「石神御幸の場合」前編


あなたは”物”になりたいと思ったことはありませんか? もし、それを望むのではあればきっと貴方には私の姿が見えるでしょう。 あっ、紹介がまだでしたね.. 私の名は夕夏 結羽歌(ゆうか ゆうか)と言います。名前には深い意味はありませんのでご承知を。 ふと”物”になりたい..そう思う人の為に私は存在しています。 私には人を”物”に変える力を持っています。もちろん、永遠に”物”になる事はありません。 貴方が”物”になって何かを得られるアドバイスを与え、その何かを得れば貴方は人に戻る事ができます。 ただ残念な事に私の力は女性にしか効きません。ごめんなさい。 えっ?いくらですって。安心して下さい。お金も見返りも何もいりません。 貴方が”物”になって何かを得る事が出来れば、それが最高のプレゼントとなりますので。 あらっ?早速、私が見える女性があらわれたようですね…… 私、石神 御幸(いしがみ みゆき)といいます。高校で図書委員をしています。今日は蔵書整理の日なのに ほとんどの委員来なくて、2・3人で35000冊もの本を整理だなんて・・・。私は図書委員長だから絶対 来なきゃ行けないし・・・。あら、あの子初めて見る子ね?どこのクラスの子なんだろう? 「あなた、どこのクラスなの?手伝ってくれるのは助かるんだけど・・・」 「私。私は夕夏 結羽歌っていうの。お姉さん大変そうだから手伝いに来たの。」 「夕夏 結羽歌・・・さん??この高校の生徒じゃないよね?」 「うん、お姉さん私が見えるなんて心が綺麗なんだね。心が綺麗じゃなきゃ私のこと見えないんだよ」 この子何言ってるんだろう・・・? 「お〜〜い、石神君、一人で何ぶつぶつ言ってるんだい?早いとこ作業進めなきゃ終わらないよ。」 「えっ、小林君。私一人じゃなくて・・・」 「しぃぃぃ〜〜〜、お姉さん。私、男の人には見えないんだよ。」 「ええっ!!」 「どうした石神君。早いとこって、だいぶ進んでいるみたいだな。これは悪かった。」 「いいの・・小林君。もっと進めなきゃね。」 「石神君、あまり無茶しちゃ駄目だよ。僕も頑張るから、ね。」 「うん・・・ありがとう、小林君。」 そういうと小林君は去っていった。 「お姉さん、あの小林って人、好きなの?」 「えっ、あっ、いやっ、結羽歌ちゃん、いえっ、あのね」 私は返答に困っていた。彼、小林 正幸(こばやし まさゆき)君は私の憧れの人であり、片思いの相手であった。 私は彼の推薦だったから委員長を受けたのだ。 「お姉さん、あの小林って人の気持ち知りたくない?」 「結羽歌ちゃん・・・。それは知りたいけど・・・。」 「じゃあ、私がお姉さんの夢叶えてあげる。これ終わったらまた会いに来るね。それまで早く終わるように手伝って あげる。」 「えっ、結羽歌ちゃん?あっ、ちょっと!!!」 結羽歌ちゃんはそういうと、てきぱきと蔵書整理を手伝っていった。 「石神君、今日は無茶させちゃって、御免な。」 「あ、いや、気にしなくていいよ、小林君。私、役に立てて嬉しいし。」 「本当に御免な。明日は委員の仕事休んでいいよ。今日来なかった奴にやらせるから。」 「ううん、いいの。私、本好きだから。」 本当は小林君のそばにいられるから何だけど・・・。そんなこと言えないし・・・。 「あれ、俺携帯忘れたみたいだ。とってくるから石神君、先帰りな。」 「うん・・・。じゃあね。」 私は小林君と別れ校門に向かった。その時 「お姉さん、お疲れ様。」 「あっ、結羽歌ちゃんさっきはありがとうね。助かっちゃった。」 「ううん、いいよ御幸お姉ちゃん。私お姉ちゃんの役に立ちたいんだ。」 「本当にありがとうね、結羽歌ちゃん。」 私は感謝を述べながら少し違和感があった。(私、名前言ったっけ・・・??) 「じゃあ、今度は私の力でお姉さんの役に立つね。」 「結羽歌ちゃんの能力って、何なの?」 私は興味津々で聞いた。 「私ね、私が見える女の人を物にすることが出来るの。この力でお姉さんのお役に立つね。」 物にする・・・???人を・・・?????私の頭の中で「?」がいっぱい並んでいた。 「お姉さんにもわかるようにしてあげるね。」 私はその後急激に眠くなり、意識を失った。 あれ、私・・・どうしたんだろう??さっきまで・・・そうだ結羽歌ちゃんとか言う女の子と話していたんだ。 あれからだが動かないな。その前に私・・・・服着てないよ〜〜〜!!!あれ、声がする。この声は小林君!! 隠れなきゃ!! 「おっ、よかった。ここに携帯置きっぱなしだったか。ダチに電話帳見られたら恥ずかしいしな。」 (小林君、こっち来ちゃ駄目!!) 私は大声を上げた。いや上げたつもりだった。しかし、声が出ていない。 (どうなっているの。何で声が出ないの!!何で体が動かないの!!何で私、裸なの!!!) 「さて、携帯もあったことだし、帰るかな。しかし惜しかったよなぁ。せっかく御幸君と帰るチャンスだったのに・・・」 (えっ!!私ならここにいるよ、小林君。お願い気付いて!!!) 「あれ、このストラップ御幸君に似てるなぁ。この顔や眼鏡の感じとか、胸の大きさとか・・・」 (小林君、何言ってるの!!小林君がそんなとこ見てたなんて!!) 「まぁ、いいか。取り敢えず帰ろう。」 小林君が携帯をつかみ胸のポケットに入れた時、私の体も携帯に引かれるように宙に浮いた。 (えっ!!どうなってるの!!私・・・もしかして物になっちゃたんだ・・・) 私はここで初めて実感した。結羽歌ちゃんが言ってたことが全てほんとうだと知ったのだった。 これからどうなのるのだろうか・・・


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