいている。どうやらマリア様にお祈りをしているらしい。そのナイスバディをカメラが舐める  ように撮影し、全国六百万の金髪フェチの股間を灼熱させていた。(早紀ちゃんて、意外と胸、大きいな・・・)  スクリーンの一つに写った早紀の水着姿を見て、美雪は思う。 (C・・・いや、Dカップは有るな)  そして、自分のBカップの胸を見る。 (大きくなくても別にいいもん・・・)  普段は意識していない女としての自分を、こういう特殊な環境では嫌でも感じてしまう。  そして、それがたまらなく恥ずかしかった。  それぞれの少女達の羞恥をエネルギーに変えて、モロダスVは意外と早く新宿上空に到着していた。 「さあ、これからが見せ場だぞ、まずは、キメポーズからだぁ!」  妙にテンションの高い荒縄の声とともに、どこかで聞いたような女性の声がモロダスの口から発せられた。 「天が呼ぶ!地が呼ぶ!人が呼ぶ!悪の野望を打ち砕き、日本を守る恥辱の天使、ただいま参上!超羞恥ロボ」  そこで、モロダスはスクール水着のすそを両手できゅっ、と、つかんだ。丁度腿の上あたりである。  同時にコクピット内の五人の着ている水着の同じ位置を、壁から伸びてきたマニピュレーターが  しっかりつかんだ。 「え、何?・・・まさか!?」  美雪がとてつもなく嫌な予感にとらわれると同時に。 「モロダス、ファアアアアアイブッ!!」  叫びながらぐいっ、と、上に大きく引っ張り上げる。当然、股間に食い込む形になった水着の股布部分が、  少女の秘め所の形をくっきりと浮かび上がらせる。  見ようによっては、確かにVの字に見えなくも無いが・・・。 「いやあああああああああああっ!!」  五人の悲鳴がハモりながらコクピット内にこだまする。モロダスと同じ姿にされた五人の少女達は、  あまりにいきなりの羞恥ポーズに声を限りに叫んでいた。  一気に上昇した余剰の羞恥エネルギーが空中に放出されて稲妻のようにスパークし、モロダスの姿を  くっきりと浮かび上がらせる。ある意味、ちょっとカッコ良かった。 『声の出演・・・・・・』  結構有名な女声優の名前がテロップで流れたが、五人はそれどころでは無かった。  キメポーズ終了と同時にマニピュレーターは引っ込み、ナイロン製の水着はその伸縮性で元に戻って  いたが、股間に微妙に食い込んだ部分が、まだ残っていた。つまり、くわえ込んでしまっているのである。  必死に腿をよじったり、すり合わせたりして、元に戻そうとしているのだが、そのなんともいえない  焦りを含んだ恥じらいの表情と、五人の美少女全員が腰をくねくねさせて、食い込んだ水着の感触に  もだえる様は、全国二千万の食い込みフェチの股間を暴発させていた。 「ゆくぞぉ!極悪宇宙人ども!」  相変わらず、某人気声優の声でしゃべりながら、モロダスVは、駅前に着陸している卵形宇宙船に向かう。  その内部には、既に百人以上の男女が連れ込まれ、M字開脚状態で縛られてコールドスリープさせられていた。  この状態なら、一目で全身をチェックできるので、買い手が喜ぶらしい。  その時、卵形宇宙船の上部がぱかっ、と、開き、そこから敵の戦闘メカが出撃してきた。「またSMかぁ!」  美雪が叫んだとおり、敵は亀甲兵の姿をした戦闘メカだった。名付けて、メカ亀甲兵・・・そのまんまの  ネーミングだった。 「でたなぁ!くらえっ、超羞恥ゴマアアアアッ!」   モロダスは何処からとも無く二個のコマを取り出した。  それをスクール水着の胸の上、ぽつん、と、かわいく突き出している先端に器用に乗せて回し始める。  スクール水着の胸の上で、かすかに揺らめきながら回転し続ける二個のコマ・・・倒錯的なエロスに、  更に三万人が暴発していた。 「いやああああっ!」  再び五人の絶叫がハモる。  彼女らの胸の上でも、コマが回っていた。 「どうだね、最新のフィードバックで、質量をもったホログラムをコクピット内に生み出せる。恥ずかしい  けど、ちょっと気持ちいいだろ?」  誰も荒縄の説明など聞いていない。乳首の上で回転し続けるコマのもたらす異様な刺激に泣き叫ぶばかりだった。 「いややああっ、もう堪忍してぇー!うち、大阪に帰るうううっ!」  さすがの早紀も、関西弁丸出しで叫んでいた。意外と豊かな胸をフルフルと震わせて、コマを振り落とそうと  しているが、ホログラムのコマは全く効果無しに回り続けていた。意思に反して勃起したちょっと大き目の乳首  のラインが、スクール水着の上からくっきりとわかった。  その上をシュリシュリとくすぐるようにコマが回り、更に乳首を硬く尖らせてゆく。 「OH!ジーザス!OH,NO!オーマイガー!」  ネイティブならではの見事な発音で、ジェニファーも泣き叫ぶ。大きく突き出した豊かなバストの上で、  布地を破りそうに突き上げている乳首の先端で、ホログラムのコマが凄い勢いで回転していた。  そのまま乳首にもぐりこみそうな回転のスピードであった。 「いやああっ、何でわたしの胸でも回るのぉ!?」  はっきり言って、ぺったんこの恵美の乳首にも、ホログラムのコマが回っていた。  ただし、上には乗れないため、乳首に真っ直ぐ突き立てられるようにして回転している。重力を無視した、  ホログラムならではの技だった。 「くああぁ・・・こ、これは、『忍法淫らゴマ』秘伝の技が、何故、こんな所でひいっ!」  一応、くの一らしい発言をしながら、静香は身悶える。 「な、何の意味があるんですかあ!?」  美雪も、コマに虐められている自分の乳首が痛いほど勃起しているのを感じながら、気丈にも叫ぶ。 「これはモロダスの武器の一つだ。羞恥力エンジンのエネルギーを充填したコマ状の射出体を超高速で敵に  ぶつける。羞恥の度合いが大きければ大きいほど破壊力が増大するから、もうちょっと耐えてくれ」 「も、もうちょっとって、どのぐらい・・・ひいぃ!」  美雪も未知の感覚・・・異様な快感に身もだえはじめた。 「も・・・もう少し、あと、ふたこすりぐらい・・・うっ!」  何だかちょっと苦しげに荒縄は言う。 「何でもいいから早くしてえぇぇぇ!」  美雪が叫ぶのとほぼ同時に、二個のコマが発射されていた。大きくカーブして、前後からメカ亀甲兵を  挟み撃ちにする。  一個目に後頭部を直撃されて前かがみになった所を、二個目が下から顔面を突き上げるように命中し、  メカ亀甲兵は、もんどりうってひっくり返った。  モロダスと同じく、医学標本並みの正確さで再現された秘裂にきっちりと食い込む赤い縄が丸見えになり。  全国二百万人の縛りフェチの股間を暴発させていた。 「行くぞ!超羞恥ストリイイイイング!」  モロダスは再び何処からとも無く先端がいくつにも分かれたムチを取り出していた。  起き上がろうともがくメカ亀甲兵を容赦なく打ち据えて行く。  亀甲縛りにされて身悶えるグラマーな美女を鞭打つスクール水着姿の美少女の、あまりにも倒錯的なエロさに、  世界中で数知れぬ男性達が暴発させていた。 「はあ、はあ、はあ、と、とどめだ、や、やるぞおおおっ!」  なぜか息の荒い荒縄の声とともに、モロダスは必殺技の準備に入るために、攻撃を中断した。  その瞬間を逃さずに、メカ亀甲兵の反撃が始まる。  倒れた姿勢のまま、メカ亀甲兵はその豊かな胸を潰れんばかりに揉み搾った。  ブシュウウウウウッッ!と、大量の白い液体がその先端から噴き出し、モロダスに降りかかる。  あっという間にモロダスのスクール水着が溶け始めた。 「いやあああああああっ!」  五人の少女はまた悲鳴をあげていた。モロダスの水着が溶け始めたのと同時に、彼女らの水着もマニピュレーター  によって脱がされ始めた。  肩当の部分をハサミで切られ、つるん、と、皮でもむくように引き下げられる。 「こらぁ!おっさん、これ以上やったらほんまにいてまうぞ!」  鬼神の形相になった早紀が叫ぶ。見事なバストがむき出しになり、へそがちょっと見えるあたりでマニピュレーター  は止まっていた。他の四人も同じような所で停止している。「あ、あれっ、困ったな、三人、気絶しちゃったよ・・・」  本当に困ったような荒縄の声。  ちなみに気絶した三人とは、ジェニファー、静香、恵美である。 「いかんな、パワーダウンで、必殺技が使えない」 「だから、それは全部あんたが悪いんでしょうが!!とにかく服を元に戻しなさいっ!」 小振りだが、形のいい胸  を剥き出しにして美雪は怒鳴る。  ボーイッシュな美少女が細身の上半身剥き出しで怒鳴る姿に、数知れぬ男性達が果てていた。 「わ、わかった。こうなったら、バトルドレスを転送するしかあるまい」  荒縄は、そう言って通信を切った。  数秒後、敵との間合いを取り、胸と股間を隠して身もだえしているモロダスの周囲に、光の粒子のようなものが  集まり始める。それはたちまちのうちにモロダスの裸身を覆い、やがて、定着した。 「わ、和服だとぉ!?」  確かに、モロダスがまとっているのは和服だった。  コクピット内でも、マニピュレーターがてきぱきと動いて同じ衣装を五人に着せて行く。 「UN・・・OH!?ジャパニーズトラディショナルスタイル、キモノネ」  失神から目覚めたジェニファーが、自分の着せられている服に気付いて、安堵の声を漏らす。 「・・・静香君と恵美君は気を失ったままか、まあ、三人いれば何とかなるだろう。もう一つの必殺技で  フィニッシュだ!」  荒縄の通信が終わると同時に。 「ひいっさつ!超羞恥スピイイイイイイイイン!」  またあの声優さんの声でモロダスは叫び、自らの手で帯をほどいて引っ張っていた。  モロダスの身体がコマのように回転し、帯を解かれた着物が遠心力で剥ぎ取られて宙を舞う。  その姿に幻惑されたメカ亀甲兵の股間に、既に肌色の紡錘形にしか見えない速度で回転するモロダスが突っ込み、  一気にえぐる。  ここで画面にモザイクがかかった。  TVのニュースは、卵形宇宙船から次々に救出される人々の姿を写している。  元の服装に戻り、その映像を見ている五人の少女達。 「・・・荒縄さん、死んだかな?」  美雪がぽつりとつぶやく。 「普通なら五回は死んでるだろうけど、あいつの事だからね」  標準語に戻った。早紀が、髪をかきあげながらクールな口調で言う。 「・・・死んで当然・・・」  小さな声で、静香がつぶやいた。 「アラナワサン、死んだのデスカ?」  ジェニファーはちょっと心配そうに尋ねた。 「恵美は気絶してたからわかんない」  妙に幼児口調で恵美は答えた。強烈な羞恥にさらされて、幼児退行を起こしていた。  敵を倒した後、基地に帰還した五人は、荒縄を『しばき倒して』いた。  それは、素手の少女達の手によって行なわれたリンチとしては、おそらく人類史上最も凄惨なものだった  だろう。文字通り、ボロボロになった彼は、いま、集中治療室にいる。「やあ、君達、気が済んだかな?」 「うえええええっ!?あ、荒縄のおっさん、もう化けて出たんかいな!?」  いきなり現れた彼の姿に全員が驚愕の表情を浮かべる。  全くの無傷。つい二時間ほど前は、ぼろ雑巾のようになっていた彼が無傷で立っていた。 「そんな、『玉割り昇竜拳』を五連続でHITさせたのに・・・」 「まさか・・・本当に幽霊?」  そう言いながら、何気に手裏剣を取り出した静香を制して、荒縄は言った。 「君達が僕を憎むのは当然だ。あんなに恥ずかしい思いをさせたのだからね、僕を痛めつけて気が晴れるのなら  いくらでもやるがいい。こういう事もあろうかと、僕の身体には、K−遺伝子が組み込まれている」 「K−遺伝子って、何?」  美雪の質問に。 「ある天才科学者の遺伝子から作られた、とてつもなく打たれ強い肉体を作る遺伝子だよ。核攻撃以外の大抵の  攻撃から、数分で立ち直れる」 「それならおのれが戦わんかいっ!」  とってもごもっともな意見とともに、早紀の放った蹴りが荒縄の顔面に炸裂していた。  続く


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