「鳳 美貴の場合」前編


あなたは”物”になりたいと思ったことはありませんか? もし、それを望むのではあればきっと貴方には私の姿が見えるでしょう。 あっ、紹介がまだでしたね.. 私の名は夕夏 結羽歌(ゆうか ゆうか)と言います。名前には深い意味は ありませんのでご承知を。 ふと”物”になりたい..そう思う人の為に私は存在しています。 私には人を”物”に変える力を持っています。もちろん、永遠に”物”に なる事はありません。貴方が”物”になって何かを得られるアドバイスを 与え、その何かを得れば貴方は人に戻る事ができます。 ただ残念な事に私の力は女性にしか効きません。ごめんなさい。 えっ?いくらですって。安心して下さい。お金も見返りも何もいりません。 貴方が”物”になって何かを得る事が出来れば、それが最高のプレゼントとなりますので。 あらっ?早速、私が見える女性があらわれたようですね…… 私、鳳 美貴(おおとり みき)と、申しますの。私、鳳財閥の一人娘ですの。私にとって 男なんて道具にすぎませんわ。よってくる男どもは、我が鳳財閥の財産目当て・・・。 そんな男ども、道具扱いしたところで、罰なんて当たりませんわ。ふぅ。 「ずいぶん荒んでますわね、あなた。」 「あなた何者?どこから来たのかしら?説明していただける?」 私の前にいきなり小さな女の子が現れた。小さいと言え雰囲気はどこか侮れないものがあった。 「私?私は夕夏 結羽歌って言うの。よろしくね、鳳財閥のお嬢さん。」 この子いったい何者?私この子に何も言ってないわよ。それなのに・・・ 「あら、私があなたの名前を当てたことで驚いているのかしら?そんなに驚くことでは  ないでしょう。あなたは大財閥のお嬢様でしょ。そんなお嬢様なら誰でも知っているわよ、  美貴お嬢様。」 この子絶対何か隠しているわね。確かにうちの財閥は3本指に数えられるクラスよ。でも私は 財閥のパーティーには出たこと無いですもの。だから、私のこと知っている方がおかしい。 「あなた何者なの?私のことを知ってる人なんて社交界でも数えるくらいしかいないのよ。」 「まぁ、いいじゃないの。私ね、あなたみたいな人に知っておいてほしいことがあったから  ここに来たのよ。」 「私に知っておくべき事ですって。何よそれ!!」 「あなたが知るべきは物の痛みよ。さぁあなたは、物の、いえ、物のように扱われた人たちの  心を知るのよ!!」 「あなた何を言ってるの?物のように扱われた人たち??そんなの当たり前じゃない、あんなやつら」 そうよ、財産目当ての連中なんて物のように扱われるべきなのよ!!私に使われるのだから、 最高なことでしょう!! 「あなたは、まだまだね。さぁ、このペンダントを見てご覧なさい!!」 私は吸い込まれるようにそのペンダントを見入っていた。そしてだんだん意識がなくなっていった・・・。 あれ私は・・・そう、変な女の子にペンダントみせられて・・。 あら、体が動かないわね。あら、声も出ない!!私どうなってるの!!!! 「おっ、こんなとこに何でこんなもんが落ちてるんだ。まあいいか、家に持って帰って使うか。」 (きゃあ!!汚い手で触らないで下さる!!ってなんで声が出ないのよ!!!!) 私には訳のわからないまま不安に満ちていた・・・。


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