第4章「−?」第9話


「………んっ……は…ぁ……」  体…ものすごく重たい……ものすごく疲れてるみたい……あたし……うっ…頭も…いたぁ……  深い深い眠りのそこから意識が起きようとした途端にこめかみに鋭い痛みが突き刺さる。まるで起きるのを妨 げようとするかのようにズキズキとあたしの意識をかき乱すけれど、そこまでされて安穏と寝ていられるはずが ない。 「んっ………ここ…は………」  目蓋をわずかに開く。  ぼやける視界でなんとか見えたのはうす暗い天井だった。照明はついておらず、紫がかった闇が部屋とあたし の周囲に充満していた。  どうやら朝じゃないみたい…だからもうちょっと寝てても……  一つ、胸のそこに溜まった重たい空気吐き出しながら滑らかな肌をした右腕で目を覆いながら、あたしはベッ ドへと体を沈め―― 「!? そうよ、あ、あたしは!?」  あたしはなんでこんなところに寝てるのよ!? さっきまで男たちに犯されて…犯さ…れて………あれ? こ こ……どこ?  自分でも思うけれど、どうしてこう寝起きの反応は鈍いんだか……けれど、明日香に起こされた直後のいつも の自分に比べれば急速に覚醒したあたしは慌てて上半身を跳ね起こした。  シュル……  わ、わっ、わぁ! や、なんであたし裸なのよ!? 寝るときはいつもパンツ一枚だけだけど…やっぱり…さ れちゃった…のかな?  柔らかいシーツが覆い被さっていた形の良い乳房の上から滑り落ちていく。反射的にそれを抑え、一糸纏わぬ 自分が三人にどのような事をされたのかと想像するけれど、どうも様子が変だった。  どれくらい気を失っていたのかはわからないけれど、あたしが眠っていたのはリビングにおいてあったソファ ーではなく、三・四人ぐらいはいっしょに乗れそうな大きなベッドだった。  ということは、ここは寝室…よね。失神してる間にあの三人にここに運ばれたのかな? でも…裸にはされて るけど体はそれほど怪我されてるって感じはしないし、あれからずっとって言うんじゃないのかも……  誰が見ているというわけでもないけど、シーツを体に巻きつけるように肌を隠しながらその下で手を凌辱され たであろう肉体のあちこちに這わせてみるけれど、返ってくるのは不快な精液の感触ではなく、シーツに汗をし っかり吸収されてもなおしっとりぬれたように指に吸いつくやわらかな肌の感触だった。 「………ふぅ」  息をついて目を閉じてみる。そしてゆっくりと感覚に集中してみると、体の奥に残る快感の余韻はわずかばか りの物だった。さすがに真珠入りでゴリゴリ掻き回されて同時にお尻の穴まで犯されたんだから違和感は残って いるけれど、意識を集中しなければ気になるほどのものでもない。  う〜ん…あれが夢だった…なんて事はないだろうけど、どうしてあたしの体が綺麗になってるんだろ? あい つらならこのベッドで絶対にあたしにエッチな事しそうなのに…… 「………そうだ、啓子さん!?」  唐突に、あたしはここが誰の家なのかと言う事を思い出す。  あの三人があたしを寝かせてくれたんじゃなければ残るのは啓子さんしかいない。けど、あたしが気を失った 後、誰があいつらに抱かれたかと言うのを考えれば…… 「ヤバい! 啓子さん、なんで!」 「私がどうかしたの?」 「ほえ?…ひゃあああっ!」  ぼふっ  啓子さんの身を案じてベッドから飛び降りようとしたあたしの腰に細いものが巻きついたかと思った直後、置 きあがっていたはずのあたしの体は軽い音を立てて再びベッドの上に仰向けに倒される。  突然の事にあたしは目を白黒させて慌てふためく。そんなあたしを無視する様にシーツの下からゆっくりのん びり伸びた腕が枕もとの電気スタンドのスイッチを入れると、あたしを引き倒した本人――予想通りと言うかな んと言うか、啓子さんがシーツを押し上げてゆっくりと体を起こし始めた。 「んっ…ん〜〜〜〜〜っ! あふぅ…おはよ、相原さん。よく眠れた?」 「啓子さん…ビックリさせないでよ! 心臓が一瞬本気で止まったわよっ!!」 「ふふふ…ごめんね。ふわぁ〜〜…むにゅ……」  啓子さんは大きな欠伸をしてから眠そうな眼をごしごしと擦る。よっぽど疲れているのか寝起きがよくないの か、大人の魅力に満ち溢れている松永先生や優等生然とした啓子さんのイメージとその姿は結構かけ離れていた。 「………ん? もう…こんな姿を見つめないでよ、恥ずかしいじゃない」 「へ? へ? ……え〜と…ごめんなさい」  啓子さんはあたしと同じく全裸だった。温かい橙色の明かりに照らされ、どこか幻想的な美しささえ感じる裸 体に見惚れていたあたしは、両手を頬に当ててかわいく照れだした啓子さんに謝罪の意を込めてベッドに寝せら れたまま身じろぎをした。 「うん、相原さんは素直ないい子ね。じゃあこれはご褒美♪」  一瞬だけ、嬉しそうな笑みをした啓子さんはそのまま身体を前へと倒し……あたしへと覆い被さり突然唇を奪 い去った。 「ん…んんんんっ!?」  今更慌てたってもう遅い。横向きに唇を重ねた啓子さんは、逃げない様にと両手であたしの頭を抑え、より深 く、より濃密に唇を密着させ、表面にネットリと唾液を纏わせた舌先をあたしの口内に挿し込んできた。 「んっ……」  あまりに突然過ぎてどうしていいか分からない……振り払うべきか、受け入れるべきか、その判断も出来ずに なすがままになり続けるあたしの鼻腔に、ふと甘いシャンプーの匂いが香ってくる。 「んん………んっ……」  啓子さんの指があたしの髪を優しく撫ですいていく。  気持ちいい……キスも…髪を撫でられるのも…全部気持ちよすぎて……とろけ…ちゃいそう……  ピチャッと口の中で唾液が弾けるたびに柔かな舌先が口内の敏感な部分をなぞり挙げていく。あたしの体はそ の度に小さく震えるけれど、それが通りすぎていくと徐々に緊張はほぐれていき、自然と啓子さんの舌の動きを 受け入れ始めてしまう…… 「……んっ……ふぅ……はい、ご褒美は終わり」 「あっ……」  終わるときも突然だった。  啓子さんは体を起こしてしまったけれど、あたしの口はまだし足りなかったみたいで、唾液の糸を引いて離れ ていく彼女の唇を追って、ぬめる舌先を宙に向けて突き出してしまう。  あ…あたし……やだ、はしたない事を……  啓子さんの舌技にくすぐられての事とはいえ、自分から求めるように舌を出してしまった恥ずかしさに頬が熱 くなっていく。できれば顔を隠したいのにシーツは足元へと追いやられていて、あたしは恥じらう姿を隠すこと も出来ずに見下ろされるままになってしまった。 「ふふふ…満足してくれたみたいで嬉しいわ」 「そ、そんなのわざわざ言わなくても……んっ…やぁ…!」  両手を左右に広げたまま動かさないあたしの胸に薄暗い中でも輝いている様に白い指先がそっ…と触れ、くす ぐる様に肌の丸みを滑り落ちていく。 「やっ…やぁ……それ…くすぐった…い……んんっ…や…ぁぁあっ…!」  指は触れるか触れないか、薄皮一枚の微妙な距離を保ったまま張り詰めたあたしの胸を縦横に大きく小さく様 々な円を描いていく。  全身が性感帯と言われても否定できないあたしはさっきの男達に比べてあまりに微弱でか弱い愛撫の快感にさ え身悶えし、切ない吐息を漏らすたびに重量感のある乳房はプルプルと悦びに打ち震えてしまう。 「やめ……そんな…許して……こんなのって……やっ…ああっ!!」  綺麗に切りそろえられた爪が固く尖った乳首へとほんのわずかに触れる。  ただそれだけ。たったそれだけの事なのにその瞬間、あたしのお尻はビクンッとベッドから大きく跳ね上がり、 既に快感の熱と疼きを帯び始めた股間をクイッと突き出してしまう。 「ここがそんなに気持ちいいの? じゃあ……」 「!? け、啓子さん、ダメ、やだ…や、っあ、あぁぁぁ〜〜〜〜〜〜!!!」  あたしの無け無しの抵抗の言葉は、乳房の先端からミルクを吸うみたいに乳首を咥えられ、ヒクヒクと震える そこに舌を這わされてしまったことで、最後の方は歓喜の絶叫にしかなっていなかった。 「お願い、お願いだから、吸っちゃ、やっ、やあああっ!! 感…じるの……感じちゃうのぉ……!」  ベッドに爪を立て、温かい啓子さんの口内でピチャピチャ乳首を舐めまわされるたびに駆け抜ける震えを抑え 付けようとするけれど、重たく揺れる乳房を下から力を込めた指に押し揉まれ、形を歪に変えられながら上を向 けられた左右に小さな膨らみを交互に唇で食まれては声を上げることを我慢できず、あたしと啓子さんしかいな い静かなはずの寝室にあられもない嬌声が大きく響き渡ってしまう。 「ああっ! け、啓子さん…あ、声が、声が出ちゃうから、あたしっ、あたしぃ……あっ! あああっ、あああ あああっ!!」  ようやく唇から解放された唾液まみれの乳首を今度は指で捏ね上げられる。勃起しきったはずのピンク色の突 起は人差し指と親指に根元から先端に向けてニチャニチャと粘っこい音を立てながら扱き上げられ、母乳を噴き 出す事の出来ない乳房は代わりに汗を噴きだし、ビリビリと乳腺に刺激が走り抜けるたびにイヤらしく張り詰め た膨らみを突き出してしまう。  そんなあたしの反応にエッチ巧者の啓子さんが気づかないはずがない。笑みを浮かべた唇から漏れ出た呼気に さえビクビク胸が反応しているのに、張り詰め、指さえはじき返しそうな二つの膨らみを手の平全体を使って押 し上げられ、たっぷりと揉みしだかれてしまう。 「ほんとうにイヤらしいおっぱい……同性から見ても、本当にうらやましいわ……大きくて、形が良くて、それ から――」 「うあっ、いっ、あっ! そんな…あ、あたし……胸ばっか…胸で、そんな、そんな、胸だけ…なんて……イヤ、 イヤ、ああぁ……イッ…イックゥゥゥゥゥううううううううううっ!!!」  あたしの体が一瞬にして大きく弓のように反りかえった。 「こんなに敏感なんだから……本当に素敵よ……」 「イくゥ、イくゥ、あっ、あっ、ダメ、ダメダメダメぇ! あたし、イくぅ、イくゥううううウウウウウウッ! !!」  ボリュームのあるバストをさらに突き出すように、頭と痙攣しているお尻とでブリッジし、成熟したボディー を右に左にと苦しげによじらせる。  股間にも既に火が入ってしまっている。膝をよじり合わせて隠そうとしても隠し切れないぐらいに大量の愛液 がおマ○コから放たれていて、男ならば性欲を刺激されそうな悩ましい表情で喘ぐあたしの股間はお尻の谷間ま でべっとりドロドロに濡れきっていた。  けれど苦悶の悩ましい身もだえが終わり、絶頂の余韻に身を震わせながら熱い吐息を吐く頃には、啓子さんも 体を離してしまっていて、ヒクヒクと震える粘膜が覗けるほどに口を開いている割れ目へは一切手を触れられる ことなかった。  熱く火照ったまま放ったらかしにされてしまった粘膜は愛液をまとわりつかせたまま、お互いに慰め合うよう にグチュ…グチュ…と時折擦れ合い、脱力した体をいつまでも責め苛んでいた。 「うっ……ひック………はぁ……ハァ………」 「大丈夫? まさか胸だけでイっちゃうなんて思ってなかったから……ごめんなさい」  …………う…うそだ……絶対にうそだぁ! あたしが感じ始めたらものすごく本気で責めてきたし、イきそう になったのを察したら、さらに激しく……くっ…やっぱりこの人、松永先生だわ……しくしくしく……  せっかくの時間があっという間に過ぎ去ってしまった事………落ち着いて考えてみれば、マンションに連れて 来られるまでずっとこうやって肌を重ねる事ばかり考えていたと言うのに、実際には数分で達してしまった事に、 突かれ切ったあたしは余計に落ち込んでしまう。気分的にはそう……一分とたたないうちに明日香のお腹に出し ちゃった、あの時の気分かな……  出来る事なら今すぐこの場を走り去ってトイレにでも篭りたかった。けどぐったりした体がそれを許さぬまま、 あたしは啓子さんの顔をまともに見れないまま、針の筵に座らされているような恥ずかしすぎる心境……だった んだけど…… 「さぁ……次は相原さんの番よ」  あたしの右隣に温かい感触が横たわる。見る間でもない、二の腕に触れるこの柔らかい感触は啓子さん以外に は考えられなかった。 「け、けけけけ啓子さんっ!? なに、急になんであたしの横に、えっ、どうして、えっ、ええっ!?」――― ドクンッ  一瞬にしてけだるさが吹き飛び、ベッドに身を起こしたあたしだけど、ほんのわずかな時間とはいえ啓子さん と体が密着してしまった途端に、心臓は早鐘のように鼓動を高鳴らせてしまっていた。 「あらぁ……逃げちゃうの? もう…いけずなんだから……ここまできて焦らしにくるなんて……」 「い、いけずも焦らしもないのっ! だってあたし、一人で先にイっちゃって…それで…その……」  啓子さんが気分を害したんじゃないか。  そう訊きたかったんだけど、あたしの言葉は後ろに行くほど掠れていく。  はしたないかもしれないけど……「あたしの番」と言われ、あたしは自然と想像してしまっていた。  今度はあたしが啓子さんを行かせる番なんだって…… 「……………」  だけどあたしはうつぶせに寝転んだ啓子さんを前にしたまま動かなかった。いや、動けずにいた。  喉も震えて声が出せない。それほどまでにあたしは緊張し……身が竦んでしまっていた。 「……あの…啓子さん……あたし…その………」 「…………実はね……うれしかったんだ……」  いつまでたっても襲いかかろうとしないあたし……その代わりに、あたしから目をそらしてベッドライトを見 つめた啓子さんはゆっくり、静かに口を開き始めた。 「相原さんが……私を抱いてくれるって言ってくれた時……なんだかはじめての気分だったの……」  はじめてって……啓子さんなら男なら誰でも襲いたくなるほどの美人だし、女の子も襲いまくってるのに……  そんな風に口を挟みたかったけれど、あたしは啓子さんの語る言葉を聞き逃すまいと耳を済ましている。 「あの時、本当に私の事を心配してくれたでしょ? 私の周りにいるのってSEXの事しか頭にないバカな男か、 どんなに抵抗しても最後には私の言いなりになるような弱い子ばかり……だからなのかな、最近自分でもわから ないところで、何かが満足できてなかったの……」  そこでいったん言葉を区切ると、啓子さんは両手をベッドについてこちらに体を向ける。  光と影がそのしなやかさと膨らみ、そして美しさを彩る裸体の美しさはある種の芸術のようにあたしの心は魅 了され、思わず息を呑んでしまう。 「でもね……本当になぜだか分からないの。相原さん…私、あなたに……」  ちょ…ちょっと待ってぇぇぇ〜〜〜!!! それ、もしかしてその、もしかしなくても……愛の…告白ぅ!?  もじもじと恥ずかしそうに身を揺する啓子さんの姿にふとそんな考えが頭を過る。  ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ  なんで…どうして…こ…これは何かの間違いよ。啓子さんが…松永先生があたしにそんな……いくらなんでも 突拍子的って言うか……信じられるわけ…ないじゃない…… 「け…啓子…さん……」  けれどそんな考えとは逆に、あたしは啓子さんにやましい想像までしてしまっている。  さっきいじられたまま激しく勃起したままの乳首…そして触られたくて、愛し合いたくてビンビンに充血して いるクリトリスの疼きに悩ましい呼吸を繰り返し、ぷっくりと膨らんだ陰唇の割れ目はさらに加速していく胸の 鼓動に合わせてヒクヒクと脈動までしてしまっている。  ものすごく興奮してる……あたし…ものすごく興奮してる……  きっとあたしにペ○スがついていれば、明日香にも見せた事がないぐらい勃起しているに違いなかった。そう 思わせるほどにクリトリスはパックリ口を開いた蜜花の真上で痛いぐらいに膨れ上がっていて、火がついたよう に熱く火照る子宮は入り口へと続く肉壁を勝手に痙攣させては大量の愛液を放ち、太股と両手で隠している股間 の前はまるでおしっこを漏らしたかのような濡れ具合だった。  ―――もう…ダメ……これ以上我慢…出来ない……本当に、あたし…啓子さんを……  無意識に、あたしの右手が前に出る。それだけ近づいただけなのに、あたし立ちの間に充満する「女」の香りは 一段濃くなったようにあたしの鼻腔を刺激する。 「だから…あのね……」  それ以上言わないで……言われたら…あたし、どうにかなっちゃうよ……啓子さんを犯したくて、犯したくて、 メチャクチャにしたくなっちゃうかも……だから……!  左手もベッドに突き、あたしのお尻が浮き上がる。鼻をくすぐる啓子さんの――いや、あたしと啓子さんの体 から発している汗と淫液の入り混じった香りに思考さえ薄れ掛けていくあたし……その目の前で啓子さんは、祈 るように両手を胸の前にかざし――― 「これで相原さんに犯してもらいたいの!」  そうしてあたしの眼前に突き出されたのは………かなり凶悪なデザインが施された双頭バイブだった。


第4章「−?」第10話へ