第六話「幻惑士カルヴァナの罠」


 プシーラが命を込めてくれた武器。その力はすごかった。剣を叩きつけるだけで良いってプ シーラは言ってたけど、その必要もなかった。だって、森で出会った魔物達はそのほとんどが 私たちの剣の光を見ただけで逃げ出してしまってたから。だから、剣を振るった事さえもほと んど無かった。そんな感じで順調に旅を続ける私たち。でも、周りの景色は相変わらず木々ば かりだった。 「ちょっと、この森長くない? いつになったら抜けられるのよ」  チリン  あれ、今なにか聞こえたような。 「そうですわね。いつまで歩いても一向に風景が変わりませんし。もしかしたら迷いの森とか いう類のものなのでは?」 「ちょっと、不吉な事言わないでよ。それに、剣の光をたどって来てるんだから、迷うわけな いわよ」  チリン  あっ、まただ。これって鈴の音? 「ねえ、水ちゃん、空ちゃん。なんか、鈴の音みたいなの聞こえない?」 「えっ、別に何も聞こえなかったけど」 「わたくしにも、何も」 「ただの空耳じゃないの?」  そうかなぁ。確かに聞こえたような気がしたんだけど。 「あっ、見て見て。あれって泉じゃないの?」 「本当ですわ。行ってみましょうか」  水ちゃんが指差した先には綺麗な泉が広がっていた。近づいてみると、池より一回り大きい くらいで、思ったよりも小さいものだったけど、でも水がすごく透き通っていて美しい所だっ た。 「排水などで汚れていない、自然の物ですわね」 「ほんと、すごく綺麗・・・。ねえ、望、空。ここで水浴びしていかない?」 「うん、それいい」 「そうですわね。それに、水浴びは読者サービスの基本ですから」 「えっ、それなに?」 「何でもありませんわ」 「2人とも早く! すごく気持ちいいわよ」  水ちゃんはもう裸になって、水の中に浸かっている。私たちも防具を脱いで泉の中に入った。 「たまには、こういうのも良いですわね」  空ちゃんがしみじみと言う。確かにそうかも。私の胸の宝石の中に入っている宿泊用のコテ ージにはシャワーも付いているけど、こうやって水の中に浸かるのには、また違った良さがあ る。冷たい水の感触が、旅で疲れた体に心地良い。それにこうしてプカプカと浮かんでいると、 嫌な事は全部忘れられそうな気がする。 「望ったらなにぼーっとしてるのよ。それ!」 「!」  考え事をしていたら、水ちゃんに水をかけられた。ひどい、頭からびしょびしょになっちゃ った。 「ふふ。水も滴るいい女って感じですね、望さん」  横で見てた空ちゃんに笑われる。水ちゃんは、してやったりといった顔でこっちを見てる。 ようし、それならこっちだって。 「やったな。これはお返しだ!」  私はありったけの力を込めて水ちゃんに水をぶつける。水ちゃんも頭からびしょびしょにな る。長い髪が水に濡れてべったりと体に張り付いていた。これでおあいこだね。 「そうこなくっちゃ面白くないわ」  水ちゃんはそう言い放つと、張り付いた髪を両手を使って梳き広げる。長い髪が左右に大き く広がり、その反動で胸が上下に揺れる。飛び散った水の滴が水ちゃんの周りに広がり、幻想 的な光景を作り出していた。その中心に全裸で佇む水ちゃんは、まるで水の妖精みたいだった。 「望さん、横ががら空きですわよ」 「えっ? わぁ!」  今度は空ちゃんから水をかけられた。空ちゃん、かわいい顔してやる時はやるんだから。 「ナイス、空! それ、連続攻撃!」 「そうはさせない!」  私は、再び水をすくい上げようとしていた水ちゃんの阻止に入った。・・・つもりだったん だけど、足を滑らせて転んでしまったんだ。 「えっ、きゃあ!」  水ちゃんを巻き込んで倒れこむ私。なんとか2人とも水の中から起き上がる。でも、その時 私はとんでもない事をしていた。 「あれ? なんだろう、この柔らかいの」  不思議に思い右手を見ると、なんと水ちゃんの胸を掴んでしまっていた。真っ赤になって慌 てて手を離す。 「望ってそういう趣味があったんだ」 「ち、違うよ。これはただの事故で・・・」 「そういえば、プシーラさんの時も妙に嬉しそうでしたけど」 「そ、そんな事ないって」  水ちゃんも空ちゃんも意地悪な目でこっちを見てる。なんか危険な雰囲気がする。 「ねえ、空。こういう、いけない子にはおしおきが必要だと思わない?」 「そうですわね。やりますか、水さん?」 「もちろんよ」 「えっ、えっ?」  事態を飲み込めない私の左右に、水ちゃんと空ちゃんが回りこむ。そのまま2人で一斉に私 に組みかかってきた。 「ち、ちょっとなにを。や、やだ。くすぐったい」  私の体に絡みついた2人は、私の体をくすぐり始めたんだ。首すじや脇の下をくすぐられた 私は思わず声を上げる。 「あははは。や、やめて。水ちゃん」 「まだまだ。今度はこんな所はどう?」  今度は水ちゃん、私の脚の間に手を入れてくる。 「だ、だめ、そこは。か、感じちゃう・・・」  水ちゃんは私のあそこをくすぐり始める。そこをそんな風にされたら、くすぐったいという とは別の感じがしてくる。 「降参する?」 「う、うん。こ、降参するから。もう・・・」 「わかったわ」 「えっ、もう終わりですの? これからでしたのに」  水ちゃんはやっと手を離してくれる。一方、空ちゃんは冗談なのか本気なのか、そんな言葉 を洩らす。 「はぁ、はぁ・・・。水ちゃん、ひどい」 「ごめん、ごめん。望があんまり可愛いから」 「空ちゃんも、水ちゃんに付き合わなくても」 「そうですか。でも、水さんを敵に回したら後で怖そうですし」 「空、それちょっと聞き捨てならないんだけど?」 「あら。そんなお気になさらなくても」 「もう、まったく2人とも」  私は一応すねてみせる。でも、それがすぐに笑顔に変わってしまった。水ちゃんと空ちゃん も楽しそう。考えてみればこんなにくつろいだのは、こっちの世界に来て初めてだ。 「本当に、こういうのも良いよね」 「でも、漫画とかだとこういう水浴びのシーンは、たいてい覗かれてしまうのですが」 「ちょっ、空。不吉な事言わないでよ」  チリン  その時、また鈴の音が聞こえた。しかも、さっきまでのよりもはっきりと聞こえる。 「ほら。なにか音がしましたわよ」 「鈴の音? ちょっと誰かいるの?」  今度は2人にも聞こえたみたい。でも、いったいどこから? 「あそこの木の陰。誰かいるような気がしません?」 「こっちにも誰かいるわよ」 「それだけじゃない。あそこにも、それにこっちの方にも誰かいる!」  いつのまにか、私たちの周りに大勢の人が集まっているみたいだった。でも、どうしていき なり。こんなにたくさんの人に、気が付かないわけないのに。  チリン  また、鈴の音だ。それも、私の頭に直接響いてくるような。そして、いきなり周りの景色に 霧がかかった。  再び、周りの景色が鮮明になってくる。そこに、森の木々はなかった。代わりにあったのは、 石で造られたたくさんの家。そして・・・、多くの人が私たちの周りにいた。私たちは森の中 の泉ではなくて、どこかの村の池の中にいたんだ。 「えっ、えっ?」  状況が飲み込めず、動転する私たち。そんな私たちに、人垣の中から一人の女性が近づいて きた。小麦色の肌の健康的な感じの女性で、きわどいビキニみたいな服を着ている。もっとも、 私たちの鎧の方がもっときわどいんだけれど・・・。 「どうや、うちの幻覚は? なかなかおもろかったやろ」 「お、大阪弁? なんでよ?」 「それよりも、幻覚ということは今までの森の風景は全て幻だったってことですか?」 「そうや。かなりリアルやったやろ? 結構苦労したんやで」  その褐色肌の女性は、相変わらず大阪弁で言葉を返してきた。すごい、今までの全部幻だっ たんだ。 「3人とも随分と仲良いんやな。じゃれあっているとこ見させてもろうたで」  周りには20人近い人がいる。私は今までの事を思い出した。水ちゃんたちとふざけあって たこと。あれを全部見られちゃってたんだ。私は頬を赤くする。だって、かなり恥ずかしい事 もしてたから・・・。 「あっ、それに!」 私はもっと大切なことに気付いた。私たちは今裸なんだ。こんなに大勢の人が見てるのに。私 は慌てて体を縮める。 「ずいぶん陰険なことしてくれるじゃない? こういうのが、あんたの趣味なわけ?」  水ちゃんが不機嫌そうな顔で怒鳴りかかる。でも、その女性はそれをさらりと受け流した。 「今までのはちょっとした挨拶がわりや。うちの目的はあんたらを倒すことやからな。なんち ゅうても、うちはマラードはんの関係者やさかい」 「マラードの刺客!」 「そうや。うちの名は幻惑士カルヴァナ。短い間やけど、よろしゅうな」 「ずいぶんと強気ね。でも、わたしたちには魔法があるのよ」  水ちゃんの腕が魔法を放とうと動く。  チリン  その時、カルヴァナが右腕を揺らした。それと同時に辺りに鈴の音が響く。見ると、右の手 の甲に小さな鈴が付いていた。今までのは全部あの鈴の音だったんだ。 「う、なんで・・・」  水ちゃんがうめいている。 「どうしたの?」 「か、体が動かない。まるで金縛りにあったみたいに」  私は急いで駆け寄ろうとしたんだけどダメだった。私の体も動かないんだ。 「どうやら、あの鈴の音で幻覚を見せたり、体の自由を奪ったりしているようです」 「あれで暗示をかけているってこと?」 「はい、おそらく。それに魔法的な力も加わっているようです。ただの暗示では、ここまで強 くはかかりませんから」 「そういうことや。今のあんたらはうちの傀儡も同じ。生かすも殺すもうちの自由ゆうことや」 「そう簡単にやられたりはしない!」  私はなんとか声を上げる。けど、カルヴァナは動じなかった。 「強がっても無駄や。それに、簡単に殺しはせんで。その前にうんと弄んであげますわ。せな いと、うちの気が晴れんやさかい」  カルヴァナは右手の指を鳴らす。すると、私の体が勝手に動き始めた。胸を覆っていた腕が 外れ、ゆっくりと立ち上がる。私は裸のまま、大切な所を隠すこともできずに立ちつくしてい た。大勢の人の前で。 「だ、だめだ。見ないで・・・」 「だめや、せっかく可愛い体を見せているんや。ちゃんと見てやらな、いかんで。それに、わ かっとるやろ?」  私のかすれた声を聞いて、周りを囲んでいる人たちは不憫に思ったのか、さっと目を背けよ うとしたけれど、カルヴァナの声で再び視線を戻した。周りにいるのはここの村の人みたいで、 子供から老人、男の人に女の人と、いろいろな人たちがいる。みんな、最初は哀れむような感 じで見ていたんだけど、やっぱり男の人とかはだんだんいやらしい視線で私の大事な所に目を 向け始めた。私は顔を背けることもできず、その視線を受け続けるしかなかった。 「どや? みんな、あんたのことを見てるで。あんま、悪い気分はしないやろ?」  うん、確かに・・・。ううん、そんなことはない! こんなたくさんの人に裸を見られて、 うれしいわけない。こんな恥ずかしい目に遭っているのに・・・。 「なんや、もう赤うなっとるやないか。こんな、お上品に立っているだけやのに。次はがばっ と全部見せてもろうで」 「ぜ、全部って」 「言葉のまんまや。さ、早う見せてみい」 「お待ち下さい」  空ちゃんが横槍を入れる。 「望さんを解放してあげて下さい。もう、これ以上は・・・」 「ほな、嬢ちゃんが代わりに見せてくれる言うんか?」 「そ、それは・・・」 「ほな、話にならんわ。なら、続行やな」 「待って! わたしが代わりにやるから。だから、望を!」 「いえ、水さん。わ、わたくしが・・・。代わりに・・・」 「水ちゃん、空ちゃん、私は平気だから。こんなの、全然大丈夫だから・・・」  私は必死に微笑もうとするけど、やっばり顔が強ばってしまう。 「涙ぐましい友情やな。ほんなら、うちもその友情に報いましょ。あんさん方の手でこの嬢ち ゃんの体を開いてもらいましょうか」 「!」  私たち3人の表情が曇る。でも、カルヴァナは気にせず水ちゃんと空ちゃんを操る。カルヴ ァナが指を鳴らすと水ちゃんと空ちゃんが寄って来て、私の体を抱え上げた。そのまま池から 上がり、水辺にある平らな岩の上に私を座らせる。 「さ、やってもらいましようか。嬢ちゃんの脚をそれぞれ左右に広げなはれ」 台のようになっているその岩の上に、私は体育座りみたいに膝を揃えて座らされている。ただ 普通の体育座りとは違って体が後ろに傾いていて、両手を体の後ろについている。だから、こ のまま脚を広げられたら私のあそこが丸見えになってしまう。 「ご、ごめん。望」 「申し訳ございません。お力になれなくて・・・」  両脇にいる水ちゃんと空ちゃんが苦しそうな顔をしてる。私はそんな2人を見るのが辛かっ た。だから、 「ううん。さっきも言った通り、私は平気だから。それよりも、あの人が私に気を向けてるう ちに早くこの術を破る方法を探して」  そんな風に強がりを言ってしまう。でも、本当は全然平気じゃなかった。これから私の全て がここにいるみんなに見られてしまう。女の子が隠しておく大切な所が、全部見られちゃう。 そんなことが、平気なわけなかった。だけど、脚は2人の手で少しずつ開かれていく。私は無 意識にそれに抗おうとするけど。でも、脚に力が入らなかった。後ろについた両腕も全く動か ない。今の私は、自分で自分の体を自由には出来ないんだ・・・。そんな間も、二本の脚はど んどん左右に分かれていった。それにつれて私の秘密が少しずつ見えて来ている。それが止ま った時、両足は一直線になるほど大きく開いていた。もちろん、その間にある私の大切な所は 完全に見えている。脚の間に風が入る感覚が、私に現実を教えてくれた。そして、目の前の視 線全てがそこを、私の女の子を見ていた。 「・・・」  私は声を必死に抑える。2人に心配させないように。でも、そこを見ている視線はどうやっ ても防げなかった。隠すものが何もない私のあそこは、前に立っている人達には丸見えになっ ているはずだった。 「やっぱ、びらびらは小さいな。ぴっちりと閉じてて、随分と慎ましやかやないか。ほな、今 度はそれも開いてもらいましょうか」 「!」  その残酷な言葉に、私は声を上げることもできない。カルヴァナは、そこを開いて中までみ んなに見せるつもりだった。 「望・・・」 「望さん・・・」  水ちゃんと空ちゃんが、すまなそうに声をかける。 「だ、大丈夫だよ。平気、だ、から・・・」  そう言う声も震えてしまう。2人は、その意思とは関係なく私のそこのひだを摘み、ゆっく りと広げていく。 「あ、ああ・・・」  今度は声を抑えられなかった。思わず漏れてしまう甘い声。私はあそこの中の、絶対に外に 出ることのない所に、空気の流れを感じていた。恥ずかしくて、私は思わず目を閉じる。 「へえ、随分と綺麗な色やな。形も整っていて綺麗やし。なんか、ジェラシー感じるで」  カルヴァナの言葉が、私にそこがみんなに見られていることを更に強く意識させた。目をつ ぶっていても、そこに視線が突き刺さってくるのは痛いほどわかる。あそこの穴もクリトリス も、恥ずかしい所が全部見えているはずだ。ただ見られているだけなのに、まるであそこの中 をかき回されているみたいだった。なんか、あそこがじーんと痺れてくる。心臓がばくばくし ているのがわかる。私は胸を激しく上下させ、荒い息を吐いていた。 「みんな真剣に見てるで。あんたのオメコが気に入ったみたいや。でも、ただ見せてるだけや 芸があらへん。次は、なんかおもろいことでもやってもらいましょうか」  全てはこれからだと言うように、カルヴァナは微笑む。そう、私たちの受難はまだ始まった ばかりだったんだ。


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