第14話「芸能人運動会」


 今や数多くのレギュラーを持っている中、衣愛代の所にある番組出演の 話が来た。  それは衣愛代自身が前から出たかった芸能人運動会への参加依頼だった。 「衣愛代ちゃん。ついに芸能人運動会への仕事が来たよ」 「本当ですか!それって一緒に競技が出来るってことですよね?」 「当たり前だよ。あのきんトリオのミッチなんかと一緒に走れるよ」 「うわぁ〜感激です。是非、やらせてくださいっ」  もちろんすぐに承諾して出ることとなり、撮影の日がやってきたのだが、 用意された体操着に衣愛代が浮かない表情を見せていた。  作山から受け取った体操着?は衣愛代が想像していたのと全然違く、そ れはよくオリンピックの外国女子選手が着るレオタードみたいなものであ った。 「何なのこれ..それにこれって後ろがわが..」  そう、後ろの方を見るとものすごいハイレグになっており、お尻がほと んど丸見えとなっている。 「もしかして作山さんが間違えたのかな..」  これが何かの間違いだと思い、作山の方へ体操着を持っていくと作山か ら信じられない言葉を聞かせれる事となる。 「これ..かなり大胆なんですが..」 「ああ、知ってるよ」 「こんなの着て番組に出ろって言うんですか?」 「衣愛代ちゃんは今や初の教育TVのお尻公認アイドルなんだから、これ ぐらいはしないとならないんだよ」 「で・でも..」 「やっぱり民放の方が大人しい格好というのもまずいだろ?」 「ううぅ..」  しかたなさそうな口調で言い訳をしてくる作山に衣愛代自身も納得をす るしかなかった。  実は衣愛代自身も多少、派手なものが出てくるのはわかっており、ただ 想像していたもの以上なことで驚いていたからだ。 (しかたないよね..けど運動会に出れるなら..)  結局、渋々そのレオタードを着る事にしたのだが、背中の方にいろいろ と問題があり、まずはほとんど肌が露出しているのでブラやパンティが付 けられないことだった。  一応、おっぱいの方も下半身の方もサポータはあるのだが、どうも心細い。  まあ、色が水色だったので多少の汗では透ける事もないとこは安心なと こだろう。 (透けることもないから..これで行くしかないのね..)  こうして派手な体操着で運動会に出る事になった衣愛代だが、意外とお 尻公認があったせいで野次もなく、普通にいろんな競技に出て活躍を見せ ていた。  衣愛代の功績はかなり良く、今日のMVPは間違いないと周りから聞か されると大胆な後ろ姿も気にならなくなってくる。  気がつくと競技に夢中になっている元気で明るい衣愛代となっており、 周りのアイドルたちを引っ張っていく感じでもあった。 「いやぁ〜衣愛代ちゃんのおかげで今年は赤組の勝ちかも知れないな」 「白組のスター志貴野さんの活躍も目立たない感じだな」  衣愛代の活躍が続く中、運動会は終盤に入り、最も勝ち配点が高い”障 害物レース”が始まろうとしていた。  衣愛代も当然出る事となったが、障害物レースということから衣愛代以 外はほとんどお笑いやバライティの人ばかりであった。  つまりはアイドルとして出る女性は衣愛代1人であることから、本来な らここで気付くべきであっただろう。  そう、この”障害物レース”がアイドルが出るものでないものだと..  ただ、衣愛代もアイドルが出てない事は感づいていたが、一生懸命やる 性格からか、選り好みしないで出る事にしてしまった。  そんな衣愛代が出る障害物レースがスタートのドンの音と共に始まり、 みんながゴールを目指して一所懸命に走る。  まずは定番のはしごくぐり、網くぐり、平行棒があり、それを軽々とク リアして行く衣愛代に歓声が飛ぶ。  今の順位は2着であり、障害物自体もほとんどクリアしてることから、 残りはラストスパートのみであった。  先頭ともさほど差はなく、あとは思いきり追い抜かすだけだったが、衣 愛代の身にあるハプニングが起きたのだ。  何と、まだ最後の障害物”落とし穴”が残っており、衣愛代はその落と し穴に思いきり”ドボン”と落ちてしまった。  ジャパァァーーンンッ!  穴に落ちたと同時に大きく響く水音。実はこの落とし穴は水がいっぱい に入っており落ちた衣愛代はびしょ濡れとなった。 「こんな落とし穴..聞いてないわよ。けほけほっ」  衣愛代が咳き込みながらその穴から出ると何と先頭に走っていた選手は 水ではない泥の落とし穴に落ちてもがいている。 「うそっ..泥もあったんだ。良かったぁ〜水の穴で..」 (そうか..最後にいろんな落とし穴があるから、みんな出なかったのね..)  アイドルの女の子たちが出ない理由を落とし穴を見て理解した衣愛代。  そしてよく見るとまだ後続の選手も追いついていなかった事を知り、衣 愛代はまだ1着で行けると確信した。 (落とし穴に注意しながら行けば1位になれるかも!)  衣愛代は1着で行けるという思いから、落とし穴に全神経を集中してラ ストスパートを開始する。  だが、これがとんでもない間違いをしていたことに衣愛代は後で気づく 事となる。 (よしっ!もうこれで落とし穴はなさそうね)  ゴールまであと5mとなり、後続も次々といろんな穴に落ちて追いつか ない状況に勝利を確信した衣愛代。  そして、実は活躍をしていた衣愛代だが、意外にも2着ばかりであり、 これが本日最初の1着ともなろうとしていた。 「やったぁぁ〜1着だわぁ〜」  1着でゴールした衣愛代は嬉しさのあまり観客に手を振る続ける。  しかし、まだこの時になっても衣愛代は肝心な事を忘れていた。  そう、それは水に落ちた為にレオタードが完全に透けてしまっていたの である。  さすがに汗ぐらいでは透けないものでも水に思いきりつかれば透けてし まい、水色のレオタードからは衣愛代の乳首がサポータごと透けてはっき り見えていた。  ただ、下の方はサポータがしっかりした為に問題なかったが、上は完全 にセミヌードの状態になっていた。  そんな状況を全然気付かず、結局は表彰式の時に司会者が衣愛代に言う まで自分が透けていた事に気づかなかったのだ。  当然、その注意はあまりに遅くTVとしては充分に映り続けてしまった 後であろう。  顔を真っ赤にして慌てて会場を出て着替え直しに行こうとも思ったが、 すでに競技が全て終わってる事から手隠しで諦めることにした。  まあ、こんな大胆なハプニングを見せた衣愛代だったが、競技で活躍し た事でMVPも無事取れることとなった。  後は実際の放映がどうなっているかが気になるとこであり、後日TVを チェックしたところ、スケスケで手を振っている衣愛代のシーンがカット なしで放映されたのは言うまでもないだろう。  その上、視聴者の方からも苦情はなく、逆にこれぐらいの色気を出して もいいと言う賛同が多いことから、当の衣愛代にとってはいろんなとこが 公認されてしまいそうで少し戸惑いを感じ始めたのであった。  恥ずかしいびしょ濡れシーンがTVで放映されたとき、すでに衣愛代の 知らないところで大きな出来事が起こり始めようとしていた。  それはこの放送をたまたま見た某大手ドリンクメーカーの広報責任者が 発端となる。  その担当者は衣愛代の恥ずかしい姿を見て、鼻の下を伸ばすことなく、 何かに閃いたかのように大きな声で「この子だ!」と叫んだ。  実はリニューアルして出す栄養ドリンク剤、「ペタビタンA」の女性ア イドルCM起用の件でかなり頭を悩ませていたのであった。  何故、頭を悩ませていたのかと言うと、今までこの栄養ドリンク剤でC M起用したのは大物俳優ばかりであり、女性アイドルを起用するのは今回 が初めてだからだ。  たとえば、ただの可愛いアイドルだと栄養ドリンクの効き目がはっきり 見えないし、お色気アイドルだと別の効果が強く見えて、いやらしいイメ ージになってしまう。  健全で明るくて栄養ばっちしという路線を見せられる女性アイドルを探 していたのだ。 「彼女なら、いい感じで行けるぞ!うん、CMのコピーもあっている!」  そう、CMのコピーである「元気イッパーーイ」をどんな状況でも言え る女性アイドルは衣愛代しかいないだろう。  確信した広報責任者は早速、作山にCM起用の話を持ちかける事にした。 「なるほど、これは衣愛代ちゃん向きの仕事だね」 「そうですよ。彼女なら新たなイメージを作れます!」 「わかりました。衣愛代ちゃんと相談してみましょう」  作山はすぐにCM起用の話を持ち帰り、衣愛代に話したところ、今回も 前回の運動会同様に素直に受ける事となった。 「えっ..ペタビタンAって元気イッパイのCMですよね..」 「ああ、大物俳優がやっていたCMの話が来たってことだよ。ここは頑張 らないとな」「はい。もちろん、頑張ります」  こうして、とんとん拍子で話が進み、CMを撮ることになったのだが、 本番を前に衣愛代は少しだけ乗り気がしないのであった。 「あの..作山さん..本当にこの流れで大丈夫ですよね?」 「もちろんだよ。衣愛代ちゃんはCMのコピーを元気に言うことだけを思 ってやればOKだよ」 「わかりました。CMのコピーに負けないように頑張ります」  少し不安な気持ちでCMに臨んだせいか、数回の撮り直しとなってしまう。  何故、何回も撮り直しになったかと言うと撮影内容が原因であった。  何と衣愛代が今でも流されそうとなる小さな橋のロープを川に飛び込ん で引っ張るという流れが不安であったからだ。  ただ、その不安は危険からくるものではなく、川に飛び込んだ際に出て しまう現象についてだった。  実は川に飛び込む衣愛代の服装は白いTシャツにジーパンなのだが、上 の方は下着を着用しないでという条件なのだ。  つまりは川に飛び込んでしまうと白いTシャツは完全に透けてしまい、 おっぱいのほとんどが丸見えになってしまうということである。 (こんなにおっぱいが透けてCMとして問題ないのかしら?)  乳首すらも透けて見えてしまう状況に不安に思う衣愛代だが、作山が言 うには、元気いっぱいで挑めば問題ないと強く言ってきたので、ここは信 じて思い切りやることにした。  ただ撮り直しが多かったせいで撮影時間が無くなって来ると恥ずかしが ってる場合ではないと衣愛代も決意し、最後の方では撮り直しの着替えを その場で堂々と行っていた。  清純アイドルの衣愛代がおっぱいを見られてもいいという真剣な姿勢に 撮影スタッフも感動し、お互いに本気をぶつけ合いながらCM撮影を続け ていた。  そのおかげで、無事に撮影が終わり、後日その内容がCMで放映される と、今回も意外な反響が返ってきた。  かなりTシャツが透けておっぱいが出てるにも関わらず、必死で流され る橋のロープを引っ張るシーンは大好評を得たのであった。  困難なことをやり遂げた後に明るく大声でいう「元気イッパイ〜!」の 声は見るものに清々しさを与えるものであり、透けてることが全く気にな らなかったらしい。  普通、こういうエッチなものは同性には敬遠されるのだが、逆に開放感 みたいのを強く感じたせいで、若い世代では少しの間、ノーブラブームが 起こってしまったぐらいであった。  そんな波及効果が広まったせいか、衣愛代の方はしばらくブラジャー着 用を禁じられてしまい、ノーブラでTVに出ることになってしまった。  何かいつの間に、衣愛代のおっぱいはお尻に続いて世間公認のものにさ れていき、衣愛代本人としてこの先が少し不安な心境であった。 後日談:あまりの好評ぶりに第2弾の元気イッパイのCMも撮影されるこ     とになり、今度は下乳ぎりぎりの白Tシャツですることになって     しまった。     もちろんポロリをしてしまうのだが、そこは撮影技術で乳首だけ     を映さないようにしていたのだ。


第15話へ