第十章「水賊」裏2


「ほらもう暴れないの。縛り上げるって訳じゃないんだから」
『ハ、ハンマァ〜……』
 興奮して霊体のまま散々動き回ったゴブハンマーに白いシーツを被せると、弱々しい声を上げる……どうも外に何かをきていないと声を出せないらしい。
 それにしても……ベッドにかぶっていたシーツを袋代わりに頭からかぶせてみたけれど、どこからどう見ても肝だめしで仮装したかのような幽霊だ。寸胴の体に小さく突き出された両手。あたしがいくら幽霊とか死霊が恐くても、これじゃ恐がりようがないと言いたくなるほどに迫力も何もない。
「―――ま、その方がいっか。見方によれば結構可愛いわよ、あんた」
『ハンマァ〜……』
「照れてる? このぉ、憂いヤツ憂いヤツ♪」
 背丈も子供ぐらいだし、性格だって弱気だし、“恐い”より“可愛い”と言う感情が先に立つ。感情を表すために少し紛らわしいほどに大きく照れるリアクションを取るゴブハンマーに両手を回し―――
「……お?」
 ふにふに
「……おおっ?」
 ふにふにふにふに
「……おおおおおおっ?」
 ふにふにふにふにふにふにふに
 ―――こ、この抱き心地……ものすごく気持ちいいぞ!?
 元がゴブリンとか普段が鎧姿だとか忘れてしまう、このフニフニ感……指先で軽く抑えれば空気の塊のような霊体が軽く押し返してきて、風船とも違う、スライムの柔らかさとも違う、もう一つ軽くてしっとりした絶妙の弾力感!
『ハ、ハンマ、ハンマァァァ〜〜〜!!!』
「ああ、そんなに暴れないでよ。もうちょっと、もうちょっとだけフニフニさせて。なんかこれ、ものすごく癒される♪」
 腕を回してギュッと抱きしめれば、ちょうどいい大きさのゴブハンマーが顔から胸から太股にまで心地よい弾力を押し付けてくれる。
 ……ああもう、このまま寝たいなコンチクショー♪
 “ほえ〜”な気分にさせてくれるゴブハンマーを胸に抱いたままベッドに横たわると、頭の部分の丸みに顔をふにふに擦りつけ、ギュ〜ッと力一杯抱きしめてしまう。
 もういっそ、鎧なんか着せずに抱き枕モンスターにしちゃおうかな〜…と本気で考え始めていると、ふと、あたしのお腹に柔らかいけど弾力と密度のあるモノが押し付けられる。気になって身体を離し、ゴブハンマーとの間に目を向けて見ると、
『見ないでハンマァ〜……恥ずかしいハンマァ〜……!』
「は、恥ずかしいって……やっぱりコレ、アレ?」
 視線の先では、ゴブハンマーを覆っている白いシーツの腰の辺りの一部が角のように円錐状に盛り上がっていた。位置といい、反応といい、胸を押し付けたり顔だけじゃなく腰までスリスリしていた事を思い出しても、それがゴブハンマーの興奮した股間である事は明白だった。
 ―――けど、
「ねえ……これももしかして柔らかいの?」
 恥ずかしさよりも、まだ全身に残っているふにふに感への名残を加えた知的好奇心の方が勝ってしまう。あたしはゴブハンマーをベッドに仰向けに寝かせると、右横から体を押し付けて揉み心地では負けていない乳房を押し付けながら、そっと昂ぶっている股間へと指を絡みつかせた。
『ハンマァアアアアアッ!』
「やっぱり……これだけ興奮してるのに、柔らかいまんまなんだね……」
 ツンッと先端へ人差し指をあてがい、軽く圧迫しながら根元へと指先を滑らせる。泣いて悶えるようなゴブハンマーの声に胸を締め付けられる気分になってきてしまうけれど、背筋をじわじわと登ってくる感情に一つ大きくため息を吐き、そのまま優しく握り締めて上下にシコシコと擦りたててみる。
『ハァ…ハァ……アッ、うあ……ハ、ハンマ…ァ………!』
 あたしの手の中でシーツに包まれたペ○スが大きな脈動を繰り返す……強く握れば指は容易くペ○スへ食い込み、ゴブハンマーの身体が跳ね上がった。次第に加減を覚えて刺激を続けると、触れたばかりの時よりも明らかに二周りは膨張して弾力を増し、薄いシーツを一枚へだてたすぐ下にむき出しの欲望をみなぎらせていく。
『ハンマ、ハンマァアアアァ〜〜〜〜〜〜!!!』
「ふふっ……恐い? 怯えたみたいにビクビクしてるよ、おチ○チンが……幽霊でも、ここは感じるものなの?」
 ゴブハンマーはあたしの質問に答えない……けれど心で繋がっているあたしには、精一杯気持ちいいのを堪えているゴブハンマーのいじらしさが伝わってきて、あたしの中でスイッチが、パチンと、音を立てて完全に入ってしまう。
「ふふふ……あたしの手、そんなに気持ちいいの? 湖の畔ではもっとスゴいことしたのに……覚えてるでしょ?」
『ハ…ハンマー……』
「あの時は五人がかりであたしの事をめちゃくちゃにして……でも今は二人っきりだよ。あの時よりスゴい事……体験したくない?」
 返事はない……だけどそれが望んでいる事の意思表示だと悟ったあたしは、ゴブハンマーの頬にキスをしてから身体を起こした。
 手淫を止められて残念そうにしているゴブハンマー。その目の前であたしはおもむろにシャツに手をかけると、視線が肌を露出させたおへそに突き刺さるのを感じながらゆっくりとたくし上げて行く。
『ハ、ハン、ハンマ、ハンマァ―――!』
 シャツの下は寝るつもりだったので下着はつけていない。襟から首を抜くと、いつもはブラに押さえつけられている膨らみを前にしてゴブハンマーは異常な興奮を見せていた。
「まだダ〜メ。ズボン……まだ脱いでないでしょ?」
『ハンマァ〜……』
「だから……脱がせてくれる? 乱暴にしちゃダメよ、ふふふ……」
『ハンマッ!?』
 一旦押し止め、それからご褒美を上げる……ちょっとしたアメとムチに一喜一憂するゴブハンマーにクスクスッと笑ってしまい、小さく舌を出してウインク一つで謝ってからチャックを開けてゴブハンマーの顔を膝立ちでまたいだ。
「舐めるのは無理でも触れるでしょ? 気持ちよくしてくれたら、いっぱいご褒美上げるからね……♪」
『ほ…本当に…いい…ハンマー?』
「あたしの“こと”が欲しかったんでしょう? こんな機会、もう二度とないかもしれないわよ?」
 わずかな逡巡の後、ゴブハンマーは眼前のあたしの腰へと手を伸ばし、あたしの履いていたズボンをズリ下ろす。
『―――ああ、ズボンが邪魔して一番大事なところが見えないハンマー!』
「あんまりムードを壊さないでよ……もう」
 片方ずつ膝を上げてズボンを脱ぎ落とすと、次は装飾など一片もないシンプルな白いショーツに手がかかる。―――このまま脱がされてもいいんだけど、さっき叫ばれて盛り上がっていた気分が少々そがれてしまった。その分をお仕置きしてあげないと……
『はうぅ〜〜〜!』
 白いシーツの上から、そっと唇を被せる……男の人のような濃厚なオスの臭いは漂わせていないけれど、ゴブハンマーの股間は弾力の塊で、下手に力を入れすぎたら千切れてしまいかねないほど存在感が薄い。けれどあたしは昂ぶりを覆うシーツにたっぷりと唾液を吸い込ませると、頭を上下に大きく動かし、唇で激しくしごきたてた。
『た、たくや様、いやらしいハンマー! そんな、あんまり激しくチ○ポに吸い付かれたら……ハンマ、ハンマァ〜〜〜!!!』
 ―――ふぅん……霊体むき出しだから敏感なのかな? 布地ごしなのにスゴく感じて……ホントに……いやらしいんだから……
 自分の事は棚に上げている。心の中で本当にいやらしいのはおチ○チンにむしゃぶりついている自分なのに……いやでもそう自覚させられながら、シーツに染み込んだ自分の唾液をジュルル…とイヤらしく音を響かせ吸い上げる。そして一旦口を離すと大きく唇を開き、真っ白いシーツの一箇所にできた唾液の染みを頬張るように、ゴブハンマーの股間を根元まで口内へ咥えこんだ。
『ハ、ハンマー……!!!』
 たっぷりと唾液を乗せた下をシーツの表面に這いまわらせると、仰向けに寝たゴブハンマーの身体がびくびくと跳ねる。
 幽霊になっても男の急所なのだと改めて感じたあたしは、喉の奥にまで呑み込むような深いスロートで締め上げると、半ば無意識にシーツの裾から内側へ手を差し入れ、ゴブハンマーの霊体に直接手を触れさせる。
『―――――――――――――――――――――――――――――――――――――ッ!!!』
 “シーツの内側”と言う明確な区別があるせいか、手を差し入れてみるとそこにはまるで密度の違う空気の塊のような存在があった。けれどそれはゴブハンマーにとっては体の内側から刺激されるようなもの……集中していないあたしの意識にまで快感の強烈さを訴えかけるほど激しく全身を痙攣させ、口の中の物まで一気に一回り、二回りと異常な膨張を繰り返しだす。
 ―――ああぁ……スゴいぃ………
 涎の止まらない口内が一際弾力を増した塊に埋め尽くされていく。アゴが外れそうなほど唇を開いてもまだ足りない。だけどあたしは凶暴な逸物にまで成長したゴブハンマーの股間を咥えて離さず、唇をすぼめて舌を這い回らせ、頭を捩じらせて口内の粘膜を擦り付けるように刺激を加え続ける。
 その間に、あたしは自分の左手を自分の太股の間へ滑らせていた。期待していたのに、ゴブハンマーがちっともいじってくれない恥丘をショーツの上から擦りたて、陰唇を割り開く。あふれ出る愛液を下着に染み込ませ、ぱっくりと口を開いた割れ目にぴったりと吸い付かせると、ゴブハンマーの目が釘付けになっているのを感じながら、快感を求めて悶え泣いている膣口をグリグリと円を描くように圧迫刺激する。
「んゥ……ムッ、ングゥ、ッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 さらに膨張するゴブハンマーのペ○ス。実体の存在しない男性器は興奮の昂ぶるままに際限なく膨らんであたしのノドの奥を押し上げる。どんなに苦しくても、股間のショーツ同様口内にぴったり張り付いたショーツが吐き出すことも、満足に舌を動かす事も許してくれず、ただ咥えたまま唾液をダラダラと溢れさせて必死に高ない全体で締め付けることしか出来なくなっていた。
 ―――お…大きさだけはオーガ並みになってきた……このままじゃ咥えきれなくなっちゃうゥ……!
 もう耐えられない……アゴが軋みを上げるほどにまで膨らんだ逸物に呼吸すらままならなくなってくると、あたしは愛液を十分に吸ったショーツに覆われた股間を、ペタンとゴブハンマーの顔の上に落としてしまう。
「ンふゥ!!!」
 その直後、下腹をゾロリと生暖かい空気になぞり上げられる。―――それがゴブハンマーの“舌”だと気付いた時のは、ショーツ越しに粘膜をくすぐられる心地よさに膣口から濃厚な愛液を搾り出した後だった。
 ―――やだ……これ、き、気持ちいいィ………
 実際には軽くベッドシーツが触れているだけ……それなのに圧力を伴う空気の塊が太股を伝い愛液を舐め取る用に肌を這い回り、次第に広がった空気の膜がお尻まで包み込んでアナルと膣口、二つの窄まりを同時に揉みしだく。そのくすぐったくも心地よい感触に鼻を鳴らしていると口の中で再びゴブハンマーのペ○スが暴れ出す。
「んぐぅ〜〜〜!!!」
 快楽で脳髄が痺れ、グチャグチャと膣の奥から生々しい音と感触が響いてくる。空気の塊としか感じられない霊体はショーツの上から花弁に力を加えてさらに左右へ広げてくる。ヒクヒクと緊縮を繰り返している膣口もその力に負け、ツンッとクリトリスにタッチされた瞬間、大きくうねった膣から熱い迸りがショーツの内側へとあふれ出してしまう。
 ―――そこ……弱いのに。こっちは噛まないように必死に口を開いてるから声も出せなくて……ああ、もう、どうなったって知らないからァ!!!
 もう下着の意味を成さないほど愛液のお漏らしを受け止めたショーツがクイッと引っ張られる。股布をずらされ、クレパスの粘膜を晒されている局部のすぐ近くに風がそよぐような感触が動き、そしてチロッと―――
「んゥウウウウウウウウゥゥゥ―――――――――――ッッッ!!!」
 小さく口を開いた膣口に髪の毛を差し込まれたような細い刺激に、あたしは溜まらず叫び声を上げていた。濃蜜を股間から噴き、同時に口の中に頬張っていたシーツに唇を被せた歯を突き立てながらシーツの内側をまさぐっていた右手でつい、グイッと、ペ○スの裏側に当たる位置を掻き毟ってしまう。
『ハ――――――ンマ――――――――――――――――――――――――――――――――ッッッ!!!』
 そのまま噛み千切っちゃうんじゃないかと唇をすぼめたその時、あたしの口の中に熱いモノが注ぎこまれる。それが目に見えない魔力の塊だと気付いた時には、ゴブハンマーのペ○スから迸ったソレはあたしの喉へと流れ込み、体の内側へ次々と染み込んでいく。
 けれど、それはどこか物足りない絶頂だった……汚されるのとも違う、犯されるのと餅が、どこか現実感のない校内射精を瞳を閉じて静かに受け止め続ける。さすがに射精しながらあたしの股間を責める力はないらしく、あたしの体の下でビクッビクッと痙攣したゴブハンマーは心なしか薄くなった身体をベッドに沈め、シーツの内側から情けないほど脱力しきった声を絞り出した。
『ハァ〜…ンマァ〜……』
「ごめん、その……痛くなかった?」
『なんかもう……わけわかんないぐらい気持ちよくて……こんなの初めてハンマァ〜………』
 幽霊になってからの初射精なのだし、初めてと言うのはしょうがないだろうけど……ここまできておいて、一人だけ先に昇りつめて終わりと言うのは、あまりと言えばあんまりだ。
 手の形を見て取れる場所もベッドの上に投げ出して、それ以上あたしの股間を責める気力も失って寝そべるゴブハンマーに、ちょっとした怒りと、だったらその代わりにあたしが満足するまで付き合ってもらおうじゃないの…と言う悪戯心を抱くと、あたしは体の向きを入れ替え、足元からゴブハンマーの股間へ顔を寄せた。
「そのまま休んでていいからね。あたしが全部やってあげるから……ふふふっ♪」
 慌てるゴブハンマーを無視し、あたしは霊体を包み込んでいるシーツを持ち上げ、何もないように見える空間に手を伸ばす。
 ―――ここにいるはずなんだから……
 目を閉じて、手の平に神経と魔力を集中させると、かすかに密度の違う空気の層を感じ取れる。興奮の火照りを帯びた密度の濃い部分がゴブハンマーなのだと確信を得ると、まるで子供のような細い両足を撫で上げつつ徐々にシーツを上へとめくり上げて行く。
『ハ、ハンマー……直接触られたら……ああ、ダメ、ダメハンマァァァ……!』
「どう、優しく触られる感触は?」
『は、はじめてハンマー……エッチって……こういうのもある……あッ、あああッ!』
 ―――み〜つけた♪ ここがゴブハンマーの……
 両足の付け根に達した両手が天井へ向けてそそり立つ股間の形を捉える。
 根元から先端、そして螺旋を描くように指を這わせて再び根元へ……ほんの少し力の加減を間違えるだけで消えてしまいそうなペ○スのラインを指先で何度も確かめるようになぞり、脈打つ血管(?)の微妙な凹凸まで感じ取るとあたしは顔を寄せ、臭いも熱も何も感じない視線の先へと舌先を伸ばしていく。
「ん……ハァ……ぁ………あぁぁ………」
 先っぽから唾液の雫が滴る下を小刻みに左右に震わせ、やや反り返ったペ○スの裏側をチロチロと舐め上げる。塗りつけた唾液は肉棒に絡む事無く真下へと落ちてしまうけれど、必死に快感を押し殺しているゴブハンマーの様子を見ながらじっくりと空気と霊体の境目をなぞり上げて行く。
『ああぁ……ああァ……たくや様………ハ、ハンマー、ハンマー――………!』
 その反応に気をよくしたあたしは大きく舌を突き出すと、舌の腹を裏筋の場所へと押し付け、亀頭を上唇でなぞりながら先端の半分だけを口内で包み込む。
「んっ、んん……あっ………んん…んァ……」
 自分の意思で開いたままの顎が次第に痺れてくるけれど、唇と舌を蠢かせ、丹念に形のない巨根を舐め擦る。時折わざと唇を強くすぼめてゴブハンマーの霊体の内側にまで刺激を送ると、最初に口に咥えたときのように股間が肥大化してくるけれど、その前に口を離したあたしは今度は上半身に体重を預け、しっとり吸い付くような質感の乳房の膨らみを押し付ける。
『おっぱいが、おっぱいが……ハンマァアアアアアッ!!!』
「ふぅん……さっきよりも圧力が増してる……あたしのおっぱいが押しのけられてる……」
 興奮が昂ぶった事で魔力も昂ぶり、霊体の存在感が増している……さっきまで舌や唇に押し負けていたゴブハンマーのペ○スがたわわな膨らみを押しのけ、中央に寄せられた胸の谷間に長いトンネル道を空ける。摩擦こそないものの、ゆさゆさと身体を揺さぶれば、乳房を圧迫する霊体に震えが走り抜ける。
「ふふっ……あたしのおっぱい…そんなに気持ちいいの?」
 からかうような口調で問い掛けながら、乳間から口元にまで迫ってきた霊体ペ○スの先端をチロッと舌先で舐める。透明で、触れることすらままならないと思っていたけれど、空中の舐めた一点に唾液が絡みついたのを見て、ゴブハンマーがどれだけ昂ぶっているのかが伝わってくる。
『ぁ……ぁぁ…ぁ………ッ』
 特徴的な“ハンマー”と言う語尾も口に出来ない。あたしは小さく微笑むと、ゴブハンマーのペ○スを乳房で圧迫しながら膨張した先端をチロチロと舌でくすぐった。
『そ…それ以上は……―――!!!』
 ゴブハンマーの身体が暴れて、あたしの頭を押しのけようとシーツに包まれた両手が動く。
「いいのよ……あたしの胸に…顔に……このままいっぱい出して………」
『うッ……あ、あああああッ!!!』
 ゴブハンマーが声を震わせた直後、あたしの顔に生暖かい空気の塊が……ゴブハンマーの放った魔力の塊が打ち付けられる。
 それは幽霊のゴブハンマーにとっては身を削って放つようなもの……そうまでして達してくれた事に喜びを覚えながら、唾液をまとって形をあらわにした亀頭の先に開いた唇を押し付け、放たれる魔力を一滴もこぼすまいと激しく吸いたてた。
「いっぱい……出したね………って、あ、あれ? ちょっと、急に消えちゃわないでよ!?」
 突然、あたしの口や胸の谷間からゴブハンマーのアレだけ硬くて大きかったペ○スの存在が消えていく。まるで霧や霞のように、辛うじて確かめられていた身体部分もかなり集中しなければ分からないぐらいにまで密度が薄れてしまっていた。
『き……消えたんじゃ……ない………ハンマァ〜………これ以上出したら……本当に魂が昇天するハンマァ〜……』
「あ、あはは……ゴメン。まさかそんなに魔力を出しちゃうとは思ってなかったから………」
『ま、魔力はあるハンマぁ〜……たくや様を前にして吹き出んばかりに昂ぶってるハンマぁ〜……けど、体が重くて動けないハンマぁ〜……チ、チ○チン硬くするのに気力を使い果たしたハンマぁ〜……』
 ―――と言うことは、少し休憩を入れた方がいいのかな?
 肉体と魂と精神……ゴーストはこの肉体を失っているので、希薄な存在を維持するには形を持たない残る二つが重要になってくるわけで………と難しい理屈は抜きにして、股間を硬くするために死に掛けると言うのは、はっきり言って“馬鹿”である。
『い、今、なんか馬鹿にされた気がするハンマぁ〜……』
「それはあんたの気のせいよ。でも……なんか中途半端に終わっちゃったわね」
 切なげにそうつぶやくと、身体を起こして胸の下で腕を組み、重たい膨らみをグイッと押し上げる。
「せっかくこれからってところだったのに……」
『ハ…ハンマハンマハンマハンマハンマァ――――――――――――――――――ッ!!! いやハンマー、するハンマー、死んでもいいからたくや様と最後までエッチしたいハンマァアアアアアアアアアッ!!!』
「そんな娘と言っても、あんた今、消えかけじゃない。無理したらあたしにずっとついてくるって話がウソになっちゃうわよ?」
『男には! 死ぬと分かっていても! 挑まずにはいられない時があるハンマー!!!』
 ………いや、あたしとしては命を賭けて戦ってくれる方がありがたいんだけど。命がけでエッチに挑まれて本当に消えられたら寝覚めも悪いし。
「う〜ん……じゃあ、代用品を使うってのはどう?」
 ベッドの上で駄々っ子のようにジタバタ暴れていたゴブハンマーも、あたしが提案すると、とりあえず泣きやんだ。
「何か硬いモノを取り込んで……あ、そうだ。いいものがある」
 ずらされたショーツの位置を戻してベッドから降りると、部屋の片隅に置いてある背負い袋の中に手を差し入れる。
「この前、目隠しを探すときに入れっぱなしだったのに気付いて、捨てるのも恥ずかしいし時間がなかったりと……あ、あったあった。これなんてどう?」
 背負い袋から手を引き抜くと、その中に握り締めた木の棒を掲げてみせる。
 木製のディルドー……以前、フジエーダの娼館で働かされていた時に男性客の一人からプレゼントされたもの(第七章03参照)だけど、大きさは三十センチ強、手彫り感たっぷりの表面はゴツゴツとしていて、挿入したら棍棒で膣内をかき回されているかのようなゴリゴリ感抜群の一品だ。
 何でこんなものをまだ持っていたのかと言うと……ほ、本当に忘れていただけであって、別にやましい気持ちなんて欠片もありはしない。ただ……まあ……女になっちゃったが故の葛藤があって背負い袋の一番奥に押し込んで、そのまま忘れていたのだ。
『それがたくや様の求める理想の大きさハンマー?』
「そ、そんなわけないでしょう! 何センチあると思ってんのよ、三十センチよ三十センチ! い、入れたら裂けちゃいそうなぐらいに太いし、カリ首が内側をゴリゴリ抉るし、あたしがこれでどんなひどい目にあったことかァ!!!」
『い……挿れた事、あるハンマー? そのサイズを? やっぱりたくや様は男に戻るよりも女のままの方が……』
「うるさぁ〜い! ひ、人がせっかく恥ずかしいのを我慢して出してあげたって言うのに、いいわよ、あんたなんかさっさと魔封玉に戻してやるんだから!」
『すみませんハンマー、もう言いませんハンマー、だから許してハンマァアアアッ!―――で、それをどうするハンマー?』
「うっ……」
 実は何も考えずに出しただけだったりする。
 “硬いおチ○チン”があればゴブハンマーももう少しがんばれるだろうから、これを股間に装着させてみよう……なんて事は考えたけれど、それだと挿入されるのはディルドーで、ゴブハンマーが気持ちいいはずがない。
『せっかくたくや様が出してくれたものだから、ためしに使ってみるハンマー♪』
「あ、こら!」
 さてどうしたものかと思案していると、ふわふわ宙に浮いたゴブハンマーがあたしの手からディルドーを奪って行く。そしてベッドへ戻ると、
『では装着ハンマー、デュワッ!』
 ………その掛け声で股間にディルドーをくっ付けるの……?
 なにはともあれ……シーツをまくって股間にディルドーを押し付けて、それで何か起こるわけが―――
『ウォオオオオオオオオオオオォォォォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!』
 ―――あった。
 なぜかゴブハンマーは奇声を上げ、さっきまで今にも消えそうだった霊体に急速に魔力をみなぎらせていく。
 そして……あたしの目の前で、信じられないような現象が起こり始めた―――


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