この島からは逃げられない〜甥っ娘たくやの40日−1日目−
島に到着して1日目
「えっ……本当に拓也なの?」
港で待ってくれていた伯父は、今日来る甥がワンピース姿の女の子だった事に目を皿のようにして驚いていた。
―――父さん、面白そうだからってあたしが女性化してること黙ってたもんなぁ……
数年ぶりに会うおじさんの狼狽する姿に、あたしは着替えの入ったカバンを手に苦笑いを浮かべるしかなかった。
とはいえ、いたたまれなくなって逃げ帰ろると言うわけにもいかない。何しろこれから夏休みが終わるまで、この伯父と一緒に暮らさなくてはいけないからだ。
夏休みに入る直前、伯父の奥さんのお父さんが入院した。
症状は深刻なものではないけれど一ヶ月は入院が必要らしく、その付き添いをしなければならないため、伯母も実家に戻らざるを得ない。けれどおじさんの家は島でも数少ない雑貨屋を営んでおり、辺鄙な島ではあるけれど夏休みともなれば書き入れ時でもある。一人で大変だからと、おいそれと店を閉めるわけにもいかず、そこで身内のあたしに手伝って欲しいと頼まれたのだ。
―――バイト代は出るし、ここで男に戻るための研究費をがっつり稼がなくっちゃ!
そのためにはまず、まだ狼狽してる……というか、甥っ子なのに照れて声をかけてくれないおじさんにあたしの体のことやらなにやら説明しないといけないのかと思うと頭が痛くなる。
―――事情説明がややこしいから、普段は女の格好で通してるのに。
これはいきなり面倒そうだと、あたしは肩をすくめると、おじさんが配達に使ってる軽トラックに向けて歩き出した。
「ま、こんなかわいい甥と一緒に暮らせるんだから、ラッキーだって思ってね♪」
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