第4話「『栄光のキャプテン=ナメラ』前編」


 「いきなりだが、イッターチーム、出撃せよ!」  棹止の号令と共に出撃する三機のイットマシン。 「ふっ、本当にいきなりだね、状況の説明を・・・」  葵の問いに。 「うむ、先ほど、レーダーが高速で飛行してくるエロザウルスらしき姿を捉えた。スクランブルをかけた防空部隊  はあっという間に蹴散らされ、敵は尚も侵攻中だ。報告によると、敵は長い舌を自在に操るらしい。気をつけて  くれたまえ!」 「むう、空中の敵か、それなら私のイッター1で相手をするわ。合体しましょう!チェンジ、イッターワン、  スイッチオン!」  茜は叫ぶと同時に変形ボタンを押していた。 「ポチッとな!」 「ああ、やっぱり気が抜ける・・・」  相変わらずのボタン音と共に変形が始まる。  腰まであるポニーテールと、スカートのすそを風になびかせながら、イッター1は颯爽と空を行く。  しかしその左手はスカートがめくれないようにしっかり押さえている。  そう。スカートの下は全裸なのだ。  そのコクピットでは、うにうにと蠢く触手が、乙女の柔肌を狙っている。 「・・・羞恥、羞恥、気を抜いたらいやらしい事されちゃう・・・」  あからさまに胸と股間を狙っていやらしいくねり方をしている触手を羞恥力フィールドで押し戻しつつ、茜は  敵との接触予想ポイントを目指していた。 「ふっ、居たよ!負けそうになったら代わってやるからね」  葵の言葉に続いて。 「わお、コブラみたいな頭してるね、強そうだよ。いざとなったら逃げちゃおうね!」  緑の能天気で無責任な声。 「大丈夫!空中戦は任せて!」  茜は力強く言い切っていた。  イッター1と、エロザウルスは数百メートルの間合いを挟んで空中で対峙した。 「人類の勇者よ、おまえ達の名を聞いておこう!」  ちょっと低めの女性の声が、エロザウルスから発せられた。 「イッターチームの坂本 茜!」 「・・・私の名はキャプテン=ナメラ。我が恥竜帝国にその人ありと謳われし武人である。正々堂々、勝負を挑む!」 「ふっ、敵にもなかなかの武人が居るみたいだね。茜、強敵だよ」 「うん。・・・キャプテン=ナメラ!イッターロボがその挑戦を受けて立つ!」 「良かろう。エロザウルス、ベロがお相手しよう!」  戦いが始まっていた。 「くっ、こいつ、動きが半端じゃない!」  数分後、茜は敵の力量に押され始めていた。  イッターカードはことごとくかわされるか切り払われ、全くダメージを与えていない。 敵の長い舌による攻撃も  紙一重でかわし続けてはいたが、それも長くは続かないだろう。 「茜、代わってやろうか?」  葵が呼びかけてきた。 「まだ、まだいけるっ!くらえっイッターシュウウウウウウトッ!」  手の中で収束したイッター線の塊を、サッカーのシュートのように蹴って、エロザウルスを攻撃していた。  かわそうとしたエロザウルス、ベロの手前で、ボール状のイッター線が大きく曲がり、その背中を直撃する。 「見たか!これぞドライブシュート!」 「ぐわぁっ!」  見事、直撃を受けたベロは、姿勢を崩して墜落して行った。 「よし、とどめだぁ!」  叫んで間合いを詰めようとした茜は、ベロが落ちていく先の海上を進む客船の姿に気付いた。 「やばっ!あいつ、あのままだと客船に突っ込むよ!」  茜は思わず叫んでいた。その瞬間に羞恥心が弱まり、触手の攻撃が開始される。 「うわぁ!こんなときにわひゃぁぁ!」  彼女の場合、他の二人と違って、何処を責められるのか予想がつかない。  股間と胸は間違い無くターゲットにされるのだが、うなじや耳、脇腹などにも触手がいやらしくまとわりついて来る。  羞恥力フィールドは股間がもっとも強く、次に胸で、その他の部分は、意識しない限り弱いフィールドしか発生  していない。  耳やうなじなどは、ほとんど無防備だった。  ぬめぬめした金属光沢を放つ触手が、まるで舌のようにちろちろと細い首筋を這い回り、茜はそのこそばゆい刺激  にビクン、と、身を竦めていた。  さらに脇腹を微妙なタッチでつつーっと、なぞられて茜は思わず身を丸めてしまう。  その拍子に開いたシートとの隙間に一本の触手がぬるりと潜り込み、茜のお尻の谷間をつつーっと、擦り上げ、  一番恥ずかしい所をつんつんと突付いていた。 「ひょわあぁっ!」  とっても恥ずかしい部分をつつかれた茜の羞恥力フィールドが一気に強まり、触手を弾き飛ばしていた。 「茜!早くしないと客船が!」  葵の叫びと同時にイッターは急降下する。 「くううっ!間に合わないっ!」  突付かれたお尻から伝わるジンジンしたむず痒さを感じながら、茜は大惨事を覚悟して顔を引きつらせる。 「ぬうううっ!」  いきなり、エロザウルスが動いていた。イッターシュートの直撃で破壊された背中の翼を自ら引きちぎって重心  をずらし、進路を変えていた。  客船を掠めたエロザウルス、ベロは、凄まじい水しぶきと共に海中に突っ込んでいた。「あ、あいつ、客船を  助けたのか?」  まだ激しく泡立つ海面上空で待機しながら、茜はつぶやいていた。 「茜ちゃん、イッター3で止めを刺すよ!」 「あ、待って!あいつは殺さないで!」 「ういっす!あたしも人殺しにはなりたくないから、半殺しで済ませるよ」  あっけらかんとした口調で緑は言う。 (このコ、意外と怖い人かも・・・)  茜はそう思っていた。 「チェンジイッター3、ポチッとな!」  いつもの口調で変形すると、水没した敵を追ってイッター3は水中を進んでゆく。 「あ、もう戦闘不能星人だね・・・どうする?」  海底で動かなくなっているエロザウルスを見ながら緑が訊ねて来た。 「・・・助けてやろう。このままだと、あの人死んじゃうよ」 「茜、ちょっと甘いんじゃないのか?こいつは間違い無く強敵だぞ!」  葵は反論する。 「でも、私は人殺しなんかしたくないよ!・・・うひゅうっ、もおっ、この触手はシリアスな場面で!」  ちょっと集中が途切れると、触手はその隙を逃がさなかった。  可愛いおへそをくりくりと掘り返すようにされて、茜は再び羞恥力フィールドで触手をふっ飛ばしていた。  どうやら触手は『穴』を狙ってくる性質があるらしい。  だんだん攻撃がいやらしくなってくる。 「じゃあ、とりあえず海の上に引き上げてやるよ」  イッター3は、ベロを抱えて水面に浮上していた。 「・・・殺せ!敗者に情けは無用!」  コクピットの外に出て来たキャプテン=ナメラはそう言って大の字に寝転がった。  トカゲのような尻尾があるのと、舌が長いのを無視すれば、凄い美女だった。  バストも九十センチ以上ある。  身に付けているのはビキニのような皮製の服だけなので、なおさら色っぽかった。 「・・・今回は、客船を助けてくれたから見逃してあげるよ」  イッターマシンに備え付けのバスローブをまとった茜は、キャプテン=ナメラに言う。「ふん。情けをかけた  つもりか?私は強姦と民間人を戦いに巻き込むのは大嫌いなのだ!常に和姦、オーラルプレイで相手を  イかせてこそ、キャプテン=ナメラの名は勇者としてたたえられてきたのだ・・・って、何で耳をふさぐ?」 『強姦』のセリフが出た時点で、茜はいつもの『エッチな言葉拒否モード』に入っていた。 「ふっ、あんたがエッチな事を言うからだよ?」 「エッチだと?何だ?それは」 「はしたない言葉だよ」 「私の何処がはしたないというのだ!?舌のテクニックだけで三千人斬りをなし遂げたこの私をはしたないと  言うのか!?」  どうやら価値観が全く違うらしい事に葵は気付いていた。  要するに、爬虫人類の中では、エッチテクニックが凄い奴が勇者らしい。 「・・・もういい、さっさと仲間の所に帰って、和平の相談でもしな。こんな戦いなんて無意味だよ」 「・・・この借りはいつか身体で返す!」 「だから身体は余計だっつーのに!」  エロザウルスの機体に装備されていた脱出ポッドでキャプテン=ナメラは去って行った。 「も、もうエッチな話は終わった?」 「ふっ、相互理解なんて、無理じゃないのかな?」  茜を見ながら、葵はつぶやいていた。 「やあ、みんなご苦労だった。今回の敵は強敵だったな、バイオコンピューターでは無く、パイロットが乗って  くるとは・・・」 「その事なんですが、やつらの価値観は、なんというか、その、エッチな方にかなり偏ってまして、そんな奴と  和平交渉をするのはなかなか大変なのではないかと・・・」  葵は棹止に訊ねていた。  棹止の最初の計画では、敵のエロザウルスによる侵攻を何度か撃退し、人類側にも彼らと互角に戦える戦力が  あることを認識させた上で和平交渉を結ぶつもりだった。 「ううむ、確かに、数千万年にわたって乱交を繰り広げてきた彼らの価値観は人類とはかなりずれてしまっている。  しかし、同じ知性体として、必ず相互理解できると信じている!」  棹止は力説した。 「へえ、意外と博愛主義なんですね」  感心した口調で茜は言う。 「え、いや・・・まあ、その、何だな、そういう事にしておいてくれるとわしも嬉しい」 急にはっきりしない  口調になった棹止の態度に茜は首をかしげていたが。 「ふっ、そういう事ですか、結局、博士も科学者である以前に一人の男、そしてそれ以前に一匹のオスだったと  いう事ですね」  葵は何か悟ったように言った。 「そ、そんなに露骨に言われると、おじさん困っちゃうな・・・」  棹止はちょっと恥ずかしそうに言った。 「え?葵ちゃん、あたしよくわからん星人なんだけど、説明プリーズ」  全く理解していない様子の緑に肩をすくめて見せた葵は。 「緑、茜、ちょっとこっちへおいで」  二人を誘って部屋の隅に行き、なにやらごちゃごちゃ話していた。 「いやあああああっ!」  茜が叫んで自閉症モードに入った所からすると、そういう内容の話だったらしい。 「え〜っ、やつらが数千万年欠けて編み出したエッチテクニックを教えてもらって商品化するって・・・おっちゃん  のスーパーウルトラマグナムドエッチ!!」  緑は思いっきり叫んでいた。 「おいおい、何でそういう話になるのかな?さすがに商品化までは考えていなかったぞ」「ふっ、と、言う事は  エッチテクや技術は教えてもらうつもりでいたわけだね?」 「ううう・・・そ、それは・・・」  何も言い返せない棹止だった。                 (2)  「ほお、それでおめおめと逃げ帰って来たというわけか?」  意地悪い口調でバット将軍がキャプテン=ナメラをなじっていた。  何度かエッチ勝負を挑んだものの、ナメラの絶妙の舐めテクの前に、五分ともたずにイかされてしまった事を、  バット将軍はねに持っていた。  爬虫類ゆえに執念深いのである。 「バット将軍!なにとぞ次の機会を!今度こそ必ずやイッターロボを屈服させて見せる!!」 「ふふっ、チャンスを与えてもいいが、罰は必要だな・・・」  口元にいやらしい笑みを浮かべたバット将軍は言った。 「罰なら甘んじて受ける!再戦の機会を!」  キャプテン=ナメラは土下座せんばかりにバットに頼み込んでいた。 「ふふふっ、よかろう・・・」  何か思いついたらしいバット将軍は、淫靡な笑みを口元に浮かべた。 「はああ・・・疲れちゃった」  研究所の一室に与えられた個室で、茜はベッドに寝転がっていた。  イッターに乗っているときはずっと全裸なので、こうして衣服を着ていると、安心感があると同時に妙な気がする。 (染まってるのかな、私・・・)  触手にいたずらされながらスーパーロボットで戦うという二重の緊張を強いられる為、イットマシンから降りると、  開放感と安堵感で疲れが一気に出てしまう。 (今日なんか、凄く恥ずかしい所つんつんされちゃったし・・・)  まだあのときの感触がお尻に残っているような気がして、茜は腰をもじもじさせた。 (あんな所を虐めて気持ち良くなってる人もいるんだな・・・)  茜はここに始めてきたときに受けたテストの事を思い出していた。  朗読するようにと渡されたエッチな小説が、そういうお尻の穴虐めの本だったような気がする。  結局怖くて手にとって見なかったが、表紙のイラストは、女の子がお尻を虐められて 泣いている絵だった。  その後に見せられたエッチなビデオでも、女の人が自分のあそこをいじりながら、お尻もいじっていたような気がした。  すぐに目を閉じてしまったからはっきりとは覚えていないが、目を閉じる前の映像は、かえって鮮明に脳裏に  焼き付いていた。 「私はあんな変態さんじゃないもん!」  思わず声に出して言ってしまい、その事がとても恥ずかしくて、茜は枕を抱えて身体を丸めていた。 「んっ!」  枕の角が、股間の敏感な部分を擦って、軽く痺れるような刺激を茜の背筋に送り込んでいた。 (嫌、変な感じがするよぉ・・・)  羞恥心を限界まで高めている時間が長かったため、そこから開放された身体は非常に敏感になっていた。  茜は一人エッチの経験がなかった。  必要以上の潔癖症である彼女は、自分の中の淫らな部分も、できるだけ見ないようにしていた。  恋愛者のドラマを見ていても、キスシーンが出てきただけで目を伏せていた。  去年やっていた人気ドラマ『百万時間キスしよう』は、学校での話題に遅れない為に毎回見ていたが、そのタイトル  どおりに異様にキスシーンが多かった。  五十分の本編のうち、二十分近くがキスシーンだった事もある。  その結果、女子高であったにもかかわらず、キスが流行った。  茜はどんなに迫られてもキスしなかった。  その後も彼女は性的な話題を極端に嫌った為、クラス内ではちょっと浮いた存在になりかけていた。  そんな時にここのパイロットに選ばれ、半ば逃避的にイッターのパイロットになっていた。  (何でこの世にエッチなんかあるんだろう・・・)  茜は本気でそう思っていた。  彼女のそういう所が、羞恥力フィールドを強め、最も汎用性の高いイッター1のパイロットに選ばれた理由なのだが。 (気を抜いたら、触手にもっとエッチな事されちゃうんだろうなぁ・・・)  そう思いながら眠りについたせいだろうか、茜は淫夢を見ていた。  無数の触手に身体をまさぐられる夢だった。  夢の中では、羞恥力フィールドは発生しなかった。  触手は思う存分、泣き悶える茜の身体を這い回った。  脇腹やうなじを這い、まだ発展途上の胸をすりすりと擦り、透明感のあるピンク色の乳首をつんつんと突付く。  おへそにも触手が先端を差し込んでくるくると動いていた。  そして、両手でガードされた秘裂への進入をあきらめた触手が、お尻の方へ這って行き、今日されたのと同じように、  つんつんと突付き始めた。 「やぁ、そんなとこ、汚いよぉ!」  茜の哀願も聞こえぬかのように、触手はつんつんと突付き続けた。  そのうちに、茜の内部に妖しい快感の炎がともっていた。  夢のせいで、理性の一部が眠っていたのも、彼女の中の淫欲を掘り起こす手伝いをしていた。 「んあ・・・ああ・・・」  夢の中で、背徳の快感を感じながら、茜は生まれて初めて、自分の秘裂を愛撫していた。  それが、彼女にとって悲劇を招く引き金となる事も知らず、ただ、夢の中で自分を辱め続けていた。  続く  次回予告:キャプテン=ナメラの再戦要求に出撃したイッターチーム、しかし、エロザウルスの攻撃で茜の集中力  が途切れた時、悲劇は起こった。  次回、『栄光のキャプテン=ナメラ』後編にスイッチオン「ぽちっとな!」


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