第55話「5組の女子たち」(挿絵:たーちんさん)


※時々CGと文字が重なる場合がありますので、その時は1回再読み込みしますと直ります。

 周兄さん、今週は憂うつな1週間となりそうです。  何せ、中間テストが始まり、毎日勉強づくしになるからです。  とりあえず1日目は赤点を取らない程度に出来たつもりだけど、まだま だ先が長いよぉぉぉ〜〜。  こういう時に元気なのは頭がいい子ぐらいなもので、蘭ちゃんなどは頭 から白い煙を出してるような感じでグロッキーとなっていた。  私も人のことを笑えないほど疲れており、こういう時にトラブルが起こ ると何も出来ないのかもぉぉ〜。  ちょっと心配なのは内川さんが元気すぎるとこだけど、取り巻きの角東 さんや奥西さんが蘭ちゃん並に煙を出してる感じだから大丈夫かも知れな い。 「こらっ、都緒乃!穂耶紀!今がチャンスなのよっ!起きなさいっ!」 「穂耶ちゃんは燃えたよぉぉ〜〜燃えつきたよぉぉ〜真っ白だよぉ〜」 「うむ」 「まだ初日じゃないのっ!今から燃え尽きてどうするのよっ」  取り巻きがあの感じだと心配なさそうね。  これで今週はテストのことだけ集中できると思ったのだけど、どうやら すんなり行かない感じになってきたみたい..  突然、教室のドアが開き、隣の5組の女子たちが集団で中に入ってきた のであった。 「御機嫌よう〜内川さん。今日も元気そうですわね〜」 「村兼..何の用?そんなに大群つれて勉強会かしら?」 「あらあら、相変わらず威勢がいいわね。失敗つづきで落ち込んでると思 いましたけど..ほほほっ」  カチンッ「ずい分と生意気な口を言えるようになったわね。昔のあんた では考えられないわね。先公を味方につけるとそうなるのかしら?」 「五月蝿いわね..馬鹿ばかりやってる貴女に言われたくないわ」 「何ですって」「この数、相手にやる気かしら?」  何か目の前で5組の女子たちと内川さんですごい火花が飛び散っている んだけど、これって分裂ってことなのだろうか?  元々、内川さんは5組の女子を大勢引き連れて、いろんなクラスの女子 を苛めていたはずだけど、その女子たちに囲まれてるなんて..  でも、ほとんどの子は内川さんの鋭い眼光で怖気付いてるみたいで、烏 合の衆ような感じだ。 「さすが内川さん、これぐらいじゃびびらないのね。お嬢(村兼)どうし たらいいかしらぁ〜」 「町勝、あんたの差し金か..それとも公金の先公の考えか?」 「これは私の考えですのよ。先生や詩譜(町勝)は私に力を貸してるだけ よ」  どうやら見た感じ、5組のお嬢と呼ばれる村兼 仲穂(むらがね なか ほ)が委員長の町勝 詩譜(まちがち しふ)と担任の公金 朱結(きみ がね しゅゆ)先生と組んで内川さんに反旗を翻してきたみたいであった。  ちなみにお嬢と呼ばれるのは父親が地元の有力者で誰も手が出せないこ とから、好き放題やっているとこから付けられたあだ名らしい。  今までは内川さんに頭があがらなかったはずのお嬢であったが、町勝さ んや公金先生に入れ知恵をされて、こうなったみたいと隣にいた美紗里が 説明してくれた。 「今回は私たちは無関係のようだから帰りましょ」 「でも美紗里〜、このまま放っておくのも不味いんじゃ..」 「いいのよ。身内の争いに私たちが入る必要はないわ」 「ぅぅ..けど、かなり内川さん、危険そうだけど」  5組の女子たちがじわじわと内川さんを押さえようと迫ってる中、内川 さんはぐったりしている2人の机を蹴りながら、角東さんや奥西さんを起 こそうとしている。 「いつまでも、ぐったりしてるなぁ〜!お嬢の馬鹿が謀反を起こしたわよ」  謀反って..何かすごい言い方してるんだけど.. 「ぁぅ..こういう力仕事は怪力で格闘ばかの都緒(とぉ)っちゃんにま かせるのだぁぁ」 「力でない..頭いたい..」 「都緒乃!穂耶紀!この状況を把握しろっ!」 「ふふっ、自慢の2人は何も出来ないみたいね。それにこういうところに 無駄に割り込んでくるあの女も何もしてこないようね」  あっ..蘭ちゃんのことね..確かにまだ煙を出してるから駄目かもぉ〜  こうなったら、愛賀さんと矢井中さんに力をと思ったけど、さっさと帰 っているし..  やっぱり、ここは美紗里の言うとおり傍観しろっていうことなの?  でも、やっぱり見捨てることなんて出来ないよぉぉぉ〜〜  何かだんだん内川さんが追い詰められてるみたいだし、さすがに内川さ んも焦り始めた感じで奥西さんの方を必死に起こそうとしていた。 (それにしても角東さんじゃなくて、なぜ奥西さんを?) 「ぁぅ..これ以上、穂耶ちゃんの眠りを妨げるなら、いろいろばらすの だ」  奥西さんのばらすの一言に5組の女子たちが一斉に後ずさりをした。  これって、どういう意味なんだろ? 「要は5組の女子たちの弱みを握ってるってことよ。一部の女子は穂耶紀 ノートと呼んでるらしく、いろんな人の弱みを収集してあくどく使ってい るみたいよ」  何かそれってすごい気がするけど..しかし美紗里の情報力もすごいか も。とりあえず、お嬢と町勝さん以外は何も手が出せない感じになったみ たい。 「あんたたちっ!いつまでも穂耶紀に弱みを握られたままでいいのっ」 「でも町勝さん..あいつの情報は..」 「穂耶紀ノートだが何だがわからないけど、取り上げればいいのよ。今な ら、それが簡単に出来ると思わないの?ねえ、お嬢」 「そうですわね。力バカの角東さんも何も出来ない今が好機じゃないかし ら?」  2人の言葉で再び、内川さんたちを包囲していく5組の女子だけど、何か 板ばさみの感じよね。 「都緒乃!あとでケーキおごるから、踏ん張りなさいっ!」「ケーキ.. 欲しい」  内川さんの言葉で立ち上がった角東さんがいきなり机を2本指で持ち上 げてくる。何の意味があるかわからないけど、バランス力はいいかのかも.. 「穂耶ちゃんのノートはここにあるのだ〜奪ったら後で全部、校内放送で 公開しちゃるぅ〜」ピンクのノートを出してきた奥西さんが堂々と脅して くる。 「ふはははっ!これでも抵抗したいわけ〜。都緒乃と穂耶紀が本気になっ たら私でも止められないわよ」 「こんな馬鹿な脅しに乗る必要ないわっ!この町勝や公金先生を信じなさ いっ!」  何かさっきよりも険悪なムードになってきてるよぉぉ〜〜どーしよぉーー 「さあ、私たちは帰るわよ。悠子もさっさと逃げて帰ったしね」 「美紗里、薄情だよぉ〜内川さんだって、クラスメイトじゃないの」 「5組との揉め事に首を突っ込む気にはならないわ。他の子だって傍観し てるでしょ」  確かにそうだけど..何かこういうのって無視できないのよぉぉーー  私の悪い性分だけど、仕方ないのよ。ここは仲裁に入るしかなく声をか けようとした時、別の方から違う声が聞こえてきたのだ。 「内川さんも5組の町勝さんもいい加減にしてくれないかなぁ〜はっきし 言って迷惑ってやつなんだよ」 「来崎..」「風紀委員の来崎さんね。ずい分と度胸がいいわね」  あまりのクラスの騒音ぶりに、クラスの風紀委員である来崎 凛(らい ざき りん)さんが仲裁に入ってきた。  だけど、そんな来崎さんの周りに5組の女子が取り囲み、今度は彼女が ターゲットにされてしまった感じだ。 「あたしは蘭や仁美のように力で解決したくないんだけどぉ〜。まあ、そ んな力もないから1年の時は負け犬みたいになってたんだけどねぇ〜。あ っははははっ〜」 「そうだったわね。じゃあ、今年も負け犬を理解できるよう、裸に剥いて 吊るしてあげるわぁ〜♪」 「そうね。おっぱいとおま●こ、どっち先に出して欲しいかしら?」 「恥ずかしいこと言う連中だねぇ〜。こういう時にすっごい力があればめ っさ嬉しいけど、何にもないんだなぁ〜これがぁ」ぱさっ。パタパタ..  綺麗な絵柄が入った扇子を広げて来崎さんが風を仰いできた。  危機的状況に陥っているというのに余裕の笑みを見せているけど、もし かして蘭が助けてくれるのを期待しているのかしら?  蘭と来崎さんは小学校からの同級生みたいだし.. 「ずい分、余裕があるけど、あいつは助けないみたいだぜ。くくっ」 「ああ..蘭のことねぇ〜アレは使えないわぁ〜。あっ、そうそう。美紗 里とさっちんはそこで何もしないで見ていてちょうだいね〜」 「で、でも..」やっぱ見ないフリなんて出来ないよぉぉ〜。 「あっ、こんなときに言うのも何だけど、お土産の扇子ありがとうと、周 知様じゃなく、周殿によろしく伝えといて〜。すぐ去っちゃうから言いそ びれちゃったんだ」 「う、うん」(周兄さんったら、来崎さんにも会ったんだ..) 「さて、そろそろ、この非力なあたしを剥いてみなさいなぁ〜」パタパタ.. 「ふざけやがってぇぇーー!みんな剥いちゃえ」 一斉に5組の女子が来崎さんを襲い、絶体絶命となったと思ったが、女子たち が来崎さんに触れた途端、全員身体ごとはじけ飛んでしまった。
「あはははははっ、よく飛んだねぇ〜。大丈夫かーいっ。さすが錬菜の痴 漢防止は効きすぎますなぁ〜」  5組の女子たちを見るとみんな身体を痺れたような感じで床をのたまわ っている。  隣にいる美紗里の解説によると痴漢防止の電気にやられたらしいって.. 「悪いねぇ〜最近物騒だから錬菜に電気が服に流れるように作ってもらっ たんだなぁ〜。あたしは元々帯電体質だから電気にはめっさ強いんでねぇ〜」  まだ手の方からバリバリしてるとこを見ると本当に電気には強いらしい。  けどけどぉ〜これってどういう仕掛けなの〜。教えて〜美紗里ぃぃ〜。  何かどっかのTVヒーローみたいですごいんだけど〜〜。 「昔は雷撃の凛として、蘭といっしょにいろいろ馬鹿やってたみたいよ。 まあ、その電気仕掛けを作ったのは、同じクラスのロボット・機械マニア の波賀野 錬菜(はがの れんな)さんのようだけど..所詮、バッテリ ーを改良したものだから、あそこまでの電撃じゃなかったはずじゃ..」 「波賀野さんて、そんなこと出来るんだ..でも、手袋なしでバリバリや ってる気が..」 「あはははははっ、1年の頃と違って、あの方に体質をパワーアップして もらったからな。まあ、錬菜の調整服のおかげでもあるんだけどなぁ〜」  調整って..波賀野さんってそんなに凄かったって?矢井中さんと同じ ぐらいにクラスの中で浮いている女子で、今時めずらしい牛乳ビン眼鏡を かけて、ダブダブの制服で通学している女の子。  文系が全く苦手なせいでクラスの成績は中ぐらいだけど、理系に関して は美紗里ですら敵わないほど優秀らしい。  工具を常に持ち歩いてるって聞いてたけど、本当にロボットや機械など が好きだったなんて..  でも、波賀野さんも1年の頃はどちらかというと弱弱しい感じだった印 象があったんだけど、2年になってから、みんな一体どうしたのぉぉ?  けど、今はそんなこと考えてる場合じゃないかも。あ〜ん、来崎さんの 電撃効果で何かだんだん険悪さが増してきてるよぉぉ〜〜。こうなったら 男子に止めに入ってもらった方がいいかもぉぉ〜。  と思った私が教室内を見渡すと、男子たちが1人残らず逃げ出していた ようだった。 「う・うそぉぉ〜男子はどこ行ったのよぉぉ〜」 「逃げたんじゃない?5組のお嬢と内川さんのオーラーが出てる中で居座 れる男子はこのクラスには居ないわ」  美紗里、解説ありがとう..確かに関係ない女子も次々と教室から出て 行ってるし、このクラスにいる人と言ったら.. 「煙を出してる蘭と端で傍観している波賀野さんぐらいね。あとは5組の 女子ばかりといったとこね」  って、それってぇぇーーほとんどいないってことじゃないぃぃーー! 「だから帰ろうと言ったのよ。どうやら、来崎さんは周りにクラスメイト が居なくなったのを確認して割り込んできたようね」 「あははははっ〜あたしは蘭のように目立つのめっさ嫌なんでねぇ〜。出 来れば平和的な交渉でこの場を収めてくれれば嬉しいんだけどなぁ〜」  ぱたぱた..  扇子で風を仰ぎながら明るく言ってくる来崎さんだが、何か返って5組 の反感を買っているような気がする.. 「近寄れないことをいいことに、ずい分と余裕を見せてるわね。けど、要 はその仕掛けを解除させればいいってことよね?」  町勝さんの指示で今度は5組の女子が波賀野さんを取り囲んできた。  だが、このどさくさに紛れて何と内川さんたち3人が教室のドアに行っ ていてこう言ってきたのであった。 「馬鹿なあなたたち〜。私はあなたたちに構う暇などないわ。精々、愚民 同士で争っているがいいわぁ〜。あはははっ!」 「さすがです。内川さま〜」「うむ」  そう言って、さっさと事の張本人が教室から逃げていってしまった。  ずるすぎるよぉぉぉぉーーー内川さんっ〜〜! 「どうやら私たちは無駄な貧乏くじを引かさせたようね..」 「美紗里ぃぃ〜」  教室に残ったのは無関係の私と美紗里、さっきから何も出来ない蘭、そ して来崎さんと波賀野さんの5人しか居なかった。  もちろん、完全に逃げるタイミングを失ったようであり、教室のドアの とこは5組の女子が立っていた。 「あんたらのせいで全てが台無しになったわ。その責任は身体で払っても らうわ」  って私も入ってるのぉぉーーー。こういう時はどうしたらいいのぉぉ〜 美紗里ぃ。 「ここは無駄な抵抗はしない方が良さそうね..悔しいけど我慢しましょ う」美紗里がそういうなら私もその言葉を信じるしかなく、素直に5組の 女子たちに身を任せることにした。 「じゃあ、まずはあんたたち、ここでストリップしな!」 「えっ?」「…わ、わかったわ、脱げばいいのね?」  ちょっと美紗里ぃぃ〜。何で素直に脱いでるのぉぉ〜。ぅぅ、私も脱ぐ しかないのね.. 「あははははっ〜、巻き込んでしまって悪かったね〜。まあ、男子も居な いから、これぐらいは付き合っていいと思うなぁ〜」  呑気に扇子をパタパタする来崎さんは何故か脱いでない。何だこの不公 平感は.. 「ふふっ♪新宮さんも信谷さんもいい格好ね。後でお仲間が増えるから、 しばらく辛抱してね」  5組の女子たちの命令に従って全裸に剥かれた私と美紗里。何で私たち が最初にこんな目に遭わないといけないのよぉぉぉーーー!  美紗里は裸にされたせいか少し錯乱してきたし..この先、どうなっち ゃうのよ〜  しかし無抵抗の蘭には何もしないっていうのは何か納得できないような..  まあ、5組の女子も下手に刺激してはいけないことがわかってるのかも..  あとは来崎さんが何とかしてくれることを願うのだが、扇子で風を仰ぐ だけで何もしてこない感じであった。 「ふふ、来崎さんも観念したようかしら?今すぐ、そのくだらない仕掛け をこいつから聞き出してあげるからね」 「錬菜ぁ〜無理はしないでいいわよぉ〜」「あいっ。大人しくしますから 許してくださーい」  何か矢井中さんと違って、波賀野さんは腰が低くてちまちました姿で5 組の女子たちに許しを請いてきた。  お尻のところにつけている自家製の尻尾のアクセサリーをパタパタさせ ながら、媚びてくる波賀野さんに5組の女子たちが手を出せなくなってい る。そういや..波賀野さんって変に可愛いとこがあるので誰もいじめら れない女子だったわ。  だが、町勝さんにはそんな波賀野さんの技が通じないみたいであった。 「私、子犬とか子猫が大嫌いなのっ!誰にでも通じると思ったら大間違い ね!本当に無抵抗を示すなら、おっぱいでも出しなさいっ!ふはははっ」 「くぅ〜ん。おっぱいでも何でも出しますから許してくださーい」  そう言って本当にダブダブの上着を脱いでいく波賀野さんだが、意外な ところに皆の表情が驚いた。  何とダブダブの制服でわからなかったが意外におっぱいが大きい..  クラスで一番背が小さいのに胸のサイズは反比例してる感じだよぉぉ〜  すごく反則的な感じに何て言ったらいいのぉぉ〜ねぇ?美紗里..  ああぁっ!美紗里が変な煙を出して意識を失いかけてるよぉぉぉーー  頼りにしてる美紗里までが、グロッキーになってどうしたらいいのよっ。  完全に5組の女子たちの言うがままにされてる私たちに明日があるの?  けど、この後で私が思う以上の展開になろうとしていたのであった。


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