01「星華、強いやつに会いに行く」


 誰も収める者がいない柴桑より、れっきとした太守のいる街に引っ越そうと考えていた時、酒飲み友達の陳紀がこんな事を言った。
「星華よ、知っているか? 劉備と言う者が北海に旗揚げしたそうだ」
 北海といえば北へ二つ三つ街を超えたところにある所だ。海に面していて、魚が上手いらしい。
 だがそのあたりは黄巾党の縄張りのすぐ傍。旗揚げしたばかりでお気の毒だが、一月もしない間に黄巾党に責め滅ぼされるだろう……と言うのが星華の率直な感想だったが、
「なんでも劉備の元には関羽と張飛と言う二人の豪傑がいるそうでな」
「よし、引っ越してくる」
「はっ……星華、ま、待て。何故いきなり引っ越すのだ? お前の趣味は知っているが、一騎打ちなら引っ越さなくても会いにいくだけでもいいではないか? てか、その酒瓶は俺のだァ!」
 一時の友より別れの選別を貰った星華はさっさと自宅に帰ると、読み集めた本を行李(こうり)に詰めて馬の背に乗せ、本当にその日の内に柴桑を去り、北海へと引っ越してしまった。
「関羽……あの名の知れた豪傑が、こんな近所に旗揚げするなんて……♪」
 それはある意味において“恋”に似た衝動だった。
 関羽といえばあくどく稼ぐ塩商人を斬り、官吏の執拗な追跡を振り切って逃げおおせた豪傑と聞いている。
 だからと言って、星華は腕試しついでに関羽を捕まえようと言うのではない。ただ純粋にその実力を確かめ、腕を競い合わせたくて胸を震わせているのだ。
 最近、柴桑の回りには星華を女と侮って挑んでくる山賊ぐらいしか相手がいない。以前は豪傑がいると聞けば離れた街まで一騎打ちしに出向いていたが、星華の実力がそこいらの豪傑と呼ばれる武将よりも上だと気付かれるのに、さほど時間は掛からなかった。おかげで出向いた先では意中の相手に街中を逃げ回られたり、一騎打ちをしてもらうために嫌がる相手を何日もかけて説得したりせねばならなかった。
 おかげでフラストレーションは天井知らずに溜まりまくっていた。だからこそ、突然近隣に現れて星華の事も知らないであろう関羽と張飛、そんな豪傑が二人もいると聞いて、いてもたってもいられなくなってしまったのである。
「楽しみです……ああ、関羽様、張飛様………♪」
 そんな浮ついた気持ちで北海まで辿り着いた星華は、新たな自宅の手配が済むや否や、すぐさま酒家へと足を向けた。
 するとそこでは、
「おおい、主、酒だ酒だ、早く酒持ってこんかぁ〜い!」
 と、真昼間からモジャモジャ髭の大男が、浴びるように酒をかっくらっていた。
 現代風に言えば巨乳グラビアアイドルと呼べるほどスタイルもよくて背も高い星華と比べても、その男はまるで子供と大人。椅子が一脚では座りきれず、二つ並べて腰を掛け、大きな卓の上に並べた酒瓶に次々と口をつけては一気飲みで空にしていく豪快な飲みっぷり周囲の客たちの度肝を抜いている。
(これは……もしかして最初から当たりかしら?)
 酒の飲み方一つ取っても、この男が並々ならぬ豪傑である事が伝わってくる。仕事の途中なのだろうか、兜こそかぶっていないものの鎧を身にまとっており、その下で分厚い筋肉が岩のように盛り上がっているのが見て取れる。壁に立てかけられた蛇矛(だぼう)は一丈八尺と長さといい見た目から想像できる重さといい、とても人が扱えるとは思えない武器だが、この男の腕力ならば軽々と振り回せる事だろう。
「ヒィフゥ、ヒィフゥ、お、お待ちくださいませ〜………ヒィフゥ、ヒィフゥ」
 そんな顔や全身の至る場所に「私は豪傑です」と書いてあるような男が酒を飲んでいるのだ。さすがに用意する側が追いつかない。その上、
「もうお尻触られるのはいやですぅ〜!」
 と、給仕の女の子が泣きながら星華の横を通り過ぎて酒家を飛び出ていってしまう。これは大変だなと店主の苦労を見て取った星華は、
「お手伝いいたします。こちらの酒瓶、あちらの卓へ運べばよろしいのでしょう?」
「え? おお、ありがとうございます。あの方がいらっしゃるといつもこんな具合でして、ヒィフゥ」
 見た目麗しい星華に声を掛けられ、酒の準備におおわらわの店主は汗の滲んだ顔を赤く染めた。そんな店主を励ますように優しく微笑みかけると、酒を詰め終えられたばかりの酒瓶を全て手にし、星華は大男の座る卓へと歩み寄っていった。
「お待たせいたしました。ご注文の追加のお酒、お持ちいたしました」
「待ちわびたぜ。まだまだ今日は飲み足りねェから……って、おい、お嬢ちゃん?」
 酒を運んだだけかと思いきや、星華は卓を挟んで髭面の大男の正面の椅子へ腰掛ける。そして卓上から酒瓶を一つ手に取ると、絶世の美人には不似合いなラッパ飲みで酒をグビグビと飲み干した。
「あら美味しい。北海のお酒もなかなかいけますね。あ、申し遅れました。ご相伴に預からせていただきます。これは以前暮らしていた柴桑のお酒です。お近づきの印にご返杯にどうぞ」
「おお、いい飲みっぷりだな! しかもなんだ……すこぶる美人じゃねェか。こんな美人と酒を飲めるなんて酒飲み冥利に尽きるってモンだなァ!」
「そんな、美人だなんて……私なんてまだまだ小娘ですわ。あ、店主さん。酒瓶追加でお願いします。お代はこの方もちで」
「ええい、まだるっこしい。樽ごと持ってこい、肴も追加だ、今日はこの店の酒、全部飲み干してやらァ!」
「え〜、て、手伝ってくれないんですか、ヒィフゥ〜〜〜〜〜〜!!!」
 大男一人でもヒィフゥ言って大変だったのに、身体は小柄でもウワバミの星華までもが加わっては、店主一人の手に負えない。いっそ店を畳んで逃げ出したいなと思いながらも、他の客まで巻き込んで突然始まった大宴会の準備に店主は奔走する事となってしまった。
「そういえば名乗るのを忘れていたな。俺は張飛、字(あざな)は翼徳。この街を治める劉備のアニキの義兄弟よ!」
「まあ、あなたが張飛様でしたのね。この様な場所でお会いできるなんて、これは運命かしら」
 張飛の横に席を移動し、大盃に酌をしていた星華は、顔に満面の笑みを浮かべた。
「私は星華、字は遼原と申す者。この街へは張飛様のお名前を聞いて、柴桑より引っ越してまいりましたの」
「………俺の?」
「はい。張飛様の……ですよ」
 わざとではない。何も考えず、含みがあるような言葉を使ってしまう辺りが、知らず知らずに男を誘惑するところなのだろう。魅力99、絶世の美女と言っても過言ではない星華にそう微笑みかけられれば、酒が回って思考力が暴走気味の頭が誤解してしまってもしょうがないのである。
「そうかそうか、俺様に会いに……ねェ」
 酒がなみなみと注がれた大盃を受け取りながら、張飛の目は星華の身体を舐めるように見つめていた。
 まだ歳は若そうだが、出るところは十分出ている。いや、出すぎていると言っても過言ではない。酒を飲んで苦しくなり、緩めた帯に乗っかっている胸の大きさは、今まで張飛が抱いてきたどんな女よりも大きく張り出しているように見える。着物を脱がせば、その下からはさぞや美しく、白磁のような滑らかな肌が現れる事だろう。
 想像しただけで、腹の中で暴れまわっていた酒の火照りが股間へ流れ込む。ズンッと重たく逸物を震え、星華からは見えない卓の下で履物を突き破らんばかりに膨れ上がっていく。
「俺様に会いに来たんだったら……もっとサービスしてもらっちゃおうかなァ?」
「あっ……ちょ、張飛様、何を……はァん!」
 星華が喉を震わせ漏らした声を聞きつけて、店内で酒を飲んで酔っ払っていた男たちの視線が一気に集中する。そんな中、張飛は大きな右手を星華の着物の胸元へと刺しいれ、張りのある豊かな膨らみを手の平いっぱいに収めて大きくこね回した。
「人が…見てる……ダメ、こんな場所で……や…あっ…やめ、やめェ――――――!!!」
 武芸の修練に明け暮れ、皮膚がザラザラと硬くなり、タコだらけでゴツゴツとした手の平は、星華にとっては凶悪過ぎた。元からキツく締めていなかったサラシを意外にも巧みに着物の内側で解かれてしまい、汗ばんだ胸の柔肉を直接指先に擦られると、決して性に疎いわけではない星華が背筋を震わせ、予想もしていなかった快感の奔流に身を大きく激しくよじらせてしまう。
 そんな魔法の指先が、もぎたての果実のように瑞々しい乳房の先端を捉えると、星華は人の目がある事も忘れ、全身を駆け巡る官能に身を任せて、あられもない声を迸らせてしまっていた。
「いい乳してるなァ……ええい、我慢ならねェ。直接だ直接!」
 Gカップ……いや、Hカップにも達する巨乳を揉みしだくのは、張飛のとっても初めての経験だった。彼の大きな手の平にジャストフィットする膨らみは、武芸で鍛えられた筋力のおかげで弾力に富み、どれほど荒々しく揉みしだいても指先を乳肉が受け止めてくれる。
 遂に張飛はたまらなくなると、腕に抱えた星華を軽々と持ち上げて自分の腰の上に跨らせる。しかも股間では、蛇矛に負けないほどの逸物が衣服を押し上げており、今にも暴走しかねないものを星華の尻へと着物越しに押し付けながら、張飛は腕の中に収まる美女の着物を肌蹴て、甘い香りの立ち上るうなじに顔を押し付ける。そして纏わり突いていたサラシを引きちぎってしまうと、プルンと弾んだ乳房を両手で鷲掴みにし、根元から絞り上げていく。
「いけません、もう、ああッ…んぁあああああぁ〜〜〜〜〜〜!!!」
 大きな舌がベロベロと首筋を嘗め回し、張飛の手の中から飛び出した小さな乳首が店内の客たちの前でツンッと硬く突きあがっていく。張飛は一度胸から手を離し、膨らみに比して小さな突起を左右同時に摘まんで引っ張り上げると、肩越しに首を伸ばし、左の乳房の先端へと舌を伸ばす。
「や…ヤァ……ダメ…です……張飛さ…まァ………」
「ああ、俺もダメだ。もうただの酒を飲むだけじゃ、この火照りは抑えられないぜ」
 星華が膝を擦り合わせ、必死に快感を堪えていると、突然張飛は腕を振るってから担った酒瓶を卓の上から払いのける。そしてその上に星華を仰向けにして寝かせると、張飛へと向けた膝を、その怪力で強引に割り開き、股間に顔をうずめて下帯を噛み破りながら星華の股間と菊座の窄まりを、天井へ向けるように尻を高く掲げさせる。
「こんな格好……み、見られてます、イヤ、お願いですから……は、恥ずかし…いィ………!」
「今さらなに言ってやがる。俺様の女になろうってんなら、この程度じゃ根を上げられねェぞォ」
「え……ち、違います。私は……ひアッ!?」
 下帯を鋭い歯で引き裂かれ、露わになってしまった股間は湿り気を帯びていた。
 早熟のわりに、まだ恥毛も生え揃っておらず、パイパンと言ってもおかしくない盛り上がった土手……そんな矛盾した恥丘に口をつけた張飛は、中身の入った酒瓶から舐め穿る膣口へと冷たい酒を浴びせかけた。
「飲まれ…てる……はああァ……お腹の中から……あ、あああ、飲まないで、ンはァ…ダメェェェ―――――――――ッ!!!」
 左右の陰唇にあてがわれた指が淫裂を割り開き、粘膜どころか膣内にまで酒が流れ込んでいく。その酒をジュルジュルと音を響かせて張飛が飲むと、髭がチクチクと淫核に突き刺さりながら、子宮にまでくだり落ちてきた冷酒が力強く吸引されてしまうという、不思議な感覚が星華の心を狂わせていく。
 それだけではない。垂れ落ちたお酒でびしょ濡れになった下腹を、張飛は勿体無いと言わんばかりに舌を伸ばして嘗め回す。時には膣口を舌で押し広げて肉ヒダまで嘗め回し、お酒と混ざり合った愛液までも一滴残さず啜り上げ、星華の秘所を盃代わりにごくごくと酒でノドを潤わせる。
「んあァ…あああああああァ………!」
 衆人環視の中でのマニアックな行為に、星華は卓上で胸を震わせながら快感に酔いしれる。飲まれても飲まれても尽きる事のない甘い美酒を蜜壷から湧き上がらせていたのだが、そんな時間は酒瓶の中身がなくなるのと同時に終わりを告げる。
「たまらねェ……もうチマチマ酒なんぞ飲んでいられるかァァァ!!!」
 酒瓶を投げ捨てた張飛は自分の衣服を引き裂くように脱ぎ捨て全裸になると、浮き上がった血管がゴツゴツと盛り上がり、蛇矛のように節くれだっている巨根を卓に寝かせた星華の膣へ押し当てた。
「そ、そんなに大きなの……アッ、待って、まだ私……んああああぁ………ッッッ!!!」
 星華の抗いも虚しく、張飛の巨根が酒と愛液で濡れる膣口へと押し込まれる。
 体が熱い……膣粘膜から酒が吸収されたのだろうか、締まりのよすぎる膣が引き裂かれそうな痛みを訴えてしまっているものの、星華は呼吸を荒げながらも張飛の乱暴なまでに力強い抽送を受け止める。
「は…入ってる……張飛様の…こんなに大きなおチ○チンが、根元まで、アアっ、信じ…られないィ………!!!」
 冷たい酒は、湯気立つほどの熱い酒に変わっていた。
 凶悪な張飛のペ○スが抜き差しされるたびにゴッソリ抉り取るかのように肉ヒダと擦れ、巨大な先端の膨らみが子宮口を突き破らんばかりに勢いよく叩きつけられル。時に張飛の腰が左右によじられると、星華の膣内で巨根が蛇のように左右にうねり、膣の奥深くに亀頭を擦りつける。
「そんなに、腰を動かさないでぇ! んぁあああっ、奥は…奥は感じるのにぃ……張飛様のおチ○チンが大きすぎて、おマ○コのお肉が引っ張られてるのにぃ………!」
「いきなり犯されて感じてる割には耐えるじゃないか。普通なら泣いて痛がるか、よがりすぎてあっという間に白目を剥くんだがな!」
「あハァああああああッ! 根元まで、挿れないでェェェ! あう、ああうゥ…そんな、根元まで…おマ○コが広がって…張飛様のおチ○チンで、私、わたし、おかしくなっちゃうぅぅぅ〜〜〜!!!」
「そんな嬉しいこと言われて男がやめられるかよ! 俺様のチ○ポを根元まで受け入れてるくせに、こんなにダラダラ涎をたらしてるくせによォ!」
 星華の膣内を満たしていた巨根が膣壁を削りながら引き抜かれ、また押し込まれる。もう無言で見ているしかなくなったほかの客たちの視線を浴びながら、子宮が押しつぶされそうなほど力強く突き上げられる快感に、結合部から愛液を噴き出しながら身体をガクガクと震わせてしまう。
 だが、星華が主家を震わせるほどの嬌声を放つほどに、張飛が射精を堪えるために歯を食いしばる音も大きくなる。星華の膣内が隆起して締め付けを増すと、張飛のカリ首を締め上げるように肉ヒダが絡みつく。まるで吸い付くような粘膜に根元まで押し込んだ巨根を逆に余す事無く包み込まれてしまい、激しく抜き差しを繰り返すほどに張飛自身の首を……いや、カリ首を絞めることになってしまう。
 ここでもし動きを緩めようものなら、大勢の客たちの前でだからこそ張飛は更に荒々しく星華を犯す事を洗濯した。精液がたっぷりと詰まった精嚢がぴたぴたと星華のアナルを叩くほどに荒々しく腰を前後に振りたくると、突然表れた美女は分厚い天板の卓の上で背中を浮かせ、汗の浮いた乳房を突きあげる。そして着物から肌蹴た両脚を張飛の腰へと絡めると、子宮を揺り上げられる快感にあられもない声を迸らせた。
「星華、星華、こ、このまま出すぞ! お前のおマ○コに俺様の子種をたっぷりとくれてやるからな、そら、そらァアアアアアアッ!!!」
「え……や、やアァ! それは…中に出すのは、ダメなの、イヤ、張飛様、イっちゃう、イっちゃうのにィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 主家の真ん中で叫び声を上げながら張飛の巨根の先から精液が放たれる。男根を揉みしだくように膣が蠢動し、散々こね回された子宮口から熱い体液が胎内を打ち据えると、遂に星華もたまらなくなり、終わる気配をなかなか見せない射精を膣内に浴びながらガクガクガクッと官能的なボディーを打ち震わせる。
「おっ…うゥ………たまらないな、こんないい女が自分から誘ってくるなんて」
「あ……ハァアアアァ………張飛…様……私…張飛様より…遅く………」
「いいっていいって。男と女なんざ、どっちが遅かろうが惚れあってれば関係ないだろうぜ。てーわけで、酒が抜けたところでさっそく二回戦とイくかァ!」
「そこまでだ、張飛」
 卓の上でグッタリとして、たわわな膨らみを呼吸に合わせてゆっくりと上下させていた星華に、張飛がまたも巨根を押し付けようとしたまさにその時、巨漢の大男の方にズシッと巨大な刃が乗せられた。
「………げぇ、関羽!?」
 振り返った先にいたのは、アゴから伸ばした長い髭が特徴的な、張飛に負けず劣らず体格の良い武将だった。
 その手に持つのは、巨大な青龍偃月刀。背後に率いた兵たちが持っている槍とは一回りも二回りも違う大きさで、刃を張飛の肩に寄せているとは言え、そんな武器を片手で扱う関羽の力は押して知るべしである。
「酒家で若い女性を強姦している大男がいるときいて来てみれば、やはり貴様か張飛! お前はこの場で強姦罪で裁かれたいのか? 本当に漢室を助けてこの世の中をただそうと交わした桃園の誓いをなんだと思っているのだ!」
「いや、違う、強姦違う! 確かに酔った勢いでこんな場所でいたした事は反省しているけれど、これはれっきとした和姦なんだ、本当だって、他の客に聞いてみれば分かるから!」
 服を破り捨てた全裸姿のままで床に正座した張飛。頭のあがらない相手である関羽に事情を説明しようとするのだが、
「私は……張飛様と腕試しに参っただけなのですけれど……」
 呼吸を整えて身を起こした星華の言葉で、張飛の身体が硬直した。
「あの……俺様に会いに…来られたんですよね、星華さん?」
「え、ええ。関羽様と張飛様、お二人の噂を聞いていてもたってもいられなくなり、武芸者の血が命じるままに北海に参りまして……そしたらちょうどここで噂の豪傑らしい方とめぐり合えましたので、ここは親密度を上げてから……と思っておりましたの」
 まあ、酔った上での言葉である。張飛と星華は常人以上の大酒飲みではあるが、それでも酒の酔いは思考能力を大きく鈍らせる。言葉足らずが誤解を呼んで、それに気付いてあんぐり口を開けた張飛の肩を、青龍偃月刀の刃の峰がトントンと叩く。
「さて、どこを切り落として欲しい? 首か? 髭か? 女に見境のないその股間のものか!?」
「関羽のアニキ、タンマだ、どれも俺にとって大事なものじゃないかよォ!」
 大事なものの中に髭が混じっているのはどういうことか……ま、これから先、問う機会はいくらでもあるだろうと着物の乱れをそそくさと直した星華は出入り口からの脱出を諦め、卓の上から窓へと足を掛けた。
「張飛様、今日のところは先にイったあなたの負けと言う事で。関羽様も今度ぜひわたしと腕比べをいたしてくださいね♪」
「こ…こら待て!」
「兵は機を見るに敏なり、それでは失礼いたします」
 そう言葉を残し、窓から外へ飛び出た星華は、自分が巻き起こした騒動の後始末を何一つせず、そそくさとその場を立ち去った。
 もっとも、張飛に貫かれた余韻でカクカクしている腰で残ったところで、何も出来なかったであろうが……



 こうして星華は北海に居を構える事となった。
 酒家から依頼を受けていない日は毎日のように張飛や関羽と酒を飲み、一騎当千、いや万夫不当の豪傑と腕を競い合わせることとなる。そして親密な付き合いをするほどに、張飛だけでなく関羽とも肌を重ねる機会が多く訪れ、星華にとって充実した日々が過ぎていった。
 だが―――







次回
「星華、曹操に尻を触られる」の事


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