四時限目


四時間目:小説の書き方・基本編 「世界の全てを記述するもの、世界の全てを見届けるもの」 ふ〜〜、やっとここまで来たか。 「またセーラー服に戻されて……あたしは着せ替え人形じゃないわよ……ブツブツ……」 アシスタントなんだから文句を言うな。 「あたしの刀で斬れないからって偉そうになってきたわね」 そう言うスケットだって鶴の事を殴っても平然としてるじゃないか。 「殴り方にコツがあるのよ」 ………鉄女。 「なんですって!!!」 ぐはぁ!!口より先に手が…… 「こっちの方が効きそうね。ほら、ここからが本題なんでしょ。さっさと説明しなさい」 シクシクシク……なんでアシスタントのほうがえらいんだよぉ……  STEP4−0 小説の書き方・基本編  好き勝手書いて               完 「そう言うのを止めろってぇ、言っってるのよ!!」 げはぁ!!ま…待ってくれ……これには深い意味が…… 「ほう……いいでしょう。遺言代わりに聞いてあげるわ」 しょ…… 「しょ?」 処女。 「あたしの手でいっぺん涅槃まで送ってあげるわ!!!」 へ…ヘルプミ〜〜〜〜!!!  STEP4−1 本当の小説の書き方・基本編  上の一言の半分は冗談じゃないんですよ。  鶴の教えた書き方を真似せずに自分らしい文章を書きましょうって意味です。  何の習作も無くいきなり長編書き出した鶴の場合は特殊ですけど、  一度短い話をどんなに拙くてもいいから書いてみるべきだと思うんです。  そうしなきゃ「自分らしさ」って言うのがわからないと思います。 「なるほどね。「自分らしさ」か……」 か…感心してないで……早く上からどいて……重い…… 「なんですって!!」 ぐはぁ!!……でもこれも良いかも♪ 「へ………変態!!」 やっとどいたか……うぇ、吐きそ。 「近寄らないでよ、あたしにその気は無いんだからね!!」 その気って……鶴にも無い!!さっきのはスケットにどいてもらうための嘘に決まってるだろ!! 「本当でしょうね……?」 ほんとほんと。それよりもあとちょっとだ。一気に行くぞ! 「お…お〜〜……(どうしたんだろ?本気モードのスイッチでも入ったかな?)」  STEP4−2 プロットを作りましょう  プロットとは物語の全体の流れを表したものです。  短い話ならいざ知らず、長編でちゃんと作っておかないと書いてる本人が混乱する恐れがあります。  後の展開に伏線張ったり、登場キャラがその時何処にいたか等、さまざまな情報の整理にも役に立ちます。  ゲームやドラマなどでは作業が分担されるため、作業が重複し無いようにするための計画表にもなります。  当然ながら話を書いてる途中で手を加えて書きなおして、より良くする事も可能です。  短編ではそれほど必要無いかもしれません。 さて、ついに小説の文章の書き方まで漕ぎ着けたぞ! 「でもいいの?鶴は「自分らしい」小説を書いてもらいたいんじゃないの?」 ………まぁ、最初は止む無しかと。見本もなにも無しでやれとはさすがに言えません。 鶴の書き方はかなり疲れるから本当に基本だけで行くつもりだし。 なにより、設定やキャラがオリジナルならそれでいいと思います。 いいかげん疲れたし…… 「こらっ!あとちょっとなんだから気合入れなさい!!」 は〜〜い……  STEP4−3 小説を書きませう・実戦編 主観と客観  今から鶴がスケットに斬りかかります。 「ちょっと待った!!なにこれ!?斬りかかってくるなんて聞いてないわよ!!」 大丈夫だ。本当に斬りはしない。 「な……なんで侍モードになってるのよ!?鶴は刀持ってないんじゃなかったの!?」 安心しろ。格下相手に本気は出さん。 「い…言ったわねぇ〜〜!!鶴のくせに!!」 刀は抜いたな。では……いくぞ。  シーン1テイク1 音のみ    しゅん    ガキッ!!    「ふ……やるな」 「はぁっ、はぁ…はぁ……」 さて、上の効果音と鶴の一言がさっきあった事を表現したものです。映像や漫画ならこれで十分ですね。 「待ちなさいよ!居合で斬りかかるなんてどう言うつもりよ!!一瞬死ぬかと思ったわよ!!」 しかしながら、文章ではこれだけでは味気ないし、どう言う風に鶴が斬りかかったのか想像しにくいです。 「こら!こっち向きなさい!謝らないと、あたし泣いちゃうわよ!!本当に恐かったんだから!!」 ………ごめんなさい。もうしません。 「グス……それでいいのよ……もう…グス……しちゃダメなんだからね」 分かりました。それじゃあ、こっちで説明続けるから落ちついたら、またこっちに来て。ね。 「グスン……はい……」 ……いったか。泣いてると素直なんだな、スケットのヤツ。 じゃあ、続きです。文章では耳に聞こえる音だけを文字にしても分かりづらいです。 そこで何があったかを説明する文を入れるわけです。 では今から巻き戻してもう一度見てみましょう。  シーン1テイク2 客観的視点    しゅん  鶴の手が動いた瞬間に鞘から抜き放たれた刀をスケットは自分の刀を立ててとっさに防いだ。  ガキッ!!  火花を散らして刀同士がぶつかり合う。  その一撃を受けたスケットの表情が苦しそうに歪んだ。  「ふ……やるな」  スケットの動きに感心したような声をあげると、鶴は打ち付けた刀を引いて鞘に収めた。  それと同時にスケットは気が抜けたように地面へと座り込んでしまった。 「へぇ、こう言う風になるんだ」 なんだ?もう戻ってきたのか?いいのか、もう…… 「平気平気♪でもこれで何があったか分かりやすいね」 そうだな。ちょっと非日常的な斬り合いのシーンだけどスピード感が要求されるから、 一方が何かしたのに対して、もう一方がどう行動したのか、それだけを書けばすっきりして展開が早くなる。 逆に終わった後は多少の時間的余裕があるので「感心したように」とか「打ち付けた」とかの修飾も増えている。 この後半部分のような書き方が普通の動きの書き方に当てはまる。 「書き方に違いなんてあるんだ」 当然。ゆっくり行動できる時は描写も増えて、速く動いてる時は周りをゆっくり見ている暇も無いだろう? 文章の量とはイコール情報の量であるとも鶴は考えています。 「普通の会話とかは?」 それは後。まずは状況を説明することから考えないと。 「それが客観的視点ってわけ?」 そうだな。状況を有りのままに受け取ってそれを文章で表現する。これが基本だね。 作者はたとえ主人公でさえも客観的に見つめる必要がある。 「ふ〜〜ん……」 それじゃ次は主観的視点だ。行くぞスケット!! 「へ?なになに??何が始まるのォ〜〜???」  シーン1テイク3 主観的視点    しゅん  鞘走りの音を立てながら刀が閃光の如く鞘から抜き放たれる!!  (首か!)  直感でそう判断したあたしは刀を立てて自分の首を守る。  ガキッ!!  (グゥ!!)  刀を立てた直後、重たい一撃があたしの刀に叩きこまれた!  斬るというより砕くような一撃に、刀を支えるあたしの腕と肩の筋肉が音を立てて軋む。  「ふ……やるな」  鶴が何か言いながら刀を引いた。でもその言葉を聞くことはあたしにはできなかった。  あたしは目の前に開かれた死への恐怖から開放された安堵感で、  息を吐きながら力無くその場に座り込んでしまった…… 「きゃ〜〜!!いや〜〜!!見ないで〜〜!!」 何を恥ずかしがる。手を抜いていたとはいえ、アレに反応できたんだから大したもんだぞ。 「頭の中を見られるのがイヤなの!!なによこれ!!」 これが主観的視点。つまり主人公や他のキャラの視点で文章を書くことだよ。 鶴は主にこっちで小説を書いてる。客観的視点とは書き方が異なる。 前半の戦闘シーンはスピーディーさを出すために、キャラのとっさの判断という感じの一文を入れて、 他の文章も短めにしている。そうするとまるで自分でそうしている様に思えてくる。 後半は時間的余裕があるので多少長くなったけど心理描写とその後の行動を書いてみました。 自分の目で見てるような感じになるから臨場感や感情移入度はこっちの方が上かな。 ただし視点の人物以外、この場合は鶴の行動をスケットは見ていないから「刀を鞘に収める」という描写が無い。 一概にどちらが良い悪いは言えないから、自分の書きやすいほうで書けばいいと思います。 「うう……負けたって思ったのがばれちゃった……」 気にするなって。これで美少女剣士の道が開けたじゃないか。 「嬉しくない……やっぱり男の子100人……」 それじゃあ今度は一般的な会話シーンを行ってみようか。 「男の子……」  STEP4−3 小説を書きませう・会話編  シーン2テイク1 声のみ  「おはよう、明日香」  「あれ?どうしたの、今日は早いじゃない」  「へへへ〜〜、ちょっとね」 「あれ?この二人って……」 それは置いといて。 「あの二人でしょ?ねえってば」 こら、引っ張るんじゃない。そうだよ、その二人だよ。でも、ここではそれよりも重要な事があるだろ。 「一応これでも分かるけど、会話だけだとちょっと分かりにくいね」 だから鶴はこうするんだ。  シーン2テイク2 鶴バージョン  「おはよう、明日香」(あたしは教室に入ると、手を振りながら明日香に近づいて行った)  「あれ?どうしたの、今日は早いじゃない」(明日香はビックリしてる。そりゃそうでしょ。                      あたしがこんな時間に学校にいるなんてめったに無いもん)  「へへへ〜〜、ちょっとね」(あたしはエッヘンとばかりに大きな胸を反り返らせた) 「なにこれ?会話文の後にカッコがついてる」 普通はこんな書き方しないんだけどね。分かりやすくするという事で書き加えてみました。 客観的視点はさっき説明したのとあんまり変わらないから主観的視点で説明するぞ。 鶴が思うに、会話文では会話と状況描写の量が問題になると思う。 例えば両者とも椅子に座って話しているなら大きく動かないから、ビックリした、笑った、って感じに 顔の表情だけでいいから、状況表現が少なくても会話が続く事になる。 「鶴とあたしの会話みたいにね」 スケットのはパンチやキックだろうが……鶴が説明したのもあったし…… でも会話以外に何らかの行動をしている場合、会話と行動のタイミングを合わせると結構書きやすいと思う。 そこで会話文の後に行動や思考なんかを書き加えてみた、というわけ。 なにか喋っている時に、自分がしていた事、自分が思った事を準備していた会話分の間に挿入していくと……  シーン2テイク3 鶴バージョン  「おはよう、明日香」  あたしは教室に入ると、手を振りながら明日香に近づいて行った。  「あれ?どうしたの、今日は早いじゃない」  明日香はビックリしてる。そりゃそうでしょ。  あたしがこんな時間に学校にいるなんてめったに無いもん。  「へへへ〜〜、ちょっとね」  あたしはエッヘンとばかりに大きな胸を反り返らせた。 ――てな感じになる。 「へ〜〜、ちゃんと小説みたいになってる」 別に一言一言に行動を書き加えろ、という意味じゃないから安心して下され。 キャラの行動を事細かく書きたいならかまわないけど、読みやすい事も大切だからバランスには注意してね。 それと実際にはカッコをつけて文章は書きません。二度手間になるから真似しないでね。 「ねえねえ、ちょっと」 だから引っ張るなっての。ただでさえ真面目な侍モードは疲れるんだから。で、なんだ? 「エッチシーンは?」 ぶっ! 「エッチシーンの書き方は?」 ス…スケット君、君ね、女の子がそんな目をキラキラさせながら、えっちぃ小説の書き方を聞くか? 「聞く。だから教えて♪」 ………シーン2と同じ。 「え〜〜、手抜き!教えてよ!!ねぇ、ちゃんと教えて!!」 スケット、おまえ最初と性格が変わってるぞ! 「鶴だってそうじゃん。だからエッチシーン〜〜♪」 分かった!やってやるから引っ張るな!!離しやがれ!!まったく…ちょっとだけだぞ!! 「わ〜〜い♪」 スケットのエッチシーンな。 「はいぃ!?」  STEP4−4 小説を書こうかな? エッチ編  シーン3テイク1 登場人物:スケット 一人エッチ  「ふぅ……なんだか……暑いな……」(部屋が暑いわけじゃない。さっきからあたしの以下略)  「ん……やだ……まだ触ってないのに……」(ベッドにお尻をつけて太股を開くと既にショーツは以下略)  「あっ……」(太股に手を置いただけで声が漏れる。そしてそのまま滑るように以下略) 「きゃ〜きゃ〜きゃ〜!!なによこれ!なんで鶴が知ってるのよ!み…見てたの!?そうなんでしょ!!!」 ………主観的に書くには本人の記憶が一番。さっきのシーン1の時にちょっと…… 「へ…変態!!痴漢!!覗き魔!!もうお嫁に行けない!!」 自分で催促するからだ。自主規制いれといてやったんだから安心しろ。 「え〜〜〜ん、え〜〜〜ん、鶴の性犯罪者〜〜!!(泣)」 こいつは……もういい。勝手に進める。 え〜〜、その〜〜、エ…エッチシーンも基本的には会話文と同じように書いてます。 ただし会話文よりも細やかな動きまで書いてるもんで、文章量が増えて大変です。 慣れないうちは一つの「会話」に対して一つの(カッコ)を付ければバランスよくなると思います。 鶴も本当は短くてエッチなのを書きたいんですけど……修行中です。 注意・エッチシーンに関しては自分の実体験に基づくものでなくてもかまいません。    自分の……その……書きたいもの……がいいと思います。    その方が書いてて楽しいし。    でも自分の実体験でどうしても書きたいって言うのなら……とめませんけど…… ………もうちょっとエッチシーンいってみようかな? 今から即興でちょっと書いてみようと思います。 登場人物はスケットが錯乱してるんで男女に一人ずつ出てもらいましょう。  シーン4テイク1  「やだ……恥ずかしい……」(両手で体を守ろうとする)  「ここまできて…それは無いだろう?」(彼女の両手をゆっくりと解いてボタンを外していく)  「綺麗だよ……何も恥ずかしがる事はない」(彼女の両手を軽く押さえ、露わになった胸元へと顔を近づける)  「んっ……」(唇を噛むだけで、それほど抵抗しない) とまあ、こんなシーンがあったとする。会話と行動もわかってる。 それが鶴の場合はこうなる。  シーン4テイク2  「やだ……恥ずかしい……」  「ここまできて…それは無いだろう?」  体を守ろうとした彼女の両手をゆっくりと解いて、そのままボタンを外していく。  「綺麗だよ……何も恥ずかしがる事はない」  彼女の両手を軽く押さえ、露わになった胸元へと顔を近づける。  「んっ……」  彼女は唇を噛むだけで、彼のしようとする事にそれほど抵抗を見せなかった。 こんな感じかな? 最初の二つの会話についていた状況説明はどちらも「両手」の説明だったんで一つの文にまとめてみました。 三つ目の文も「両手」だけど――  体を守ろうとした彼女の両手をゆっくりと解いて押さえつけ、そのままボタンを外していく。 ――という感じに連続した動きになってスピーディーになります。 見た感じ少しゆっくり目な雰囲気なんで、分割したほうが読みやすいと思います。 短くて複数の文、長いけど一つの文、同じ内容でも読む人に与える影響は少し違うんですね。 この辺は経験を積むと分かってきます。書いた後に自分で読み直して見ると良いかもしれません。 でもスピーディーなエッチって…… その後も何に対して抵抗しようとしなかったのか、というのを加えて文章らしくしています。 普段はここまで考えて文章を書いてるわけじゃないよ。今回も書いてみてから説明してるだけだし。 ドルゥゥゥ!!パン、パン、パン、パン、パン! な…なんだ、いきなり響いてきたこのエンジン音に似た変わった音は? 「ふっふっふっ……見つけたわよ」 チェ…チェーンソー!?なんて物を持ち出してくるかな…… 「乙女の恨み、晴らさでおくべきか〜〜!!」 ヂュィィィィィィ!! 「これなら〜〜さすがに〜〜斬れるでしょ〜〜」 ちょっと待て!!そんなの振り回してるとファンが減るぞ!! ポイ 「やだ、もう☆あたしってば、はしたない♪」 いって〜〜、ちょっとえぐれた。女って恐いな…… 「いやん♪ごめんなさい☆ちょっと蚊がいたものですから☆」 蚊をチェーンソーで殺すのか………? 「それで☆あたしのファンってどれくらいいるのかな♪」 知らん 「ほぅ……」 やば!逃げよ。 「に〜が〜さ〜な〜い〜わ〜よ〜〜」 ヂュィィィィィィ!! おたすけ〜〜 こ…このように……会話文と…… 「会話文と効果音だけでも文章として成り立つのよね♪テンポがいいから明るいノリに向いてるわ♪」 お…おのれ……自己修復中で…無ければ…… 「ほんと……しぶとい」


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