第3話「唯花の知らないところで」


 敬子に促される形で、裸宣言をした唯花に何人かの女子が背中を丸めて 笑いをこらえていた。 (ぷぷっ!相川さんついに言っちゃったわね〜。これ本気でやるのかな?) (今までの流れじゃマジ無理でしょ!けど敬子が入れ知恵してそうね) 「あ、あの..本当に脱ぎますから..みんな服を着て..」(どうしよ)  男子たちに、いや彼氏の斎藤拓哉に、この破廉恥な状況を晒すのは、ど うしても避けたかった。刻々と迫る時間に冷静さを失った唯花は、近くに いた敬子の「もっと過激にはっきりと!」というおかしなアドバイスを素 直に従うしかなかった。 (はっきりと?ちゃんと言えばみんな服を着るの?でも今は言うしかない) 「あ、あの、みんなが全員、制服を着てくれれば、この私、学級委員の相 川 唯花が裸になりますっ!」  この宣言にようやく女子たちが雑談をやめて耳を傾けてくれた。 「えー、本当?それなら、着替えるけどぉ」「私も着替えようかな?」 「ところでさ、それってただ脱いで裸になるだけ?」「そ、それは..」 (自分の席で裸になるだけじゃダメなの?それ以上、何を?) 「それって裸を見せるんだから〜、どこかで立つってことでいいよね?」 「え、えっと..」(ええええ〜、わ、私は何を言えばいいの?)  本当は自分の席のところで立ちたいと言いたいが、敬子が教壇の方を見 ながら、「ここにしなさい!」と無言のアドバイスをした。 「きょ、教壇で..いつも学級委員として進行している場所で裸で立ちま す」(ぁぁ..こんなことを言わなくちゃいけないなんて..)  この言葉を聞いた敬子が補足として女子たちにこう言った。 「ねぇ、みんな本当に時間が無いから、私が少し仕切っていいかな?」  その提案に唯花もコクンと同意し、女子たちも下着を手にして同意する。  実は女子たちも内心ヒヤヒヤしており、早く服を着させて欲しかった。 「唯花にはまず、自分の席で全て脱いでもらって、それを確認してみんな が着替え始める。そのあとで教壇に行ってもらえれば、ずっと裸のままで しょ?」 「け、敬子、それはちょっと..」と違う方法を頼もうとしたが、時間が 無いのよと一蹴された。  が、これだと唯花が恥ずかしがって何も出来なくなるので、追加でこう 補足してきた。 「そうそう、唯花が脱ぎやすいように、みんなは脱いでる唯花をじろじろ 見ないこと!それは守ってちょうだい」  これは唯花がこっそりニプレスと前張りを付けるから、その間は見ない フリしてあげてと言ってる感じだった。 「わ、わかったわ。敬子の言う通りにするわ」「私もそれで賛成〜」  女子たちも唯花が何も付けないで裸で教壇に立てるとは思えなかった。  恥部を完全に隠せれば、唯花は宣言通りのことをすると理解したからだ。  もちろん、ニプレスと前張りを付けた姿を裸と言うのは、本当なら納得 がいかない話だ。  それも、ばれないようにするには更に手で隠すのが前提となるはずだ。  唯花自身もそれは理解しており、白々しくこう女子たちに嘆願してきた のであった。 「あ、あの..みんな、図々しいお願いだけど、裸になったあと..せめ て手隠しを認めてくれないかしら?」  本来なら、手隠しなんて認めないわと文句をつけたいところが、敬子が 唯花に見えない位置で女子たちにウィンクをした。  これを見た女子たちは一切の反論をせずに唯花の手隠しを認めた。  つまりは唯花がこっそりニプレスと前張りをつけることを黙認した事に なる。  まあ、恥部隠しを仕込んだとしても唯花が下着を脱ぐことには変わりな いからだ。 「じゃあ、相川さんを信じて私たちはもう着替えちゃおうよ」 「相川さんが嘘つくわけないし、私も着替えちゃお」「私も着替える」 「私たちは相川さんを見ないから、ちゃんと脱いでおいてね」  ほとんどの女子たちがフライングし、下着をつけ、制服を着始めた。  それを見た唯花がホッとしたが、これからが唯花自身の苦悩が始まる。 (もうこれじゃ、脱がないわけにもいかないわ..でも手で隠していいん だし..その下にニプレスと前張りを張るんだから、恥ずかしいところは 絶対見えないよね..) 「そうよ、これなら脱いでも..大丈夫よね..」  どうやら、ニプレスと前張りの効果は絶大であり、今まで脱げなかった 下着をあっさりと脱ぐことができた。  これぞ敬子の策通り。もし恥部隠しが無ければ、まず唯花自身が下着を 脱ぐ可能性がほぼゼロに近い。手隠しだろうか、恥部が隠れていようが、 まずは唯花から下着を剥ぐのが最初のステップとなる。  しかも、まだニプレスを付けていないので、今の唯花は恥部全てが丸出 しとなっていた。 ーーー*−ー−*ー−−*ー−−*ー−−*ー−−*ー−−*ーーー  そして、敬子が予告したことが今”実現”した。おっぱいもおま●こも 丸出しの唯花が自分の手で脱いだ下着を服の上に置いたのだ。 ーーー*−ー−*ー−−*ー−−*ー−−*ー−−*ー−−*ーーー 「えっ?ニプレスと前張りって、こんなに小さいの?」 (・・・敬子ったら、もう少し大きめのものが無かったのかしら..どっち もギリギリで、すごく恥ずかしいわ..ぁぁっ)  乳輪ギリギリのニプレスと恥毛と割れ目だけしか隠せない前張りを皆に ばれないようにこっそりと張る唯花。  あとは手隠しをすれば、本当に裸で立っている風にしか見えなくなって いた。 「・・・や、約束どおり..裸になったので..今から教壇の方へ歩きます」 (ほ、本当は..こんなズルしちゃいけないけど..やっぱ裸を見せるな んて無理..無理だから..今はこれで許して)  必死に胸と股間を手で隠しながら唯花は教壇へ歩き始める。  唯花が教壇で立った時には、女子たちの着替えはすっかり終わり、教室 内は自習前の制服姿の女子たちが談笑し、暑がる光景へ戻る。  ただ1つ違うのは教壇のところで、ボッティチェリのヴィーナスの誕生 のように唯花が素っ裸で恥部を隠して立っていることだ。  今朝、同じ場所で一番上のボタンまでしっかり留めて立っていた真面目 な学級委員が嘘のように思える状況だ。 (ああぁ..恥ずかしいぃぃ..いくらニプレスや前張りをしても、恥ず かしい..恥ずかしいの!!)  窓の開いた教室で下着を付けずに立つのは相当恥ずかしいのか、全身を 真っ赤にして身体の小刻みに震えていた。 (いやぁぁ、はやくはやく服を着させてぇぇ〜。何でもするからぁぁ〜) 「あ、あ、あの、もうみんな服を着たんだし、これでいいよね?」 「ええ、相川さん。私たちの約束を守ってくれるなんて嬉しいわ」 「さすが私たちの学級委員ね」「もうすぐ授業が終わるのに、こんな姿で 立ってくれるなんて」「ぁぁ..言わないで..」  今、唯花の制服と下着は自分の机の上に置かれており、すぐに着替えら れない状況に追い込まれていた。 「こ、こうして裸になったから..いいよね?」 (お願い、早く服に着替えさせて!もう授業が..授業が終わっちゃう!)  1人だけ裸になった唯花の姿を見る女子たちは誰も意地悪そうな顔をし ていた。 (慌ててる♪あわててるわ〜。あの冷静沈着な学級委員さまが顔を真っ赤 にしながらパニくってよね〜) (このままじゃ男子たちに、1人だけ裸のところを公開しちゃうかも〜) (もういっそのこと、男子に晒してもいいんじゃない?恥部はしっかり隠 しているんだしぃ〜)  女子たちが放置を決めてる中、唯花は時計を見ながら足を震わしていた。 「ぁぁ..このままじゃ..私..私..」  もう何を言っていいか分からなくなった唯花にクラスの人気者である香 菜子が助け舟を出してきた。 「ちょっとぉぉ〜。いつもでも唯花を晒し者にしちゃ可哀想じゃないっ! 唯花も頑張って裸になったんだから、十分じゃないの?そうでしょ!」 「そ、そうよね」「いや、私たちも別にそういうつもりじゃ..」 「唯花もいつまでも黙って立ってたら駄目よ!ここは私みたいに過激なジ ョークを一発かまして、この場を切り抜けるぐらいしなくちゃ!」 「…ジョーク?それで、切り抜けられるの?」 「そういう真面目さを見せるから、雰囲気も変になっちゃうのよぉ〜。そ うね、私だったらこう言ってみるかなぁ〜」と言って制服を脱いで、唯花 の横に下着姿で立ってきた。 「えっ?香菜子?何を?」  実際に手本を見せてあげるわという顔を見せながら、香菜子が「あの〜、 服着てもいいかなぁ〜?もしかして何か私に求めてる?求めてる顔よね〜? いいわっ!明日の小テストで満点取れなかったら、素っ裸で校庭走るとか 宣言していいかしらぁ〜。ジョークだけどね、てへっ」と明るく言った。  次の瞬間、あちこちで笑いが起こり、「いや香菜子、それ男子たちがマ ジ吐くからっ!」「うん、ゲロっちゃうね」と女子たちがつっこんできた。 「ちょ、ちょっと、それ言い過ぎじゃな〜い。せめて食欲湧くぐらい言っ てよぉ〜!んもぉ」「あはははっは」「はははっ、香菜子マジウケる〜」  さっきまで重かったクラスの雰囲気が一気に明るくなり、女子たちの爆 笑が起こった。  唯花も思わず、ぷぷっと笑ってしまい、香菜子に「唯花までも笑うの? ひどぉーい」と言われてしまった。 (そうか..私も香菜子みたいに言えばいいんだ..でも何を言えば..)  クラスで人気者の香菜子のようなジョークを言える自信の無い唯花は親 友の敬子の方へ視線を向けた。  敬子はジェスチャーで、暑い、暑いといって身体に噴出した汗を拭って みせてきた。 (!あっ..そういうことね。ありがとう、敬子)  敬子の行動と香菜子に背中を押されたことで、勇気が沸いた唯花は大き 目の声で自分なりの過激ジョークを言ってきた。 「ねえ、みんな!私も宣言していいかしら?も、もし明日の授業で汗が止 まらなくなった時は..えっと、そ、その場で..す、全て脱いで..裸 になっちゃいますっ!も、もちろん、ジョークだからね。ジョークだから」 (これなら..みんなを巻き込むこともないし..真に受けないって言っ てたし..それに私自身も汗かきじゃないから、全く問題ないわっ)  また、敬子たちの罠に嵌ってしまった唯花。  自分から言ったこの宣言が、今後唯花の身に重くのしかかってくるであ ろう。  そして、この宣言を聞いた女子たちは皆、笑いが止まらなくなった。 「あはははっ、相川さん、ナイスジョーク!」「きゃっはははっは..」 「相川さんの宣言、確かに受け取ったわ」「さすが、私たちの学級委員ね」 「あはは、香菜子よりいいわっ!うん最高」「みんな、拍手拍手っ」  パチパチ、パチパチ、パチパチパチパチ..パチパチ、 「えっ?ちょ、ちょっと..拍手なんかしないでぇぇ」  約束を守ったこと唯花への賛辞の拍手をしたが、これは唯花にとっては ものすごい辱めとなる。 (ま、ま、窓が開いてるのに..ああぁぁ..目立っちゃう、目立っちゃ うよぉ)  窓の向こうは授業中なので生徒の姿はないが、おそらく外からは一番目 立つ教室となっている。拍手のする教室を見ると、教壇で1人だけ裸にな っている女子高生の光景が映る。  他の女子たちが制服を着て座ってる中で、真面目で有名な学級委員が生 まれたままの姿で立っている。恥部は手で隠していると言えども、開いた 窓には、生尻がはっきりと覗けるだろう。 「相川さん、もう1回だけお願い」「私からもお願い」「ねっ、ねっ」 「そ、そんなぁ」(いや、躊躇してる暇なんてないわ..) 「1回だけ!ねっ、ねっ」「お願いぃぃ〜」 「わ、わかったわ。1回だけよ」(時間がない..時間がないわ..)  理不尽な要求だが、素直に早くやった方が絶対良いはずだ。 (で、でも、もう1回って..同じことを言えばいいの?だ、誰か私に教 えてちょうだい)  そんな唯花の心の叫びに応えたのか、敬子が近づいてアドバイスをして くれた。  ぼそぼそ<今から言うことを、そのまま言ってみて。そうすればすぐに 服を着れるから!>  かなり動揺していたせいか、唯花はこの後で敬子が言った台詞で大胆な 宣言したのであった。  そして、女子たちが全員満足し、ようやく恥辱から解放してもらえた。 「あ、ありがと敬子。助かったわ」「ほら、そんなことより服を着て」 「うん!ありがと、ありがとうね」  敬子のアドバイスですぐに服を着ることができた唯花は何度も敬子へ感 謝してきた。 (んぷぷぷぷっ..やば、笑いそうになるじゃないっ!!)  唯花の感謝の念に思わず噴出して笑いそうになった敬子。こんなに計画 通りにいくとは思わなかったみたいで、今から放課後が楽しみでたまらな くなった。  数分後、授業が終わり男子たちが戻ってきたが、何が起こったかを勘付 くことなく放課後を迎えた。  放課後の2年3組。10人の女子が何かの準備をしている中、斎藤拓哉だけ を除いた男子たちが集まってきた。 「おっす、まだ準備中だったかよ」「早く今日の報告してくれよ」 「・・・それよりも、ちゃんと斎藤君を誤魔化して来ているよね?」 「当たり前だろ!俺たちの楽しみ、つぶすわけないだろ」 「それより、そっちの方はちゃんと上手くいったのかよ!」 「そうだ!相川のお宝映像、マジで見せてくれんだろうな?」 「百聞は一見に如かず、今準備が終わったから見せてあげるわ」  どうやら敬子が準備していたのはプロジェクターであり、こっそりスマ ホで撮った映像をこれから流すようだ。  まずは制服姿の女子たちが座って談笑している映像が映っていく。  言うまでもないが、これは全裸だった女子たちが丁度着替え終わった頃 の映像だ。  何とも面白味の無い映像に見てる男子たちがイラつき始めた。 「おいっ!何だよこれっ?ただの自習風景じゃねーか」 「俺たちをだましたのかよ?肝心の相川の姿も見えねーし!」 「さっきの3時限目みたいだけど、何が言いたいんだ?」 「あー、お前ら俺たちを騙したのかぁぁぁ〜!」  男子たちのイライラが増す。相川のすごい映像が見れると楽しみにした のに、くだらない映像を見せられれば当然だろう。  けれど、男子たちの苛立ちはここまでだった。次に映し出された机の映 像にイライラが一気に吹き飛び、興奮の声をあげてしまう。 「!!えっ、これって」「うおっ、何だこれっ!」「すげぇぇぇ〜!」  ある机を映した途端、男子たちが大騒ぎした。 「おい..何で、机の上に制服が?」「!いや、よく見ろよ!!あれは」 「下着だぞ!それもブラとショーツが机の上って..どういう事だ!!」  プロジェクターの画面には誰かの脱いだ制服と下着が映った。これは間 違いなく誰かが今、ここで裸になっている証拠だからだ。 「えっと、鈴木の2つ後ろだから..」「いやいや、マジかよ..」  今まで映った女子たちから推測して誰の席かを話しはじめた。 「・・・おいおい..やっぱ、あの席は相川じゃ..」 「馬鹿な。あの相川がそんなことを..」 「でも、あれがマジなら、相川は素っ裸ってことか?」  男子たちが一斉に唾をごくりと飲み込む。まだ相川自身の姿が映ってな いので半信半疑でもある。  そんな男子たちの期待をのせて、いよいよ教壇の映像へ変わっていく。  まずソックスと上履きを履いた唯花の足元が映ると、男子が「なあ、や っぱこうきたか!」「ああ、脱ぐわけないよな」と最初に男子たちをがっ くりさせる。が、映像は続き、足元から舐めるように上の方を映していく。 「!!!うおおおおおっ!マジかああああ!」 「こ、こ、こここ、股間手隠しだとぉぉぉ〜」  明らかにショーツを着けていない股間を左手で隠している映像が映る。 「おいおい、左手だけってことは..右手はもしかして..」 「右手でおっぱいじゃねーか!それはつまり上もつけてないってことかっ」  男子の予想通り、Dカップの両胸を右手だけで隠してる映像が映り、し かも隠せているのは乳首と乳輪だけで、柔らかそうな大きな丸みのライン、 谷間や下乳は全て晒されていた。  あの優等生の相川 唯花が、水着姿でも恥じらう女子が、素っ裸で教壇 に立っており、横の窓は全開で外から丸見えだった。  狂喜乱舞した男子たちが一斉に砂糖に群がる蟻の様に画面に群がってき た。 「すげーすげーすげぇぇぇぇーー!相川の裸だぞぉぉぉーーー!」 「敬子!お前神だぜっ!!何でこんなことができるんだぁぁぁ」 「たまんねー!たまんねぇぇぇーー。あの相川さんが裸にぃぃ」 「はぁぁ〜。そんなに騒ぐほどのものかしら?分からないわね〜」 「いやいやいや!相川だけ素っ裸って、すごすぎだろ!」 「そう?でも肝心なとこ一切手で隠してて見えてないわよ」(って言うか、 手をどかしてもニプレスや前張りで見えないけどね) 「見えてないなんて、どうでもいい!あの相川が全て脱いでることに価値 があるんだよ」「俺、これだけで何回も抜けるぜぇぇ〜」 「へぇ〜、見えなくてもいいんだ..」 (さすがクラス1の人気女子ってとこか..こんなに悦ぶなんてね。これ じゃ、このあとの宣言でどうなることやら〜)  どうやら、プロジェクターの映像は敬子がアドバイスした2回目の宣言 部分から流れているらしく、これから唯花のとんでもない宣言が始まった のだ。 「クラス学級委員の相川 唯花です。今から私はみんなに宣言いたします。 エアコンを導入しない学校へ抗議するために明日からの授業で汗が止まら なくなった時は..そ、その場で..相川 唯花は..す、全て脱いで.. 裸になります!!」  この直後で映像が終わり、教室中に男子たちの雄たけびが響いた。


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