02「星華、曹操に尻を触られる」


 それは黄巾党が倒されてから、しばらくしてのことだった。
「星華、一度しか言わないからよ〜く聞けよ」
 依頼をこなして自宅に帰ってきた星華を、いつになく真剣な顔をした張飛が待ち構えていた。
 彼が腰掛けているのは、椅子ではなく寝台……そのような場所に腰掛けて真剣な話を持ち出されると、星華も思わずドキッとしてしまう。
(ま、まさか張飛様、責任を取って私と結婚しようとか……)
 張飛とは、鍛錬を受けて汗を流した回数だけ、寝台の上でも肌を重ねて汗を流し合っている。酒と同じくらい性交も好きな張飛だが、彼の体力にまともに付き合える女性は北海には星華しかいなかった。
(だからと言ってこんなに急に……私、心の準備が出来ていないのですけれど……)
 求婚された事など一度や二度ではすまないほどの美女である星華ではあるけれど、張飛ほど好ましく思っている相手から告白された事は一度もない。彼と同じぐらい好ましいのは関羽ではあるが、厳格な関羽に対して星華の家を第二の自宅にしている張飛の方が、そちらの方では一歩リードしている形だった。
(考えてみれば、ほとんど同棲なんですよね。でも私、依頼を受けたら何日も家を空にしているし、張飛様とだって……あれ、私、受け入れちゃう方向で考えてしまっていませんか!?)
 見た目は恐いけれど、気は優しくて力持ち。天下に名だたる豪傑である張飛と結ばれる……そんな想像に顔を火照らせて年頃の少女らしく心を震わせてしまう星華であったが、
「実はな、俺たち、平原に引っ越すことになってな」
「え……俺たちとは、もしかして領地換えのことですか?」
 黄巾の乱が収まった事で、論功行賞が行われて諸侯が各地に封じられた話は星華も耳にしていた。だがそれはあまりにも不平等なもので、朝廷への不満はすぐに膨れ上がるだろうとも予測していた。
「そんなわけで、劉備のアニキは平原に行くことになったんだ。当然俺や関羽のアニキもついていくんだが……星華、よかったらお前も来ないか?」



 多少の誤解はあったものの、星華は特に断る理由もなかったので張飛の誘いに応じ、劉備軍の幕閣に加わる事にした。
 更なる誤解を起こさないために記述しておくと、星華と関羽や張飛の間に恋慕の情はない。
 寝台で激しくまぐわう関係ではあるけれど、それは鍛錬に付き合ってもらっている事への礼であり、火照った体の内側で昂ぶっている精力を吐き出すための行為でもある。
 とは言え、張飛たちに特別な感情を抱いていないといえば嘘になる。体と心を割り切って男性に抱かれていられるほど、星華は女性としての経験を積んではいない。だが、関羽と張飛、そして二人の長兄である劉備との絆は強く、そこに踏み込んでしまえるような女でもない。
 腕を交え、言葉を交え、身体を交え……男同士だけでは紡げない男と女の“絆”で結ばれた友人、と言うのが星華と二人の関係を表す適切な言葉であった。
 けれど、だからこそ星華は、劉備と関羽と張飛、三人の間で固く結ばれた“絆”に憧れを抱いていたのかもしれない……





 星華が劉備の配下となってからは、あわただしく時間が過ぎていった。
 なにしろ劉備の元には内政をこなせる武将がほとんどおらず、星華はほとんど一人で平原の発展に奔走しなくてはならなかったからだ。
 農業と商業に重きを置いて開発を行い、治安を整え、兵を雇用して訓練を行って……簡雍もいるが能力が低く、政治向きの才能を持つ劉備は城から動かない。関羽や張飛と言う豪傑はいても、国内の発展を滞りなく行える文官は星華だけと言う状態であったため、それこそ張飛たちと刃や肌を合わせる暇もないほどに平原内を走り回らなければなかったのである。
 その上、なまじ星華の武芸の腕が劉備に知られていたものだから、濮陽攻略の際には歩兵を率いる将としても抜擢されてしまう。
 政治に軍事に、まさに八面六臂の活躍を星華。―――だが、彼女とは無関係のところで世界の流れは激流に変じようとしていた。

 霊帝が崩御されたのである。

 これに伴い何太后の子、そして大将軍・何進の甥である少帝・弁が即位する。
 だが何進と対立していた宦官たちは、宮中に参内した何進を暗殺。
 そしてその宦官たちを何進の命によって洛陽に軍を進めていた董卓が一掃。遅れて到着した丁原の部下である勇将・呂布を策を用いて裏切らせると、新たに陳留王を皇帝に立てる。もはや董卓に敵はなく、瞬く間に宮中の権力は掌握されていく事となる。
 これに対し、諸侯は袁紹を盟主とした連合軍を結成。悪逆非道な暴政を行う董卓に反抗し、侵攻を開始した―――





「ダメです! 兪渉様まで華雄(かゆう)に討ち取られました!」
 水関の戦いに置いて、連合軍は既に三人の武将を敵将・華雄一人に切り伏せられていた。
「ええい、なにをしておる! 我が軍にはこれだけの兵がいながら、華雄一人を倒す事も出来んのか!」
 総大将の袁紹が檄を飛ばすが、誰一人として華雄打倒に名乗りを上げる者はいなかった。
 既に三人もの勇将が名乗りを上げ挑んだのだが全てが返り打ちにあって命を落としている。その一部始終を目にしていながら、ここで名乗り出るほどの勇気を持った者は、今のこの場にはいなかったのである。
(どうしましょう……挑んでみたいと思う気持ちはありますが……)
 劉備軍もまた、董卓の目に余る悪政を正すべく、連合軍に参加していた。もっとも、勢力としてはまだまだ小規模な劉備軍はほぼ末席にあり、従軍していた星華などは将ではなく、女給と間違われて酒運びなどをさせられている始末だった。
 華雄の戦いぶりは本陣から遠めに見ていたが、確かに強い。内政に励んでいる間も腕が鈍らないよう鍛錬は欠かさなかった星華でも勝つことは難しいだろう……だが、だからこそ星華の胸に挑んでみたいという欲求が沸々と沸き起こってしまっていた。
「星華、この場は任せておけ」
 あと数秒遅ければ耐え切れずに着物姿でとても武官には見えないままで名乗り出ていたであろう。そんな星華の肩を押しとどめ、青龍偃月刀を手に関羽が名乗りを上げていた。
「この陣中に人無きとは聞き逃せません。劉備玄徳が義弟、関羽雲長ここにあり!」
「なんだ貴様は。ここは雑兵などが出てくる場所ではない、引っ込んでおれ!」
 ようやく名乗り出てきたかと思えば、ただの一兵卒も同然の男。三人もの武将が斬られて全軍の士気が上がらずに焦っていた袁紹は、この事に激怒し、関羽に向けて罵声を浴びせていた。
(私などが出ても、余計に怒りの火に油を注いだだけかもしれませんね……)
 それを見越して関羽が名乗り出たのだろうが、このままでは星華が名乗り出た場合と結果は変わらないだろう……だが、そこへ助け舟を出す人物が現れる。
「袁紹殿、良いではありませんか。例えこの男が華雄に切られても我が軍は痛手をこうむりませんが、その華雄が彼に切られたとあれば、我が軍には雑兵にもこれだけの強兵がいると士気も上がる事でしょう」
「むッ……だが曹操」
「兵は多くとも、我々は寄せ集めに過ぎません。命令系統を明らかにし、士気を上げねば勝利はない事をお忘れにならないでいただきたい」
(………曹操。そう、このお方が……)
 治世の能臣、乱世の奸雄。
 そう評された噂は聞き及んでいたが、実際に星華が曹操を目にするのはこの時が初めてだった。
「まずは一杯。そなたに武功があらん事を」
 そう言って曹操が酒が満たされた酒盃を関羽に差し出すが、関羽はそれを丁寧に断る。
「では戻ったら、改めてこの盃を贈ろう」
 曹操が受け取る事を拒まれた盃を手に、馬に跨って出陣する関羽の背中を見送る。……その時、曹操と言う人物に興味を覚えていた星華は、気配を抑えて静々と曹操の傍へ歩み寄ると、これ以上ないタイミングで盆をスッと差し出し、盃を受け取った。
「………ん? お主は……」
 魅力がありすぎると言うのは、同時に目立ちやすいという欠点でもある。顔を伏せ、曹操や他の諸侯とも目を合わせないようにしていたものの、関羽に与えるはずだった盃を持ってそそくさとその場を離れる事は出来ない。そもそも曹操と言う男を間近で観察するのが目的であったため、その場を動かずにいた星華の薄目での視線と、不意に振り向いた曹操の視線とが偶然重なり合ってしまう。
(しまった……だけど、ここで不自然な行動をとれば余計に怪しまれてしまうし……)
 悪い事をしているわけではないものの、視線を切って曹操の眼差しから逃れようとする星華。それに対し、曹操は気配を感じさせずにすぐ隣に立っていた星華の存在に興味を示し、袁紹を含めたほとんどの諸侯が関羽の向かった戦場の様子を固唾を呑んで見守っている中、ズイッと星華に身を寄せてきた。
「あの……なにか……?」
「なかなかに美しいな。名はなんと申す?」
「あ……」
 曹操の手が星華のアゴに指を掛け、上を向かせる。長い髪で隠れていた美貌が露わになると、曹操はさらに顔を近づけ、吐息が吹きかかるほどの至近距離で星華の顔を覗きこむ。
「私は……劉備玄徳の配下で……星華と申します……」
「ほう、劉備殿の。それにその名は聞き覚えがある。平原には有能な女将がいると……確かその名が星華であったな」
「いえ、私などよりも有能な方は玄徳様の下には数多のごとくおられ……あ、あの、近すぎます。お戯れは……」
 歓声が沸き起こっているのは、関羽が華雄の元へ辿り着き、挑み始めたからだろうか……だが本陣にいる人間の幾人かは、曹操と星華の様子に気付き、生唾を飲んで事の推移を見守っている。
「………なるほど、確かに美しい。報告どおり…いや、報告以上だ」
「お…おやめください……戦場のすぐ近くでこの様な不埒な行為、誰かが騒ぎ立てれば私はともかく曹操様の御名に傷が付いてしまいます。だから、やめ……ぁ…ダメ………!」
 両手で盃の載った盆を持っている以上、曹操に何をされようとも星華には払いのける術がなかった。それを良いことに、星華の顔を自分へと向けさせた曹操はその可憐な唇を奪い、細く括れた腰へと腕を回した。
「名前の傷などどうでも良い。目の前にこれほどの美女がいるのだ……今は男女の仲の方が大事なのではないか?」
「んッ………ァ…ヒゥん…! こ…声を上げます。本当に…よろしいんですか……!?」
「好きにすればいい。その時には俺を誘惑した女の主として、劉備殿の何も傷がつくかも知れんぞ?」
「う…んムゥうゥゥ………!」
 君主の名を出されては星華も騒ぎ立てるわけにはいかない。何度も唇を奪われ、腰から脇にかけての感じてしまう場所へ指を滑らされても、声を必死に押し殺し、早々にされるがままにされながらも必死に盆を支え続けた。
「健気だな。だが、だからこそどのような声で泣くのかを聞いてみたくなったわ」
「―――――――――ッ!!!」
 曹操の唾液で濡れている唇を、星華は強く噛み締めて迸りそうになった嬌声をとっさに押し止めた。星華の背中を這い回っていた手は帯よりも下に降り、着物を張り詰めさせているヒップの谷間をなぞっていた。
 着物を指先で押し込み、股の間から左右の膨らみを押しのけるように谷間を圧迫する……膨らみを揉みしだかれるのならまだしも、さすがに関羽にも張飛にも触れる事を許していなかった排泄口に触れられると、星華の背筋には震えが走り抜けてしまう。
 手にした盆の上で、盃の口から小さな水滴が跳ね上がる。こぼすわけにはいかない酒を支えながらも、曹操は執拗に身動きのとれない星華の小さな窄まりを着物越しにグリグリと押し込む。
「クッ……ゥゥゥ………」
 どうしてこうまでして曹操がアナルに責め手を集中させるのか分からない……いや、分かってはいるだけれど、考えるだけで星華の顔から血の気が引いていくほどのおぞましさを感じるので、頭が考える事を拒否しているのだ。
 昇りつめさせようとしている……星華に尻の穴で、汚らわしい不浄の穴で、大勢の諸侯が集まっているこの場所で。
 もし普通に前の穴で星華を弄ぶというのであれば、耐える事も出来たかもしれない。けれど肛門でイかされるなんて、女性にとってこれほどの恥辱はない。指の腹で菊座の窄まりを圧迫されながら耳たぶを甘噛みされる。うなじと耳の穴にかすかに酒の匂いが香る吐息をふきか蹴られ、その最中にも強く強く緊縮している窄まりを揉みしだかれる。
 あまりのおぞましさに身をよじるけれど、むしろ曹操は嬉々としてアナルを責め立て、着物を突き破りたがっているように指先を突き立てる。
(本気で……私のお尻の穴を犯そうとしていらっしゃる……)
 強烈な目眩が星華を襲い、思考能力を奪っていく。もう膝が震えている足では満足に立っていることもままならず、驚いた事に、指先が着物と下帯を押し込んでお尻の穴をグリッと押し広げた瞬間、ビリビリと痺れるように震えている下半身から沸騰したかのように熱く煮えたぎっている液体がビュクッと打ち放たれてしまう。
(何とかしないと……このままでは私――――――!!!)
 だけど声を荒げるわけにはいかないし、早々を相手に暴力を振るえば、それは主君である劉備の罪にもなる。在野の将であった時には存在していなかった忠誠心が星華を縛り上げ、曹操のなすがままにお尻を弄ばれる事に耐えていなければならなくなってしまっていた。
(いやよ……お尻でなんて、そんな……!)
 だけど信じられない事に、窄まりを押し広げられるほどに、星華の内股を伝う愛液の量は増してしまっていた。肛門を抉られるほどに頭の奥で火花が飛び散り、理性が弾け飛んでしまいそうになる。
「ゃ……私……お尻は……んクッ………!」
「なに、慣れれば病み付きになる。なんならここで達してみるがいい。今日の夜にでも、もう一度俺に抱かれたくなる。その時には指などではなく、もっと太いもので愛してやろう」
「お断り…い、いたします……私は…この様なことで……んィ、やめ…ァ、んゥ―――――――――!!!」
 ビクッと身体を震わせた星華は、気が遠のきそうになる感覚の中で必死に瞳を伏せ、身体を強張らせる。
 達してしまった……排泄期間を弄ばれて迎えてしまったオルガズムへの忌避感と一方的に責め立てられた悔しさから、腰をよじりながら星華は涙してしまう。
(ダメ…声が、声がァ―――――――――ッ!!!)
 なまじ快感を知るだけに、星華にはもう快感の本流を押しとどめる事は出来ない。盆を手にしたまませわしなく呼吸を繰り返し、恥丘を突き出すように腰を仰け反らせると、あれほど強く噛み締めていた唇を開き、喉の奥に溜め込み続けていた嬌声を天に向けて勢いよく迸らせてしまう。
 ―――その時、本陣で一斉に歓声が沸き起こった。
「んァああああああぁぁぁぁァァ―――――――――――――――ッッッ!!!」
 堪えきれずに遂に放ってしまった星華の声は、何千もの兵たちの勝どきの声に掻き消された。………だからといって星華の羞恥心がすぐに雲散霧消するわけではなく、それでもアナルでアクメを向かえてしまう汚辱に咽ぶように悶え泣き、着物の内側で下帯をしとどに濡らしてしまう。
「よかったな。誰に気づかれる事なくイくことが出来て」
「そ……曹操…さ…ま………ッ!」
「尻の穴で抱いて欲しいのならば、劉備の元ではなく俺の元にくるがいい。もっとも、誰彼かまわず尻の穴を差し出せる恥知らずな女ならば問題はないだろうがな」
「ッ……――――――!」
 ―――あんまりだ。
 関羽や張飛を含め、今まで星華が肌を重ねた相手とは少なくとも、共に快感を分かち合うような愛し方をしてきた。けれど曹操のそれは一方的に星華を辱め、屈服させるような性技……
(ぅ……私は…こんな事で喜んでなどいません………!)
 けれど、現実として絶頂を迎えてしまった。意識が弾け飛ぶような強烈な快感ではなかったにしても、排泄器官でイかされたと言う事は、星華の心を罪悪感で締め付けるのに十分な事実だった。
「おお、その首はまさしく華雄!」
 星華が昇りつめた後も、ヒクヒク震えるアナルをギリギリまでいじっていた曹操であったが、関羽が戻ってくると一番に出迎えていた。その後を袖で顔を拭った星華も追い、敵将をいとも容易く倒してみせた関羽を褒め称える曹操の傍にそっと寄り添う。
「さすがだ。まだ盃の中の酒が温かい」
 関羽が出陣してから、まだそれほどの時間しか経っていない……それは星華が、それほど短い時間でお尻の穴で感じさせられてしまったという事でもある。
(曹操猛徳……私は…私はあなたの事を………!)
 もう星華の事は眼中にないのか、それとも既に自分の虜になっていると思っているのか、曹操は関羽を讃えながら後ろを振り返ろうとはしない。
 その目を射抜くように鋭い視線を突き立てながら、それでも最後までこれ以上誰にも騒ぎを知られぬようにと、その場をそっと後にした―――



 華雄が倒れた事で、水関の戦いは連合軍の勝利に終わった。
 その日の夜、精神的に不安定になっていた星華は劉備不在の平原を守ると言う名目で連合軍の陣を後にした。
 関羽の戦いに夢中になっていた劉備や張飛はともかく、本陣に戻ってきた関羽は曹操に弄ばれた直後の星華を目にしている。肛門を弄ばれた……その事実までは気付かなくても、曹操との間に何かがあった事は鋭く察していたようである。





 後日、水関の勝利の勢いに任せて洛陽へ攻め上がろうとした連合軍だったが、董卓は長安へ強制的に遷都し、洛陽の都には火を放っていた。
 これに対して進軍を控えるように命令を出した袁紹であったが、それに曹操が反抗。自分の手勢のみを引き連れて洛陽へと進軍するが、待ち伏せに遭い、壊滅的な打撃をこうむる事になる。
 そして玉邇を手に入れたと言う噂がたった為に孫堅が連合軍を去り、それを切っ掛けにして諸侯もまた満足に戦いもせぬままに連合軍は解散してしまうことになる。
 ―――だが去り行く諸侯の中で、何故あの時、曹操が無理な進軍をしてまで功を焦ったのかを知る者は、誰一人としていなかった。







次回
「星華、天下無双の豪傑に会う」の事


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