第15話「これが出来たら200万円」


 夏がもうすぐ来る中、衣愛代は都心にある大型プールに来ており、ここ でこれからある番組の撮影が始まるのであった。  その番組はあのお笑いコンビ”ふっちゃんはんちゃん”が他局でやって いる”プールチャレンジャー・これが出来たら200万円”の番組の撮影 であり、衣愛代はチャレンジャーとして出演することになっていた。  この番組はいろいろな競技をチャレンジし、クリア出来たら賞金200万 円が贈呈されるのでタレントとしてはおいしい仕事なのだが、衣愛代は仕 事の内容を見て、いい顔が出来なかった。  何故なら、衣愛代が挑戦する競技の出演者がすべてセクシータレントと なっていることから、競技内容が少しエッチなものになっていたからだ。 「これって、ほとんどお色気コーナーみたいなんですよね..」 「まあ、そうなるけど、一応ゴールデンで”ふりはり”の番組なんだから 断ることは難しいよ」 「そうですよね..」  本当は断りたい衣愛代であったが、あのふりはりの番組でさらにゴール デンと言われてしまったら出演をOKするしかなかった。  こうして番組に出ることになり、他の出演者と一緒にチャレンジ用の水 着に着替えることになった衣愛代にまずは最初の試練がやってきた。 (う・うそっ..みんなビキニでするんだ..)  他の出演者はセクシータレントと言うこともあって、みんな大胆なビキ ニを付けていっている。  当然ながら、自分1人だけ普通の水着と言うわけにもいかない衣愛代も 普段、着ける事のない下乳が丸出しのきわどいビキニをするしかなかった。  下のほうもV字カットとなってる為、これで競技に挑戦できるかが不安 に思う衣愛代であった。  全員が水着に着替えたところで、競技の撮影が開始されることになり、 目の前には競技のセットが見えていた。  今回の競技の内容は単純なものでありプールに設置されたすべりだいを 頂上まで登れば200万円というものだった。  ただ簡単に200万円を出されては困るのですべりだいはかなりの急斜 面となっており、1度滑らしたら確実にプールまで滑って落ちるものだった。  まずはあまり有名でないセクシータレントが次々と競技に挑戦するのだ が、誰も成功せずに終わってしまう。  いや、彼女らは初めから成功させようとする意思などはなく、すべりだ いで出てしまうハプニングを見せるためにやっているようなものであった。  それは、すべりだいの摩擦で捲れてしまう水着のハプニングであり、失 敗ですべる際にほとんどの子がおっぱいを出してプールへ落ちていった。  まあ、初めからこういうシーンを期待してのコーナーとなっているみた いでおっぱいを出すセクシータレントはすでにヌード写真集などを出して る人が多かったのである。 (冗談じゃないわっ..私はおっぱいを出すために出たわけじゃないわ)  この番組のコーナーへオファした”ふりはり”やそれを引き受けた作山 に怒りを覚える衣愛代は意地でもクリアしようと決意する。  そして、いよいよ衣愛代のチャレンジの出番が始まり、他のセクシータ レントとは違う真剣な表情を見せていた。  スタートの笛の音と同時に、すごい勢いですべりだいを登っていく衣愛 代に周りの出演者が驚いてしまう。  だが、賞金の200万円がかかっているだけに上の方へ行くと大量の水が 一気に流れてきた。  さすがの衣愛代もこの状況では少しずつ登るしかなく、流れる水に耐え ながら1歩ずつ進んでいく。  だが、登っていく衣愛代自身にはある違和感を少しずつ感じてくる。 (私..こんなに運動神経が良かったのかしら..何か不思議に登れる..)  大量の水がどんどん流れて滑りやすくなってるというのに、意外にも慎 重に進めば滑らないで登ることが出来た。  しかし、これにはあの作山とスタッフが細工を施していたらしく、傍目 には派手に大量の水が流れる風にしてあるが、実は衣愛代の手足には水が 流れてこない仕掛けをしていたのであった。  つまりは番組を盛り上げるために頂上近くまでは必死に頑張れば登れる ようになっていた。  ただ、これを知ってるのは作山と一部のスタッフだけなので、司会者の ふりはりや観客は何も知らずに衣愛代を大声で応援していた。  もちろん、衣愛代自身もそんな仕掛けを知らないので応援に応えようと 大量の汗をかきながらも一歩ずる前へ進んでいった。 「すごいぞ!すごいぞ!衣愛代ちゃん、ゴールはもうすぐだよ」 「何かコーナーの趣旨が違ってきたけど、頑張れよっ!」  本当なら、このコーナーはお色気シーンを楽しむものだけのものだった が、衣愛代の頑張りで、エッチな雰囲気はすっかりかき消されていた。  衣愛代コールがプール室内に響く中、目指すゴールはあと50cmまでと なっており、もう1歩進めば初クリアとなる寸前であった。  しかし、作山の本当の狙いはこれからであり衣愛代はまんまとその狙い にはまることになる。 (衣愛代ちゃん、このままクリアするとズルになっちゃうからごめん)  衣愛代がゴール地点の頂上へ手が付きそうになったとき、水の流れが一 斉に変化した。  大量の水が衣愛代の手足を襲い、思い切り足を滑らしてしまったのだ。  もうこうなると身体を支えることも出来ず、ゴール数cmというところで 衣愛代は一気にすべりだいを滑ることになった。  それも大量の水が上に向けて襲ってきたせいか、衣愛代は転んだ際に仰 向けの逆さ状態になってしまい、その姿で下へ向かって滑り始めた。  当然、頂上近くからの急な滑りだった為、衣愛代の手足は自由が利かな いまますごいスピードで滑っていき、更には急なすべりの摩擦であっと言 う間に衣愛代のビキニの上はとれてしまい、Cカップのおっぱいを仰向け で大きく揺らす形になってしまった。  だが羞恥はこれだけでは終わらなく、逆さ状態で滑っていた為、何とビ キニの下まで脱げてしまった。  そう、衣愛代は出演者の中で一番派手な演出のオールヌードでプールに 滑り落ちることになった。  ジャバァァァァァァーーーーンンッ  大きな水しぶきと共に衣愛代の身体は深いプールの底近くまで落ちてい くとこを見ると、かなりの勢いであったのが見てわかる。  ただ、これだけ恥ずかしいとこを見せたにも関わらず、司会者や観客は 拍手でプールから出てきた衣愛代の健闘を称えたであった。  しかし、当の衣愛代本人は両手で恥部を隠しているので恥ずかしく、一 礼をした後に走って更衣室に行った。  こうして恥ずかしい収録が終わり、後日TVで確認したところ、滑り落 ちる10秒ほどの衣愛代の全裸シーンは映っており、おっぱいは完全に放 映され、下に関しては何と衣愛代の顔マークでのモザイク処理されていた。  これは衣愛代にとって恥ずかしい結果となってしまったが、今回も必死 で競技に挑む姿が好評だったらしく、これだけの羞恥をさらしても衣愛代 のレギュラーは1つも減ることがなく、むしろCMやグラビアの仕事が増 えていった。  もう、本当に衣愛代のおっぱいは世間公認になってしまったかも知れない。  ふりはりの番組で、おっぱいを晒した衣愛代だが人気が落ちることなく、 多くの番組からゲストで呼ばれる日々が続く中、また新たな試練が来よう としていた。  それは、ままぁ〜ずと呼ばれる二人組の芸人が行っているクイズプレゼ ンバラエティー番組のオファが来たのだ。  この番組はクイズプレゼンターと呼ばれる芸人が面白いクイズVTRを 作って、それをアイドルや芸人たちが身体を張って挑戦するものであった。  衣愛代は番組の内容を見て、いい顔をしなかったがゴールデンというこ とで断ることも出来ずに出演をOKするしかなかった。  そんな衣愛代が挑戦する企画は「女子高生アイドルだらけの10M丸太 ぶら下がり!!一番最後まで頑張れるのは誰だ?セクシー罰ゲームつき」 というものであった。  プレゼンターはパンダッブルと呼ばれる二人組の芸人であり、過去に着 エロアイドルたちがお色気いっぱいで行って大人気企画となっていた。  今回挑戦するのは、6人の女子高生アイドルであるが、正直な話、6人 の内の5人は男性受けがいいだけのアイドルばかりであった。  その中に同じ女子高生アイドルとして衣愛代が混じって挑戦することに なったのだが、会場は男性ばかりであることから衣愛代以外の5人のアイ ドルへの応援コールが響いていた。  いや、衣愛代の人気も高いはずなのだが、不思議に衣愛代を応援する声 が出てこない。  そう、実は作山が意図的に5人の女子高生アイドルの熱狂的ファンだけ を集めたせいであった。  盛り上がる応援に5人の女子高生アイドルがセクシーな媚びを見せて、 サービスをしていく。  スカートを捲ってパンティを見せる子、乳首ギリギリまでおっぱいを見 せつける子など、どうやら5人の女子高生アイドルは全員、着エロ出身の アイドルであったのだ。  当然、何のサービスをしてこない衣愛代に対しては観客からブーイング が出ていたが、その企画VTRを見ていたゲスト審査員の大物女優2人は 怒り始めていた。 「何よ。この小娘たち、男に媚び売りすぎだわ。ムカつくわね〜」 「衣愛代ちゃんには絶対、勝ってもらいたいわね」  そう、このクイズ企画は生放送ではなく、すでに出来上がったVTRを 見てゲスト審査員がクイズに答えて企画を審査するものであり、早速VT Rを途中で止めてクイズが始まったのだ。 「さあ、6人の中で一番、最後まで丸太にしがみついたのは誰か?」  そのクイズに対してゲスト審査員の大物女優2人は即答で衣愛代を指定 した。 「あんな生意気なガキに負けてしまったら、許さないわ」 「いや、もし勝ったら私主演のドラマのゲストとして出させてあげるわ」  そんな大物女優の期待を背負うことになり、衣愛代が挑戦する企画のV TRの続きが始まった。  6人の女子高生アイドルが全員、女子高生らしく体操着に着替えて水上 10mにぶらさがった丸太に抱きつき、なまけもののような格好で最後ま で耐える。  ただ、体操着の方は少しお色気が含んでいるハイレグブルマとなってお り、それに加えて滑りやすくするために手袋とハイソックスを付けてチャ レンジすることになった。  ついに開始の笛の音が響き、全員が必死に丸太にしがみつくのだが、普 段からタクシー通勤などをしている体力がない女子高生アイドルが最初に 落ちてしまう。 「こんなの超ムリだよぉぉ〜」ドバアアアァァァァァァァンンンン!!!  大きな水音を立てて下に落ちた彼女に、早速この企画タイトルのセクシ ー罰ゲームつきが作動する。 「マジィィィーー、何で服が溶けるのよ。マジふざけてるよ」  何と彼女たちが着ている体操着は水に付けると溶けるようになっており、 更には全員下着不可で挑戦していたので、水の中に落ちるとすっぽんぽん になってしまうのであった。  そんな光景を見て青ざめる残りの5人であり、衣愛代もそれを見て、絶 対に落ちてたまるものですかと強く思ったのだ。  そんな中、体力勝負が苦手な女子高生アイドルたちが1人、また1人と プールへ落ちていく。 「いやぁぁぁぁぁぁ、見ないでぇぇぇーーー」  ジャパァァァァァァァァーーンン。 「馬鹿やろぉぉぉぉぉーーーー!」ズバァァァァァァァァーーンン。  新たに2人の女子高生アイドルの体操着が溶けていき、カメラの前で全 裸を晒していく。  2人が裸でバシャバシャしている中、新たに1人の子が悲鳴をあげて水 音を立てて落ちていった。 「きゃぁぁぁぁぁーーー、わ・私、カナヅチなのよぉぉーー」  ドポォォォォォーーーーンンッ。  あっという間に4人の女子高生アイドルが失格となり、残りは衣愛代と あきる野悠の2人の対決となる。 「衣愛代っ!いい加減に落ちろよっ!マジムカツク〜」 「そんなこと、言わないで..」  なかなか落ちようとしない2人に何と最後の仕掛けの丸太バイブが作動 した。  ヴヴヴヴヴヴッ!「げっ!何だよ、これっ」「ぁぁっ」  2人が振動に耐え切れず、どんどんと身体が下がっていく。  もう、どちらが先に落ちてもいいと言っていいほどになっており、2人 の手がほとんど同時に離れてしまったのだ。  2人とも、しがみついていた手が離れて、一気に水面に向けて落ち始め ようとしたが、何と衣愛代が意地で空中で反転して、オーバヘッドキック のような感じで足で丸太を押さえてきた。 「ありえなぁぁーーいぃ!衣愛代マジすげぇぇーー」  ドッパアアアァァァァァァァンンンン!!!  すごい荒業を見せ付けられて感心しながら水の中に落ちていくあきる野悠。  しかし、足で押さえた衣愛代に恥ずかしいハプニングが起こってしまう。  逆さ姿で丸太を押さえたせいで何と体操着が捲れて、おっぱいがこぼれ て丸出しになった。  もちろん、それを知った衣愛代も恥ずかしさから足を離して水の中に落 ちてしまった。 「いやぁぁぁぁぁぁぁーーー」ジャパァァァァーーーーンンンンッ!!!  衣愛代が水の中で全裸になっていくとこでVTRは止まり、それを見て いたゲスト審査員の大物女優2人は感動して拍手を送っていた。  パチパチパチッ「さすがだわ〜、もう絶対に私のドラマにも出しちゃう から♪」  パチパチパチッ「ちょっとぉ〜、私の方のドラマが先よぉ〜」  クイズ審査の方は当然ながら大合格となり、衣愛代の最後まで頑張る努 力のおかげで大盛況のままで番組は終わった。  後日、そのTVが放映されると、今回もおっぱいが出てるにも関わらず、 女性たちの好評を得ていた。(もちろん男性たちはそれ以上に大好評〜)  丸太を逆さガニ股で押さえる恥ずかしいシーンも、衣愛代の勝負の意地 が見えて気持ちいいものとなっていた。  衣愛代に負けたあきる野 悠たちも、衣愛代の活躍が気にいってしまっ たらしく、後日いろんな番組で褒めまくっているぐらいだ。  結果として、今回も羞恥をさらしたにも関わらず、衣愛代のレギュラー は1つも減ることがなく、逆にドラマ出演の仕事が増えていった。  ただ、衣愛代のおっぱいが完全に世間公認のものにされていることに、 不安が増えていく衣愛代であった。


第16話へ