第41話「結愛子の葛藤」


 暑さに耐え切れずに上着を脱ぎはじめた結愛子。  が、上着を脱いで置くだけの行為に何故か心臓の鼓動が早くなる。 (…やっぱり、上着ぐらいじゃ..汗はひかないわ)  ふと目を向けると、女体盛りの女性の姿が視界に入った。  彼女は商売とはいえ、一切の服を着ることを許されずに料理を肌に乗せ られ、男たちに身体を弄られてもじっと寝たままで居なければいけない。  そんな彼女に比べれば自分が裸になるのは大したことではないのかも知 れない。いっそ、このまま勢いで脱いでもいいとさえも感じた。そう思う と余計に暑くなってたまらなくなる結愛子だった。 (ダメダメェェー、何変なことを考えてるのよっ!隼人や課長の前で裸に なんてなれるわけないでしょ!)  首をぶんぶんと振って何とか自分を戒める結愛子。  が、上着を脱いだときにある事に気づいた。何と下半身がすごく濡れて おり、ショーツがびしょびしょだった。 「えっ..」(スカートの方にもシミが..)  結愛子はスカートの上から手を当てて、ちょっとだけ濡れ具合を確認し た。 (やだ..何でこんなに濡れてるの?いいえっ!これは、あ・汗よっ!こ の部屋って、変に暑かったから下着が汗で濡れただけじゃない..そ・そ うよ。汗なんだから..)  確かにずっと座ってたいたので、ショーツがひどく汗で濡れてしまって もおかしくないだろう。  あくまでも汗だと言い切っていく内に、身体の方もやっと少しずつ冷え てきた。 「・・・・・・・ふぅ」 (火照りが消えていく..やっぱ、暑さのせいだったのかしら)  自分の中から淫らな気持ちがなくなってくると身体から力が抜けていく。  女体盛りなんかで感じるわけない。それが証明された安堵から、緊張の 糸が切れてしまい、ぼーと眺めるようになる結愛子。  まるで自宅でくつろぐ様な感じになり、自然とブラウスをぱたぱた扇い で風で汗をひかせようとしていた。 (まったく〜、こんなに暑いんだからエアコンぐらい入れて欲しいわっ!)  パタパタッ、パタパタッ。  普段、人前でだらしないことを見せない結愛子が何かのタカが外れたよ うに、すっかりリラックスし始めてる。  そして、気がつくとブラウスの中で”ある異変”が起こってることに気 づいた。「あっ、ぁぁっ!!」 (う・うそっ..ブラが外れてる!?)  いつのまにかブラのホックが外れており、ブラウスの中でブラが思い切 りズレ落ちていたのだ。  これが普通のブラなら大きくズレはしないのだが、この日に限って結愛 子はフロントホックを着けていた。  そのせいでDカップの両胸はブラから思い切り解放されていたのであっ た。  まあ、ブラが外れたからといってもブラウスを脱いでるわけではないの で乳首が浮かんで見えるぐらいだろう。  ただ、襟元のボタンとその下のボタンの2つまでも外れており、胸の谷 間が少しだけ見えていた。 (ああぁ..乳首が少し透けているわ..)  結愛子は汗で透けてるブラウスを見てドキッとする。これ以上、透けた ら不味いことになるが、熱気たっぷりの今の状況じゃ汗がどんどんと湧い てくるのだ。 (それにしても..私ったらいつの間にブラやボタンを?)  へそのとこまでズレ落ちたブラを確かめた結愛子の顔がどんどん赤くな る。はしたないことをしてしまい、強烈な羞恥が襲ってきた。乳首がピン と立っていく中で、これは違うと結愛子は必死に自分に言い聞かせた。  きっとこれはあまりの暑さに耐え切れずに無意識に外したのかも知れな い。間違いない。そうだとすれば風をブラウスの中に扇いで入れる時に外 したのよと!と結愛子は何とか体裁を取り繕う。 (そうよ!暑かっただけなのよ..けど、私ったら、何大胆なことやって るのよぉぉ〜。は・早く直さなくちゃ)  幸いな事に周りにいる男性は陰健課長と川阪だけであり、2人とも女体 盛りの方にしか視線が向いてないので、結愛子の乱れた服装に気づく事は なかった。 (よかった..見つからない内に直さなくちゃ!)  まずは外れてるボタンを直そうとした結愛子であったが、よく見ると3 つ目も外れかかっていた。 (!危なかったわ..これが外れたら、胸元が完全に丸出しになったわ)  ヒヤッとした結愛子が外れかかった3つ目のボタンを直そうと手を持っ ていくが、何故かボタンに触れようとしてこない。 (な・何を戸惑っているの?モタモタしてたら見つかっちゃうっ!)  ボタンを直さない自分に焦りを感じる結愛子。 (ボタンを..ボタンを..)  結愛子の額には汗がどんどん流れていく。  これだけ暑く感じたせいか、手が3つ目のボタンからゆっくり離れて、 再びブラウスの方をつかんでいく。  ぼそっ「あ..暑いわ..本当にあ・暑いわね」  パタパタッ..パタパタッ。  小さな声で言った結愛子がブラウスを扇いで風を入れる素振りを見せて きた。  当然、ボタンを直すことなくブラウスを動かしたせいで、ついに3つ目 のボタンが外れてしまったのだ。  それなのに、結愛子はさっきよりも強く!激しくブラウスを扇ぎはじめ た。左側をぱたぱた扇いだと思ったら、今度は右側をぱたぱたと扇いでく る。  明らかにブラウスがはだけて胸があらわになっているのに、それに気づ かないフリをして小声で暑いことをアピールしてきた。 「あついあつい..あ・あついわね..」パタパタッ。  本当に暑いのか、結愛子の顔はすごく真っ赤になっていた。  時々、恍惚な表情を見せながら、暑いから扇いでいるんだからと心の中 で弁明を繰り返している。 (は・はしたないけど..暑いのがいけないのよっ。2人は、み・見てな いし、汗がおさまったら..すぐに直すんだからっ)  早く身体を冷やして乱れた服を直そうと思う結愛子だが、扇げば扇ぐほ ど身体の熱さが増してくる。  熱さが増す要因を自分がしてることを結愛子は何となく分かっていた。  それは浮いたブラウスの中で故意的に胸を左右に揺らしていることであ り、揺らすことで時々、乳首がチラチラと外へ飛び出しまうのだ。  このスリルが結愛子にとってはドキドキしてたまらない。  しかも、これ以上揺らせばブラウスからDカップのおっぱいがこぼれる を知りながら、揺れを強くした。 (わ・わざと胸を揺らしてるんじゃないわっ。足が痛いから仕方ないのよ!)  そう、ずっと正座をしていたせいで足が痛くて痛くて仕方ないのだ。 (きっと変な風に座っちゃったからよ..気持ち悪かったし..)   吐き気を我慢するために変な正座をしたために足を小まめに動かさない と痛くてたまらない。  だから、無意識に大きく開いてしまった足も痛さのせいなのだろう。  一応、気付く度に膝をしっかりと閉じるが、少し経つと大股開きになっ てしまう。傍から見れば、結愛子が濡れたショーツをパカパカと閉じたり 開いたりして見せつけてるようなものだ。 (また大股になっちゃう..もう足は動かさないようにしなくちゃ..)  だが、そう思う割には慎重に行動しない結愛子。そんなことを続けてい たせいでついに恐れていたハプニングが起こった。 (!いやぁっ..出しちゃったわ)  開いたブラウスの間から結愛子の見事なおっぱいが片方だけこぼれると、 すぐにその後で残りのおっぱいもぶるんと飛び出した。  大きく揺れるおっぱいを見て、結愛子が慌ててブラウスを掴んで隠して きた。  そして、そのまま外れたボタンも全て直して何事もなかったのような顔 で軽い咳をした。  運がいいことに陰健課長も川阪も今までした結愛子の行為に気づいてお らず、女体盛りの料理の方に夢中になっていた。 (よかったぁ..こんなとこで胸を出すなんて、私ったらどうかしてるわ)  このあとの結愛子は暴走することなく、料理を陰健課長が全部平らげる まで平静のままで終えることができた。 「さて、料理も平らげたことだし〜、次は居酒屋で一杯いこうじゃないか、 なあ川阪ぁ〜?」 「ああ、俺は構わないが、結愛子はこのまま帰った方がいい。かなり疲れ てるようだし」 「ありがと..隼人..」 「確かに川阪の言うとおりだな。どーせなら、帰りのタクシーが来るまで ここで休憩した方がいい。この部屋は終日貸切にしてあるから問題ないか らな」 「すいません、課長。じゃあ、お言葉に甘えて少しここで休んでいきます。 あっ、明日なんですか休日出勤して構いませんか?」 「ん?せっかくのGWなのに出勤なんてしていいのかい?」 「今日、調べたことを整理しておきたいので..いいでしょうか?」 「なるほど、そういうことか。なかなか仕事熱心で結構。僕も明日別件で 出勤するから問題はないだろう」 「…ありがとうございます」 (こんな恥ずかしいこと、GW明けまで覚えたくないし..すぐに資料を まとめてGWは思いっきりリフレッシュしなくちゃ..)  こうして、結愛子だけが1人、部屋に残ることになり、川阪と陰健課長 は居酒屋の方へ向かっていった。  とりあえず、資料作成に必要なことを手帳に書いてると、ある声が結愛 子の耳に届いてきた。 「ねえ、貴女?女体盛りを調べにきただけなら力を貸してあげるわよ〜」 「あっ..」  今更ながら、女体盛りになっていた女性が一緒に居たことに気付いた。  彼女は散らかった部屋を片付けながら、結愛子にこう言ってきた。 「…そろそろみんな休憩だから、直接聞いてみたらどうかしら?」 「えっ?休憩って..」 「私以外も何人も女体盛りをやってるのよ。ちょうど、これから2時間ほ ど休憩に入るからインタビューしたらどうかしら〜」 「インタビュー..休憩中にそんなことしていいんですか?」 「ええ、構わないわ〜。貴女もまだ疲れが取れないんでしょ?一緒にくつ ろぐ感じで聞けばいいのよ。それでいいかしら〜」 「は・はいっ。お話を聞かせて戴けるのなら同行させてください」 (これはきっと!かなり参考になるわ)  女体盛りの資料を作らなければいけない結愛子にとっては、チャンスで あり2つ返事でインタビューすることに決めた。  が、世の中そう甘くないのも現実であり、彼女はとんでもないことを要 求してきたのであった。 「それじゃ〜、今から行くから裸になってちょうだい」「えっ?」 「まさか、そんな堅苦しい恰好で行くつもりなの〜。みんな裸で休んでい るのよ〜」「あっ..」 (そ・そうよね..みんな女体盛りをしてる女性だから裸だったんだわ)  けど、今更裸になりたくないからって断るのも相手に悪いと思った結愛 子は意を決して服を脱ぎ始めた。 (急いで行けばいいし..隠しながら行けばいいんだから..) 「あ・あの..脱いだ服はどうしたら..」 「そうね〜、この部屋は終日貸切だから、そのまま置いても大丈夫よ〜」 「は・はい..」(そのまま置くって..それって戻るときも裸で..)  結局、結愛子は何も言えないまま服を全部脱いで裸になった。  まさかこんなことになるとは露知らず、軽々しくインタビューを決めた ことに今更ながら後悔した。  10分後、女体盛りの女性と共に結愛子は裸で出ることになった。  必死に恥部を隠して歩く結愛子に対して、女体盛りの女性は堂々とした 姿でさっさと先へ進む。 「…あ・あのっ..恥ずかしくないんですか..」 「今はお客が入ってこないから問題ないわよ〜。それよりも早く歩いて休 憩室に行った方がいいと思うんだけど〜」  最もな意見だ。結愛子は辺りをキョロキョロと確かめてから恥部から手 を離した。 「あっ、ああぁぁっ」びくんっ、びくっ。  いつ誰か来るか分からない料亭の廊下で裸を晒すと思うと、身体がすご く疼いてしまう結愛子。 (どうして..こんなに感じちゃうのよぉぉ〜。いやぁぁ〜) 「さあ、早く向かいましょう、桜野さん。そうそう、私の事は美夏と呼ん でちょうだい」 「はい..美夏さん。ところで、まだ休憩室につかないんですか?」 「もう少しよ。ごめんね、あとちょっと我慢して」 「…わ・わかりました」  いつまでも裸で料亭内を歩いていると思うと結愛子は不安でならない。  それに時間も相当経ってる気もして、おかしな感じだった。 「さあ、今度はこっちの階段を上がりますよ」 「えっ?さっき階段下りたのに..」 「ごめんね〜増改築を繰り返したから、迷路のようになってるのよ」 「そ・そうなんですか..」  何だか、わざと遠回りされてるような気がして、美夏に疑問を抱く結愛 子。  一方、美夏の方は結愛子に見えないようにちろりと舌を出しながら、心 の声でこう答えてきた。 (実はね〜。これって”女体盛りの新人”をお披露目するためのコースな の〜。みんなこっそりと覗いているから、思う存分晒されてちょーだい♪)  そう、結愛子が通る廊下の部屋の障子がどこも少しだけ開いており、障 子の隙間からジロジロと舐め回す視線が突き刺さってくるようだった。 (!やっぱ、覗かれてるような..)  薄々、男たちの視線に気づいた結愛子だが、どうすることも出来ない。  今は美夏の後に付いていくしか無く、覗かれてることに気付かないフリ をするしかなかった。 (…きっと、私も女体盛りの女性だと思われているんだわ..仕方ないわ、 美夏さんと一緒に裸で歩いていれば、そう見えちゃうんだもの..)  ―――ちなみに、3組ほど崎長食品会社の団体が含んでいたのを知るは ずもなく結愛子は堂々と裸で通り過ぎていった。  が、面白いことに相手も結愛子と気付くことが出来ず、「今の桜野さん にそっくりだったよな?」「ちげーだろ、桜野さんがピンクのクリ剥き出 しで歩くわけねーだろ!」と恥部ばかり見てたせいで真実に辿りつくもの が居なかった。  いや、気付いたなら「うおおおお〜桜野さんが女体盛りデビューかよ! 膨らんだピンクのデカクリサイコォォーサイコォォォ−−ッ!」と騒ぎま くっていただろう。  兎に角、結愛子は一切の文句を言わずに裸のままで、興奮で包皮が完全 に剥けたピンクのクリトリスを晒したままで、しばらく料亭内を連れまわ されてしまったのだ。


(最終更新:2011年7月9日)
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