B)明日香・ケイトルート 1
「彼女ぉ、なに一人で黄昏れてんの? よければ俺が」
―――ドスッ
気安く声を掛けてきたナンパ外人のみぞおちに、明日香の肘が叩き込まれる。そのまま砂浜に膝を突く男を見向きもせず、明日香はため息を突いた。
「あ〜あ…つまんないなぁ……せっかくの旅行なのに……」
ナンパされるのが目的でもないのに、ビーチを一人で歩いていても意味が無い。声を掛けてくる男は誰もが下心が見え見えで付いて行く気もないし、付いて行く気にもさせてくれない。
この旅行のために購入した、ちょっと大胆に胸元を見せるベアトップのワンピースも、本当に見せたい相手に見てもらえず、見てくれるのはビーチの至る場所にたむろしている男たちばかりだ。上にパーカーを羽織ってはいるけれどあまり効果はなく、いくら「倒して」も声を掛けてくる男の数は増える一方だった。
「………たくやのバカ」
長い髪をかき上げながら、明日香はいくら待っても来てくれない恋人の名前をつぶやいた。
そもそも、いけないのはケイトだ。
ケイトの水着は白のストリングビキニ。松永先生を除けば四人の中で一番豊かな胸を半分以上露出した姿は外人モデルさながらだった。
それはいい。明日香だってケイトや美由紀には及ばなくても少し食い込みの角度が急な水着を選んで、この旅行中にたくやへモーションをかける気でいたのだから。――けれどケイトは、ビーチに出てすぐに声を掛けてきたナンパ男に誘われるがまま、ほいほいと岩場まで着いていき、
「明日香ちゃん、すぐ済むから待ってて下さいですネ♪」
そう言い残し、岩場をほんの少し入った場所ですぐにSEXを始めてしまったのだ。
………それは確かにすぐ済んだ。
辛うじてビーチから見えないと言う程度の位置で、ケイトは男と濃厚なキスを交わすと、あごの先まで滴った唾液を男の胸に塗りつけるように舌を這わせながら砂の上へひざまずいた。そして勃起したものに押し上げられて細く引き伸ばされたビキニ水着に手を掛け、最初に露出させた亀頭をチロチロと舌先でくすぐりながら、焦らすようにズリ降ろしていく。
その光景を明日香は隠れて見ていた。ケイトは自分一人でいいと言ったが、何かあったら…と、岩場を回りこみ、ビーチから隠れられている位置からケイトと男の情事を盗み見ていた。―――そして、露わになったナンパ男のペ○スを、ほぼ正面の位置から直視してしまった。
(お、大きい……話には聞いてたけど…あんなに……)
ケイトの舌に巧みに嘗め回されたペ○スは、瞬く間にそそり立った。その姿は、拓也のモノと子供の頃に見た父親のモノしか知らない明日香には、ハンマーで頭の中を殴られたぐらいにショッキングなものだった。外人のペ○スが日本人よりも大きいと情報では知っていたけれど、実際に目にしたペ○スは20センチを軽く越える長さで、遠めに見ても明日香の秘所に納まるような大きさには思えなかった。
(まさか……あんなの………)
唾液で濡れる舌先が敏感なポイントをくすぐるたびに、跳ね上がった肉棒がベシッと腹を打つ。その元気な様子をどこか蕩けた表情で見つめたケイトは唇を舐めながらペ○スへ手を這わせる。そして大きく唇を開いて、何人もの水着美女を食い荒らしてきた浅黒いペ○スの先端をおいしそうに頬張った。
明日香は信じられなかった。
ケイトの整った顔立ちが男の太いペ○スで苦しそうに歪み、顔を揺さぶるたびに結い上げた金髪が尻尾のように揺れる。さきほどまで楽しく話していたケイトがあんな人間のものとは思えない大きさのペ○スを舐めしゃぶっている姿を、明日香の理性は拒否してしまう。もし認めてしまえば、クラスメートとして過ごしてきた宮野森学園での生活がすべて砕けてしまうような気がしたからだ。
それに……
(あ……射精してる…飲んでる…の?)
考え事にふけっていると、ナンパ外人の腰を振る動きが止まった。不意に腰を突き出し、ケイトの頭を抑えて太いものを深々と押し込むと、喉を反らせてアウオウとアシカのような声を上げて全身を震わせる。そしてペ○スを受け止めたケイトの唇からはおびただしい量の白濁液が逆流し、白いビキニに押さえつけられた巨乳の上へ白い雫をぼたぼたと滴らせた。
その射精の量にも明日香は目を丸くした。まるでケイトの口へ捻じ込んだゴムホースからミルクを流し込んでいるかのように、精液はケイトの口から漏れこぼれる。垂れた雫は胸の谷間へと流れ、白い水着と色合い的に混ざり合うように大きく張り出した丸い膨らみを汚していく。
「んッ………それじゃ、次はケイトもこっちの方で楽しませてほしいですネ♪」
射精が終わり、やっとペ○スから口を離したケイトは唇の端に垂れた精液を拭い取ると、手近な――明日香から見て横を向く位置の――岩肌に手を突き、ボトムの左の腰紐だけをスルリと抜きほどいた。
「もう準備は出来てるから……いきなり入れてもいいネ……♪」
片手を岩につき、股の下から通した左手で自分の割れ目を割り開いたケイトに、まだ射精の余韻の覚めやらない男は自らペ○スを扱いて挑みかかった。
「――――アッ…アウゥ…オゥ、んっ、おチ○ポ…あふ……太いのが…ケイトのおマ○コに届いてますネェ…アアァアッアアア♪」
ビーチの端とは言え、岩場の奥にまでイっていないケイトたちの位置からこんな大声を出せば誰かに聞かれてしまうかもしれない。その時見つかるのはケイトだと言うのに、顔を真っ赤にした明日香は思わず顔を伏せて口を手で押さえてしまう。
否応なく聞かされるケイトの喘ぎ。そして頭の中で何度もリフレインする男の腰の動き。叩きつけてはペ○スをズルリと引き出す動きは、明日香の知る拓也のそれとはまったくの別物で、テクニックなど関係ない、信じられないような巨根でねじ伏せ、ヴァギナを割り開くパワフルなSEXだった。視線をそらしていてもケイトのヒップと男の腰がぶつかり合うパンパンと言う音だけは明日香の耳へ届き、否応無しに、逞しい男の引き寄せられ、胸を揺らしながら悶えているケイトの姿を想像してしまう。
想像はそこで止まらない。ケイトの声がますます激しくなると、明日香の股間がだんだんと熱を帯び始めていく。まだ一度も海に入っていないのに水着には水分を吸った染みができ、濡れた感触がケイトたちのリズムに合わせて疼く秘所に伝わってくる。
(私、何を……ケイトがしているすぐ傍で、覗きながら濡らしてるなんて……)
今すぐこの場を離れるべきだと頭の中で警鐘が鳴っているのに、明日香はその場から動けなかった。それどころか顔を上げ、息を殺したままケイトたちの行為を目に焼き付けてしまう。
「アアッ! イ、イイ、アゥン、アア、アア、アア〜〜〜〜〜!!!」
白いビキニに包まれた乳房が根元から揺れていた。ケイトは声を出るがままに任せ、暴れる体を支えるために両手を壁についていた。思わずケイトの体のグラマーさに息を飲み、軽い嫉妬を覚えた明日香だが、その白いからだが男に突き上げられて伸び上がるのを見てますます濡らしてしまった事を自覚してしまう。
他人のSEXを見るのなんて初めての経験だった。……拓也がそう言うビデオを持っているのは知っているし本棚の裏などに見かけたこともある。気持ちよさはともかく、お互いの愛情を確かめ合う行為がSEXだと、そんな考えを抱いていた明日香は、見る必要性を感じなかったし興味もなかった。
それなのに、ケイトたちが下半身をぶつけ合う光景から目が離せなかった。男のペ○スはケイトの小さなヴァギナを抉り抜いている。痛々しいまでに拡張したケイトのヴァギナからは愛液が溢れ、ふと長いモノが収まってしまうたびに聞こえる喘ぎが、明日香の体に眠っていた欲望を目覚めさせていった。
「イイですネ、ケイトの、おマ○コで、おチ○チンがビクビク脈打ってますネ! ダして、ケイトのおマ○コにアツいのいっぱい注いで欲しいですネェェェ!!!」
それを聞いた男は掴んだケイトの腰を激しく揺さぶりたて、明日香ならモノの数秒で壊れそうなほど荒々しいピストンでケイトの淫裂を掻き回した。そのペ○スをケイトの秘所は舐めるように咥えこんでは吐き出す。
「アフウゥゥゥウウウウン!!」
ケイトが一際大きな声で泣く。
ペ○スを膣に目いっぱい差し込み、子宮口をグリグリと擦りながら、外人の男が絶頂に達した。先に口に出したときと同じように、そそがれたばかりの精液がヒクヒクと蠢くケイトのヴァギナからあふれ出し、二人の結合部を白く汚していった。
「フゥ……ケッコウ楽しめましたですネ……♪」
男がケイトの下半身をタップリ汚してからペ○スを引き抜く。けれどケイトは顔に張り付いた髪の毛を書き上げながら体を起こすと、まだザーメンの溢れるヴァギナをさっさとビキニのボトムを直して隠してしまう。
「おチ○チンはヴェリービッグでしたが、ケイトはもっと気持ちのいいSEXを知ってますネ。今度会うときはもっとクンフーをツんでおいて欲しいですネ♪」
つまり、ナンパされたようで実際に遊んでいたのはケイトの方だった……と言う事だ。
ナンパ男はと言うと立ち去るケイトの後姿を呆然と見つめたまま、どこかショックの覚めやらぬ表情をしていた。
岩場に入ってから、時間にして十分も経ってない。その間に二度も射精した男の方が敗北感に打ちのめされているだろうが、どこか満ち足りた表情を浮かべているのを見て、明日香は何故か赤面してしまう。
(何で私までホウッとしてるのよ!)
ケイトを心配して見に来たはずだ、と自分へ言い訳して冷静さを取り戻した明日香は、今しがた見たものを忘れようと決めて隠れている岩場を後にしようとする。
………確かにケイトの言った通りにすぐ済んだ。だが―――
「ちょうどいいから4Pしましょうですネ♪」
ケイトはナンパ男二人組みと腕を組んで戻ってきた。
(まだするの!? わ、私やたくや達との待ち合わせは!? ねぇ、ねぇ!)
言いたい事は山ほどあった。けれど新たにやってきた二人の男へケイトが手を滑らせるのを見て、顔が熱くなるのを感じた明日香は、そそくさとその場を離れていった―――
(―――そうよ。ケイトは女の友情より男との肉欲を選んだのよ。それが悪いとは言わないけど、私が待ってるって知ってて男の人の誘いに乗るのか、一体どういう神経してるか見てみたいわよ!)
心の中はケイトの批判で埋め尽くされていた。それは裏返せば、あんなところを覗いたけれど自分は悪くないのだと、無意識に自己弁護しているに過ぎなかった。
それほどに明日香は今見たケイトのSEXを忘れ去りたかった。旅行前日、松永先生によって「目覚めさせられた」今の明日香は人一倍貞操観念が強く、その下に濃厚な性欲を渦巻かせていた。気付かなければ普段どおりでいられたのに、自分の内面を垣間見たせいで精神的なゆとりと言うものを持てていないのだ。
「たくやも美由紀もいないし……ああ、もう! みんなして! 私ばっかり!」
「ヘイ彼女、よけれゲフッ!」
怒鳴る言葉に意味はなく、言い寄ってきた男に裏拳を叩き込んだ事も無意識の行動だ。男が一人、足元に倒れ紺でも明日香は気づいたそぶりすら見せず、肩を怒らせてビーチを縦断していく。
(こんな事なら旅行になんて来るんじゃなかった!)
もし日本にいれば、大学入学の手続きでたくやと行動を共にする事も多くて、気付かされた性欲だって……恥ずかしい事を除けば解消できたはずだった。それと比べると、今のイライラした気分はあまりにも不愉快だった。
「これだけ捜してもいないってどういうことよ。………はぁ〜…一度ホテルに戻った方がいいのかな……」
もしかしたらまだ水着に着替えられていないだけかもしれない。そうであって欲しいと願望めいた考えを抱いた明日香はぴたっと急に足を止めると、追いすがっていたナンパ男を一人打ち倒してホテルの方へときびすを返した。―――その時、
「………歓声?」
近くで沸き起こる歓声。そちらへ目を向けて見ると、オープンテラスのレストランへ何十人もの男たちが押し寄せ、人垣を作っていた。
なんだろう……そちらへ興味が沸き、明日香も近づいてみる。けれどさすがにこれだけ男の中を強引に前まで行くのは水着にパーカーだけと言う事もあって抵抗がある。それに……言いにくいが、レストランの中を見つめている人間の興奮した声は、女性が傍にいれば誰でも犯してしまいそうな、そんな色を持っていた。
(けど気になるのよね……)
それなりに持ち合わせている好奇心を満たすため、明日香は回りを見回し、人が少なくてジャンプすれば覗けそうな場所を見つける。
(ここなら……!)
足元の砂を蹴り、高くジャンプする。
何が行われているか確認するだけでいい、そんなつもりのたった一回のジャンプだったけれど、人垣の頭の上から向こう側を見てしまった途端、激しい後悔に襲われ、着地と同時にその場にうずくまってしまう。
人の輪の中心で行われていたもの……それはレストランである事も忘れそうなほど、男の指に責め苛まれて、脚を大きく開いてなき悶えるショートへあの女性の姿だった。
(………見なきゃよかった)
後悔先に立たず……その言葉を頭へよぎらせた明日香は、人ごみから何人かが自分のほうを向いているのに気付くと、一瞬ではあったけれど目に焼き付けてしまった女性の悩ましい四肢を忘れようと頭を振りながら、まるで逃げるようにホテルへと駆け出して行った―――
分岐B−2へ