Z.告白


「ふ〜〜、何とか間に合った」 旅館に帰ってくると、今日のお客さんの来る時間が間近に迫っていた。 買ってきた食材を急いで調理場に運び込んでから玄関に向かうと、梅さんがすでに待っていた。 「三人とも遅いですぞ。何をやっておったんじゃ」 「まぁまぁ、間に合ったんだからいいじゃない」 「まったく…坊ちゃんももう少し旅館の主としての自覚というものを……」 「あ…梅さん、バスが来ましたよ。お説教はそれくらいで……」 「おお、そうか。坊ちゃんいいですな、ちゃんと自覚を持ってくだされ」 「分かったから、ほら、お出迎えお出迎え」 何とか梅さんの雷を逃れたあたし達は、整列して、玄関前に止まったバスから降りてくるお客さんを待った。 降りてきたのはボストンバックを持った男の人が一人。その人を降ろすとバスは走り去ってしまった。 バス停からこっちに向かって歩いてくる人は、眼鏡をかけて背広を着ているから、どこかのサラリーマン、 という感じがする。 ……でもなんだろう……この人…嫌な感じがする 顔は美形でも不細工でもない。体型も中肉中背。そんなに怖い要素は無いんだけど…… 「いらっしゃいませ、ようこそ山野旅館へ」 おっと、営業スマイル営業スマイル。お客様に嫌な思いをさせちゃいけないんだっけ。 「「いらっしゃいませ」」 あゆみさんとあたしが頭を下げる。 「夏目様、お待ちしておりました。ささ、どうぞ中へ」 この人が夏目?遼子さん達のお連れさん? 確かに遼子さんはOLっぽかったし、あの三人の上司っていう感じもする。 「どうも、ご厄介になります」 にこやかにあたし達に話し掛けてくる。その顔にはさっきまでの嫌な感じは何処にも無い。それどころか 爽やかな感じさえする。でも、あたしだけでなくあゆみさんも夏目さんの荷物を受け取って部屋へ案内 しようとはしない。隣から感じる雰囲気で戸惑っているのが分かる。 「あゆみ、たくや、夏目様はわしが案内するから二人とも仕事に戻っておれ」 ただ一人、夏目さんに近づいていったのは梅さんだった。さすが年季が違う。荷物を受け取ると、夏目さんの 先に立って、丁寧に案内していった。 「……はぁ」 二人が見えなくなると、大きく息をついた。梅さんだけでも気が重いのに、あの夏目さんが加わると空気まで 重くなったような気がした。 「なんかあの人苦手だな」 隆幸さんも嫌な感じがしたのか、頭を掻きながらぼやいている。 「あたしもそうです。なんとなくあの人怖くって……」 「そうだよな。近くにいる時はそうでもないけど、バスを降りてこっちを見た時はなんだか犯罪者って感じが したもんな」 「そうですよね。顔は笑ってても、腹の中ではドス黒い事考えてそうですもんね、ああいうタイプって」 当の本人と梅さんがいないから、あたしと隆幸さんはお客さんを貶しまくった。 「ふ…二人とも、お客様のことをそんなに悪く言っちゃ……」 「じゃあ、あゆみはあいつといてもなにも感じなかったのか?」 「それは……」 「あゆみさんだってそうでしょ?でも、梅さんさすがですよね〜。あんな人でも平然と案内するんですから」 「ああ、あの客、金払いはいいからな。前金で一ヶ月分貰ってるし。だから粗相の無いように自分で行ったんだろ?」 「一ヶ月も!?あの人達って一体なにしてるんですか?」 「さぁなぁ……会社の同僚とか言ってるけど、リストラで長期休暇もらって遊んでるってところじゃないのか?」 でも、朝会った遼子さんはそんな感じじゃなかったんだけど…… なんだか焦点の合ってない目…フラフラした足取り…暗い笑み…触られることを嫌がった反応…疲労とストレス…… う〜〜ん、考えても分からないや。こういう事は真琴さんが得意なんだけど……別の意味で…… 「たくやくん…仕事に戻りましょ……人の悪口を言うのはあんまり……」 あゆみさんが新しいメイド服の袖を引っ張る。 あゆみさん、人の悪口を言うのも聞くのも嫌いみたい。なんだか泣きそうな顔をしてる。 「あ…すみません。それじゃ……」 ぐぅ〜〜〜〜 「……お昼ご飯食べてきてもいいですか?まだ食べてないんで……」 昼食(和食だと思ったら何故かスパゲティー)の後は旅館内の掃除。玄関、二階の廊下と掃除して、一階の廊下を モップで拭く。 でも一人でこの廊下にいると、昨日おじさんCが声をかけてきたことを思い出して、あんまり掃除に手が付かなく なってくる。 ……昨日はあんなにすごかったのになぁ…… 布団部屋での事は身震いがするほど嫌だったけど、おじさんCや松永先生に思いっきりメチャクチャにされて すごく気持ちよかった。今まで一日であんなにしたことも、気持ちよかったことも無かったし……思い出した だけでからだがムズムズしちゃう。 それに引き換え今日は………はぁ 思い出しただけでため息が出る。 浅い湖の中で真一さんに無理やりされて、溺れさせられて、びしょ濡れにされて…… 仕立て屋さんでは曽祖父と曾孫くらい年が離れていそうなおじいさんにからだを任せて、一人だけ先にイかれて…… なにより、二回ともあたしは思いっきり中途半端なところで終わっちゃって一度もイってない。だからかどうかは 分からないけど、ちょっと気を抜くと、こんなエッチのことばかり考えちゃう。 アソコだってトイレでいくら拭っても、いつでも入れちゃうことが出来るぐらいにじんわりと湿ってる。 逆に触れるだけでからだが止まらなくなっちゃいそうで…… 視線を下に向ける。二重になった股間部分の布地に吸い取られてるから太股までこぼれてないけど、歩くたびに グチュっと湿った音がしてるような…… またトイレに行って拭いてこようかな……ここで屈んでティッシュで拭いたら見られちゃうかもしれないし…… なんだか妄想もどんどん何処かに行っちゃって……あたしって…こんなにエッチだったかな? それとも部屋に戻って玩具を入れるのも……アレを入れながらお掃除しちゃったら………あ…このモップって アソコに入れたら……硬いし…長いし…疼いてる奥まで…届くかも……… 手に握られているモップの柄が……あれみたいに……思えてきた……… しっかりと木製の柄を握っていた手が…まるで……おチ○チンを握るように…柔らかく握り直して……優しく… 上下に擦る…… 夢の中の明日香のって…もっと太かったけど……あぁ……硬い…おチ○チン……あたし……もう……… あたしは……モップの柄をギュッと…胸の間に抱きしめて………目の前にそそり立つ…硬くて…長いものを…… うっとりと眺めてから…ゆっくりと……舌を……… 「たくやさん?」 ギクッ!! 舌がモップに触れるか否かのところで後ろから声が聞こえ、どこかにイっちゃってた頭が飛んで捻って戻ってきた。 「ハ…ハイハイ仕事してますよも〜ちゃんと綺麗に廊下磨いてますよ変なことなんて考えてませんええ考えてません ともごしごしごしごし掃除は楽しい〜〜な〜〜っと♪」 一気に混乱したあたしは変なことを口にしつつ、背筋を伸ばして猛烈な勢いで廊下を拭き始める。でも同じところ を何度も擦ってるだけだけど…… 「ど…どうしたんですか?なんだか変ですよ?」 「あ……なぁんだ、真一さんですか。梅さんかと思いましたよ、ははははは…はは…は……」 ごまかしの笑い声がだんだんと先細くなっていく。 真一さんとは……湖で……… 数時間前の事がありありと思い出される。それにこの廊下は昨日おじさんCが話し掛けてきて、そのままトイレに…… 「あ…あの……」 「は…はイぃぃッ!」 真一さんの言葉に過敏に反応する。声がちょっと裏返る。 ど…どうしよう……またこのままトイレに……さっきの見られてたんじゃ……今誘われちゃったらどうしよう…… やだ…アソコが…でも真一さん結婚してるし……これって失楽園?…じゃなくてぇ!ダメなんだってばそう言うの! なんだか狭く感じる廊下で、視線を下げてこちらを見ないようにしてる真一さんと、からだが疼きまくって 思いっきりいやらしい事を想像しているあたしが向き合っている。 顔が赤く上気してるのが分かる。からだも自然と火照り始め、下着では吸いきれなくなった愛液が太股へと こぼれてくる。 「あ…は…はぁ……」 唾液に濡れた唇からは熱い吐息が滑り出す。それがからだに纏いついてあたしの周りだけ気温が上がったような 気がする。 「……たくやさん」 真一さんが意を決したように顔を上げる。そしてあたしの顔を真正面から真摯に見つめる。 「先程の事はお詫びします。それでも敢えてお願いします。僕と一緒になってください」 「………はい?」 今なんて言いました? あたしの目が点になる。からだの火照りなんか一気にどこかに行ってしまった。 「たくやさん、僕と結婚してください!」 「え…えぇ〜〜〜〜〜〜!!」 真一さんが近づいてきてあたしの手を握りしめる。手から離れたモップがあたしの肩に寄りかかる。 「もう僕には貴方しかいないんです。必ず幸せにします。だから……」 「ちょ…ちょっと待って。真一さんもう結婚してるじゃないですか!」 「栄子とは別れます。元々ここにはその話し合いにきてたんですから。だから心配することはありません」 「じゃあ遙くんはどうするんですか!」 「遙も栄子が引き取ります。だから貴方はその身一つで僕のところに来てくれてかまいません」 「で…でもあたしお………」 あたし男なんです その言葉を最後までいう事は出来なかった。からだを引き寄せられ、真一さんの口であたしの唇が塞がれる。 「んん〜〜ん〜〜〜」 湖で味わった真一さんの舌が、今度こそ離さないというようにあたしの舌を絡め取り、激しく口の中を刺激する。 「ん…あむ……んグ……はぁ…チュル…んん〜〜……」 あたしは黙って抱き締められるままに身を任せる。準備が出来ていたからだが真一さんの愛撫を拒むことが 出来なかった……… 優に二分、唇を吸われた後、互いの唇が糸を引きながらゆっくりと離れていく。それでもさらに求めようと あたしの舌が突き出される。 「あ…ん……」 「今夜一時…布団部屋で待ってます。もし僕と結婚してくれるなら来てください。僕はいつまでも待ってますから……」 真一さんの体もあたしから離れ、最初に来た方へと歩き去っていった。 「は……はぁ〜〜〜………」 あたしは腰が抜けたように、その場にぺたんと座り込む。 ……また…イけなかった…… あたしは快感に震える体を抱いて、呆然と座りつづける。 カタン! 肩から滑り落ちたモップが倒れ、あたし一人しかいない静かな廊下に大きな音を響かせた。


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