第九章「湯煙」07


 黒い本は言った。―――あたしは魔王だと。
 黒い魔道師は言った。―――あたしは「エクスチェンジャー」だと。
 最初の言葉は抽象的ながらイメージができる。けれど後の言葉はそのイメージさえ掴めない。
 あたしの体が女に変わったのが単なる呪いで無いことは、うすうすどころか確信レベルで気付いている。フジエーダで様々な解呪を神官長に試してもらっても、元々あたしの体が女だったかのように反応がなかったのだ。嫌でも気付かされる。
 「呪いの解ける温泉」を捜しに来たのも、無駄な足掻きだと心のどこかで思っていた。―――だから知りたいのだ。
 あたしがなんになってしまったのかを。
 どうすれば男に戻れるかと言う、明確な道しるべを。
 ―――だけど、
「そんなの、私が知るはずも無いでしょう」
 予想を外れ、あまりにも分かりきった答えが簡単に帰ってきただけだった。
「誤解しているようだけれど、私が知っているのは報告を受けた事柄についてだけ。神ならざるこの身では、初めてまともに言葉を交わす相手の本質までは知りえることは不可能よ」
「え〜と……そう言うことではなくてですね、話せば長くなるんですが……」
 あたしの体の事について話すのは、かなりややこしい。―――そう言えばこうして一緒の温泉に入れているのも、あたしが女の姿をしているからだ。もし男だとばれたら、叩き出されても文句が言えないかもしれない。
「どうしたの? あなたの事を話してくれるんじゃなかったのかしら?」
「それは……その……あ、あまり面白くないし、別に話さなくてもいいかな〜って。はは、あはははは」
 こうして温泉に一緒に入って裸で向かい合っていなければ話せたかもしれない。けれどついに話し出すことができず、あたしは誤魔化すように笑って頭を掻くしかなかった。
「なにも気兼ねする必要は無いわよ。あなたが元々男性である事は既に知っているんだから」
「ははは………はぁ?」
「すぐに気付くかとも思ったんだけど……美由紀がこの場所にいる事で気付かない? あの時、アイハラン村に美由紀がいたのはなぜかって」
 言われて考えてみれば、すぐに答えに思い至る。
 ―――美由紀さん、この人を護衛してアイハラン村に来ていたんだ。
「じゃあ………も、もしかしてあたしが男だって承知の上で混浴ですか!?」
 手拭い片手にお湯を跳ね上げて立ち上がるあたしを見て、ギルドマスターを自称する女性は唇に指を当て、一瞬童女が笑っているのかと錯覚してしまうような笑みをこぼす。
「ふふっ、あなたがなぜ恥ずかしがるの?」
 確かにこの人の体は他の人に見せてなんら恥ずかしがるところの無い、むしろ誇らしいぐらいにグラマラスなボディーをしている。初めて目にした時に「あのおっぱいを吸ってみたいかも…」とか思っちゃうぐらいの膨らみだし、もしあたしが男のままなら近寄る事すら遠慮するほどの美貌だ。水面から浮き上がっている上乳をこうして上からの目線で見下ろしてしまうと、そのボリュームに何度も唾を飲み込んでしまい、手にした小さな杯を唇に当てる仕草に漂う色気とフルフルと揺れる胸に、興奮しすぎて頭の先から何かを噴火してしまいそうなほどだ。
 ―――マズい。ヒジョーにマズい。このままだとあたし、禁断の領域に踏み込んでしまうかもしれません。
「あ、あ、あたしはあの、……だます気とか覗く気とか全然ありませんでしたからぁぁぁ!!!」
 もう我慢の限界だった。踵を返したあたしは自分のスケベさに打ちのめされたような敗北感を感じながら、この場からの逃走を試みた。
「ダメよ、温泉で走ったりしたら。気をつけないと―――」
 不意に、踏み出した足の下の地面の感覚がなくなってしまう。
「穴にはまって溺れるわよ?」
 しまった、またこの落ちか!――と思った事を叫ぶ時間も無い三歩目で、あたしは再び水底の穴へと落っこちてしまった。
「ゲホッ、ゴホッ、ゲホッ!」
「落ち着きなさい。なにも責めているわけではないんだから」
「ううぅ……これはあたしの良心の呵責なので……とほほ……」
「儀式の際の勇者姿はそれなりに凛々しく見えたけれど、その姿だと形無しね」
 そう言われクスクス笑われても言葉を返せない。ギルドマスターと綾乃ちゃん、二人の前で醜態を見せたことに恥ずかしさを覚えながら穴から体を引き上げる。……が、ふと違和感を感じてしまう。
 綾乃ちゃんの心配する声が聞こえてこないのだ。
 頭を振って濡れた髪から水分を飛ばすと、顔を美女の隣にいる綾乃ちゃんへと向ける。水面から立ち上る湯気はこの距離ではそれほど視界を妨げる事もなく、バスタオルで胸から下を隠してお湯に使っている綾乃ちゃんの姿を捉える事は出来たものの、顔はうつむき気味で、こころなしか細い肩が小刻みに震えているようにも見える。
 あの人の横だから恥ずかしいんだろうか……と自分の心象を重ねてみる。けれど、時折ビクッと体を跳ね上げ、息を吐くことすら拒むようにモジモジとしている様子は、それだけじゃないようにも思えてしまう。
 ―――なんと言うか…変な気分を出しているようにも見えるけど……まさか、ね。
 そういえば今日は、綾乃ちゃんの「アレ」の生えてる日だ。温泉と言う全裸、もしくはそれに近い状態であんな美女の傍にいるのは、羞恥心の強い綾乃ちゃんにはよほど苦しいのだろう。
「―――すみません。あの、お話をしたいのは山々なんですけど、あたしの連れが調子悪そうなのであたしはこれで」
「あ、わ…私は大丈夫です、先輩はどうぞお話なさって……んゥ…!」
「全然大丈夫じゃないじゃない。ほら、さっきの建物に戻って休まないと」
「いえ、私の事は本当に大丈夫ですから。あ、あの、少しお湯から出て涼んでれば……すぐに……」
 む……ここまで強情な綾乃ちゃんも珍しい。手を引っ張って連れて行こうかとも思ったけど、なんか近寄りがたい雰囲気が……
 あたしの心配を頑なに拒む態度を見せる綾乃ちゃんだけれど、涼むと言いながらその場を動かない。酒瓶も水面に浮く盆の上へ戻し、両腕もお湯につけてジッと座り込んでしまっている。
 ―――ここまでされたら無理強いも出来なさそうだ。のぼせた様子を見せてからでも遅くは無い……かな?
 それにあたしもまだまだギルドマスターに聞いて見たいこともある。―――そう思っていると、
「私がなぜここにいると思う?」
 何故かいきなり問題を出されてしまう。
「えっと……実はここに美人の湯があったりとか……」
「それだけじゃアイハラン村からここまで急いでくる必要は無いわね。――肌がスベスベになる温泉もあるにはあるけど。入ってみる?」
「男のあたしが美人になっても意味無いですし……でも、確かにアイハラン村からだと―――四ヶ月だと、かなり厳しくありませんか?」
「そうね。でもこの時期……いえ、一ヶ月近く私たちはここに滞在しているわ。ある事件を見届ける為に」
 この一ヶ月で周辺に起きた事件……その中でもっとも大きく、あたしの印象に残っているのはフジエーダがモンスター率いる魔道師・佐野に襲撃された事だろう。
「まさか……」
 偶然かと、最初に思ってすぐに否定した。
 三ヶ月でアイハラン村からここに来るのに、どれだけ急がなければいけないのか。幾度となく村へ帰る事を考えていたあたしには、よく分かる。―――それは温泉に入りに来ると言う理由だけで行うような急ぎ旅ではない。
 じゃあ何でそうまでしえここに来なければならなかったのか……もし事前にフジエーダ襲撃の事を知っていたならば……?
「察しがいいわね。さすがは街を救った立役者……と言うところかしら」
 まるであたしの心を読んだかのようなタイミングでギルドマスターが言葉を紡ぐ。
「………知ってたんですね」
「ええ。だけど到着していた時には、首謀者の魔道師は既に行動を起こしていた。私たちの予想よりも早く、ね」
 ギルドマスターを名乗る美女はそう言うと、お湯の中から左腕を出し、ゆっくりとした動きで水面に並行に空気を撫でる。弧を描いた指先には輝かんばかりの魔力が込められていて、その魔力が湯気が満ちた空中へ溶け込むと美女の回り、綾乃ちゃんを含めた一帯に「場」のような空間が生み出されたのを感じ取る。
「ここに来たのは見届けるため……変えようの無い運命の始まりを、そして行く末を見届ける為にこの地へ来たのよ」
 言葉を言い終えるか言い終えないかと言うところで、ギルドマスターが背を預ける岩の傍から何かが舞い上がる。
 それは占いにも使われる長方形のカード……数え切れないほどの量のカードが、人の手に触れることもなく、幾重もの螺旋を描いてギルドマスターの周囲を取り巻いた。
「私の占いは良く当たるのよ。導き出した結果は確定した運命……そして」
 左手の指が、宙に浮かぶ一枚のカードを取る。
「これがあの街で起こる結末……そう、こうなる“はずだった”運命よ」
 美女の指が触れたカードは、滑る様にあたしの胸元へと飛んでくる。それを水面に落ちる前に受け取り、裏から表へと裏返す。
「………悪魔?」
 演技でもない……そこに描かれていた絵柄は翼を持ち、頭部に角をいただく見るからに禍々しい悪魔の姿だった。そして手には杖。背景には崩壊した町並みが―――
「これ……フジエーダの運命って……悪魔に街が壊される、ってことですか?」
「いいえ。そのカードで重要なのは、瓦礫の街に杖を持つ悪魔がいる、と言う事よ」
 そして新たに四枚のカードがあたしの元へと移動し、今度はあたしが受け止めるまでもなく、宙に浮かんで一列に並び、それぞれの絵柄を見せる。
 ―――『燃える山』
  ―――『堤の決壊』
   ―――『操り人形』
    ―――『折れた剣』
「左から順に、熱帯である南部域を示し、その中でも水の女神に祝福されたフジエーダの街の襲撃を意味し、クラウド王国王女、静香=オードリー=クラウディアを拉致、もしくは服従させることで権力を手にする。敗北。そして―――その五枚目に繋がるのよ」
「じゃあこれって……負けた後に悪魔が出てくるってことですよね」
 ならそれが剛拳戦爵と名乗った悪魔、フィストのことだろうか。――と、今はこの場にいないメイドの格好をしたメガネっ子悪魔(美少年)の事を思い浮かべるけれど、ギルドマスターは首を横に振り、
「悪魔は近い答えではあるけれど正しくは無いわ。悪魔はただの暗示。そのカードに描かれた悪魔は手に杖を持っている。杖は権力の象徴。王錫を手に入れた悪魔は言い換えれば―――魔王」
 その言葉に、あたしの心臓が跳ね上がる。
「魔王……ですか? な、なんかいきなりおとぎ話っぽいですよね。そんなのいるわけ無いのに」
 内心の動揺を抑えつつ、あらぬ方向へ視線を向ける。
 ……もしかして、あたしが魔王をやらされてるって気付かれてる?
 それは無いと、心の中で否定する。知っているのは神官長やジャスミンさんと言った極々わずかな人だけだ。いくら調べたとか言っても、神官長たちが他の人にペラペラ喋るとは考えにくい。
 けれど、
「千年以上前とは言え、魔王は確かに実在していたわ」
 ギルドマスターにそう言われ、答えに詰まってしまう。
「このカードが示すものは、何も魔族の王だけとは限らないわ。クラウド大陸の歴史において、“魔王”と称された権力者が何人いると思う?」
 それもそうだ、と納得する。あの佐野がフジエーダで勝利していれば、きっとそう言う残虐非道な王様になっていたことだろう。
「でもそれって占いなんですよね? ほら、当たるも八卦当たらぬも八卦って言うし」
「ええ。―――だけど、外れたのは今回が初めてなの。今まで何千何万と占ってきて、私の導き出した運命が「外れた」事は今まで一度もなかったわ」
「………一度も?」
 もし仮に、占い師初めてすぐだとか言う落ちなら、はずした事が無いというのも笑い場足で済ませられるけれど、何千何万回? それは神様の御告げ並の的中率じゃないんでしょうか……
 その事実が嘘か真かの判別はできないものの、そう聞かされてから改めて美女の顔を見ると、どことなくギルドマスターとしての威厳が放たれているように思えてくるから不思議だ。ギルドマスターは驚いて目を見開いているあたしへ笑みを向け、
「フジエーダの運命は変えられた……魔王の生誕と言う絶対運命から解き放たれ、そして今―――」
 カードの絵柄があたしの目の前で変わっていく。
 『燃える山』はそのままに、
 『堤の決壊』は堤を乗り越える高波へと、
 『操り人形』は手を取り踊る高貴な男女へ、
 『折れた剣』は剣の上に盾が重なるように描き直される。
 そして、あたしがもっとも興味を引かれた『杖持つ悪魔』は―――
「悪魔の絵だけが変わらない……」
「いいえ、それは逆位置……正しくはこうよ」
 言われてみれば、カードの正逆を示す印が入れ替わっている。それを確認すると、カードはひとりでに上下のを入れ替え、―――
「………え?」
 絵柄が消えた。
 南部域を示す一枚目を除いて、フジエーダでの出来事を示していた三枚のカードは明らかに描かれていた内容が変化していた。けれど五枚目だけは、悪魔の姿が消えてただの白いカードになると言う、どう解釈していいか分からない変化だった。
「どういう…意味?」
「逆位置を正位置に戻した事で、魔王になろうとした悪魔は地に落ちた。その後は……私には分からないわ。むしろ、あの街にいたあなたの方がよく知っているんではなくて?」
 ―――この人、どこまであたしの事を調べ上げているんだろう……
 あたしが佐野と最後の戦いを繰り広げた事まで知っているのだろうか? それに……カードの絵柄の変化は、まるであたしのあの時の状況を示しているように思えてならない。
 古の時代からの下水道を通っている際に水流に巻き込まれ、
 静香さんや綾乃ちゃんと協力して衛兵のみんなを助けた。
 そして水の神殿の前で一度は佐野に敗れたあたしを衛兵のみんなが助けてくれた。守るための盾は衛兵の象徴としてはふさわしいだろう。
 最後の五枚目……悪魔が地に落ちた。それは佐野のことに他ならないだろう。魔王になる為にフジエーダを襲った佐野は、望まずして魔王にされたあたしに敗れ去った。―――それなら五枚目には、それにふさわしい絵柄が描かれてもおかしくは無いはずだ。
 佐野を地に落としたのはあたしだ。ならばこの五枚目は………
「もしかして…あたしのこと……?」
「そうかもしれないわね」
 宙に浮いていた五枚目のカードを濡れた手で掴んだあたしに、答えを導き出せた生徒を褒めるようにギルドマスターはつぶやいた。
「……知ってるんですね、このカードが意味する事を」
「知っているわ。描き出せない運命は運命ではない。そんな存在はこの世に唯一つだけ―――」
 次の言葉を放つ為に、ギルドマスターが言葉を止める。その一瞬、あたしの胸は大きく鼓動し、聞き逃すまいと身を乗り出してしまう。
「―――エクスチェンジャー。運命から切り離された者」
「あ……」
 ドクン、と動いた心臓が急に止まったかのような錯覚。
 答えが見つかった……いや、まだそれは答えではないのかもしれない。それでも、それでも―――
「おそらく、ね。エクスチェンジャーは魔王と言う存在よりも神話に近い……いえ、神話にすら描かれないほど歴史にうずもれた存在なのだから」
「か、かまいません! 教えてください、その、エクスチェンジャーってのの事を!」
 腰を浮かし、お湯を掻き分けてギルドマスターへ詰め寄る。―――そして何故か、ギルドマスターの右腕が細かく動いているのに気付いてしまう。
「教えてあげてもいいわよ。ただし……それ相応の代価はいただくわよ。この子から」
 なぜだろう……やっと見つかった自分自身の秘密を少しでも知ることができる機会。それなのに、あたしの目は目の前で微笑んでいるギルドマスターではなく、彼女の右腕を追いかけるように温泉の中へ視線を落とし……その先にあった綾乃ちゃんの下半身で行われている行為を目にしてしまう。
 一ヶ月に一度生えると聞かされていた綾乃ちゃんのおチ○チン。今日一日、ずっと興奮しっぱなしでおっきくなりっぱなしだって言ってたおチ○チン。………そんな状態であたしやギルドマスターみたいな大人の色気ムンムンの美女と温泉に入ったらもっと苦しくなるとは思っていたけれど……
 そんな綾乃ちゃんのおチ○チンが今、お湯の中でギルドマスターの手によって弄ばれていた。
「セ…ンパ…ィ………やァ……見ちゃ…イャ……で…すゥ………」
 あたしと目をあわそうとしない綾乃ちゃんは胸に巻いたバスタオルを両腕でギュッと握り締め、快感と恥ずかしさに溺れるように、口を開くたびに嗚咽と小さな喘ぎとが漏れ出て言葉を小さく刻んでいく。
 ―――いつからこんな状況に!?
 さっき様子が変だと思った時には既にギルドマスターの手は綾乃ちゃんの股間に伸びていたのだろう。なら、綾乃ちゃんが気を利かせてお酒を注ぎに近づいた、その後すぐに……
「なにしてるんですか!? 今すぐ綾乃ちゃんから手を離してください!!!」
 気付いてあげられなかった自分への怒りがこもったのか、止めようとする声がつい荒くなってしまう。けれどギルドマスターは、
「いいのかしら、そんな事を言って……エクスチェンジャーの事、知りたいんでしょう?」
「ひゃうん!!!」
 平然とした顔を浮かべたまま湯の中で手を動かし、綾乃ちゃんに悲鳴を上げさせた。
「ふふふ……この子、男性と女性器が両方がついているなんて面白い体をしているわね。感度もいいし、どんな鳴き声を上げながらイくのか、スゴく興味があるわ」
「なっ………!」
「今、私の手の中でこの子のおチ○チンがどうなっているか教えてあげましょうか? 先っぽからヌルヌルと汁を溢れさせてるのよ、まるでお風呂の中でお漏らしする子供みたいに。今にもイっちゃいそうなくせに、あなたが見てると恥ずかしいからって射精するのをずっと我慢してるのよ」
 それは知ってる。綾乃ちゃんが初めて射精したのは一ヶ月前で、その時から男性器の方でイく事に抵抗しているように感じられた。それは無理も無い。本当なら綾乃ちゃんに男性器なんてついていないのだから。
「ゆる…し…て……先輩…見ないで……お願いだから……あ…あ…ッ………!」
「お友達に見られるのがそんなに恥ずかしい? 気付かれてからおチ○チン、ずっとビクビクしっぱなしじゃない。正直に「イきたい」って言えたら、あなたのお姉様の前でイかせてあげるわよ……ふふふ、このおチ○チンからザーメンがいっぱい噴き出すところ、見てもらいたいと思わない?」
「……………」
「立ちなさい。―――そして邪魔なタオルを取り払って、あなたの生まれたままの姿を大好きな人に見てもらいなさい」
「っ…ぅ………」
 綾乃ちゃんはぽろぽろと涙を流しながらあたしの顔をみつめたかとおもうと、クッと唇を噛み締め、その場で立ち上がったかと思うと言われたとおり、自分の手で濡れて体に張り付いたタオルを胸元からほどく。
 ―――幼さを残しながらも柔らかく、美しい曲線を描く体だった。その肌はあたしよりもキメが細かくて美しく、抱きしめれば壊れてしまいそうな儚ささえ感じるほどに華奢な体はやはり女の子らしい丸みを帯びていて……けれど股間の一点だけ、大きさはそれほどでも無いのにイヤらしい雰囲気を漂わせたペ○スが精一杯そそり立っている。
「まぁ、可愛らしいおチ○チン……ふぅん、両性具有の子の股間は初めて見せてもらったけれど、こんな封になってるのね。コリとリスもちゃんと大きく……」
 立ち上がるときにペ○スの方は解放されている。けれど皮に付け根を包まれた亀頭を不規則に上下へ震わせている男根の付け根へ指を滑り込ませ、綾乃ちゃんにとっては一番の弱点でもある、男性器と女性器の間に存在しているクリトリスを、ギルドマスターの美女はキュッと摘みあげてしまう。
「ぴぁあッ!!!」
 首を仰け反らせ、そのまま背後の大岩にもたれかかる綾乃ちゃん。その股間を今度は両手で扱き、いじり、敏感な場所を何度となく指先でなぞり上げるギルドマスター。先端からはお湯と見間違うような透明な飛沫が少しながら放物線を描くように迸り、軽く脚を開いた綾乃ちゃんの下半身が腰を突き出すようにガクガクと震え、ギルドマスターの思うがままに絶頂をコントロールされて泣き悶えさせられてしまっている。
「何するんですか、やめてって言ってるじゃないですか! 綾乃ちゃんを放してあげてください!」
 もうあたしも我慢の限界だ。これ以上、綾乃ちゃんを弄ばれるのを見ているわけにはいかない。―――そして立ち上がろうとしたけれど、思いがけない一言に動きを止めてしまう。
「ダメです先輩、ダメ……邪魔しちゃいけません!」
 それは、綾乃ちゃんの言葉だった。
「私は…構いませんから……どんなに恥ずかしい事だって…平気です………だって、やっと先輩のお役に立てるんですから……」
 快感に泣き震える顔に必死になって浮かべた笑顔をあたしへ向ける。
「先輩……ずっと捜してたじゃありませんか……初めての手がかりじゃないですか……だからいいんです……わ、私の事は気になさらず……んゥ…ッ…んぅううううッ!!!」
 歯を食いしばったまま綾乃ちゃんの頭が後ろへと跳ねる。美女に弄ばれている股間では、綾乃ちゃんが必死になって言葉を搾り出している間にペ○スの皮を向いて赤く腫れ上がったカリ首を露出させてしまっていた。
「お友達思いなのね……じゃあ私も、楽しませてもらおうかしら?」
「………ダメです。そこでやめてもらいます」
 あたしがお湯から立ち上がると、綾乃ちゃんのペ○スを扱いていた美女の手が止まり、二人の視線があたしへと向けられる。
「あたしは……あたしは綾乃ちゃんを情報の対価になんてしたくない。ううん、絶対にしない。してたまるもんですか!」
「彼女自身は了承しているのよ? しかもあなたの為に。―――その気持ちを無駄にしようと言うのかしら、あなたは」
「ええそうよ、無駄にしちゃうのよ! ああもう、自分でなんでこんな事言ってるのか分からないぐらい頭に来てる。わかってんのよ、このまま綾乃ちゃんのされることに目を瞑ってればいいんだって、そうしたら何もかもがうまく行くんだって。―――だけどね!」
 綾乃ちゃんの涙を見た以上、あたしの気持ちは止められない。
「あたしはね、あたしの大事な人を差し出してまで男に戻ろうなんて考えて無いわよ! そりゃ旅するのは苦しいし辛いし、綾乃ちゃんをこんなあたしの事に巻き込んでいっつもすまないって思ってるけど、綾乃ちゃんは物でもお金でも無い、あたしの仲間なんだから! だからもし、綾乃ちゃんが自分を犠牲にするって言うなら、あたしはそんなこと絶対にさせやしない。泣いて頼まれたって絶対にそんなことやめさせるんだから!」
「せ……せんぱい………」
「エクスチェンジャーだかジンジャーエールだか知らないけど、自分でいつか調べるし、他の知ってる人を見つけ出してみせる。だからいい、あなたの情報なんてもう要らない!」
 ああ言った。言ってやった。
 自分でなに言ったのかも覚えて無いぐらい、気持ちのままに怒鳴りつけてしまったけれど、後悔はまったくしていない。
 後はここを早々に立ち去るだけ……イく直前でやめさせてしまった綾乃ちゃんにはかわいそうだけれど、冷静に考えれば、この美女を怒らせれば三人のアサシンに股ころされそうになるんじゃないかと――――――うぁあああああっ! しまった、あたしってば早まりましたかぁぁぁ!?
 頭を抱えたいけれど、大見得を切った以上は堂々としていなければならない。
 足を踏み出し、お湯を掻き分け、綾乃ちゃんへと一歩近づく。すると綾乃ちゃんは涙を流しながら顔に微笑みを、さっきとは違う本当に嬉しそうな微笑みを浮かべてあたしの胸へと飛び込んできた。
「先輩……私………」
「ゴメンね、綾乃ちゃん。―――ま、男に戻る方法は後でゆっくり考えよ。二人で旅でもしながらね」
「………うっ」
 と、いきなり綾乃ちゃんの表情が崩れたかと思うと、今まで以上に涙が零れ落ち始める。
「うっ……うえ………わたし…グスッ……先輩…わた、わたし……うぅ…うぇぇぇ……」
「え? へ? ほえ? ほええええっ!?」
 やっぱり愛撫をやめさせたのがマズかったのか、それとも綾乃ちゃんの献身を無駄にしたのが悲しませたのか、あたしの胸へ顔をうずめたかと思うと声を上げて泣き出した。
「あ、綾乃ちゃん、あたしが悪かった、だから泣きやもう、ほらスマイルスマイル〜♪……って、うわ、顔上げてくれなきゃスマイル見てくれないしィ!」
「ゴメン、なさい…私、先輩の、お役にって、思っ、おも…って…う…ごめ…ぅあ…うわぁぁああああああああああっ!!!」
 なんかもう、どうしようもない。綾乃ちゃんに泣かれるぐらいなら、あの極悪魔道師・佐野と十回ぐらい戦う方がよっぽどマシだとか思いながら、二人全裸で抱き合い……しかも下腹部にいきり立ってるものを押し付けられいるから、抱きしめていいのか離れていいのか、どう言葉をかけてなだめていいかの言葉さえもが混乱した頭ではどうしようもないぐらいに言葉が浮かばず……うわ、混乱してる!
「もう……見てられないわね。ちゃんと抱きしめてあげなさい。その子、スゴく喜んでいるんだから」
「けど、でも、あの、だからって、うぁあああっ!!!」
 ギルドマスターにそんな事を言われたけれど、だからってあたしにどうしろと!?
 ここで抱きしめて上げられれば、あたしも立派な男の子なのだが……そうすぐに成長できない人間があたしなのだ。抱きしめてあげたいけれど、胸とか股間とか女の子の涙とか素肌同士が擦れてくすぐったいとか、そんないろんな要因を何とかまとめて受け止めようと広げた腕は情けなくもプルプル震えて空中で止まってしまっている。
「ほんと……しょうがない勇者様ね。女の子の扱いがなって無いわよ」
「ひあっ!?」
 またこの人はぁ!―――と叫ぶこともできないまま、綾乃ちゃんの背後から抱きついたギルドマスターは、あたしと綾乃ちゃんの下半身の間に手を差し入れ、固く反り返ったままのペ○スを両手で握り締めてしまう。
「今回だけは手伝ってあげる。だけど……私も楽しませてもらうわよ」


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