G)明日香ルート 2
「んっ……」
室内に吹き込んでくる優しい風が、眠りに落ちていた明日香を緩やかに目覚めさせる。
目を開けると、開け放たれた窓の向こうから、海へ沈み行く夕日の赤がまず最初に視界に飛び込んでくる。鮮やかではあるものの眩しさはなく、明日香の視界に映るもの全てに赤く着色する光をぼんやりと見つめていると、不意に自分がどうしてここにいるのかに思い至る。
―――気を……失ってたんだ……
明日香一人には広すぎるキングサイズのベッドは、シーツも真新しく、その上で何かが行われていた形跡は微塵もない。同様に、明日香の肌にも汚れや染み付いた臭いなど何一つとして感じず、今までひどい悪夢でも見ていた気分になってくる。
―――はははっ……そんなはず……ないのに………
顔を天井に向けると、腕で目元を覆い隠す。夕日を見ていると、都合の悪い事を全て夢にしてしまいたがっている自分に泣いてしまいそうで、その涙を強引に押し返すと、深呼吸を繰り返しながらゆっくりと身体に残る感触を思い返していく。
「っ………!」
明日香の腰が震え、軽く膝がよじり合わされる。
引き裂かれたワンピースの代わりと言うのだろうか、明日香の身体にはビキニの水着が着せてあった。色は白。いわゆる紐ビキニと呼ばれるもので、布地の面積はかなり小さく、お尻などは紐が食い込んでいるだけで、シーツに丸みが直接触れてしまっている。
ボトムは腰の左右、トップのほうはフロントホックのように胸の谷間の前に紐の結び目がある。もちろん明日香の持ってきた水着ではないのだが、ビキニに包まれた胸が上下を繰り返すほどに、玉のようにきめ細かな肌からはじっとりと汗が噴き出し、真っ白い清潔なシーツに身悶える身体がシワが刻み込んでいく。
「ふ……んッ………く…ゥ……!」
浅く下唇を噛み、肩とお尻をベッドに押し付けて軽く背中を跳ね上げる。
言い逃れの出来ないほどに、明日香の身体は何人もの外人たちによって快感を教え込まれていた。ビキニの下では揉み潰されてしまいそうなほど力強くこね回された乳房に太くてゴツゴツした指の感触がくっきりと残っているし、拓也のモノとは比べ物にならない巨根で伸びきったのではないかと思うほどにヴァギナが押し広げられてしまっている。
おそらくはこれから一生、拓也とSEXするたびに大きさの違いとテクニックの違いを比較してしまうだろう。明日香を愛してはくれるけれど、その愛を重ねるほどに、拓也の知らぬところで惨めな思いを繰り返させてしまう。
言わなければきっと、自分が十本以上もの二十センチを超える外人ペ○スと比較されているとは気付きもしないだろうけれど、一度覚えこまされたその感覚はもう二度と明日香は忘れることが出来ない。旅行が終わって日本へ帰れば、どんなに拓也とSEXしても、それどころかどんな男とベッドに上がったとしても、決してこのホテルの中で体験したような身も心も打ち砕かれるような激しいSEXを味わうことは出来なくなってしまう。
「ハァ……ハァ…ン……ア……ッ!」
視界を閉じて肌と胎内に残る快感の記憶を再生しているうちに、明日香の身体はまるで自慰でもしているかのように身をよじり、息を荒げて肌を震わせていた。くびれた腰が左右にくねり、白い布地を突き上げるように乳首が硬く尖っていく。身を震わせるほどに胸の先端はサポーターのついていないビキニの裏に擦り付けられてジンジンと痺れ、ノドを反らせながら唾液を飲むと、その分だけジワッと秘所から愛液が滲み出してきてしまう。
「ン……は…ァ……!」
ついに我慢できずに視界を塞いでいた両腕をベッドに叩き付けると、シーツを握り締めながら腰を浮き上がらせる。ヒップの谷間に紐を食い込ませるボトムの股間では、既に布地に愛液の染みが出来ており、妄想だけでヒクヒクと戦慄くはしたない恥丘を、喘ぐリズムに合わせて大きく突き上げてしまっていた。
―――や…ァ……い、イっちゃいそう……拓也…わ、私、思い出しただけで、もう、もう……ッ!
いつしか、明日香の涙は止まっていた。代わりに、何度もノドの奥を太いペ○スで塞がれた口の中には唾液が溢れ、頭の中が焼ききれるほどに鮮明な妄想に浸りながら汗の浮いた太股をキツく擦り合せた。
―――このままじゃ……拓也を……拓也を………!裏切っちゃうゥ……!
幼い頃から、拓也のことが好きだった。
何年も何年も待って、やっと恋人同士になれたと言うのに、その切欠になった女性化が今度は明日香とたくやの距離を離していた。他の男に抱かれてしまった事を忘れさせて欲しいのに、たくやの身体は明日香を抱けなくなっている。女同士での快楽もあるが、今はそれでは物足りない。何回も、何十回も、快感の炎が燃え上がっている秘所を拓也に貫いて欲しいのだ。
―――でも……もしそれでもダメだったら……
おそらく心は満たされても、決して身体は満たされはしない。外人の巨根で広げられた明日香のヴァギナは拓也のペ○スをどれだけ激しく抜き差しされても、オルガズムに達せられたとしても、疲れを知らないかのように何時間もピストンを繰り返す外人の男たちとのSEXの前では子供の遊びのように感じられてしまうだろう。
―――……ごめん…なさい……!
ギリッと奥歯を噛み締める音が鳴る。
ノドの奥を押し開いて直接精液を流し込まれ、前後の穴を同時に激しく穿り返された。粘膜を何度も掻き毟られ、穴の奥まで押し広げられたかと思うと、思い切り勢いよく剛直を引き抜かれ、排泄欲を刺激されながらむせび泣いてしまったのだ。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
ベッドに仰向けになってシーツに顔を埋めても、ますます鮮明になる快感のリプレイは収まらない。かろうじてヴァギナに指を突きたててかき回すことだけは我慢しているけれど、一突きごとにアクメに達し、汗と唾液と愛液と、そして身体中に浴びせかけられた白濁液でヌルヌルになった肢体で男たちの胸にすがりついてしまった記憶は、どれだけ停止しようとしても受け付けてはくれなかった。
「たく…やァ……!」
外人たちに犯されながら、何度この名前を呼んだだろう。けれど子宮が押し潰されるような力強いピストンにイき狂ってしまう明日香を助けてはくれなかった。涙を滲ませながらシーツを噛み、どんなに長い髪を震わせても、明日香が輪姦されている事を知りもしないたくやがヒーローのように扉を蹴り開けて乱入してくることはあるはずがない。
むしろ、犯されている事実を知られたくない明日香にとっては、たくやが助けに来てくれる事を夢想はしても、現実にそれが起きることを望んではいない。この旅行の間、ただ耐えてさえいれば、また拓也と一緒に過ごせる時間が戻ってくるはずだったのだ。
それなのに、
―――裏切った……わたし……たくやを裏切っちゃった………
心だけは…心だけは…そう念じながら身体を委ねていた明日香だが、一人で過ごすには広すぎる部屋で寂しく夕日を見つめていると、頭に思い浮かんでくるのは外人従業員たちとのSEXのことばかり。たくやが女になってから何度もひどい目に遭っているのは知っているけれど、明日香への気持ちが全く変わっていないのに対して、明日香がどうかと答えると……
「や…あぁぁぁ……」
火照りを帯びた吐息をこぼしながら口からシーツを離す。それでも明日香は、秘裂がどんなにヒクヒクと蠢いても決して手は伸ばさず、下腹で暴れる昂ぶりに眉根を歪めながら奥歯をただ噛み締める。
―――そんなこと……しなくても………
男たちは、細くくびれた明日香のウエストに手を回し、深すぎる場所にまで肉棒を埋め込んできた。その記憶が脳内で再生されているだけで、水着に包まれた明日香の秘所からは水音が鳴り響き、そのまま記憶だけで達しようと激しく戦慄くを繰り返す……が、あと数回喘げば昇りつめようとしていたその時、扉をノックされる音が室内に鳴り響いた。
「―――――――――!?」
その音で明日香はいきなり現実に引き戻される。慌てて身を起こすと、一目見られただけで何をしていたか勘ぐられてしまう股間を、手で押さえ、太股ではさみつけて覆い隠す。
『失礼します、ミス明日香』
返事を待つこともなく、扉を開けて室内に足を踏み入れてきたのは、明日香の凌辱に参加していたホテルの従業員の一人だった。年齢も明日香やたくやたちより二歳か三歳上というぐらいだろう。細身ではあるものの日に焼けた皮膚の下で筋肉は引き締まっており、当然ペ○スの大きさもたくやとは比べ物にならない。昨晩や今日の昼間は、犯されることに身構えていたためにそれほど見ていなかったけれど、顔もかなりの美形だ。もし日本で見かければ女性が放っておかないほどの甘いマスクをしている。
だが、男は決して日本にはいられないだろう。なぜなら、レディーの前に全裸で姿を現すような男は、一般常識的にいって日本では逮捕されてしまうからだ。
『よくお休みになれましたか? お体のほうはボクたちが綺麗にさせていただきましたが……もしやボクらのご奉仕が足らずにご不満でしたか?』
布が被せられてナニが乗っているのか見えないようにしてある手押しワゴンを押しながら、男はベッドに近づいて明日香が隠そうとしている太股の付け根に目を向ける。
―――気付かれた…かな……
濡れた股間を隠す手足に、思わず力がこもる。凌辱の記憶だけでオルガズム寸前になるほど感じていたことがばれるのは恥ずかしいけれど、それがばれるのは何も股間だけではない。形よく盛り上がったバストの頂点では水着を突き破らんばかりに乳首が硬くしこっているし、汗のにじんだ肌もうっすらと桜色に染まっている。日焼けでもしていれば別かもしれないけど、初日から肌のケアは万全。どこを同格そうとも水着姿では肌をどこか露出せざるを得ない以上、明日香が発情してしまっていることは男にはバレバレだ。
事実、昨晩のSEXによる疲労を感じさせないほどに男の股間は精気が隅々にまで満ちていた。女性の膣に名器があるとすれば、まさしく男のペ○スは男性の名器。大きさも太さもカリ首の張り具合も、女性を喜ばせるための最高の形をしており、明日香がどれほど拒もうとも強引にでも抱かれてしまえば涙を流して喜悦の言葉を唇から迸らせてしまうだろう。
―――ばれてる……覗き見されてたんだ………!
入室したときから、男の臨戦体勢は既に整っていた。もしかしたら明日香を抱けるから興奮していたのかもしれないけれど、紳士的な表情を崩さぬまま水着姿を見つめる視線には性に飢えたオスの獣のような眼光が漲っている。
犯される……これから間違いなく、目の間にいる男に犯される。
とても顔を合わせていられなくて視線を背けるけれど、若くて健康的な肉体は、明日香が信じられないほど急速に発情し始めていく。ヴァギナに火がついたのかと思うほどに熱が込み上げてきたかと思うと、妄想ではなく目の前にある肉棒に割り開かれる事を期待して花弁が膨張してしまっていた。
―――何を……考えてるのよ。私はこの人に……犯され…たん…だから……
頭の奥がジーンと痺れると、一日かけて巨根とのSEXの快感を教え込まれた明日香は次第に抗う事を考えられなくなっていく。震える腰の奥から熱い滴りが溢れ落ちると、堪えきれない切なさにヴァギナが大きくうねってしまい、浅く開いた唇で浅く短い呼吸をせわしなく繰り返してしまう。
水着の下で大きく脈動を繰り返す胸を押さえながら、明日香は口の中に溢れ始めた唾液を噛み締め、妙に熱のこもった眼差しで顔をゆっくりと上に向ける。するとワゴン台をベッドの傍に運んだ男は、明日香の不安を和らげるようににっこりと満面に笑みを浮かべ、ベッドの上に膝をついてにじり寄ると、そのまま肩を掴んで真っ白いシーツに押し倒した。
―――……今からこの人に……私……また抱かれるんだ………
半ば諦めつつそう思うものの、水着のみを身につけた身体の方は昂ぶった股間をキュンッと引き絞り、布地の下で勢いよく吐淫してしまっている。これもたくやに気付かれないためだと自分に言い聞かせ、弾みそうになる息を押さえ込んでも、興奮していることだけは隠しようがない。
本能が求めていた。拓也よりも何倍も気持ちよくしてくれる外人の男とのSEXを。……ただ理性はそれを受け入れられず、必死に否定し続けている。
―――そうよ……無理やり……私は無理やりこの人に犯されるんだから……
それが明日香が導き出した結論。たくやへの言い訳も立ち、肉体の快感も得られる最善の言い訳だ。
だが、明日香の心が男を迎え入れるための矛盾を排除したにもかかわらず、男はどこか楽しげに明日香の顔を見つめただけで身体を起こし、ベッドから降りてしまった。
『あ…あの……』
『しばらくお待ちを。すぐにマッサージの用意を整えますので、仰向けに横たわっていていただけますか?』
『マッサー…ジ……?』
明日香が首を捻ると、男はワゴン台の布を取り、台の上に並べてあった水差しのような入れ物を手にしていた。
『ええ。あなたへのご奉仕も今日限りとオーナーからは仰せつかっております。身も心も満足して差し上げるのが当ホテルのモットーですが、やはり一日だけではご不満もお疲れもおありでしょう。ですので、当ホテル自慢のオイルマッサージをミス明日香には楽しんでいただこうと思いまして』
『………いいわよ、そんなウソ。どうせ私を犯すんでしょ?』
『とんでもありません。私たちは、お客様が求められるか、オーナーから特にというご指示がなければ、不埒な行いはいたしませんとも』
そう言って男が大きめの水差しに入ったオイルを手に再び明日香の元へ戻ってくる。腕で胸を隠し、太股をよじって股間を隠し、けれどそれが男にとってとても扇情的な姿であることに気付いてもいない明日香は、想定外の行動にどう反応するべきか迷っていた。
―――こんな生活も……今日だけ……
散々ひどい目に遭わされてきた明日香ではあるが、それが本当に松永先生の言葉であるなら、信じられると思っていた。明日になれば、たくやたちに病気と偽らなくてもいいし、一緒に南国を満喫できる。今日の買い物には付き合えなかったけれど、日程にはまだ余裕があるのだから遊ぶ機会は何度だってあるはずだ。
でも……元の自分へ戻れる喜びとは別に、ぐっしょりと愛液を吸った水着の下では、戦慄く陰唇が二度と外人とのSEXができなくなる事を惜しんでいた。旅行を終えて日本へ帰れば、もう二度と蜜壷が引き裂かれるような巨根との激しいSEXは出来なくなる。もうすぐ男に戻る予定の拓也が相手ではダメだ。相手が一人だけでも満足できないかもしれない。
口には出せないけれど、このホテルでだからこそ知りえた女の悦びが味わえなくなるのだと聞かされた時、明日香は開放の喜びよりも先に、足元が崩れ落ちてゆくような絶望感を覚えていた。だから……胸を締め付けられるような苦しさを堪えながら明日香が口を開こうとする。しかしその前に、オイルマッサージの用意を整えていた男は何かを思い出したかのように明日香へと顔を上げた。
『言い忘れておりました。今夜はたくや様、美由紀様、ケイト様のお三方はお戻りになられませんので』
『え……な、なんで……?』
『島へ戻る予定の時刻になっても船に戻られず、連絡を差し上げたら「今からでは間に合いそうにない」からと言われまして。船には今夜の夕食に使う食材も積まれておりましたし、仕方なくホテルの用意はさせていただき、お三方には一泊していただくことになりました』
『そう……なんだ……たくや、いないんだ……』
『ですから気兼ねなさることはありません。今夜はのんびりとしていただければ、明日にはもう……』
最後の男の言葉を言い換えれば「恋人がいない最後の夜を思う存分楽しみましょう」と言うことだ。それは明日香にもわかっている。
けれど明日香はジッと何かを考えていたかと思うと、おもむろにベッドにうつ伏せになる。そして一度だけ熱のこもった視線を男に向けると、腕を枕にして顔を下に向けてしまう。
―――たくや……いないんだ……
さびしくて、ホッとして、そして嬉しくて……水着に包まれた胸の奥では、どれが本当の気持ちかわからないほどいくつもの感情が混ざり合っていた。
好きな人が傍にいない……その事に対して複雑な感情が湧き上がることが、そして最後だからと男の前で無防備に身を横たえることが、既に裏切りであることも理解できないまま、明日香は背中に滴らされた油の感触に小さく身を震わせていた―――
分岐G−3へ