第19話前編「仁の三羞牙は誰?」


 稚奈を負かし、ようやく平穏な生活が戻った琉璃乃だが、今度は親友の ゆっこが仁の三羞牙の罠に堕ちてしまったのだ。  仁の三羞牙の技は仕掛けた相手を大勢の前で失禁させるものであり、技 を受けたゆっこはそれから何回もいろんな場所で失禁させられてしまった。  先日もゆっこは朝の全体朝礼の途中で大量失禁し、尿でショーツが足元 に落ちたシーンを見せることになり、それを見た女子たちに罵声を浴びせ られる事件が起こった。  ゆっこの恥辱の仕掛けを解除するには仁の三羞牙を倒すしかなく、一日 も早く見つけて対決を望む琉璃乃であった。 「ねぇ、稚奈さん。お願いですから最後の三羞牙の情報をもう少しくれな いかしら?」 「そうですね。今の私は心の奥底まで琉璃乃様を慕っておりますので、い くらでも情報を教えたいと思います。はいっ」 「そこまで言うなら、せめて名前ぐらいを教えても..」 「名前ですか..それだけは三羞牙の禁則とされてます。すいません。は いっ」「んも〜、禁則っていったい何なのよぉ〜」 「すいません..はいっ」  稚奈は今では完全に琉璃乃の味方となり、3年生たちに仕掛けた技も全 て解除し何事もなかったの様に普通に琉璃乃の学校に遊びにくるようにな った。  そして稚奈の口から、いろいろな事実が明かされた。  そう、かって琉璃乃を屋上のポールに吊るしたり、下着をおもしろいと こに吊るしたのも仁の三羞牙の仕業であった。  その上、琉璃乃をに酷いことをした3年生たちの場所を稚奈に教えたの も仁の三羞牙だった。  どうやら、いろんな校内の情報を逐一、稚奈に渡していたらしい。  ただ、三羞牙の名前だけは禁則らしく教えることは出来ないようだ。 「すいません、琉璃乃様。本当は何もかもお伝えしたいのですが、この禁 を犯せば私は即座に仁の三羞牙の手に堕ちて表に出られなくなりますので。 はいっ」「つまり、制裁されるってこと?」 「はい..もちろん同じ理由で珠紅さんも名前を明かすことが出来ないと 思います。ただ、これがどういう意味か分かってくれれば答えが導かれる はずです、はいっ」 「名前が明かせないことが答えに?よく分からないわ。とりあえず、これ 以上、ゆっこを辱しめたくないのよ」 「琉璃乃ちゃん、私のことなら心配しないで..琉璃乃ちゃんは三羞牙を 探すことだけに集中してくれればいいんだから」「ゆっこ..」 「ちょっといいかしら?琉璃乃さん。私、何か分かった気がするわ」 「猪崎さん!?分かったって三羞牙のことですか!」 「ええ、名前を明かせない。校内の情報を逐一送る。これらの情報からす れば、三羞牙はっ!」 「校内の生徒です。いや、もっと正確に言えば琉璃乃ちゃんが知ってる人 だと思うわ」「ちょっと、ゆっこ。それ、今言おうとしたのにぃ〜」 「それぐらいは琉璃乃ちゃんも知ってます。だから名前さえ分かればいい んですよ」「そ・そうなの?琉璃乃さん..」 「うん、かって柔子先輩たちが裏でいろいろ悪さしてた情報も仁の三羞牙 が珠紅に教えたみたいなの..」 「!ちょっと、それじゃ仁の三羞牙ってかなり近いとこに潜んでいるの?」 「ゆっこが私の大事な親友であることも見抜いてることからしても..も しかすると」 「そうです。仁の三羞牙は猪崎グループにいると思います。それも元々い るメンバーの中に居ると..」 「それは本当なの、ゆっこ!それが本当なら由々しき問題だわっ」 「猪崎さん、あまり変なことはしないでくださいよ。まだ憶測なんだから」 「わかってます。琉璃乃さん。私もそこまで愚かではないわ..はっ!」 「どうしました?」「猪崎さん?」 「わ・私は違うわよっ!そりゃ、昔は琉璃乃さんを苛めてたときもあった けど、今は琉璃乃さんが足の指を舐めろと言ったら隅々まで舐めるほど好 きなんですからぁ〜」 「あ・あの..足の指なんて舐めなくていいですから..」 「猪崎さんが三羞牙でないことは分かってます。だから今の内談に呼んで るですから」 「ゆっこ、琉璃乃さん、ありがとう。私の疑いはこれで晴れたのねぇぇー」 「いや..晴れる前に疑ってませんから」「そうですよ。仁の三羞牙はか なり頭が切れるものだと思いますから..悔しいですが私以上に..」 「そうね。猪崎グループの参謀と言われるほどの貴女にここまでの恥辱を 与えるなんて相当な食わせ者ね。まあ、思い当たるのが1人いるけど..」 「そうですね、猪崎さん。それは1年の二亜子ちゃんですね」 「ええ、二亜子は頭が切れるからね。状況を見て、すぐに態度を変えるしね」  仁の三羞牙の正体を1年の二亜子だと憶測する琉璃乃たちであったが、 その二亜子がとんでもない企みを起こそうとしていたのであった。  琉璃乃たちが内談をしている間、校舎裏では1年の二亜子が何人かの1年 の女子を集めて、ある作戦を立てていた。 「今なら猪崎も琉璃乃も倒せると思うわ。参謀のゆっこがあんな無様にな った以上はね〜」 「でも二亜子様、琉璃乃には三羞牙の珠紅と稚奈が居ますよ。そいつらを どうやって?」 「それなら心配無用よ。最後の三羞牙が、この二亜子に力を貸してくれる と約束してくれたわ」 「なるほどっ、珠紅と稚奈は同じ三羞牙が倒すということですね」 「そういうこと♪いつまでも腑抜けの猪崎に従う必要がないわ。これから は1年の私たちが新生グループを立ち上げるのよ。もちろん、いじめグル ープだけどね」 「いいですね、二亜子様。これで下らない琉璃乃のいじめ撲滅運動も潰せ ますね」 「もちろんよ♪最後の三羞牙が味方になった以上、1年の同志を集結する 時よ!」 「すでに準備は整えてますよ、二亜子様。かっての3年の四十七名を越え る100名ほど集めましたので。今こそ二亜子グループ誕生の時です」 「あはははははは〜。素晴らしいわぁ〜。今こそ、この二亜子の10番隊が 学園を制覇するときなのよぉぉぉ〜」  これからの勝利に高笑いする二亜子であったが、この後で思わない事態 に巻き込まれてしまう。 「に・二亜子さまぁぁ〜。一大事です..一番隊の優奈さんがぁ」 「何慌ててるのよ。優奈がどうしたの?」「ま・街中で失禁して病院に..」 「えっ?失禁..」「た・大変ですっ!二亜子さま。二番隊が..」 「今度は何なのよ。二番隊がどうしたのよ?」「駅のホームで失禁して..」 「また失禁って..ま・まさか!」  二亜子の顔が蒼ざめていく。何故なら、この後で次々と味方の失禁騒ぎ が相次いだからだ。  そして二亜子の体調にもある変化が訪れてきた。 「は・嵌められたわ..この二亜子がまさか嵌められるなんて..あんな 女に名簿を渡したのが失敗だったわ..狙いはおそらく1年の掃討..」  この後、二亜子が思い切り失禁してしまったのは言うまでもないだろう。  何と琉璃乃たちが疑っていた二亜子は仁の三羞牙の手によって制裁され てしまった。  二亜子が制裁された翌日、校庭の端に多くの野次馬が集まっていた。  何故なら、4つの磔台が立てられており、猪崎グループの1年女子全員 が全裸で磔にされていたからだ。  そう、反乱を企てていた二亜子たちが仁の三羞牙の裏切りで失禁されて そのまま裸に剥かれて晒されてしまったようだ。  これでまた振り出しに戻った琉璃乃たちだが、この後も次々と仁の三羞 牙の魔手が襲い掛かる。  それは2年の方でも、あちこちで失禁騒ぎが起こり始めたからだ。  奇妙なことに失禁した女子たちは密かに琉璃乃を堕とそうとしていた者 であり、まるで琉璃乃に敵対してるものを次々とつぶしている感じだった。  この事を知った琉璃乃は猪崎とゆっこだけを放課後、自分の教室に呼ん で内談をすることにした。 「今度は1組の田中さんが被害にあったみたいね..どうやら田中さんも 密かに仲間を集めたらしくて..」 「猪崎さん、情報ありがとう。何か私に敵対してる女子が次々と酷い目に あってるようね」 「そうですね。かっての二亜子も琉璃乃さんを裏切ろうとして制裁された みたいだし..仁の三羞牙の考えてることは分かりませんわ」 「とりあえず、こんなことを続けさせるわけにはいかないわ。ゆっこの方 もこれ以上辱しめるわけにはいかないし..」 「そうですわね。ゆっこは琉璃乃さんの味方なんだから、こっそり解除し て欲しいですわ。本当に頭にくるわっ」 「大丈夫です。猪崎さん。私のことなら心配しないでください。これだけ 校内で失禁騒ぎが続いたせいで、私の失禁もあまり目立たなくなってきた から..」 「でもゆっこ、5日に1回は人前で失禁してるじゃない。失禁した他の連中 はさっさと学校来なくなったけど、ゆっこはめげずに登校してるから偉い わよ」 「偉くなんかないですわ。私にとってはこれは罰なのかも知れないから..」 「罰って..ゆっこは別に何もしてないじゃないの?」 「いえ、琉璃乃ちゃん。私も昔は猪崎グループでいじめをしてたんです。 その報いがきたと思ってます。だから、これを私の罰として受け続けます」 「ゆっこ..そこまで自分を責めなくても」 「そうよ、ゆっこが悪かったら束ねていた私はもっと悪いじゃない?それ にゆっこが虐めてたのは琉璃乃さんだけだし..」 「えっ?私だけって?どういうこと?」 「ゆっこが私のグループには加わったのは、ちょうど琉璃乃さんを標的に し始めた頃なのよ。そうよね?ゆっこ」 「ええ、あの頃は自分でもどうかしてたと思っていたわ。人を虐めても仕 方ないのにね..やり切れない思いがあったから」 「やり切れない思いって?」 「妹さんのことね。ゆっこには共学に通っている妹さんが居て、その妹さ んがいろいろ酷い目にあったみたいなの」「そうなの?ゆっこ」 「ええ、でもだからと言って自暴自棄になった私も馬鹿だけど..」 「けど、気がつくとゆっこがグループの要みたいになってたわ。3年の柔 子や1年の二亜子たちを上手くまとめてくれたしね」 「そうなんだ。さすがゆっこね。今でも私たちの要みたいな存在だし」 「あまり煽てないでください..それよりも今は三羞牙を探し当てるのが 先なんですから」 「そうね..でも消去法でいくとかなり絞れると思わない、ゆっこ?」 「猪崎さんの言うとおり、1度整理してみようよ。ゆっこ」 「そうですね。整理しますか..」  琉璃乃たちは今までの経緯を踏まえて整理することにした。  猪崎グループは14人。  3年が4人。2年が6人。1年が4人で構成されている。  3年の4人は珠紅と稚奈の時に裏切りがばれてしまって三羞牙に制裁された。  その際、3年と組んでだ2年の土田も三羞牙にやられている。  そして1年の二亜子たちの反乱も最後の三羞牙の罠に嵌り、制裁された。  これで9人が外されることになり、残り5人が対象となる。  トップの猪崎、ゆっこ、みちよ、あずな、今日子の5人だ。  医者の娘で医学に詳しいみちよは、ここ最近病気を理由に休み続けている。  情報通と呼ばれた今日子もまた、同じく病気を理由に休み続けていた。  あずなは不穏な動きを見せており、最近は顔を見せていない。 「つまり、私やゆっこを除けばもう3人しかいないわ。私はみちよが怪し いと思うけど」 「猪崎さん、3人に絞るのは安易です。私や猪崎さんが三羞牙でないとい う保障もないんですよ」 「ちょっとゆっこ。私が三羞牙っていうの?まあ、疑われても仕方ないけ ど、あなたは除外すべきよ。あなたも今、被害に遭ってるじゃない?」 「そうですけど、もしかすると私が自作自演をしてる可能性もあります。 それなら、私自身も疑われる1人だと思います」 「ゆっこ..私はゆっこが三羞牙でないと信じるわ。もちろん、猪崎さん も三羞牙でないわ」 「琉璃乃さん、嬉しいわぁぁ〜〜。琉璃乃さんが失禁した際はこの私の口 で全てすくってさしあげますからぁぁー」 「いや..そこまでしてもらいたくないけど」 「琉璃乃ちゃん、私たちが違うということは、みちよ、あずな、今日子に 絞るということですね..」 「そうね。まずは休んでいるみちよと今日子に遭わないと..」 「けど、琉璃乃さん。2人に遭うのは難しいですわよ..」「そうですね..」 「それって、どういうこと?」 「2人は表向きは休みになってますが正確には行方知らずなんです。実を 言うと、私が大事にならないように2人の両親を説得させてるんです」 「そうなの?猪崎さん..」「ええ、今どこに居るやら..」 「そういえば珠紅さんと稚奈さんもここ最近、姿を見せてませんが関連性 があるかも知れません」「そういえば最近、顔を見てないわ」 「って言うことはあずなで決まりってことよね..ゆっこ?」 「そうですね。消去法でいけばあずなさんしか残りません」 「じゃあ、あずなを探すことにしましょう。ゆっこ、猪崎さんもあずなを 探すのを手伝って」 「当たり前ですわ」「私も精一杯、探します」  こうして、あずなを探すことになった3人だが、すでにあずなは体育館 倉庫で全裸に剥かれた姿で失禁して倒れていた。  あずなの携帯には何故かみちよと今日子と前日までやり取りしてた経緯 があり、何と2年の不穏分子を密かに集めて何かを企てたいたみたいだった。  そんな状況の中、姿を見せない珠紅と稚奈が実はある場所に囚われていた。  その場所は灯台もとぐらしと言える様な場所で学校の女子寮の一部屋で あった。


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