格安の代償6


浣腸器はゆっくりと肛門から引き抜かれた。恭子はぶるっと身震いした。
…ゴロロロ…
恭子を抑えていた手が離れ、腰は元の位置に降ろされた。もちろん股は開かされたままだ。
冷たいガラス製器具は、確実に恭子の体内に液体という刻印を残していった。終わっていない。だから恭子は目をつぶっているわけにもいかない。しかし周囲には一糸まとわぬ全裸の男達がいる。そしてそれぞれが股間に凶器を構えていた。
(…だめだ…犯されるんだ…)
なぜだ。なぜ自分が裸になってるわけでもないのに、全員の性器が大きくなっているのだ。こんな状況下で欲情しているのはヘンだ。理解に苦しみながらなん十秒か過ぎた。
このままで済むわけがない。そう思ったとたんに身体がブルッと震えた。
…グブッ…ゴッゴロロ…
「…ぐっ…ぐ…く…」
「効いてきたか?…」
「…う…くっ…」
さすがに薬の効用を知らぬわけはない。いまはまだいいとしても、いずれは破局が訪れることは明白だった。いま、最悪のその下にさらなる最悪がある。
「どうだ、効いてきたのか?」
恭子は頷いた。
「まだ我慢できるか?」
今度は首を横に振った。しかめっ面の泣き顔でそうするより道がなかった。
そして男達は恭子を拘束から解いた。ゆっくりと大切なものを扱うかのように恭子が台から降りるのを手伝ってやる。一方恭子は走り逃げるような激しい動きができる状態ではなかった。最悪の事態はまだ迫ってきていないが、心と身体がぶるぶると震えている。降りてもまだ男達は恭子を取り囲んでいた。下を向きたくないのでしゃがむわけにもいかず屈みぎみになる。恭子は力なく両手で胸を隠すしかなかった。
すると集団が前方に道を空けた。壁のベンチに恭子の衣服がきちんと折りたたまれているのが見えた。恭子は息を呑んだ。希望の光が見えたような気がしたのだ。当然のごとく恭子はそちらに歩を進めた。そのとき両脇の誰かに手を掴まれた。
「やっ!や…」
恭子はそれでも足を踏み出す。両手が後ろへ回った。手首にすばやくなにかが巻きついた。後方をちらちら見ながらもどうしても目は前方に向く。やがて手が離されると恭子は異常に気づいた。手が前に来ない。後ろ手首が離れないのだ。なにか器具のようなもので結び付けられている。
(…ふ…服…これじゃ着れない…)
なにがなんだかわからなかった。それでも恭子は衣服へ向かう。
しかしもう一歩というところで男が立ちふさがった。
(…え…?…)
恭子は混乱した。なぜだ、せっかくここまで道を作ったのはそっちのほうではないのか。
「…なに…ひっ!…」
触れる肌を感じた。後ろに男達が迫っていた。そして他の男が退いて道がもう一つ、横の方向に作られた。
「…ぇ…」
その道は短かった。すぐに突き当たる。しかしそこに見えたのは壁ではなく、入口のドアであった。
「…ゃ…やっ…ひぃっ!…」
後ろの男達がくっついてきた。身体に触れたことのないモノの感触を感じた。逃げるしかなかった。
そして男が一人、ドアノブに手を掛けた。
「…やあっ!いやあっ!」
男達は恭子の手めがけてモノを当ててきながら進んできた。スペースは全くない。そしてドアが一気に開かれた。
「やああーーーーっ!!」
恭子は押し出されるように外へ向かって駆け込んだ。少し温度の冷めた外気が肌に触れた。地面を向いていた恭子はすぐに顔を上げた。
「いっ!いっ!イヤアアーーーッ!!!」
外は広かった。前方50Mに丸く地面が広がっていた。その円を作っているのは無数の男達だった。100名近くいるだろう、恭子を遠くから取り囲んでいた。
出てくるのを待っていたのだ。全員が一糸まとわぬ全裸だった。


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