F)たくやルート 2


 ―――こ、この島、何なのよいったい!?
 使い物にならなくなった水着の代わりにTシャツと短パンと言うラフな格好でクルーザーの外に出たあたしは、目の前の異国の――いやもう地球上とは別世界とも思える光景にいきなり度肝を抜かれていた。
『んぅ〜! ス、スゴいわ、もう、身体がバラバラになりそうよォ!』
『まだ俺のチ○ポは半分も入ってないんだぜ。そら、たっぷり味わいな!』
『ああッ、あうッ……ああッ、あうううゥ! いいっ、いいッ、あうぅぅぅん!』
 まだ日も高いと言うのにクルーザーが入った港のあちらこちらからあられもない声が響いていた。
 桟橋で並んだ隣の船に目を向ければ、デッキの上で、水着姿の金髪美女が日に良く焼けた逞しい男性と絡み合い、突き上げられるたびに熱い喘ぎを迸らせていた。あたしと目のあったその女性は、外人ペ○スがめり込むように捻じ込まれている秘部を隠すどころかこちらに良く見えるように、膝の裏に手を入れて抱きかかえられ、一際大きく喉を振わせ始める。
『見られてるぅ…私のおマ○コが、わ…若い子に…ああっ、そんな目で見られたらァ!』
『嫌がってる振りして何おマ○コ締め付けてるんだい? ほら、見られて嬉しいんだろ、だったらイくところまで見てもらいなって』
『ダメ、ダメよ、そんなに激しくされたら、感じちゃう、ハア、ハアッ、ハアアアアアアアアっ!』
 男性の腕で力強く左右に広げられた両脚の間に右手を滑らせ、あたしのいる場所から見ても判るほどに大きく飛び出しているクリトリスを擦り上げながら、背後からの突き上げに合わせてリズミカルに腰を弾ませる。長い髪を右に左に揺らしながら、涙を浮かべた瞳をキツく閉じ合わせると、二人は唐突に動きを止め、結合した部分から昇りつめたと言わんばかりに大量の透明な飛沫がブシャッと噴出した。
「た、タクヤちゃん、早く降りましょうですネ……」
「へ……あ、ああ、うん、そだね、お、降りなきゃ」
 ケイトに指摘されて慌てて隣のクルーザーから視線を逸らし、顔が気温以上に熱くなっているのを感じながら船から下りる。
 ―――と、そこはもう裸! 裸! 裸!!!
 桟橋の淵に腰をかけた老人は、その腰の上に孫ほども年の離れた美少女を乗せ、細い腰を乱暴に突き上げている。
 船の係留作業をしている男性は全て全裸で、身体のどこにも日焼けしていない部分なんてありはしない。股間も、そしてあたしたちを出迎えるようにギンギンにそそり立った男性器までもが真っ黒に日焼けしており、全体に帯びた艶かましい輝きが“肉の凶器”と言う言葉をあたしの頭の中に連想させてくる。
 そして港の向こうの通りに向けても、あたしのように服を着ている人は一割もいない。男性女性関係無しにほとんどの人が水着、もしくは全裸。それだけならまだヌーディストビーチと言う言葉で一定の理解を得ることが出来たのだけれど、建物の壁に手を付いてバックから犯されている女性や、デッキチェアーに身を横たえている男性の上で激しく腰をくねらせる女性のカップル、オープンカーの座席で男1女2の3Pに興じている人たちを一気に目にすると、南国の暑さでただでさえ温度高めの頭が一気にオーバーヒートしてしまう。
 こんな状況を前にしては美由紀さんも、エッチ好きのケイトでさえも呆然として足を止めてしまっていた。そんなあたしたちの頭上から、
『ヘイ、たくや、美由紀、ケイト! この島はフリーセックスアイランドだからな。今日一日たっぷり愉しんでくると良いよ!』
 と、ここまであたしたちを連れて着てくれたクルーザーの船長さんが声を掛けた。
『フリーセックスって……せ、性差別撤廃とか何とか?』
『違う違う。解ってて言ってるだろう、たくや。“フリーセックス”は言葉のとおりの意味さ。誰とどこでエッチするのも自由ってことだよ。本来は入国審査が厳しいんだけど、君たちはオーナーのゲストだし美人ぞろいだからね。審査無しの一発OK。俺たちじゃ船から下りることも出来ないんだぜ? 羨ましいな〜』
『ちょっと待てい! あたしたち、ただショッピングに来ただけだよね!? 誰かさんたちに破られちゃったあたしの水着とか、海外のお土産とか!!!』
『俺は思い出こそが最高のお土産だと思うぜ? それじゃ船は夕方までここで待ってるからね。時間は守ってくれよ?』
『そんなこと言ってるんじゃないっ! ほら、あたしたちが最初にいた島があるじゃない。あっちに連れてって!』
『困るなァ、そういうこと言われても。こっちにも予定ってものがあるんだからさ♪』
 あんたたちの都合なんて知るかァ!……と、なおも言い募ろうとしていたあたしの横を、ビキニ姿の女性二人が通り過ぎていく。
『ハァイ♪ 今日はゆっくりして行けるの?』
『悪いな。オーナーの大切なお姫様たちのエスコートしなきゃいけないんでね。時間が無いから早速上がって着てくれ。時間いっぱい愉しもうぜ』
『そう言う訳なの。ごめんなさいね。フフフ……♪』
 予定って言うのは女性のことですか!?……船の中で美由紀さんにあれこれしたくせに、島に到着して早々別の女性と会うって言う船長たち男性陣の狂った倫理観に頭が痛くなるけれど、そんなものもビキニ女性たちが目の前で水着を脱ぎ捨てて全裸になると水平線の彼方にまで吹き飛んでしまう。
『あなたも素敵な身体してるんだから、そんな野暮なシャツは脱ぎ捨てて男性にいっぱいに愛してもらったら?』
 さすがに全裸で街中を歩くのには度胸がいると言いますか……結局、そのひと言で続けようとした非難や叫びを封じ込められたあたしは、クルーザーの中に女性たちが入って行くのを黙って見送るしかなかった。
「えっと……どうする? 街のほうに行けばお店とかあるみたいだし、誰も彼もがSEXばかりしてるって訳でもなさそうだけど……なんにしても夜まで時間潰さなきゃ」
「ん〜、ケイト、あんまり知らない人とムヤミヤタラにエッチするのは好きじゃありませんネ。フリーセックスでも、NOってキチンと言えば問題ないはずですネ」
 ―――とは言え、あたしはノーと言えない人間だからなァ……
 今までの自分の経験からすれば、言い寄られるとなし崩し的に最後まで言ってしまうことが多い。強引にされることも考えられる。しかもそれが街のど真ん中でとなれば、
 ―――うわわわわわわァ! アダルトビデオなんて目じゃないようなとんでもないことになっちゃうじゃない。露出!? 痴女!? もう買い物とかどうでもいいから、美由紀さんとケイトをどこかひと目に付かない場所にかくまわなきゃ!!!
 この場にあたしの恋人の明日香がいないのは不幸中の幸い。だからと言って美由紀さんとケイトだったらどんな目にあってもかまわないと言うわけじゃない。ただでさえこの旅行の間、何度も酷い目に遭っているのだ。二人を守るのは一応男のあたしの役目。あたしなら、例え何十人にレイプされるようなことがあっても、旅行から帰って男に戻れば忘れることだって出来る。でも二人は―――
「でも……考えたらちょっとドキドキしちゃいますネ。ケイト、おソトで見られながらエッチしちゃったら、どんなに乱れちゃうか想像もつきませんね……♪」
 ―――あれぇ? なんだろ、ケイトがなんだかんだ言いながらも楽しそうにしてるのは気のせい?
 両頬に手を当てクネクネしている姿は、どちらかと言うと喜んでるようにしか見えない。目を閉じて頬を緩めながら頭に思い描いてるのは……間違いなく、この島で起こるであろうアレとかコレとかだ。
「実は私も。怖いのは確かなんだけど、さっきからずっと胸がドキドキしてて……街中でエッチなんて、帰ったら絶対出来ないもんね。物凄い思い出作りになっちゃいそう」
「み、美由紀さんまでそういうこと言いますか!? あたし的には一緒にケイトのストッパーになって欲しかったのに!」
「あはは、とんでもない卒業旅行になっちゃったよね。私ひとりじゃ足が竦んでるかもしれないけど、たくや君も一緒だもん。今だから一生忘れられないようなエッチな思い出って言うのもいいんじゃないかな」
 南国の暑さがそうさせるのか、それともクルーザーの中での情事の余韻が残っているのか、美由紀さんは赤らめた顔に笑みを浮かべると、あたしの左腕に自分の腕を絡め、ビキニに押し込められた90センチオーバーの巨乳をこちらに押し付けてくる。
「旅行が終われば離れ離れだもん……抱いてくれないんだから、当然付き合ってくれるでしょ、たくや君?」
「ケイトもケイトも〜♪ たくやちゃんにおチ○チンが生えてたら、明日香ちゃんなんて押しのけてタクヤちゃんドクセンしてましたネ♪ ホテルにカンヅメでおマ○コにビュクビュク中出しして欲しかったですネ〜〜〜♪」
「そんなのダメ。その時は半分は私のなんだから!」
「わかってますネ♪ アスカちゃんがいないんだから、美由紀ちゃんとケイトでタクヤちゃん仲良く半分こですネ〜〜〜♪」
 そして今度は右腕にケイトの腕が絡みつくと、あたしの身体は巨乳同級生のオッパイにこれでもかと挟み込まれてしまう。ボリュームではケイトが、弾力では美由紀さんが、お互いの乳房をアピールするかのようにあたしに身体に押し付け、火花を散らして自己主張しあっている。
 ―――でも、二人ともあたし以外の男の人とエッチするかもしれないのに……
 この胸に込み上げる思いは嫉妬なのだろうかと自分に問いかけると、間違いなくそうだという答えが返ってくる。明日香と言う恋人がいながら、自分の身体で二人を抱けないことに胸を掻き毟りたくなるほどの焦燥が沸き起こり、それが浮気と言う名の罪になると自覚しつつも、あたしの両腕は二人の腰をグッと力強く抱き寄せていた。
「んっ……今日はずっと一緒だからね♪」
「卒業旅行が終わるまで、ケイトも美由紀ちゃんもたくやちゃんの恋人ですネ♪」
 だったら、いつまでもこの旅行が終わらなければいい。―――明日香だけじゃなく、二人の同級生をも自分のモノにしたいと思う強欲な気持ちが胸の奥から込み上げ、無茶な願望を思い描く。
 誰にも渡したくない。
 あたしに思いを寄せてくれている美由紀さんとケイトを、明日香と同じぐらい、愛し抜いてあげたい。
 だけどそれは本当に出来ない相談だ。あたしと二人の進学先は違う。明日香と言う一番愛している存在が、それ以下の立場に置かざるを得ない二人とは、いつまでも一緒にいられないと告げている。
「………まずは、水着を買いに行かなくちゃね」
「え〜〜〜!? このままラブラブエッチに突入するんじゃないんですネ!?」
「もう! ちょっとは私たちを自分勝手にメチャクチャにしたいとか思わないわけ? この意気地なし!」
 あはは、なんと言われようと構いはしない。
 今はただ、あたしに出来る限り二人を大切にするだけだ。この旅行がずっとずっと続くことを願いながら、美由紀さんとケイトとの、最後だけど思い出せば笑顔になれるような楽しい思い出をいっぱい作ろうと―――


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