ルート1−4


「ハァ………ぁ……ぁ………」
 夜の帳が下りても元日の初詣客の流れはなくなりはしない。
 左右に露店の並ぶ参拝道には初詣に来た人が溢れかえっていて、社から鳥居までそう遠くないはずの道のりを人ごみを掻き分けて随分と時間をかけて歩かなくてはならない。
 時には足を止めて露店を眺め、時には縁日でしか食べられないおやつに手を伸ばし、誰も彼もが楽しそうな表情を浮かべている中で、あたしは……あたしだけは、熱の灯った顔をキツく引き締めて石畳の上をあるかなければならなかった。
「ンッ………ふっ………んぅ………」
 震える足を踏み出すたびに下腹部の奥がよじれ、ブジュリと粘着質な音が体の内側に木霊する。
 誰も踏み入ってこない森の奥の小さな社の前で性欲に狂った佐野先生に膣内射精された精液が、まだペ○スを挿入された感触が生々しいほど鮮明に残っているヴァギナの中に溢れ返ってしまっている。こうしてただ下駄の音を響かせて歩くだけで、割れ目から滴る精液を気にしてモジモジと太股を擦り合わせてしまうのだ。
 それに今は、下着を何一つ身につけていない……正しくは、身につける事を許してもらえなかった。乱れた着物は佐野先生に着付けをし直してもらったけれど、あの紐同然の下着でも履いているのといないのとでは人ゴミの中を歩く恥ずかしさが格段に違ってくる。赤い振袖姿のあたしへ男の人たちが振り向いてまで視線を向けて来るたびにドキッと胸が跳ね上がり、密着した太股にツツッとあふれ出た精液が恥じらいと共に伝い落ちてしまう。
 自分がどれだけの色香を振りまいて歩いているのかを、あたし自身も十分に理解している。真冬なのに激しく抱かれたせいで汗ばむほどに火照った肌は、見る人が見れば行為の後なのだとすぐに見て取ってしまうだろう。今すぐ胸元を開いて素肌を冷えた空気にさらけ出したいほどに身体には熱がこもり、肌から立ち上る体臭を一息吸い込んだだけで下腹部の奥に甘い疼きが広がってくる……もしかしたら、さっきから視線の量が増しているように感じるのは、そんなあたしの匂いに気づいた人がいるからなのかもしれない。
 けれど、誰一人としてあたしに声を掛けてくる人はいない。すぐ隣りには佐野先生が並んで歩き、ふらつくあたしの肩に手を回しているからだ。
「ふふふ……羨望の眼差しと言うのは心地よいものだね。誰が勝者なのかを教えてくれているのだから、僕にとってはすなわち賞賛と同じなのだよ」
「ッ………………」
「そうだとは思わないか、ボクのたくや……」
「んゥ………!」
 優越感に浸る佐野先生は、あたしの肩から腰へ、そして着物に丸々としたラインを浮かび上がらせているヒップへと指を滑らせ、谷間をそっと撫で上げてくる。何時間も佐野先生に抱かれ続け、まるで全身が性感帯であるかのように過敏になるほどイかされ続けたあたしには、指先にほんのひと撫でされただけの快感にさえ身を震わせてしまう。人の目がある事を意識しながらも声が迸りそうになった口をとっさに左手で押さえ、ドクンと一際大量に精液があふれ出してきた股間を足を止めて右手で強く押さえつけてしまう。
「んっ…んんゥ! ん、くッ……ッ〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 ―――なんだか…恐い……佐野先生がじゃなくて……自分が…自分じゃないみたいに……感じてる……!
「どうしたんだい? ははは、もしかして人ごみに酔っちゃったのかな?」
 佐野先生は気さくにそう笑うけれど、声の奥に情欲の熱が再び灯り始めているのを聞き逃さなかった。軽く身を折り、必死に声を押し殺しているあたしに背後から抱きつくと、帯の上に乗っているボリュームのある乳房をこれ見よがしに揉みしだく。
「今になってもとても信じられないよ」
「あ……んッ、ダメ……ぁ………!」
「………ボクが、これほどまでに一人の女性に夢中になるなんてね」
「やめっ……先生……ゆ…ゆるし…て……ダメ……ここ……人が………」
 佐野先生が人の目も忘れてあたしの身体をまさぐり始めると、途端に周囲の視線が容赦なくあたしへと降り注ぐ。痴女だ痴漢だと騒ぎ立てられないだけでも幸いだけれど、大勢の人に見つめられながら感じさせられると羞恥と快感とが混ざり合う困惑の中で、あたしの中で興奮だけが昂ぶってしまう。そして高まる興奮に比例するように快感の波が次第に激しさを増し、佐野先生の指先が熱気と湿り気に包まれた股間へ着物を割り開いて滑り込んでくると、あたしは首を仰け反らせて中出しされた精液を……いや、白濁液を洗い流すほどに大量の愛液を振袖に中で撃ち放ってしまう。
「あ…あああぁん………!」
 お尻にはズボンを押し上げるほど硬くなったペ○スが押し付けられ、胸と股間にはそれぞれ先生の手……まるで人ゴミの中で抱きすくめられるような姿勢で恥丘へ触れられると、アソコとヒップにキュンッと力がこもってしまう。それでも佐野先生は陰唇に指を食い込ませて擦りたて、着物の上から乳首を押し込みながらあたしの感じる場所を丹念に穿り返していく。
 ―――か…感じさせられて……違う……あたしは…あぅ……ああぁ……こんなに大勢人がいる場所で……ヤダ…イッ……イかされちゃ………っ!
 参拝道の真ん中で、ガクガクと震える腰の奥から泣きたくなるほど大きく秘所をかき回される音が響いてくる。手を伸ばせば触れられる距離にまで参拝客が集まるその中心で、垂れる精液とあふれ出す愛液でグッショリ濡れた膣口には指が二本挿入され、痙攣する膣壁を擦られるたびにあたしの脳裏が真っ赤に染まり、太く、そして勢いよく、羞恥に悶える子宮の奥から煮えたぎった液体を噴き漏らしてしまう。
「あっ……あぁ………んっ…ァ……ッ〜〜〜……!」
 だらしなく開いた唇から白い吐息が立ち上り、濃厚な唾液が溢れて頬からノドへと伝い落ちていく。まるで水鉄砲のように、佐野先生の指が一番敏感なGスポットを押し込むたびに、着物の奥では大量の絶頂汁が噴出してしまい、淫らに腰を振りたててしまう。
「イヤ…ぁ……見てる……人が……こんな……アッ、アッ………!」
 佐野先生の方へと頭を仰け反らせ、舞台に立つダンサーのように腰をくねらせ踊り狂う。
 股間へと差し込まれた手が蠢くたびに着物の合わせ目から冷たい空気が入り込み、精液を搾り出す秘唇を撫で上げると、萎縮した下腹部の感度と挿入された指との密着具合は否応無しに増してしまう。軽いアクメから立ったままオルガズムを迎えようとしているあたしの秘部を容赦なく揉みしだく指は、そんな膣肉を書き分けて奥を掻き回し、興奮した大勢の観衆の視線を浴びながらあたし自身の興奮もまた際限なく、まるで恥ずかしさが性感を煽る様に昂ぶっていく。
 ―――や…だ……あたし…こんなに人がいるところで…見られながら……イかされ…あ、あっ…あああッ、イヤ、あたし、本当に、イく、イく、イっ……くゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」
 ガクンと頭を跳ね上げ、痙攣する舌を突き出しながら声にならない絶叫を迸らせる。夜になり、一段と寒くなったせいで意識だけは澄み渡っており、自分がいかに恥ずかしい場所ではしたなく絶頂を迎えてしまったのかを自覚しながらも、延々と絶頂の中で身体を揺さぶり、あたし自身が放った本気の射精汁を石畳に撒き散らしてしまう。
「ふふふ……こんな場所で僕を求めてイってしまうだなんて、なんて可愛らしいんだい、キミは……どうしてそこまで僕を楽しませてくれるのかなァ」
 もう立っていられなくてがくがく震える身体を佐野先生へもたれかからせていると、膣肉を抉っていた指がズルリと引き抜かれる。自分の体を支えきれないほど脱力していたあたしも、その瞬間にはたわわな乳房を弾ませるように体を震わせてしまう。
 そして、膝と腰とをカクカクと震わせるあたしを見つめる人たちの顔に改めて気付くと、
「……………ッ」
 その多くは嘲笑だった。騒ぎ立てはしないけれど、まるで汚いものを見たようにイき呆けているあたしから顔を逸らし、そそくさと先へ進んでいく。特に同性……女性の目から見れば、こんなところで男性に身体をまさぐられている女なんて、変態以外の何物でもないのだろう。
「あ……は…ァ………」
 興奮した目であたしの喘ぐ姿を見つめている男性たちの隙間から冷たい目で見られていると言うのに、指を引き抜かれた膣口からは濃厚な愛液を滴らせるのをやめられないでいた。心の内に動揺が広がり、絶頂の余韻と括約筋の緊縮によって力みはますます強くなり、着物の内側では何度もヴァギナを弾ませながらドロドロと愛液を垂れ流してしまう。
「見な…いで………やだ……こんなの……お願いぃ……なんでも…するから……もう…ここから…はやくどっかへ……」
 白い息を吐き出しながら溢れる涙を手の平で拭う。もう羞恥心でまともにものが考えられなくなって、子供のようにグスグスと泣きじゃくっていると、佐野先生はあたしの愛液にまみれた手を方から回して着物の内側へと差し入れ、男だと主張するにはあまりにもたわわすぎる乳房をネットリとこね回し始める。
「そこまで僕と一刻も早く結ばれたがっているとは、思ってもいなかった……いや、あまりにも嬉しすぎたので、少々錯乱してしまったよ」
 一人では満足に立つつこともできないあたしの肩を抱いて佐野先生が歩み出す。するとモーゼの十戒のように人垣が割れて道ができ、その間を佐野先生は悠然と勝ち誇った顔で、あたしはうなだれてこの世の全てに諦めと失望を抱いたような顔で進んでいく。
「見たまえ、周囲の男たちの顔を。僕が君から離れれば、さぞや可愛がってくれると思うよ」
 そんな事は分かっている。佐野先生は気付いていないかもしれないけれど、さっきからあたしのお尻に何度も手が伸びてきている。あたしにとって、この場所は獣に囲まれているのも同じだ。群れのボスのように佐野先生があたしを独占しているから、まだ“この程度”で済んでいるのであり、もしあたしひとりなら、あの子宝の社の前でされた事を何十人もの男の人に一斉にされかねない。
 それを理解しているからこそ、あたしは佐野先生の腕がもたらしてくれる淫らな庇護から逃れられないのだ。どれほど豊満な乳房を揉みしだかれても、子宮の奥にどれほどの精液を注ぎこまれようとも、今となってはあたしが選べる道は―――
「………ご利益だけは……あるのかな………」
 あたしと佐野先生を結びつける子宝の神様……その存在を信じたくなってきたあたしのアゴが不意に掴まれて上を向かされると、まだ絶頂から覚めやらず朦朧としているあたしの唇へと佐野先生の舌がナメクジのように滑り込んでくる。こちらの吐く喘ぎ混じりの呼吸にあわせて軟体動物のように蠢く舌が口内を這い回り、周囲に見せ付けるようにあたしの舌を絡め取って外へと引っ張り出す。流し込まれた唾液はとても呑みきれずに唇の端から零れ落ち、男性の視線の集まる白い喉下へと伝い落ちていってしまう。
 ―――……でも、佐野先生に犯されるのも、他の人に犯されるのも、あたしにとってはどっちだって一緒……なのに………
 それでもあたしは佐野先生にしがみつき、他の人よりも佐野先生を選んでしまっている。―――その事実に気付いた途端、あたしの中に興奮とは別の種類の炎が灯る。
 否定し、拒絶し、抵抗し……それでも佐野先生の唾液をゴキュッと喉を鳴らして飲み下すと、ピンク色の靄が掛かった頭の中は次第に佐野先生のことしか考えられなくなっていく。
「先…生ぇ………」
「クククッ……もう待ちきれませんか。いいですよ。僕もちょうどよい場所を見つけたところですからね」
 唇を離し、間近で佐野先生に瞳を覗き込まれると胸が高鳴り、嗚咽にも似た喘ぎ声を上げて胸を揉みしだかれる快感に溺れそうになってしまう。―――そんなあたしが背中を押されて辿り着いた場所とは、
「え……………しゃて…き?」


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