第7話「猫の手も借りれる?」


 今回もお馴染みの紺屋 麻希(出席番号6番)がお送りします。  今日も何か起こりそうな気がして、毎日がハラハラの連続って感じです。  たまには何もありませんでしたって一言で終わらしたいよぉ〜。  キンコーン、カンコーン♪ 【柔紀】「えっと、これから授業を行いたいけど、前から聞きたい事を1 つだけ質問していいかしら?」 【美紗里】「質問って何ですか?先生」 【柔紀】「この1年4組にはかなり個性的な女子が集まっているのは承知 してるけど、あの子はいったい何しに学校に来ているの?」 【沙智菜】「もしかして、猫上さんですか?」 【蘭】「見たままじゃないのか?」 【凛】「まあ、見たままだけど聞きたい気持ちは分かるな..」  先生が机の上で丸まって寝ている女子を見て質問してきた。  机に頭を伏せて眠るってことはあるけど、机の上に乗って寝るのはちょ っとおかしいかも知れない。って言うか普通は机の上で寝ないと思う。  机の上で丸まって寝ている女子は猫上 五十鈴(ねこがみ いすず)さん。  特徴としてはいろいろあるのだが、私としては身体中につけている大量 の鈴が気になるかな..  まあ、鈴よりもインパクトある特徴もあるんだけど、それはこれから先生 がつっこみそうな気がする。 【柔紀】「まあ、百歩譲って机の上で寝るのは良しとするわ..」 【凛】「譲るのかい..」 【柔紀】「まず私が気になるのは猫上さんの耳のように見える髪だけど.. みんなはどう思う?」  そう、私も知りたいわ。ぴくぴくとリアルに動いている猫上さんの耳の ような髪がどういう仕組みで動いているのか。 【美紗里】「耳のような髪型でいいんじゃありませんか?」 【沙智菜】「ただ、すごくリアルだけどね..」 【蘭】「あたしは可愛くて好きだよ〜。猫上の猫耳♪」 【凛】「みんな蘭みたいに何も疑問に思わなければいいんだけどな」 【柔紀】「じゃあ、耳も百歩譲って髪型ということにしましょう..」 【凛】「認めるのかい..」 【柔紀】「耳はいいとして..スカートの中から出ている尻尾はどう思う かしら?」  先生はスカートの中から出ているぐらいしか知らないが、実際は下着の 中から出ている尻尾なので、是非みんなの意見を聞きたいわ。 【美紗里】「一種のアクセサリのようなものでいいんじゃありませんか?」 【沙智菜】「ただ、すごくリアルだけどね..」 【蘭】「猫上の尻尾、超々可愛いよぉ〜。あたしもつけたいかも♪」 【凛】「じゃあ、つけろ」 【柔紀】「う〜ん、それじゃ尻尾も百歩譲ってアクセサリにしましょう..」 【凛】「だから、そんなにあっさり引き下がるのかい」 【柔紀】「耳と尻尾はいいとして、誰か猫上さんが喋ったとこを聞いたこ とあるかしら?」  そう言われてみると猫上さんがちゃんとした言葉を出したとこ見た事が ないわ。いつも「にゃぁ〜」とか「ふにゃん」のような猫みたいな鳴き声 を出すぐらいであった。 【美紗里】「単に無口ってことでいいんじゃありませんか?」 【沙智菜】「ただ、鳴き声はよく出すんだけどね..」 【蘭】「猫みたいで可愛くていいじゃないか〜♪」 【凛】「まあ、アシカの鳴き声よりマシだがな」 【柔紀】「そうね、喋らないのも百歩譲って無口な女子にしましょう..」 【凛】「結局、何でも譲るのかい..」 【柔紀】「実は今までのは大したことじゃなくて、一番聞きたいことはこ れからなの。そう、私が聞きたいのは猫上さんの寝てる机に乗って居てこ っちをじっと見ている”ソイツ”が何かってことよ!」  ああっ!やっぱり、それが知りたかったんだ..って言うかみんなわざ と見てみぬフリをしていたのにぃぃ〜〜 「ふむっ!どうやら小生のことを知りたかったみたいであったか。宜しい! いい機会だから小生の方から自己紹介しよう!小生はDr.チュー松。猫 上様に仕える執事みたいなものじゃ。あと猫上様のお言葉を伝える役割を 承ってもおる」  猫上さんの机の上に立っているアレ..いいや鼠が堂々と言葉を喋って 答えてくる。 【柔紀】「Dr.チュー松ね..要は猫上さんの伝言役って解釈でいいの かしら?」 【チュー松】「それで結構。猫上様への翻訳と思ってもいいぞ。小生をた だの鼠だと思うと痛い目に遭うぞ!」  いや..喋ること自体からして、普通の鼠とは違うような..  それにしても..あの鼠って本物なのかしら? 【沙智菜】「ねえ、美紗里?あのネズミさんって本当の鼠なのかなぁ〜」 【美紗里】「鼠が言葉を話すわけないでしょ!きっと腹話術かで猫上さん が喋っているのよ。ずっと寝てるってのも怪しいじゃない」 【沙智菜】「そう考えると何か合点がいくよね〜。けど、腹話術の人形な ら、もう少し可愛いネズミさんの方がいいと思うんだけどなぁ〜」 【壱郷】「それはいけません。可愛いネズミさんは某ランドから著作権を 求められてしまいますので..」 【美紗里】「いや、別にその可愛いネズミを言ったわけじゃないと思うん だけど..」 【壱郷】「ここは某ランドに誤解を抱かれないように細かく説明すべきだ と思いますがどうでしょうか、先生」 【柔紀】「いや、私に聞かれても困るんだけど..」 【壱郷】「では、不肖ながら私、壱郷が説明しましょう。あのネズミさん は主に天竺ネズミと呼ばれているアンデスに住むネズミさんです」 【蘭】「おおっ、天竺だってぇ〜。何かすげー偉いネズミさんかもぉ〜」 【凛】「いや..正式には鼠じゃなくモルモットだな」 【壱郷】「このネズミさんはクイクイと鳴くことからクイと呼ばれていて アンデスの地元ではよく家畜のように大量に飼育されているのです」 【美紗里】「ちょっと家畜のようにって..まさか..」 【壱郷】「フライにするとすごく美味しいそうです」 【凛】「やっぱり食用ネズミか..」 【蘭】「なぁなぁ、それってどんな味するんだぁ〜」 【壱郷】「上級鶏肉の味なそうで、地元では御馳走だそうです」 【蘭】「おおぉぉっ!暑姫っち。あれ、ちょっと焼いてくれないかぁ〜」 【暑姫】「いや..それはちょっと..」 【凛】「本気で焼いて食べるつもりなのかい..」 【チュー松】「そこの黒んぼ娘っ!小生は食べ物ではないぞっ!小生を愚 弄すると猫上様がお怒りになされますぞ!ほらっ、さっそく眠りから覚め はじめましたぞぉ〜」 【猫上】「ふにゃぁぁ〜〜、にゃぁ?」 【チュー松】「おおっ!猫上様、お起きになされましたか!ここは是非、 あの黒んぼ娘に猫上様の正義の鉄槌をぉぉー!」 【猫上】「にゃぁ?」ひょいっ、ぱくっ♪ 【蘭】「あっ..食べられた」 <しばらく、おまちください..> 【チュー松】「はぁはぁはぁ..猫上様、冗談がすぎますぞっ!クイの中 のクイと呼ばれた小生であったから胃にたどり着く前に抜け出ましたが、 他のクイであったら間違えて消化されてしまうとこでしたぞ」 【凛】「って言うか、本当に食べるつもりだったんじゃないのか?」 【チュー松】「そこの小娘、馬鹿を言うでないぞっ!小生はこの猫上様に フライにされる寸前で助けられた命の恩人であらせられるぞ!食べるなど するわけないであろう!そうですな。猫上様?」 【猫上】「にゃぁ?」ひょいっ、ぱくっ♪ 【蘭】「あっ..また食べられた」 <もっとしばらく、おまちください..> 【チュー松】「はぁはぁはぁ..猫上様、今度の冗談はきつすぎますぞっ! クイの中のクイと呼ばれた小生でも、少しだけ胃液で溶かされましたぞ」 【凛】「って言うか、かなり溶けてないか..」 【蘭】「もしかしても生でも美味しいのかなぁぁ〜」じゅるっ 【沙智菜】「いや..そういう風には見えないと思うけど..」  何かもうすごいことになっているんですけど..みんな、普通にあれを すでに鼠だと受け入れていませんか?  喋る鼠なんて明らかに異常なのにぃぃぃーー。誰かつっこんでよぉぉ〜。 【取り巻き】「内川さま、いったいあの鼠はどういうカラクリなんでしょ うか?本当に本物なんでしょうか..」 【内川】「あういうのは知らないフリをするのが一番よ。関わると頭が痛 くなりそうだわ..」 【麻希】(う〜ん、割かし内川さんって常識人かも..) 【取り巻き】「内川さま、あれほど傷ついたチュー松が回復してますよ! すごい治癒力じゃありませんか?」 【内川】「だから!あの鼠には関わるな!それとチュー松って言うなっ」 【壱郷】「きっと数々の困難を乗り越えた事によって、あの様な超人的な 治癒力がついたのでしょう..」 【取り巻き】「なるほどっ!」 【内川】「納得するなっ!」 【柔紀】「えっと、何か収拾がつかないから全部譲って猫上さんの代理っ てことでいいのね?チュー松さん」 【チュー松】「おおっ、さすが今度の先生は寛容力が高いですな」 【凛】「いや..そんなに寛容されても困るけどな..」 【柔紀】「まあ、猫上さんの件はこれで万事OKということで別の話に移 りましょう」 【麻希】(うあっ..そんなにあっさりと認めるのぉぉぉ〜〜) 【柔紀】「別の話の方が実はメインなんだけど、この度、校長から1年4組 の準備室をもらったのよ。この学校って無駄に大きいから各クラスごとに 準備室をくれるみたいなの」  そういえば聞いたことがあるわ..他のクラスはよく準備室に物を置く って言ってたけど、何で私たちのクラスだけ今頃になってくれたんだろう? 【美紗里】「先生、1つ聞いていいですか?もしかして、その部屋最初か ら4組専用として取っておいたんじゃないですか?」 【柔紀】「そうみたいね。ただ今までよく担任が変わってるでしょ?担任 が変なことに使わないように閉鎖していたそうよ」 【沙智菜】「それって想像したくないわ..」 【壱郷】「先生、ロープは買った方がいいですか?」 【柔紀】「だから、そういうリアルなことは要らないから..とりあえず、 掃除をしたいので誰か手伝ってほしいのよ」 【壱郷】「先生、この壱郷が1人で全力を尽くして手伝います」 【柔紀】「だ・誰かぁぁぁーー、お願いだから先生を助けてちょうだい」  壱郷さんの言葉を聞いて、先生が切実にみんなにお願いしてきた。  先生が必死になるのも分かる気がする。ここは普通な私も参加すべきか も知れない。 【美紗里】「先生、クラス委員として手伝います」 【沙智菜】「私も手伝います」【凛】「じゃあ、あたしも」 【蘭】「あたしもOKだよぉ〜」【悠子】「先生、私も参加します」 【取り巻き】「内川さまっ!私たちも名乗りをあげるべきでしょうか?」 【内川】「ふんっ、私はしないわよっ。何で掃除なんかしなくちゃいけな いのよ」「それもそうですね」 【柔紀】「えっと、とりあえず7人ね。ありがとうね、みんな」  こうして私たち7人と先生が放課後、1年4組の準備室の掃除にいくこと になったが、ここでもいろいろな波乱が待ちかねていたのだ。 【美紗里】「準備室って旧・校舎にあるんですか?」 【柔紀】「ええ、そうよ。1年の準備室はほとんど旧校舎内にあるのよ。 あと、いろんな同好会やクラブの部室などもあるわ」 【沙智菜】「旧校舎って何か出そうな感じで怖いよね?」 【悠子】「う・うん..そう言われると本当に変な呪文みたいのも聞こえ るし..」 【蘭】「あたしも聞こえてきたよ〜。何かワクワクするかも〜」 【凛】「喜んでいるのは蘭ぐらいだな..しかし、声らしきものは聞こえ るな」 【麻希】(いやぁぁー、何かホラーっぽい声が聞こえるよぉぉぉ〜〜) 【美紗里】「けど、この声って生身の誰かが出してるような..」 【柔紀】「そんな感じね。あの先の部屋から出てるんじゃないかしら?」 【蘭】「確認しようぜ。おもしろそうだし♪」 【凛】「ほんと怖いもの知らずだな..」 【沙智菜】「ちょ・ちょっと蘭っ、何ドアを開けようとしてるのよ!」 【悠子】「変なものが出たら大変よっ!」 【蘭】「心配ないって」ガラッ。  そういって本当に義岡さんが不気味な声が聞こえた部屋のドアを開けて しまった。 【??】「見たなぁぁぁぁぁ〜。私の儀式をみたなぁぁぁぁぁぁーーー」  中から黒マントを覆ってヤギの角らしきものを頭につけた女子が現れた。  って言うか、これって大変な危機に陥ったんじゃないのぉぉぉーー! 【壱郷】「だめですよ。また同好会室を改造しては。璃紅さん」 【璃紅】「会長!?こ・これはですね〜。ちょっとしたおまじないをして たんです♪」 【蘭】「あっ、りっくりっくだぁ〜。おまじないってどんなの〜」 【凛】「聞くなっ!」  どうやら、変な声を出していたのは璃紅さんだったらしく、何をしてい たかはあえて誰も聞こうとはしなかった。 【柔紀】「しかし..その格好はやりすぎよ。血のりまでつけてやるおま じないってどんなのよ?」 【美紗里】「せ・先生っ!あんまりつっこむのをやめましょう」 【沙智菜】「そ・そうですよ。先生」 【璃紅】「みんな〜。そんなに怖がらなくても大丈夫よ〜♪これ先生の言 うとおり、ただの雰囲気を出すための小道具なんですから〜」 【壱郷】「だそうです..ここはそういうことにしてください」 【麻希】(いや..これはすごく怪しいでしょ!どう見ても) 【壱郷】「とりあえず、あとでちゃんと片してくださいね..」 【璃紅】「はぁ〜い♪じゃあ、早めにおまじないすませますね〜」 【凛】「しかし..ここが例のフカケンの同好会室だったのか..怪しさ 満載だな..」 【柔紀】「ともかく、あまり関わるのはやめましょう。さあ、行きましょう」 【沙智菜】「そうね..早く行こうよ」 【悠子】「うん..あっ、あそこに2組の銅武さんがいるわよ」 【凛】「何か探してるみたいだな。おいっ、銅武さん。何か探しものか?」 【津栖紀】「あっ、4組のみなさん。この辺で鶏を見なかったでしょうか? どこからか持ち込まれた鶏だったので保護しようと思って追いかけていた んですが、この辺りで姿を見失ったんです」 【壱郷】「それはきっとこの部屋に..」 【凛】「言うなぁぁっ!」 【柔紀】「はぁぁ..何か頭が痛くなってきたわ..せっかく手伝っても らいに集まったところ悪いが、掃除は後日にしていいかしら?」 【沙智菜】「えっ?後日って..まだ準備室にも入ってないのに?」 【美紗里】「沙智菜の言うとおり、ここまで来て後日なんて納得いきません」 【麻希】(そうよね。気分が優れないのは分かるけど..延期だなんて) 【凛】「先生、せめて延ばす理由を聞かせてくれませんか?」 【柔紀】「理由は私よりも、壱郷さんが良くわかるはずだわ」 【壱郷】「私ですか?私が知ってるのはフカケンの2つ隣が1年4組の準備 室だということと挟まれた部屋が開かずの部屋になってるということだけ です..」 【凛】「おい..開かずの部屋って何だよ」 【壱郷】「それと補足ですが、さっきから1年4組の準備室の扉が少し開い ています」チラッ!バタンッ!「今、閉じましたね」 【柔紀】「という事よ。多くは語りたくないから、また後日にお願いする わ..」 【凛】「おい..誰かいるだろ..いいのか、ほっといて」 【蘭】「いいじゃないか〜。お土産ももらったから今日は帰ろう」ぱくっ♪ 【沙智菜】「ら・蘭ちゃん、何をた・食べているの..」 【蘭】「フライドチキンだよぉ〜。焼きたてだから美味しいよぉ〜」ぱくっ♪ 【美紗里】「・・・それは見てわかるけど、どこから手に入れたのよ」 【蘭】「りっくりっくがくれたんだよぉ〜。手作りのフライドチキンを皆 さんでどうぞって♪悠子も食べる?」 【悠子】「い・いらないっ..蘭ちゃんが全部食べていいよ..」 【蘭】「そっか、悪いなぁ〜」ぱくぱくっ♪  こうして、掃除が延期する事になったけど、今回はいろいろと聞いてみ たいことばかりで終わった感じだ。まあ、聞いてはいけないのは分かって いるんだけど..


【人物紹介】F
暖々堂 暑姫(だんだんどう しょき)出席番号:11
 超富豪の1人娘。ただお金持ちであることが鼻につかない真の令嬢。
 令嬢に相応しい美貌・才能をもっていることからクラスの男子の大半の
ハートを奪っている。男子たちの間にはショキちゃんファン倶楽部がある。
 けど、暑姫本人は1人の意中の男子のみしか相手をしていない。
 容姿抜群だが髪だけは異常であり、赤髪混じりの白髪となっている。
 この髪は産まれながらにもったパイロキネシストの体質が原因となって
いる。

<おまけ>
【蘭】ぱくぱくっ「本当にこれ超々美味しいぃぃ〜♪極上のフライドチキ
ンだよぉ〜」
【凛】ごくりっ「なあ..少しだけくれないか?」「うん、いいよぉ〜」
【美紗里】「蘭にしては珍しいわね。もしかして私も欲しいっていったら
くれるのかしら?」
【蘭】「うん、いいよ♪ほらっ、悠子も騙されたと思って食べてみろよ」
【悠子】「う・うん..あっ、本当に美味しいわ♪騙されて良かったかも」
【壱郷】ぱくぱく「気になったのですが、さっきから食べても減らないの
は異常ですね..」
【蘭】「それはねぇ〜。りっくりっくさまのおまじないの力だよぉぉ〜。
うふふっふっふぅ〜♪」
【沙智菜】「先生..何か蘭ちゃんたちの様子が..」
【柔紀】「逃げるわよっ、新宮さん」
【麻希】(あ・あのぉ〜、今回のおまけのオチは?これじゃおちないんで
すがっっ!)

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