プロローグ
☆新人研修前日☆
「私たち、この会社に入ってラッキーかもぉ〜」
夏がそろそろやって来ようとする時期、3ヶ月を過ぎた新入女子社員た
ちが新人研修に参加するため、高級レストランに集合していた。
この会社では毎年、新入女子社員の新人研修が恒例行事となっており、
各課より選ばれた新人女子社員が研修に参加することになっていた。
そう、全ての新入女子社員が受けるわけではない。
社内の極秘の選考基準によって選べれた新人のみしか受けられない研修
なのだ。
「さあ、研修を受ける新入女子社員のみなさん。明日からは都会とは無縁
の生活になるので、今夜はおいしいものを食べておきましょう」と説明役
の社員が新入女子社員に話してくる。
目の前には、とても自分たちのお金では食べられない高級料理の数々が
並んでいる。
数万?いや数十万のお会計を要求されてもおかしくない高級料理の品々
に彼女たちはただ驚くだけだった。
「うわぁぁぁーー、これって本に載ってた高級料理じゃないかな..」
「そうね..この料理どれも本物だわ..研修でこんな料理が食べれるな
んて..」
「これ美味しいよ。こっちも美味しい」
「ええ、これもなかなか美味しいわ」
彼女たちは楽しく食事をさせてもらい、その後は豪華なホテルのスイー
トルームに案内され、1人1部屋で泊まることになった。
「うわぁ、広いー。見て夜景も綺麗よー」
「こんないい所、泊まれたの始めて」
「1人1部屋だってー。これ一泊、数十万するんでしょ」
「研修前にこんな贅沢させてもらえるなんて、嬉しい」
そう、この時の彼女らはここの会社に入って本当に良かったと思ってい
た。新人の研修にここまでおもてなしをする会社など今のこの不況の中ど
こにもなく、自分たちへのあまりへの待遇に誰もが心から感謝していたの
であった。
だが、これはとんでもない社員研修の嵐の前の静けさにすぎなかった。
翌日、彼女らは朝5時に起こされ、みんな眠い目を擦りながらロビーに
集合した。
「さあ、みなさん。バスが待ってます。すぐに出発しましょう」
「え?まだ荷物が部屋にあるんですが..」
「荷物?それは当社の方で研修が終わるまできちんと預かっておきますから」
「え?でも、携帯も部屋に...」
「これから行く研修場所はみなさんにも予め知らせたと思いますが、お寺
に行くんです。よって携帯などの俗物は全て持ち込み禁止にさせてもらい
ます」
「あのーもしかして化粧品もだめなんですか?」
「服はいいんですよね。1週間も同じ服じゃ..」
「化粧品やアクセサリは禁止です。あと服はお寺さんの方で用意しますの
で無用です」
「他にはどんなのがだめなんですか?」
「時計、ラジオ、ドライヤーなどの機器も禁止です」
「わかりました...」
「じゃあ、みなさん。バスに乗る前に私に時計やアクセサリを全部外して
渡して下さい」
彼女らは素直に時計やアクセサリを全て渡して身1つのままバスに乗り
込むことになった。
「ねえ、ねえ?これかなり本格的じゃない?」
「あなたもそう思う?やっぱお寺だからなのかなぁ〜」
「でも何も持たないっていざという時まずくならない?」
「そうよね。携帯ぐらいは持たせて欲しいわね」
「何不安がってるのよ。そんなに心配する事ないわよ。大体、みんなで参
加するんだからぁ〜」
「そ・そうよね..去年もしてるし」
そう、彼女たちの言うとおり、この研修は毎年行われ、研修を受けた先
輩OLからも悪い噂を聞いてない以上、安心してもいいのだろう。
だが、何も持たないで行くことに誰もが不安に思ってしまう。
「そういえば、男性社員も参加するんだよね?でも新人の男子はいないっ
て変よね?」
「いないと言うより、このお寺の男子参加定員の100名は全社員に参加
資格があるみたいよ」
「私もそれ聞いた。何か毎年、参加応募倍率30倍ですって!!」
「30倍って言ったら男性社員がほとんど応募してるって事?そんなにい
い研修なのかしら?」
「でもでも、昨日の食事やホテルから予想すればその数は納得できそうじ
ゃない?」
「じゃあ、そんなに辛くない研修かもね」
そう、この研修は男子社員も参加することになっており、何故か男性の
方だけは新人ではなくて全ての社員に参加の権利が与えれている。
参加人数枠は100名であり、毎年この研修に参加したいという男子社
員は数多くいたのであった。
彼女たちは、このことを気軽に話していたが、ここで疑問に思い、考え
るべきであった。
なぜ、男性社員がこんなに応募してくるかを。
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