1000万ヒット祝賀小説「ブラック・エルフ」-3・後


 41日目―――


 何度見ても見飽きることのない夢でも、感じることはその時の状況によって違う。
 “彼女”との一夜限りの性愛行為を夢で思い出した日は、クロムの決して逞しいと言えないモノに痛みが走るほどに充血し、すぐにでも自慰をしなければ若い性欲の滾(たぎ)りと“彼女”を失った悲しさと悔しさで気が狂いそうになっていた。
 けれど最近は違う……毎日スライムに身体を弄ばれ、決して外へ出ることの許されない薄暗い部屋で目を覚ましたクロムを待っていたものは、夢の中の出来事に煽られて膨らみこそしているものの、ただそれだけ、今すぐにでも手で扱きたて、精液をぶちまけて発散したくなるほどの興奮は募ってはいなかった。
 ―――ボク……これからどうなっていくんだろう……
 充満した精液と粘液の臭いの充満した暗い室内には、長老の魔法で床に描き出された魔法陣から放たれるほのかな光しかない。地中奥深くにまで到る洞窟に住むドワーフならば何日も日の光を浴びなくても平気かもしれないが、太陽の光の差し込まない密室での四十日と言う監禁生活はクロムの精神を蝕むには十分過ぎる長さだった。
 頭の先からつま先に到るまで、スライムに嬲られていない場所はどこにもない。それどころか口から尻から、さらには尿道をも犯され、体内からも犯しつくされたクロムは、光すら見出せない毎日に生きようとする気力すらも根こそぎ奪われている。
 ―――このまま死んだら……“彼女”に…あの世で会えないかな……
 風の精霊も逃げ出すほどに空気の澱(よど)んだ室内に拘束され続け、クロムの精神はすっかり衰弱しきっていた。捕らわれ続けた日数がそのまま、逃げ出そうとして果たせなかった日数であり、逃げようとする意思をスライムに快感付けにされる事で圧し折られてきた日数でもあるのだから。
 この部屋にいる限り、クロムにはもう絶望しか残されていない。逃げようとすればするほどに、スライムは力ずくでか細い少年エルフの身体を床に押さえつけて床の中央へと引き戻す。扉は正面に見えているのに、駆ければ五歩で辿り着けそうなその場所が、クロムにとっては無限に等しく感じられるほどに遠いのだ。
 ―――それに……もう……ボクは………
 まどろみの中、ゆっくりと自分の股間に右手を伸ばして大きく膨らんだモノに触れると、
「んッ………!」
 毎日の責め苦の中で過敏になり過ぎてしまった男性器は、指先が触れただけで雷に打たれたみたいに激しく跳ねる。
 股間のモノの形状も以前とはいささか変わっていた。一回り大きくなり、包皮もクルッとめくれ上がって真っ赤に腫れあがった亀頭が露出している一方で固さは失われている。
 そして陰嚢。本来であれば、熱い体内では精子が作れないがために身体の外へと出されていた二つの睾丸が、繰り返し行われた尿道からの逆流ファックで体内へと引き戻されていた。まだ完全に体内に収まったわけではないけれど、袋の部分はかなり収縮してしまっており、睾丸をぴったりと押さえつけてしまっていた。
 慣れ親しんだ形を失った自分の性器の感触に戸惑い、その敏感さに握り締めることすらも躊躇いながら、クロムは仰向けのまま、細くくびれたウエストから自分の胸元へと開いていた左手を這い上がらせていく。
「は…ふゥ……ん………」
 肌から手が吸い付いて離れない。粘液状魔法生物のスライムに撫でまわされた肌はつややかなほどの潤いと弾けるような質感の張りまで持ち合わせるようになってきていた。毛穴の老廃物も産毛も綺麗に取り除かれ、赤ん坊と変わらないような素肌は、もう男性のものではない。元々きめ細かかったけれど、陽の光に当たることなくスライムに磨かれ続けた肌はさながら白磁のように滑らかで艶かましい輝きを放っている。
 そして自分の肌を撫で回す心地良さに短く細かく息を漏らしながら、クロムが手を胸元に辿り着かせる。
 すると、
「んはァ………!」
 もっとも顕著に女性化していることを表している乳房の膨らみ……男性の身体にはありえないその膨らみにじわじわと力を込めて揉み潰すと、押し出されるような喘ぎがクロムの喉の奥からこみ上げてくる。
 ―――ボクの……ボクのオッパイ……先っぽまでこんなにコリコリ硬くなって…ああ、ああああァ……また大きくなってる、それに、こ、こんなに感じて…ハァ、アッ、はぁぁぁぁん……!
 女性化スライムにとらわれてもう一ヶ月以上が経ったけれど、この数日はクロムの女体化の兆候が特に顕著に現れ始めていた。
 言うなれば、最初の二十日〜三十日はクロムの身体の隅々にまでスライムの粘液を浸透させ、女性化の下地を作り上げる準備期間。そして準備が整った今は女性化の本格的に開始時期に当たる。
 最初は強引にでもスライムに含まれる成分を浸透させなければならなかったので、寝る間も惜しむようにクロムも犯され続けていたけれど、最近はと言うと、ベッドも布団もありはしない固い床の上でだけれども、睡眠だけはゆっくりと取らせてもらえている。それは男性の身体から女性の身体へと作り変えられるのは、クロムは意識していないもののかなりの体力を必要とするからであり、起きている間は消費されていくTS成分の補充のための陵辱、そして睡眠時には体力を回復しつつ女体化を進行させると言うサイクルが既に出来上がっているからでもあった。
 そうとは知らぬクロムにとってみれば、目を覚ますたびに胸は膨らみ、男性器は日を追うごとに慣れ親しんだものではなくなっていく。体つきは以前よりも柔らか味を帯び、里から逃走するために山野を駆け巡って搾った身体が弾力のある質感に覆われていく。
 最初はどれだけ犯されて疲れ果てようとも、徐々に女性になって行くことへの恐怖で眠ることを拒み続けていた。しかし起きていればスライムは際限なく少年エルフから射精と共に体力を奪い続ける。やがて精根尽き果てて眠りに落ちれば、また一歩、女性に近づいた自分の身体を目の当たりにさせられ、再び怯える羽目となる悪循環が何日も何日も続いたのだけれど……睡眠時間が長くなったことが功を奏し、今ではクロムの精神も怯えることなく随分と穏やかになっていた。
 ―――“彼女”も……ボクに胸を揉まれた時、こんな風に感じてくれていたのかな……
 クロムの小さな手の平には収まりきらなくなったぐらいの程よい膨らみ。それはクロムが愛した“彼女”のボリュームとは比べられるものではない。けれど、仰向けになっている身体の上で呼吸に合わせて緩やかに上下している膨らみを潤んだ瞳で見つめていると、自分の身体に“彼女”の姿を投影してしまい、監禁されて強制的に晴天監査せられている現状も忘れ、口元を綻ばせてしまう。
「あッ……さ、さきっぽって…やっぱり…ビリビリするんだァ……♪」
 左右の乳首を両手でクリクリと円を描くように弄ぶ。小ぶりの乳房にふさわしい小さな乳首は、それでも逆に指を弾き返しそうなほどに硬く尖り、触れるたびに駆け巡る刺激が股間でそそり立っている男性器をブルンと跳ね回らせる。
 ―――ボク……こんなに感じる場所をあんなにペロペロ嘗め回してたの? 嘘だよォ……こんなところを吸われたら…つねられたら……ぼ、ボク、一回で気を失っちゃうよォ……
 そんなことを思いながらも、クロムの両手は自分の乳房から離れようとしない。あの夜、“彼女”が感じていたことを自分も追体験しているのだと思うほどに、ドクンドクンと胸が激しく高鳴り、頭の芯にまでジィンと心地良い痺れが広がってくる。
 ―――ダメ……こんなの、おかしいって分かってるのに……手が、手がァ……!!!
 唇の端から涎が溢れ落ちるのをすすり上げることすら出来ない。小刻みに震える唇から白く湯気だつような吐息を漏らしながら、悪戯な指先は“彼女”の乳首にそうしたように、先端を膨らみの中へと押し込んでいく。
「あっ…あああァ……!」
 男のみでありながら乳房で快感を貪ることに後ろめたさがないわけではないけれど、ペ○スを弄ぶのとは異なるゾクゾクする恍惚感に酔いしれたクロムは、散々自分の乳輪を穿り返すと、おもむろに五指を広げて膨らみに食い込ませていた。
「くァああああああァン!!!」
 この部屋には自分とスライム以外には誰もいない。誰一人として一度も入ってきてはいない。だから押さえることもせずに快感のままに声を上げると、キツく内股を閉じ合わせ、弾力的な肉棒の先端からビュクッと透明な汁を噴き出してしまう。
「や、あ、ァ、い、いたい…のに…んあッ、んはァ、んッ、くうゥん……!」
 クロムの双乳が揉みしだかれるままに柔らかく形を変える。けれど手を離せば、その瞬間に物凄い弾力で元の形に戻ってしまう。
 “彼女”を抱いた時以来の乳房の弾むような感触が、クロムの手のひらを虜にしていく。そして乳房を揉みしだかれる初めての快感もまた、若いエルフの少年を魅了し、女性の喜びを受け入れさせていく。
 ―――オッパイで…自分のオッパイを揉みしだいてこんなに感じて……ボク、男なの? 女なの? ど…どうすれば…ああ、このままじゃいけないって…わかってるのにィ……!
 硬くなっている先端を指の腹で擦り上げるたびに、ぬめりを帯びた固い床の上でクロムの腰が淫らにくねる。
 得も言えぬ強烈な快感に身体が震えるたびに、ブルンと揺れる肉棒の先端からトロッとした淫汁が溢れ落ち、さらに乱暴に乳房をこね回しながらクロムは奥歯をかみ締める。
「んっ、はあっ、イッ…ああっ、あッ、く…ハあアッ!」
 木の床が軋むほどに、もはや“少年”とは呼べなくなったクロムの身体が跳ね上がる。
 太股をすり合わせ、膝をよじり合わせて泣くように悶える姿は、誰の目からも最骨頂に達しつつあるのが見て取れる。
 けれど、どんなに両手で激しく自分の胸を弄んでも、最後の一線を越えることが出来ない……アナルまでぐっしょり濡れるほどに先走りを滴り落としながらも、最も感じる場所への刺激をためらってしまっている。そのせいで、クロムが心の中では拒みながらも求めてしまってやまないオルガズムの頂へと上りきれず、ただただ放つことの出来ない昂ぶりを募らせてしまっていた。
「あ……も…あ…ァ………クひィん!!!」
 まるで弓を引き絞るように、括約筋を締め上げる。駆け抜けるべき管を閉じられ、行き場をなくした精液が下腹をさらに強く圧迫する。けれど乳房を押し込むほどに溜まりきった射精液は迸ることを許されなくなり、クロムは息をすることすら出来ずに全身を引きつらせていく。
 ―――い、イきたいのに…イかせて欲しいのに……胸だけで、イけないなんてェ……!
 クロムが知る“女性”は、ただ一人だけ。そのため“彼女”が特別だったのだと言う考えには思い至れない。
 けれどクロムの乳房もまた他のエルフよりも敏感であった……それゆえに満たせない肉欲はよりいっそう募ってしまい、たまらず右手を股間に伸ばすべく乳房から引き剥がそうとする。
 ―――ダメ…だ…よォ………触ったら…絶対に気が狂っちゃう……頭の中がおかしくなっちゃうゥ!!!
 どんなに性欲が満たされなくても、クロムの手の平は乳房に吸い付いて離れない。
 自分の乳房の柔らかさに酔いしれていることもあるけれど、男と女、二種類の快感を同時に感じることを本能的に恐れ、拒否していた。
 もしも今、肉棒に触れて扱きたててしまったら……それは慣れ親しんだ射精の恍惚のはずなのに、乳房の疼き以上に未知のもののように感じられてならない。
 硬さを失う代わりに膨張した性器で味わったことがあるのは、スライムに射精管を逆流され、精巣まで犯されて精液を残さず吐き出させられる行為だけ。毎日のようにそんな責め苦を繰り返され、まったく別物と化してきているペ○スが本当に自分のモノなのか、そして違ってしまったらどうすれば良いのかと言う恐怖と不安が、手を伸ばすことを躊躇わせているのだ。
 けれど、クロムには無情な運命しか用意されていない。なぜなら、
 ―――ズチュ……
  ―――ピチャ……
   ―――ヌチャ……
「あ…ッ………ァ………!?」
 不慣れな女の快感にはまり込んで行くあまり、無意識に感じないようにしていたスライムの蠢動。
 ペ○スへ手を伸ばすことへの躊躇いのせいでわずかに集中の途切れたクロムの耳が、自分の周囲を取り囲むように粘液音が鳴り響いているのを聞き取ってしまう。
 そしてクロムの目が見たものは、自分の足元で蛇のように鎌首をもたげたスライムの姿だった。
 まるで乳房への愛撫にふけるクロムを見下ろすように、そして破裂しそうなほどに充血しきっている肉棒に今にも飛び掛らんとするかのように……
「こ…こない…で……」
 硬くよじり合わせた膝を揃えて立て、一番触れて欲しくない股間を庇う。けれどスライムは、いつものように有無を言わせずに這い寄って来たりはしない。
「なんだよ……ボクを、どうしようって言うんだよォ……」
 どうせ襲い掛かられれば、抵抗なんて意味がない。それでも精一杯の意思表示で、淡い膨らみで谷間を作るように両腕で乳房を抱きしめながら強がってみせるけれど、存在しない“目”でクロムを凝視するかのようにスライムは身動きしようとしなかった。
 ―――お前なんかに……ボクは…ま、負けたり…しないんだからなァ……!
 けれど、クロムとスライムがどんなに対峙していても、あらぶる身体の火照りは静まらない。そしてクロムの胸の奥底では、自分の手では触れられないペ○スをいつものように気が狂うまで弄ばれたいと言う気持ちが沸き起こってきてしまっていた。
 ―――違うゥ……そんなこと、考えて、ないもん…絶対違うぅ……!
 クロムの喉から大きな音が鳴る。ツバを飲み、それでも頭の中は冷えることはなく、次第に熱に浮かされて何も考えられないようになっていくと、
「ぁ………」
 小さな声が唇からこぼれ、閉じていた膝から力が抜けていく。いや……むしろ脱力してイく以上に開いた膝がMの字を描くと、クロムは大きな脈動を繰り返すペ○スとトロトロの先走り液で湿り気を帯びてしまっているアナルを、蛇のように頭をもたげているスライムの前に曝け出してしまっていた。
「ど…どうせ……犯すんじゃないか………だったら、早く……早くすれば…ァ………」
 言葉の最後に熱い吐息が混じり、相手が感情を感じるような存在でないことを知りつつも思わず恥じらい、顔を背けてしまう。
「ッ………!」
 汗が浮くほど熱を帯びた太股の間を、ひんやりとした空気をまとったスライムの先端が通り過ぎていく。
 くる―――全身の中で一番熱を帯びている場所にスライムが近づいてくる気配を感じ、歯を食いしばる。手の平は思わず乳房に食い込み、小さく鼻を鳴らしてしまうと、
「ふぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
 クロムは眉根を寄せて悶えながら、背中と首とを大きく反り返らせていた。
 ―――なん、なんなんだよォ……いつもは…もっといきなり来るくせに……やめ、そんなの…はんそ…クゥゥ!!!
 触手のように延びたスライムの先端が、膨れ上がった肉棒を這い回る。
 瞬間的に飛沫を迸らせた射精口にはあえて触れず、チロチロと左右に小刻みに揺れるイヤラシい“舌”使いで柔らかい肉茎にまとわり付いている先走り液を舐め取っていく。
「くはっ、んはっ…く…んふぅ〜〜〜〜〜〜!!!」
 まだクロムの膝は拘束されていない。閉じようと思えば閉じられるはずなのに……予想外のスライムのくすぐったく、そして優しい舐め方にたまらなさそうに鼻を鳴らし、一ヶ月以上もかけて拡張された射精口から白いものの混じった淫汁をとめどなく溢れさせ続ける。
「んはあ、やッ、お、お尻までェ………い…いれないの? 今日は…お尻の穴に……んヒィ!!!」
 大量の先走り液に濡れたアナルにスライムが触れる。うっすらとした綺麗なピンク色をした窄まりのシワの一本一本に至るまで撫で上げてくすぐっていると、触手スライムの幹の途中からさらに二本、細くて長い“舌”がペ○スへと伸ばされてくる。
「ひゃはああああああッ! あッ、あっああッ、そ、そこ弱いのォ、もっ、もう、ボク、あ…んアアアアアアアアアッ!!!」
 包皮に包まれていて刺激になれていないカリ首。そこへ左右から伸びたスライム触手は括れをめくり上げるように舐め上げると、抱きかかえられた乳房の先端にまでビリビリと響いてくるほどの快感が沸き起こる。
 ―――こんな……いつもみたいに犯したらいいじゃないかァ! 違う…何か、今までと全然違って、う、動きが…んィイイイッ! 動くな、動かないで、お願いだからぁぁぁ!!!
 スライムの先端が蠢くたびにクロムは容易く絶頂を迎えてしまい、ガクガクと腰を上下に揺すりたてる。
 けれど長時間射精できなかったせいだろうか、絶頂の波がクロムの細身の身体に駆け巡っているのに肝心の射精にまでは至っていない。精液が駆け抜ける管が途中で途切れているかのように、どんなに奥歯を噛み締めて力んでも狂おしいほどに圧迫感が増すばかりで、ビクンビクンと肉茎を震わせながらヌルヌルの床の上で泣き悶える。明らかに性転換が目的ではなく快楽を与えるために三本の舌先をうねらせるスライムの責め苦に、肛門から肉棒へとつながる括約筋を締め上げ、行き場のない射精欲求に滾った肉棒を何度となくしゃくりあげさせ、呼吸することすら忘れたクロムの幼さの残る顔立ちを歪めさせる。
 ―――しゃせー、しゃせーさせてぇぇぇ!!! なんでも、するからァ、ひあぁああああああっ! なぞんないで、おチ○チンをこしゅらにゃいレぇぇぇぇぇ!!!
 瞳は焦点を失い、大きく開ききった唇から涎を垂れ流し、終わりに辿り着けない地獄のような官能の中で色の付いていない汁だけがペ○スの先端から勢いよく噴出する。そんな半狂乱の悶絶の中にありながら、クロムの両手は指先を食い込ませるようにまだまだ小ぶりな乳房を荒々しく揉みしだき、肢体をガクガクと打ち震わせて天井へと肉棒を突き上げていた。
「くっ、ふうゥ、ハ…レツしゅるゥ……ボクのおヒ○チン……ハレツひちゃうゥゥゥ……!!!」
 “彼女”に愛された身体を汚される屈辱に、今にも砕けそうなほどに奥歯を噛み締める。口の中で鳴る音にわずかに理性を取り戻し、スライムの前に曝け出してしまった股間へと目を向けると、
 ―――え……な、なにあれ!? なに…するつもりなんだよォ!?
 まるで精液の詰まった風船にでもなっているかのように思えて仕方のない肉棒を這い回りながら、スライムの“舌”が三本に別れている場所が形を変えていた。三本の“舌”がねじれて太い一本となり、外と内とに螺旋の見える筒状になり、そして“舌”が肉棒の根元に絡みつかせて“筒”の入り口を真っ赤に腫れあがった亀頭へと押し当ててくる。
「ひっ……!?」
 際限なく昂ぶり続けただけの熱を帯びたペ○スにスライムの“筒”が触れる。背筋を駆け上るスライムの冷たさに思わず息を飲んだクロムは、この粘液上の魔法生物が何をしようとしているのかを察する……が、その時にはもう、クロムの屹立は吸い込まれるように“筒”に飲み込まれてしまっていた。
「やめェ、やめェ、ひ、ひゃウぅぅぅぅぅぅんんんん!!!」
 “筒”に深く飲み込まれた肉棒は、内側の無数のヒダや突起に擦り上げられ、狂おしいほどの快感を沸き起こさせられる。
 スライムはクロムを“犯して”いた。
 アナルの隅々にまで粘液を行き渡らせるのではない。尿道口に細い触手を捻じ込むのでもない。脈打つ肉茎に絡みついて精液を搾りたてるのでもない。半透明の粘液筒の内側で壁が蠢動するたびに、無数のヒダがペ○スを包み込むように絡みつく。ジュビッジュボッと卑猥な音を響かせて“筒”が上下運動を繰り返すと、もはや少年とも少女とも見分けのつかなくなったクロムは鼻にかかった甘ったるい声でむせび泣き、生臭いにおいの充満した部屋の空気をビリビリと震わせる。
「あっ! あぁぅうううっ! やめっ、これだけは、許してェ! いや、こんなの、ラメェエエエエエエエエッ!!!」
 スライムの“筒”は明らかの女陰を模していた。温度差こそあるけれど、損な“筒”の中にペ○スを飲み込まれ、揉み嬲られれば、クロムの脳裏には否応なしにただ一人だけ知る女性との経験が浮かび上がってくる。
「お願いだから、あの人を汚さないでぇぇぇええええええええええッ!!!」
 いつしか、クロムを取り囲んでいたスライムは少年の腕と足を床に押さえつける。そして抵抗を出来なくしてから伸ばした触手で乳房を捏ねると、床の上にお尻を滑らせるようにクロムが腰を揺すりたてる。
「んいっ、んいッ、いハァああああああァん!!!」
 乳房は目覚めたばかりの頃よりも一回り以上大きく見えるほどに張り詰めていて、その先端をスライムになぞられ、弾かれるたびにクロムの腰が跳ね上がり、肛門がキュッと収縮する。そんなクロムの肉棒を“筒”は小刻みな抽送で扱きたて、射精できない肉棒を続けざまに狂おしいまでの連続アクメへと押し込んでいく。
「あひぃ! あ、ぬい、てぇ! ダメ、ぜんぜん、気持ちよく、なんか、ないぃぃぃ!!!」
 抽送の速度が増し、クロムの白い肌の赤みがさらに増していく。
 クロムの心を辛うじて支えているものは“彼女”との思い出だけれど、手淫では味わえない粒々とした“筒”にイかされるたびに意識がはじけ、徐々に反応が鈍くなっていく。際限と行き場のない絶頂が繰り返されて頭の中が焼き切れ、痛みを感じるぐらいに溜まりきった性欲をどうすることも出来ないまま身を守ろうと身体が失神することを望み始める………けれど、
「――――――――ッ!!?」
 出口が開く。
 ずっと緊縮して精液を通さなかった肉の管が、内側から込み上げる精液の圧力に屈したかのようにこじ開けられていく。
「あッ…ああァ―――――――――!!!」
 叫びは短く、鋭く、そして悲しく。
 肉棒はクロムにも制御できなくなっていた。透明な筒の中でむき出しになっている亀頭が一際大きく膨張すると、次の瞬間、
「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ッッッ!!!」
 キツく締め上げる“筒”の奥を射精口に擦り付けられながら、クロムはこの数日にはありえなかったほどに濃厚な白濁液をぶちまけてしまっていた。
「んイッ! ハひっ! あ……んんゥ! とま、ん、ないィ、ごめ…ん、ボク、あ…ハウァ! 出る、出る、出る出る出る出る出るゥゥゥ……!!!!!」
 まるで身体の隅々から搾り出されたかのように、床の上で暴れるように弾むクロムの股間から“筒”……いや“膣”の奥目掛けて、いつ果てるともなく白濁液が放出され続ける。
 そして吐き出された精液は、全て“膣”の奥の“子宮”に受け止められていた。透明な膨らみが真っ白い体液によって満たされる様は卑猥ではあるもののどこか美しくさえあり、“彼女”の膣内にもこうやって精液を注ぎこんだのかと言う妄想がクロムの脳裏をよぎる。
「クゥ……グスッ……ゥ…ウ………ふぇぇぇぇん………」
 やがて長い長い射精を終えると、スライムが形作った“膣”は入り口を締め上げながらチュポンとクロムの肉棒を吐き出した。今まで出来るだけ精液を避ける動きを見せていたスライムには珍しく、受け止めたクロムの白濁液を一滴もこぼすことなくタプンタプンと揺らしているのだけれど、そんなことには目もくれず、クロムは両腕で目元を覆いながら、泣き出していた。
 ―――穢された。
 今までありとあらゆる場所をスライムに弄ばれてきたけれど、女性器を燃した“膣”の中に射精させられたことは、クロムにとって致命的なまでにショックな出来事だった。
 相手は女性ではないけれど、“彼女”を思い浮かべてしまった時点でクロムの心は砕けた。例え女になろうとも愛するのはただ一人と決めていたのに、スライムが燃した女陰にイかされ、射精までさせられたことは、純真すぎるクロムは割り切れと言っても割り切れない“裏切り”、そして“不貞”だった。
 ―――ボク……“彼女”に顔向けできない……どうすればいいか……わかんない…よぉ………
 いっそ死んでしまおうかとも思う。
 どれだけボロボロにされても“彼女”を愛する気持ちだけは守り抜こうと思っていたのに、その気持ちすら踏みにじられた。あんなスライムのまがい物の“膣”に犯される前に、気付いたその瞬間に屈辱から逃れる道を選ばれなかったのかと歯軋りしながら泣き続ける。
 だけど………できない。
 身体も心も穢されたのに、“彼女”のいない生よりも自分の想いを貫き守ることの方を選べるはずなのに、クロムは歯と歯の間に舌を差し挟んだまま動けずにいた。
 ―――どうして……止めるんだよォ………
 両腕で覆ったまぶたの裏で、“彼女”がクロムの自決を喜んでくれていなかった。悲しそうな顔を浮かべていた。『生きて欲しい』と、そう訴えかけていた。
 ―――やだよ……ボク、寂しいよ……ずっと一人ぼっちで……だから…だからボクは……そばにイきたいのに………!!!
 だけど、誰よりも“彼女”のことを愛しているクロムは確信している。まぶたの裏にいる“彼女”と同じように、生きていたら同じことを言うと。
 何度となく頭の中で相談してきた“彼女”は、争いあう“人間”と言う種族だからこそ争いの悲惨さを知り、争いを嫌っていた。だからクロムにも危ないことをして欲しくないと、人間の世界に来るのなら他のエルフたちと解りあった上で来て欲しいと、そう言ってくるのだ。―――例え女の身体にされたとしても。
 ―――でも、“彼女”はあいつらに殺されたんだ。あいつらの酷さを、解っちゃいないんだ……わかりあうなんて、絶対に無理なんだ……
 エルフと言う長命種族に生まれたが故にプライドが高く、だからこそ里を捨てて人間の世界へ行こうとするクロムは彼らにとって蔑(さげす)みの対象でしかない。
 そしてもしも里のエルフたちがクロムを追い詰めるとしたら、まず間違いなく心を折りにかかる。腕力に訴えることを野蛮として侮蔑するエルフは、“彼女”を慕うクロムの心を穢し、踏みにじり、その上で屈服させることを選ぶ。例えばそう―――
 ―――そう……今日のあの、スライムみたいなことを……!
 死に別れても褪(あ)せることのないクロムの“彼女”への気持ちを知っていれば、意地の悪い里のエルフたちなら必ずそこを突いてくる。
 これまではまだ子供の戯れの範疇として見逃されてきたけれど、もしスライムの代わりにクロムに制裁を加えることを許されれば、犯して弄ぶだけではすまされない。そう……今日のスライムのように、精神的に屈服させる手段を選んでくるはずだ。
 ―――なんで気付かなかったんだ……!
 スライムは長老が魔法で呼び出した魔法生物。召喚が出来る魔法の達人が制御の効かないものを呼び出すはずもない。
 ならば魔法で操る術があるはず。なら今までになかった行動を取った今日のスライムは……そう考えが及んだ直後、決して開くことも届くこともないとクロムに絶望を与えていた扉が開き、目映い光が室内に飛び込んでくる。
「くゥ………な、なに!?」
 それは特に強い光だったわけではない。しかし一ヶ月以上もの間、光の差し込まない薄暗い室内で過ごしていたクロムには直視できないほどの眩しさであり、とっさに顔に前に手をかざす。
「ハァ〜イ、さっきのどうだった? 愉しんでもらえたかしら、クロム?」
「その声、セレン!?」
「あったりぃ♪ おねぇさんたちが可愛がりにきてあげたわよ、スライムなんかに弄ばせとくなんてもったいないもんね。さ、エルフはエルフ同士で愉しみましょう……♪」


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