第4話「汗が止まらないせいで」


(何だろう..今日は男子たちの視線が気になってしまうわ..)  朝からすでに気温は30度を超えており、エアコンの無い教室でのホーム ルームは、みんな汗だくだった。  そんな中で殆ど汗をかいてない学級委員の唯花が進行役として教壇に立 ち、ホームルームで話し合うテーマについて、クラスメイトに意見を求め ていた。 「えっと、今日からはテーマを変えて、みんなから意見を出してもらいた いと思います」と新しいテーマを黒板に書く唯花はつい昨日の宣言を思い 出してしまう。  何故なら、今度のテーマは<学校にエアコンを導入してもらうには?> と昨日の恥ずかしい宣言と内容が被るものだからだ。 「それじゃ、みんなどんどん意見を出してください」 (ぁぁ..私ったら、昨日ここで宣言したのよね..は、恥ずかしい)  真面目な性格からか、教壇での立ち位置は常に変わらず、昨日はまさに この位置で唯花は素っ裸になって恥ずかしい宣言をしたのだ。 %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%  クラス学級委員の相川 唯花です。今から私はみんなに宣言いたします。  エアコンを導入しない学校へ抗議するために汗が止まらなくなった時は、  その場で相川 唯花は全て脱いで裸になります!! %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% (あ、あれは..ジョークってことで済んだし..男子たちは知らないし.. 汗もかいてないんだから..気にすることはないのに..)  それでも唯花の胸の鼓動が乱れてくる。男子たちに視線を合わせないよ うに窓や廊下の方へ目を反らしてしまう。  いつもなら、こそこそスマホをいじってる何人かの男子に注意するとこ ろだけど、スマホの画面を見てニヤけてる男子の顔を直視できない。 (いったい何を見て、あんなにニヤニヤしてるのかしら?私の写真ってこ とはあり得ないよね?うん、そんなことは絶対にないはず..)  気のせいか、何人かの男子たちがスマホに映った画面と教壇に立ってい る唯花を比較している感じがある。それは唯花と斎藤拓哉だけが知らない 秘密。  そんな秘密を知らない斎藤が立ち上がって「お前ら!スマホを見てると 俺が取り上げるぞ!」と大きな声で怒ってきた。  ただ、男子たちが何故か本当に取り上げていいのかよ?という顔を見せ てきている気もする。  それはきっと斎藤が絶対に見たことがない唯花のあらわな姿を壁紙にし てあるからだろう。  制服も下着も一切付けていない唯花の全裸写真。恥部は手隠しで見えて いないが、真面目な斎藤を一発でノックアウト出来る衝撃さはある。  唯花の彼氏としてクラス公認の斎藤だが、小学生程度の交際しかしてい ない。唯花としたのはチューとハグまででデートも手をつないで映画館や 水族館に行ったぐらいだ。  今や、彼氏の斎藤だけが唯花の衣服の下を透かして想うことができない。  唯花が昨日着けていたブラとショーツの形と色、ぷるんとした生尻、見 事なDカップの下乳と谷間、片手で隠せるほどの恥毛の量と、手隠しぐら いじゃ隠しきれなかった唯花の恥ずかしい情報を男子たちは脳裏に焼き付 けていたのである。  今、男子たちの妄想視線では今の唯花は素っ裸でホームルームをしてい るように見える。  そんな男子たちのいやらしい視線を唯花は無意識に肌で感じ取っていた のかも知れない。しかも、唯花の額ににじみ出た汗がツツーと滴り落ちる。 「!!」(えっ?わ、私、汗をかいてる?)  今までどんなに暑くても汗をかかなかった唯花が、今日この場所で急に 汗をかきはじめた。 「きょ、今日は..暑いわね..うん、暑いよね..」唯花は汗をかいた 理由を口にしてみたが、それ以上は何も言えなかった。次の瞬間、クラス メイト全員の視線が一斉に突き刺さってきている感じがした。 「!!」(あ、あ、あれは..ジョークなんだから..ジョークって言っ たはずよね?)  決して誰かが唯花に対して何かを要求したわけじゃない。無言の視線が 何かを語っている気を唯花自身が勝手に判断しただけだ。 「ぁぁ..」(あ、汗がとまらない..どうして?)  普段汗をかかない唯花が汗をかきはじめれば、皆の視線が集まるのは当 然のことだ。何も知らない担任も彼氏の斎藤も唯花の方をじっと見てくる。  けれど、唯花の脳裏には昨日の恥ずかしい宣言が繰り返されてしまう。 「えっと、他にエアコンを導入しない学校へ抗議するための案はあります か?」と真面目な唯花が墓穴を掘るような発言をした。  唯花の言葉を聞いて、スケベで有名な杉田と茂木がギリギリの台詞を出 してきた。 「ここは学級委員の相川さんが体を張って訴えるのはどうっすか?」 「!!か、体を?」 「そう、俺たちクラス全員のために、相川さんが一肌脱ぐってことで」 「えっ?ぬ、脱ぐって..」  これを耳にした敬子は、すごい形相で杉田と茂木を睨みつける。斎藤も 居る中で言ってはいけない言葉だからだ。 (あんたらバカなの?こ、この流れはまずいわね..)  が、香菜子が「って言うか斎藤君も一緒に体を張らなくちゃダメよぉ〜。 一応副委員長なんだからぁ〜。もしかして相川さんだけに任せるつもり?」 とフォローしてきた。 「!!当たり前だ、こういうのは俺が先頭で体を張るつもりだ!唯花だけ やらせるつもりは毛頭ない!」と大声で熱く応えてきた斎藤。  どうやら、斎藤だけが、さっきの台詞を勘違いしているようである。  杉田と茂木は、唯花の宣言を見ているから、汗をかきはじめた唯花に「 さあ、宣言通り、今からストリップをしてくれよ」と言ったのと同じだ。  もちろん、杉田と茂木もあの宣言を本気にしているわけじゃない。真面 目な唯花があんな恥ずかしいことを宣言するわけがないと思っている。  全て敬子が仕組んで、あの宣言映像も使える部分だけを切り取って、男 子たちに見せてきたのは百も承知だ。 (どうせ、あの手隠しもきっとニプレスや前張りで完全に隠してあるんだ ろう?そうでなきゃ、相川さんはあんな姿にならないよな。俺たちにとっ ては、あの真面目な相川さんから制服と下着を脱がしたことに高く評価し たいぜ。そして今も相川さんに汗をかかせることに俺は感動しているっ!) (茂木よ、お前の言いたいこと俺も分かるぜ!俺としては、あの宣言を今 日もしてもらいたい!敬子、お前に期待しているぞ!今日も使えるところ だけ切り取って俺たちを大いに興奮させてくれよ!)  結局、唯花はこのホームルームでボタン1つも外すことがなく、普通に 終えることができた。  昨日と一つだけ違うのは、普段全く汗をかかない唯花が大汗をかき続け ており、唯花自身も焦っている様子だった。 (何でこんなに汗をかいているんだろ..でも教室で脱ぐなんて出来ない! 大体、あれはジョークよね?みんな、真に受けてないよね?どちらにして も、私には脱ぐなんて出来ないから!)  この日の自習時間は昼食前の4時限目であり、昨日まで汗をかかなかっ た唯花に澪が駆け寄って、少し意地悪な質問をした。 「相川さーん、何か今日はすごく汗をかいてるんだけど、どうしたの?」 「な、何でもないわ..きっと今日は昨日より暑かったかしら..」 「ははーん、もしかして昨日のジョークを実現したくて、自然に汗をかい ちゃったのかしら?ちなみに今日は昨日より5度も温度下がってるよぉ〜」 「そ、そういうわけで汗をかいたわけじゃないわ..」 「まあ、それはどうでもいいわ〜。私が言いたいのは昨日みたいに野暮な こと言わないでとお願いしにきたの〜」 「野暮なこと?」 「ほら、昨日は相川さんいろいろ文句言ってたでしょ?あーいうのは勘弁 してね。私たち、本当は暑いから裸になっただけよ。別に相川さんに脱い でなんて言わないから」「えっ?」 「そのままの姿で構わないってことよ!心の中で勝手に私たちのことを淫 乱扱いすればいいって話よ」「!そ、そんなこと思ってないわっ」 「はああ〜、やっぱ分かってないわね」「何が言いたいのよ、澪」 「あなたは思っていなくても、1人だけ制服姿のあなたを見て、みんな理 解してくれると思う?」「ぅぅ..」 「裸になれとは言わないけどさ〜、今日はそれなりに協調性を大事にした 方がいいと思うわよ。敬子の友人の私だから、忠告してあげたのよ」 「あ、ありがと、澪。そ、そうよね..学級委員の私がクラスの和を乱し たらダメよね..」「って、もうすぐ4時限目じゃない。そういうことで あとは相川さん自身に任せるわっ」「う、うん..」  澪があらかじめ釘をさしたせいか、自習時間で女子たちが服を脱ぎ始め ても昨日のように文句をいうことは無かった。  ただ、周りに合わせて自分も脱ぐことは出来ず、女子全員が下着姿にな っても唯花だけが制服を着たままであった。 (やっぱ私には無理..みんなは暑いから脱いでるだけなんだから..私 はこのままでもいいんだよね?)  いつまでも制服姿の唯花を遠目で見ていた敬子は苦笑いしながら、「う わぁ〜、筋金入りの頑固だね〜、澪の忠告も効果なしかぁ〜、まいったね」 と呆れていた。 「ちょっと敬子!私、結構頭にきてるんだけどぉ〜。私なんかの言葉は無 視ですかぁ〜。もうマジで無理やり脱がしたいですけどぉ〜」 「ごめんごめん澪、それだけ脱ぐことに抵抗があるってことで私に免じて 許してちょうだい」「別にいいけど..こんなチマチマとしたことを続け なくちゃいけないの?」「そこは大丈夫、香菜子に任せてあるから!ねっ」 「香菜子に?」「まあ、見ててちょうだい」  5分後、香菜子が大声を出して「やっぱ、こんな暑くちゃ下着なんて無 理っ!私脱いじゃうね!」と素っ裸になると他の女子も一斉に脱ぎ始めた。  昨日同様に教室中に数多くのブラとショーツが舞い散っていくが、唯花 は黙ってそれを見てるだけだった。 (またみんな裸になるのね..これじゃますます私だけが目立っちゃう)  制服姿で困惑している中、裸になった香菜子が優しく「ほら、相川さん も脱いで。下着姿までなら大丈夫でしょ?雰囲気が悪くならない内に早く」 と声を掛けてきた。 「そ、そうよね..暑いしね」(私ったら、また同じ過ちを繰り返すとこ だったわ..下着姿まででいいんなら)  周りが裸になったことで唯花の恥ずかしさを和らげる作戦は上手くいき、 下着姿になったとこで女子たちが近づいてきた。 「相川さん、今日の下着も可愛いね。それどこで買ったの?」「えっと..」 「やっぱ、このツルツルの肌さわりは癖になるわね〜」「ちょっとぉ..」  昨日と同じ流れで、唯花の脱がしっこが始まる。  この脱がしっこも昨日のような抵抗はなく、恥部を弄られるのも素直に 受け入れているようだった。  それを見ていた澪が敬子に再度、文句を言ってきた。 「なんだかんだ言って、結局は素っ裸にされて弄りまわされてるじゃん。 もう脱がしたままにしてもいいんじゃない?何でわざわざ戻すかなぁ〜」 「戻すことが意外と大事なのよ。まだ2日目なんだから焦る必要はないわ」 「敬子がそこまで言うなら従うけどぉ〜、あの宣言をもう1度やらせるな んて出来るの?あれ、ジョークだったんでしょ?同じジョークを素直にし てくれないよね?」 「それも大丈夫よ。私たちは昨日と同じようにいつまでも裸のままで居て くれれば、流れは私が作っておくわ〜」 「…ギリギリは勘弁してよね..裸を男子に晒される危機は私たちも同じ なんだから..昨日は間に合ったから良かったけど..」 「まあ、私に任せておいて!」  敬子の言った通り、自習が終わる頃になると下着姿の唯花がやってきて 相談してきた。 「ねえ敬子、今日もみんな裸のままなんだけど、どうしよう..」 「そうね、このままじゃ今度こそ見つかっちゃうよね」 「それはダメッ!」と顔を真っ赤にしながら、敬子の言葉を待っていた。 (はあ〜、まだ私が言わないと駄目のようね..まあ、これは予想通りな んだけど..) 「はい、今日もこれを唯花にあげるわ。またこっそりと付ければいいわ」 「あっ..やっぱり今日も..」  昨日と同じに唯花にニプレスと前張りを手渡してきた。もちろん、渡し ただけで唯花が自分で動くとは思わなかった。 「昨日のジョーク、みんな気に入ってるみたいで、もう1度見たいから、 いつまでも裸でいるんじゃないの?」「そ、そんなぁ..」 「ジョークなんだから、やってあげなさいよ。今日だって汗をかいた唯花 に誰も文句を言ってないでしょ?」「…う、うん」 「ほら、時間もないんだから、今日はさっさとやった方がいいわよ」 「わ、わかったわ..」  敬子の言う通り、時計を見ると時間が迫っていることが分かった。昨日 と同じジョークでこの状況を解消できるなら、真面目な唯花としてはこれ しか選べることが出来ない。 (仕方ないわ..こ、これはジョークなんだし、みんなが服を着てくれる なら..言うしかない!) 「あ、あの、みんな!今日も全員、制服を着てくれれば、例のジョークを 見せるから..」  この台詞を聞いて、女子たちが少し意地悪なことを聞いてきた。 「ねえ、例のジョークって何だって?それだど、よく分からないよ」 「学級委員の相川さんらしくないよ。もっとはっきり言わなくちゃ」 「ぅぅ..わかったわよ」(言えばいいのね..それで気が済むなら..) 「相川唯花は..これから自分の席で裸になってから、教壇の方で昨日と 同じジョーク..じゃなくて宣言をします..こ、これでいいですか?」  満点の回答ではないが、女子たちはこれを承知することにした。ただ1 つだけ追加の条件が加わった。 「ねえ、どうせなら、謝罪宣言にして欲しいかな〜」「それ私も賛成っ」 「えっ?謝罪宣言って..それって今日脱がなかったことを言ってるの?」 「そうそう、ジョークっていっても流れっていうものを大事にしないとね」 「…そ、そうね..わかったわ..今日は謝罪宣言します」 (これはもっともな意見よね..これぐらいなら..受け入れなくちゃ)  唯花の言葉を聞いて、女子たちが着替え始める。次々と下着や制服を着 ている中で、唯花だけが自分の席で下着を外しはじめた。 (今日はすぐに宣言して、早めに開放してもらわなくちゃ..)  こうして、今日もニプレスや前張りを付けて、教壇でヴィーナスの誕生 と同じ姿で立つことになった唯花。 「あ、あ、あ、あの、謝罪宣言しま、ます、こ、これはジョークで!ジョ ークということで、ジョークとしてせ、宣言します。あ、相川、ゆ、ゆ、 唯花は、えっと、その、あ、あつきゃったときは..」  普段の活舌さが嘘のように思えるぐらい、唯花がグタグタな宣言を始め る。宣言の後半の方は恥ずかしさで声が届かず、口をパクパクと動かして いるだけだった。  これには文句を言いたい女子たちだったが、敬子の「1回目は本人の好 きにさせておいて」と言うことで、黙って聞くことにした。  もちろん、唯花自身でもダメダメな宣言をしたのは理解しており、敬子 に助け舟を求めた。 (やっぱ、こんな恥ずかしいこと上手く言えないっ!でも言わないと、い つまでもこのままだし..今日も敬子に助けてもらわないと..)  どうやら唯花のヘルプを待っていたらしく、今日も敬子が近づいてアド バイスをしてくれた。  ぼそぼそ<仕方ないわね〜。今日も私が宣言文を考えてあげるわ。唯花 はこれから私のいう言葉をそのまま言ってね>  まさか、この謝罪宣言が今日の放課後の報告で使われるとは知らずに、 敬子が考えた大胆な台詞を言ってしまったのだ。 (んぷぷぷぷっ..今日も大成功ね。さて、放課後が楽しみだわ)  こうして、放課後の2年3組では今日も斎藤拓哉だけを除いた男子たちが 集まってきた。  早速、プロジェクターで自習の映像が流れ始めるが、今日は昨日より制 服姿の女子たちの談笑が長く映っていた。  いつまでも唯花のお宝映像が出てこないことに男子たちから文句が出始 めた。 「まさか!今日は失敗したのか?いつまでも制服着た女子しかでねーぞ」 「まあ相川さんが、あんなこと続けてするわけねーか..期待して損した」 「いや、ちょっと待て!澪と那奈がカメラに向かって何かを見せてきたぜ」 「うおっ!!これって、まさかぁぁぁ〜!すげえええぇっ〜!」  唯花に気づかれないように、澪と那奈が汗で濡れているブラとショーツ をカメラに向けて見せつけてきた。 「ほら、このブラ、汗でぐっしょりよ〜。相川さんのおっぱいって汗かき やすいのかもぉ〜」 「っていうか、このショーツぐちょぐちょなんですかぁ〜。汗以外にも、 いろんなものを漏らしちゃってるのかもぉ〜」と言うと唯花の下着は机の 上に置かれる。言うまでもないが、そこには唯花の脱いだ制服も置いてあ った。 「ったく焦らしすぎだぜ!これはもう期待しちゃっていいんだなっ!!」 「早く、早くっ、相川さんのムフフ姿を拝見させてくれぇぇぇ〜」 「!映像が動いたぞっ!よしっ、教壇が映るぞっ、映るぞぉぉぉぉっ〜」  プロジェクターの画面に男子たちが群がったところで、いよいよ唯花の 全裸姿が映った。恥部は一切見えないが、そんなのは脳内補完で十分満足 できる。  昨日と同じでグタグタの1回目の宣言映像ではなく、敬子や女子たちの アイデアに応え、簡単な質疑応答も加えた3回目の謝罪宣言が始まったの だ。


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