第二話「所有物」


 「ほら、もったいぶらずに見せてやれよ」  ご主人様の命令に、わたしはちょっと泣きそうになりながら、制服のスカートを持ち上げてゆく。  顔は特殊なマスクで隠され、声もボイスチェンジャーで変えられているので、目の前に居る人達には、わたしが  誰なのかわからない筈だが・・・。  スカートの下には何も穿いていない。  ご主人様の言いつけどうりに、今日一日、この格好で過ごしたのだ。  体育が無かったからよかったようなものの、風の強い渡り廊下を歩く時はひやひやモノだった。  放課後まで散々恥ずかしい思いをさせられ、顔がばれないようにマスクをかぶせられて、この教室に連れて  来られたのだ。  わたしのご主人様は、常に学年トップ3の成績をキープしている優等生である。  そのご褒美に、専属奉仕者であるわたしがプレゼントされたのだ。  ご主人様はわたしをひと目で気に入ってくれ、優しく、時には激しく、わたしの身体で欲望を発散してくれた。  これは奉仕者として、最高の喜びである。  でも・・・。 「ほら、もっと持ち上げないと、見えないってよ!」 「はい・・・これで・・・いかがでしょう?」  放課後の教室で、ご主人様の友人数人の目の前で、スカートを捲り上げて性器を見せるのは、とても恥ずかしい。 「うおう!」  ご主人様の友人の方が、声をあげた。  きっと、全て見られてしまっている。  わたしは目を閉じて、スカートを持ち上げたまま震えていた。 「これじゃあ、まだ見せた事にはならないな・・・そのまましゃがんで、足を広げるんだ・・・いつも俺が愛して  やってるときみたいに大きくな・・・」  さりげなく自慢する所が、ご主人様らしい。 「はい・・・」  わたしは床に腰を降ろす。  剥き出しのお尻に、床の冷たさが心地いい。  硬く目を閉じ、恥ずかしいのを堪えて、ゆっくりと足を開いてゆく。  お友達の視線が股間に集中するのを感じる。 「わお!・・・ピンク色・・・」  さっきの方とは違う声。  きっと、生で見るのは初めてなのだろう。  ご主人様に散々言葉嬲りされた経験が無かったら、さっきの一言で恥ずかしさのあまり泣き出してしまったかも  しれない。  薄目を開けて、ご主人様の方を見ると、こちらをじっと見つめていた。  そこには、優しさとか蔑みの感情は無く、ただ、無感情な視線だけがあった。 「そのまましばらく見せてやれ・・・」  椅子に座って足を組んでいるご主人様は、そう命令して、読みかけの本に再び視線を戻す。  その素っ気無さが少し寂しかったりする。  でも、不満は無い。  わたしの心の中には、ご主人様への絶対的な忠誠がインプットされていた。  奉仕者はみんなそうなのだ。  幼い頃から最高のセックステクニックを仕込まれ、肉体構造も、最新医学と古来よりの秘伝を融合させた技術で  改良されて、優しい愛撫にも敏感に反応する繊細さと、荒々しい責めにも耐えられる耐久性を併せ持つように  なっている。  技術の粋を凝らして快楽の為に純粋培養された、甘い肉人形。  それが奉仕者である。  この学校では、常時500人以上の奉仕者が教育を受けている。  あるものは一般教科課程に在籍しながら、不特定多数の成績上位者に快楽の報酬を与え、またあるものは、わたし  のように、個人の所有物として、成績優秀者に与えられる。  普通はただのクラスメイトや、先輩、後輩、あるいは教師として振る舞い、命令されれば何処であろうと淫らな  欲求に応じ、快楽を提供する。  これまでは人知れず、ご主人様だけに抱かれてきたのだが、今日はご主人様の気まぐれで、お友達の目の前で  性器を見せている。 「中まで見せてやれ」  優しいが、決して逆らえない口調でご主人様が言う。 「・・・はい・・・」  物凄く恥ずかしい。  恥ずかしいのだが、それを堪えながら命令に服従する事に、わたしは大きな悦びを覚えている。  ふっくらとした秘裂の両脇に指を添え、少し力をこめる。  普段は隠されているピンクの粘膜組織が、ひんやりとした空気と、ご主人様のお友達の熱い視線にさらされるのを  感じる。 「んっ・・・」  ぞくり!と、背筋を快感が走り抜けていた。 (見られて・・・感じちゃってる・・・)  誰かがゴクリと生唾を飲み込む音がする。  わたしは恥ずかしくて、目を開けていられなかった。  唇を噛んでうつむき、ひたすら次の命令を待っている。  お腹の奥の方が熱くなり、かすかに震えるような感触があった。 (あ・・・嫌!・・・濡れちゃう・・・漏れちゃう・・・)  このアングルだと、全ての部分・・・お尻の穴までが、ご主人様のお友達の視線にさらされている。  そのまま、時間だけが経過してゆく。  まだ、次の命令は来ない。 「な・・・なぁ・・・見るだけ?」  誰かがご主人様に話し掛けていた。 「この子は俺の物だぞ」  ちょっと自慢げなご主人様の声。 「んっ!」  『俺の物』という言葉を耳にした途端、さっきとは比べものにならない快感が背筋を貫いていた。  漏れそうだった熱い体液が、溢れ出す感触。 「おい・・・」  誰かが押し殺したような声を出した。  また、ゴクリと生唾を飲む音。  濡れてきちゃったのを見られている。 「見られて感じてるんだな?床まで垂れてるぞ」  ご主人様の指摘。 「んっ・・・はい・・・漏れちゃってます・・・」  ご主人様は、わたしが濡れちゃう事を、『お漏らし』と呼ぶ。  その方がわたしの羞恥を掻き立てられるからだと言う。 「なあ!・・・触っちゃ、ダメ?」  ちょっと情けない声で、ご主人様のお友達が言う。 「ダメだ!見るだけだっていう約束だろ?」  ご主人様は即答してくれた。  わたしは内心、ほっとする。  ご主人様になら何をされてもいいが、他の人の手が触れるのは嫌だった。  でも、命令されれば、どんなに恥ずかしい事にでも従ってしまうだろう。  わたしはそう生きるように育てられたのだから。 「見ながらオナニーするのは自由だぞ。ただし、こいつにかけるなよ」  笑い混じりにご主人様は言う。  ちょっと意地悪な人なのだ。 「おっぱいでもいいんだけどな・・・触るの」  まだ、未練がましい声がする。 「触るのはダメだ!・・・でも、見るのはいいぞ。おい!おっぱいも見せてやれ!」 「・・・はい」  わたしは股間から手を離し、制服のシャツのボタンを外し始めた。  少し指が震えている。  ボタンを全て外し、ブラのホックも外してずらす。  ちょっと自慢のおっぱいが、外気にさらされた。 「・・・自分で揉んで見せろ」 「はい・・・」  わたしはご主人様の命令に従い、自分のおっぱいをゆっくりと揉み始めた。  自分で言うのも何だが、しっとり、ふわふわの、最上級の手触りだった。  ご主人様の触り方を真似て、ゆっくりと前に搾り出すような動作で、先端に向かって揉みこねていく。  胸の奥深くから、甘い疼きのような快感が沸き起こってきた。 「ふぁ・・・」  思わずエッチな声が出てしまう。 「乳首も摘んで見せろ」  命令どうりに、すっかり固く尖ってしまっている左右の乳首を、指先で摘んでクリクリと揉み転がす。  ジンジンと痺れるような快感が沸き起こり、下半身に新たなお漏らしの感触があった。 「んっ・・・くぁ・・・あんっ!・・・」  恥ずかしい声が出てしまうのを押えられない。 「もう、我慢できないよ!触るのがダメなら、せめて・・・その・・・手で・・・」  すごく言い難そうにしながらも、ご主人様のお友達は、わたしのご奉仕を求めていた。 「・・・そうだな・・・でも、直はダメだ!こいつを付けてやってもらえ」  ご主人様の声に目を開けると、コンドームのパッケージを友人の方々に手渡すご主人様の姿が見えた。 「手でやってやるんだ。いいな?」  ご主人様の命令に、わたしは頷いていた。  友人の方は全部で四人。  まずは左右に一人ずつ。 「さあ、じっくり高めてから搾り出してやれ。手を抜くなよ」 「・・・はい・・・」  命令に従い、左右から突きつけられた勃起に手を伸ばす。  極薄のコンドーム越しに、熱い脈動が手のひらに伝わってくる。 「おおう!」  指を絡ませただけで、二人は同時にうめいていた。  中途半端に暴発させないように、注意しながらわたしはご奉仕を開始する。  あまり強く扱かずに、ゆっくりと、ソフトな動きで快感を高めてゆく。  同時に二人の勃起を握るわたしの姿を、ご主人様が黙って見つめている。  それだけで、また溢れてくるのを感じる。  時間にして二分足らずで、二人とも限界を迎えていた。 「あっ・・・あっ・・・あぁぁ・・・」  右側の方が情けなさそうな声を出す。 「うぁ・・・もっ・・・もう・・・」  わたしはご主人様の方を見た。  ご主人様は目だけで頷く。  わたしは勃起の根元を扱いていた指を滑らせ、亀頭部を優しく弄って、最後の引き金を引いてやる。 「はううぅぅっ!」  二人はほぼ同時に弾けていた。  まだ射精の快感に硬直している二人を押しのけるようにして、新たな勃起が突きつけられる。  わたしはためらう事無く、それに指を絡ませ、絶頂へと導き始めた。  握る力を変えながら、ソフトに扱き上げ、親指の腹で先端を軽くマッサージすると、二人の膝が震え、うめき声が  上がる。  恥ずかしさと、見られる快感で、頭がぼーっとしてきた。  ご主人様のものなら、この後お口でご奉仕するのだが、今回は指だけで射精まで導かねばならない。  間も無く、二人はわたしの指で絶頂を迎え、激しく迸らせながらへたり込んでいた。 「さて、お開きだ!ほら、さっさと便所で後始末して、帰れ!先生に見つかるなよ」  四人を追い出したご主人様は、いきなりわたしを抱き締め、荒々しく挿入してきた。  たっぷりと溜まっていた愛液が、押し出されて床に垂れ落ちる。 「興奮したぞ!・・・お前が他の男のものを扱いているのを見るのは・・・お前も興奮したらしいな、ドロドロに  しやがって!」  荒々しく突き上げてわたしを悶え泣かせながら、ご主人様は耳元でささやく。 「ふぁ!・・・めっ!命令だから・・・命令されたから・・・ふわぁぁんっ!」 「命令されれば、他の男にもこうやって突っ込まれるのか?」  容赦無くかき回しながら、ご主人様は意地悪な質問をしてくる。 「やぁぁ・・・それは・・・ふぁぁぁ!」  最初の絶頂の波がわたしを襲っていた。  いつもよりかなり早い、わたしも昂ぶっていたのだろう。 「イってるんだな?自分が俺以外の男にぶち込まれてるところを想像してイってるんだろう?」 「ひっ!・・・ちっ!・・・ちがうっ!・・・んぁぁ!」  お尻の穴に指がねじ込まれてきた。 「そろそろこっちにもぶち込んでやろうか?」  わたしは声も出さずに頷いていた。  ご主人様になら何をされてもいいのだが、その命令で、他の人に抱かれるのは嫌だった。  脳に刷り込まれた、絶対服従の命令と、それに対する葛藤が、わたしの中で渦巻いていた。 「あいつら・・・お前の正体に気付いていないみたいだな・・・いつもクラスで顔を合わせてるのに・・・」  立ったまま半ば失神状態のわたしをなぶり回しながらご主人様は言う。  明日、普通の顔で彼らに接する事ができるだろうか・・・。  ご主人様の迸りを受け止めてのけぞりながら、わたしは思っていた。


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