第四話


 フゥ…… 「くぅん!」  真由がこの部屋に入ってから、もう五分が経とうとしている。人間は視覚が奪われると 他の感覚が鋭敏になるというが、今の彼女は正にその状態であった。しかしこれは彼女に とって、マイナスにしかならなかった。  いくら他の感覚が鋭くなっても、それで見つけられる陽ではない。逆に敏感になった身 体を触られるたび、恥ずかしい声を漏らしてしまう。  最初のイタズラの後、彼女は身体を緊張させ、時折いきなり違う方向に明かりを向けた りもしたが、全く意味をなさなかった。  首筋の次に触ってきたのは、彼女の黒髪である。櫛ですくように指を通してき、その全 く予想外であった場所を触られた事に、彼女は思わず悲鳴をあげてしまった。  次いで懐中電灯を持っている手を撫でられ、危うく手から落としてしまう所であった。    さらに直後、彼女はスカートを思い切りめくられた。もちろんお尻の側ではあったが、 ショックは隠しきれない。いくら一階で散々見られたとはいえ、男の手で直接めくられた 経験など彼女にはない。  しかもこの暗闇の中、オーナーは確実に彼女にイタズラを仕掛けてくるのだ。彼女は陽 の事などもちろん知らないが、それでも彼には自分の姿が見えてしまっていると気づいて いた。  ならばめくられたスカートの下のショーツも、もちろん見られてしまっているだろう。 下着にも気を遣い、おしゃれをするようになったのは最近だが、それがこんな形で男の目 に触れるとは思ってもいなかった。  スカートの前面部も引っ張られてめくれるほどにお尻の部分をめくられ、髪を触られた 時とは比べ物にならないほどの悲鳴をあげて慌てて手で前を押さえたが、その隙に陽は再 び暗闇に消えていく。さっきからこの繰り返しであった。  そして今、彼女は耳に息を吹きかけられてしまった。子供の頃、友達同士冗談でやりあ った事はあったが、最近はもちろんそんな事はない。しかも悔しい事に、子供の頃はくす ぐったかっただけだったのに、今は別の感覚が混じってしまっていた。 (もう、何なのよ一体!)  自分自身納得できない真由は心の中で叫ぶと、再びラインに沿って足を進め始めた。道 順を教えるラインは曲がりくねっており、なかなか出口に到着できない。しかも所々には 壁も配置されており、明かりなど全く見えない。もしも一度ラインから離れてしまえば、 それこそ助けを呼ばないと出られなくなるかもしれない。もちろん彼女はそんな事態に陥 るつもりはなかったが。 (でも、さっきから少しずつだけど、触ってくるところが大胆になってきている様な……)  真由の考えは外れている。陽は彼女が考えから外している場所、すなわち油断している 場所を狙っているのであって、どこを触りたいと思って行動しているのではない。  そして今この時、考え事をして気を抜いてしまった真由を見逃すほど、陽は甘くなかっ た。 (あかんなぁ、油断したら。ほれ!)  ぷすっ 「ひ!?きゃあああぁぁ!!」  人差し指を立てて手を組んだ陽は真由のすぐ後ろにしゃがみこみ、その手を彼女のお尻 に突き立てた。いわゆるカンチョウである。  もちろん真由もこのイタズラは知っている。小学生の頃、クラスの男子達がはしゃいで やっていたのを白い目で見ていたものだ。だが、彼らも女子にするほどの勇気はなかった。 その対象が、子供の頃から強気だった真由ならなおさらだろう。すなわち、これが彼女に とっての初カンチョウであった。  スカートをめくられた後、彼女のお尻は常に緊張し、しっかりと閉じられていた。しか し今、一瞬の考え事のためそのガードは解かれてしまった。  陽の指は決して力が込められていた訳ではないが、それでもその指は真由の尻肉にしっ かりと挟みこまれ、スカートとショーツという2枚の布越しではあるが、確かに彼女の肛 門に触れていた。  指の両脇と拳部分には、柔らかくも張りのある、少女だけが持つ温かいお尻の触感が伝 わり、身体の中でも最も敏感な箇所の一つである指先からは、お尻のほかの部分とは違う 熱さが感じられる。初めて触られた事による極度の緊張の為だろう。彼女のその部分は、 ひくひくと動いてしまっている。  真由自身、下着越しに陽の指が肛門に触れている事が感じられる。そんな中彼女はパニ ックに陥り、腰を前に突き出し悲鳴をあげるだけで、すぐ後ろにいる陽の方を向く事すら できない。  それも無理はないだろう。自分でも見た事がない不浄の場所を、さっきから軽蔑の対象 としてしか捉えられない男に触られてしまったのだ。いくら強気とはいえ、まだ男子と付 き合った事も、恋愛すらした事もない少女なのだ。  それがこんな場所で散々下着を晒し痴漢まがいの行為をされたあげく、お尻の穴まで触 られたのだ。これで冷静でいられる方がおかしいだろう。  一方の陽は、彼女が混乱している事に一瞬で気づくと、今までよりもほんの少しだけ長 くイタズラを続ける事にした。 (くく、こうしたらどうする?)  くりっ 「ひきゃあん!?」  陽は突き刺した指を、軽くひねるように動かした。当然その分指はより深くまで潜り込 み、彼女の肛門の熱さ、うごめきをより感じられた。  そして真由の口からは、今までの悲鳴とは違うものの混じった、どこか甘く感じる声が あげられた。 「や、やめてぇ!」  さすがの真由も心からの懇願の悲鳴をあげ、身体を大きくひねる。陽はその動きが自分 を捕らえる一瞬前にその場を動き、闇へと溶けていく。 「はぁ、はぁ……くぅ!」  ようやく肛門への刺激は消えたが、落ち着いてくるにつれ恥辱は深まる。  陽の指は、彼女の肛門の動きを感じられるほどに差し込まれたのだ。彼女のレース付き のショーツは、完全に肛門にこすり付けられてしまっていた。  もちろんトイレで用を足した時はしっかりと拭いているが、それでも身体の中で最も汚 い部分である事には変わらない。そんな部分に、おしゃれのために買った少し高めの下着 を擦り付けられたのだ。少女の感じる屈辱は尋常ではない。彼女の強気そうな瞳の端には 涙がにじんでいた。    そしてもう一つ。これは真由自身よく分からなかった事だが、どうしても思い出してし まう。彼女は肛門を擦られた時、わずかではあるが甘い刺激を感じてしまったのだ。 (本当に何だったの、アレ。耳に息を吹きかけられた時にも感じたような……)  彼女は今まで、性欲らしい性欲を感じた事はなかった。それは彼女の未発達な身体と関 係していたかもしれないが、とにかく彼女は性的にまだ未熟であった。もちろん、自慰な どした事は無い。  だから彼女は知るはずも無い。耳に息を吹きかけられた時、肛門を擦られた時に感じた 甘い感覚が、彼女が生まれて初めて味わった快感だという事に。  いくら未発達な身体とはいえ、もう彼女も高校生だ。肉体の方は、充分に快楽を味わえ るほどになっていた。ただ精神的に興味がなかったため、今まで性欲を強く感じなかった だけだ。  耳年増な友人達が、そういった雑誌をきゃーきゃー言いながら見ていても、真由は本当 に興味が持てなかった。だから彼女が知っている性的な知識など、学校の保健体育で習っ た事くらいだ。  そのため彼女は、自分の耳や肛門が性感帯であると知らない。あの甘い感覚が性的な快 楽だとは、最初から考えていないのだ。  それでも彼女の肉体は、発育こそ未熟なものの、内面的には性的な刺激に飢え始めてい た。さすがに真由もそういった疼きを感じた事はあるが、それが性欲だという事にすら気 づかず、スポーツなどで紛らわせてきた。  それは一時のごまかしにはなるが、根本的な解決にはならない。結果、彼女の一見未成 熟に見える肉体は、内にいやらしい炎をくすぶらせ続けている状態となっていた。 (……まぁいいわ。それより、下着どうしよう。お尻に食い込んでる……恥ずかしいけど、 直さなきゃ。スカートめくらないようにして……)  考えても分かる訳の無い問題は後回しにし、彼女は懐中電灯を持っていない左手をスカ ートの中に入れ、ゆっくりと下着の食い込みを直し始めた。その姿を、今さっき肛門を触 った男に見られていると分かりながら。


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