29・北ノ都学園チョコレートチェイス(XC3)-前
「ふふふふん、ふっふふ〜ん♪」
二月も十日を過ぎると、女の子がキッチンでバレンタインに向けてチョコレートを作ると言う話も増えてくる。女の子同士で「誰にあげるのか?」「義理を何個用意するのか?」「何処のチョコがお値段手ごろで高級に見えそうか?」「誰にも上げない子はチキン認定よ!」などと話に花を咲かせ、その裏では友人たちすら出し抜くために恋愛成就のための準備と策略を練り、年に一度の集団告白(半ば強制)の日に向けて着々と準備をするのがこの時期の風物詩だ。
そんな世界全体が公認して恋愛ムードを盛り上げている一方で、中には自分が食べるために高級チョコを買う女の子もいるけれど、そして渡す相手が男の子ですらない女の子もいる。片桐明日香も正確には違うかもしれないけれど、女の子に本命チョコを渡さなければいけない女の子の一人であった。
―――だって恋人が男から女に性別変わっちゃったんだからしょうがないじゃない!
腰にまで届くロングヘアーに整った美貌。気は強いもののちょっとしたアイドルよりも遥かにかわいい明日香ではあるけれど、頭を痛めているのが恋人である相原たくやがちょくちょく女に性転換させられてしまう事だ。
一年先輩の佐藤麻美と二年後輩の河原千里、このライバル視しあう二人のマッドサイエンティストの勝負に巻き込まれたり、女性化したたくやにベタ惚れしている性倒錯者・工藤弘二の姦計によって、たくやが男に戻るたびに女にされる。最近では男でいるより女でいる期間のほうが長くなってきていて、その事が明日香の悩みの種になっていた。
―――だからこそ、たくやに自分が男だって事を認識してもらわなくちゃ!
バレンタインにチョコレートを渡せば、明日香の気持ちが伝わるのと同時に、自分が男と認識されていることがたくやにも分かる筈だ。女の体のたくやに抱かれるのには抵抗があるけれど、それでも「そう言うこと」も覚悟の上。今年はチョコを奮発しただけではなく、自分が“食べられる”事も想定して気合をいれた勝負下着も用意してしまっていた。
―――こ、ここまでしたんだから失敗は許されないのよ……たくやだって私を好きなんだし、問題なんてまったくない!
とは言え、恋人と付き合うのとバレンタインにチョコを渡すのは別物だ。たくやに気取られないように過ごしたこの数日は緊張しすぎて心臓が痛いぐらいで、チョコを渡して改めて“好きです”とか“愛しています”とか伝える恥ずかしさに、明日香は眠れぬ夜を過ごしていた。
だけどバレンタインデーを明日に控えた13日……たくやの家を訪れた明日香は、鼻歌の聞こえてきたキッチンを何気なく覗き込んだ瞬間に、頭の中が真っ白になるほどショッキングな光景を目の当たりにしてしまう。
―――たくやが……チョコレートを作ってる……
いくら体が女の子になったって、しゃべり方が女の子っぽくなったって、何気ない仕草がドキッとするほど女の子っぽかったりしても、明日香の中ではたくやは男の子なのだ。それなのにチョコレートを作っている……その意味を考えようとした途端に、明日香はたくやに声も掛けず、その場から逃げ出してしまっていた。
―――私がたくやに渡しても、たくやが別の男の人にチョコを渡したら……どうなるの? どうなっちゃうのよ!?
眠れぬ夜の胸の高鳴りは、それはそれで甘くてくすぐったい喜びに満ち溢れていた……けれど前日の夜だけは、明日香は不安で押しつぶされそうな夜を過ごすこととなってしまった。
--------------------------------------------------
『チョコレート作ってきたんですけど、よかったら食べてみてもらえませんか?』
そう言ってたくやが自分で作ったチョコレートを出したのは、五条ゼミのゼミ室でのことだった。
手渡したのは、助教授の五条留美に後輩の高田綾乃。小さなチョコレートをラッピングで包み、可愛らしくリボンであしらってあるのが、覗き見している明日香の心を容赦なく不安で煽り立てていた。
―――ぎ、義理よね。二人に渡したのって絶対に義理よね……!
そうでないと物凄く困る。今日、たくやと明日香が通う北ノ都学園まで車で送ってきたけれど、明日香には留美や綾乃に手渡したチョコレートなんてくれなかったのだから。それにもし本命だとしたら、恋人の明日香の立場はどうなると言うのか。
―――ううう、誰に渡すのか不安になって覗き見してるけど、こんな私でもたくやの恋人なのにぃ……
今まさに「たくやの恋人」と言う地位がグラグラと揺れていた。
周りから見れば相原拓也と言う男は、女性時と違って見た目も物凄く美形と言う訳ではない。富とも権力ともまったくの無縁だ。
だけど幼い頃からずっと好きで、今も好きで、これからもずっと好きでいる大切な人なのだ。拓也の何処がいいから好きだとかではなく、拓也だから好きなのだ。だから拓也が女性になれば心配もするし、他の女の子にデレデレしてれば無性に腹が立ってしまったりもする。普段は自分に頼りっぱなしの拓也に依存してしまっていると言えなくもないし、声には出さないけれど否定もしない。たくやがいない自分など、明日香には想像も付かないのだ。
だからと言って、他所のゼミ室の扉から自分の旦那――学生結婚をしているわけではないのだが――を覗き見するのは、お世辞にも行儀がいいとは言えなかった。
―――たくやを信じてないわけじゃないんだけど……だって気になるじゃない!
背後を教授やゼミ生が通過するたびに恥ずかしさが込み上げるけれど、必死に我慢。どうせ顔は見えていないのだし、明日香が普段学んでいるゼミ室は別棟だ。ならば恥は掻き捨てと思って泣き叫びながら逃げ出したくなるほど恥ずかしいのをグッと堪え、扉の隙間に顔を近づける。
『まさか相原からチョコレートを貰うとはな。正直驚かされたよ』
『留美先生や綾乃ちゃんには普段から迷惑かけっぱなしだし、最近は男チョコってのも珍しくありませんから。これはお詫びとお礼ということで』
そうなんだ……留美との会話からたくやが渡したチョコが義理だと分かり、明日香は安堵して胸を撫で下ろした。
ところが―――
『あの……先輩、私からのチョコも貰ってもらえますか?』
そう言って、思わぬ伏兵である綾乃からたくやへとチョコが手渡されていた。
『が、頑張って自分で作ってみたんですけど……うまく作れた自信はないんですけど……あの、その、わ、私もお礼です、決して他意はなくて……』
『高田、そこまで丁寧に包装をした手作りチョコを渡しておいて本命ではないのか?』
『ひあ!? ち、ちちち違いますよォ! だって、そんなの、せ…先輩にご迷惑ですし……片桐先輩ほど美人じゃないし……そ、その……』
『そんな事ないよ。綾乃ちゃんは十分可愛らしい女の子だよ。―――と言うわけで、このチョコレートは美味しくいただくね♪』
『は…はう……』
さして困った様子も断る素振りも見せず、たくやは実質的に本命だとバレてしまった綾乃からのチョコを嬉しそうに受け取ってしまう。
―――な、なんで……何でそれを受け取っちゃうのよォ!
少し前までなら、たくやがバレンタインにもらえるチョコなんて明日香が上げる一個だけだったはずだ。それなのに覗いている明日香の目の前で年下の女の子からチョコを貰って笑顔を見せているたくやに、
―――この…たくやの浮気者ォ!!!
と、明日香の理不尽っぽい怒りが湧き起こる。
本命チョコをその場で付き返すほうが相手を傷つける行為だと、普段の明日香なら気付かないはずはない。だが、たくやがチョコを渡す相手のことを一晩中悩まされて精神的疲労に陥った挙句に寝不足まで加わってしまっている。さすがに察するだけの余裕は残っていなかった。
『では私からもくれてやろう。ありがたく受け取るといい』
さらに明日香を焦らせる言葉が、今度は絶対にありえないと思っていた留美の口から紡がれる。
禁断の師弟恋愛とか社会面を騒がせる大学教授の淫行とかの言葉が一瞬で明日香の脳裏に浮かび上がる。と言うか、大人の魅力に溢れる留美と明日香が付いていないと頼りなくて役に立たないたくやとでは釣り合いなんて取れない。ありえない。このカップルだけはありえないのだ。
『これ、スニッ○ーズですけど……』
『それでもかじって自分に研究に励め。恋愛がダメだとは言わないけれど、やるべき事は忘れるなよ?』
『はは……ありがとうございます……』
よかった……留美がライバルになったら、明日香のステータスでも勝利を掴むのは難しい。ある意味で最強の敵との激突を回避できたことに全身が弛緩し、緊張が緩んでしまう……と、間の悪い事とはそんな時を狙ってやってくる。
「片桐先輩、そんなところでなにやってるんですか?」
「はひッ!?」
突然背後から声を掛けられた明日香は、顔がくっつきそうなほど覗き込んでいた扉から離れて背筋を伸ばす。
ゼミ室内での出来事に集中するあまりに誰かが接近することに気付けないでいた。背後にいる五条ゼミ最後の一人、工藤弘二はゼミ室の前にいる明日香がいると中に入れないので声を掛けただけなのだけれど、不意を突かれた明日香は弘二が思いもしなかったほどに過敏に反応してしまっていた。
「ひ…人違いですからァ――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」
そう叫んで走り去るけれど、気付かれないはずがない。
ちなみに、弘二はたくやがチョコを渡すかもしれない相手の予想第一位だ。そんな相手に覗いているところを見られたショックはかなり大きく、明日香はたくやがチョコを渡すのかどうかも確かめられないまま、困惑したまま会談を駆け下りて建物の外にまで飛び出していた。
「弘二、さっきの声は何?」
明日香の声を聞いてたくやが扉を開けて外に顔を出す。少し声が裏返っていたせいで聞き慣れている明日香の声だとは気付かなかったのは、明日香にとっては幸運だったかもしれない。
「あ、センパ〜イ、ギブミーチョコレートォ♪」
さらに幸運だったのは、弘二にとっては明日香の事よりもたくやにチョコをもらえる事のほうが重要で、除きの事は報告どころかすぐに忘れ去ってしまっていた事だ。
「はあ? なんで弘二なんかにチョコを上げなきゃいけないのよ。人を自分勝手に晴天関させちゃうようなヤツに義理チョコ上げる義理すらなし!」
「はぐぅ!」
そして弘二はチョコを貰えるどころか、甘い妄想をあっさり切って捨てられたのだけれど……その事実が明日香が伝わることはなく、「たくや×弘二」のカップリングにやきもきする時間はまだまだ続くこととなった。
「綾乃ちゃん、飲み物買いに行こ」
甘いチョコだけではお茶会が成り立たない。たくやはそう言って綾乃を連れてゼミ室を出たのだが、入試や後期試験の関係で人気の少ないゼミ棟の階段の踊り場にやってくると、いきなり抱きついて服をずらし上げた。
「んっ、んっ、んふゥ……!」
唇を塞がれ、露出させられた綾乃の乳房がたくやの手でグニグニと揉みしだかれる。淡い膨らみの形が変わり、口内の奥深くまでたくやの舌先に進入されてしまうと、最初から抵抗らしい抵抗を見せていなかった綾乃の体に熱がともり始める。
「ふふっ……長い間ほったらかされて、寂しかったの? 物凄く感じてるじゃない」
右手の平が乳房を揉みしだきながら人差し指と中指で小さな乳首をはさみ、よじる。クッ…と小さく呻きながらアゴを突き出した綾乃に怪しく微笑んだたくやは、スカートの中へ忍び込ませた左手で秘所の縦筋を上下にさすりながら耳たぶにチョコの香りのする甘い吐息を吹きかけた。
「ひゥん!」
摘んだ乳首に捻りを加えて押しつぶすと、綾乃は小柄な体を捩じらせて小さな悲鳴を上げる。そのまま引っ張り上げて揺さぶると、いつ誰がくるとも知れない場所でこれ以上声はあげられないと、自分の指を咥えて必死に喘ぎ声を押し殺す。
「んんっ…くゥうん……」
「チョコのお礼なんだから……気持ちよかったら我慢せずに声を出してもいいんだよ」
そんなことを言われても、恥じらいの強い綾乃に声を出せるはずがない。人通りは皆無ではなく、耳を澄ませば人の話し声もどこかから聞こえてくるのだから。
けれどたくやは、二本の指で綾乃の秘所を割り開く。そして綾乃を壁に押し付けると、スカートの中に頭を入れてショーツをずらし、留美から貰ったスニッ○ーズを取り出して財布に忍ばせていたコンドームを先端から被せていく。
「な、何をするつもりですか? そんなの挿れないで…い、イヤ………んいッ!」
たくやの指が一番敏感な場所を捉えるのと同時に、留美の机の中でよく冷やされて硬くなっていたスニッ○ーズが割れ目の中心へと突き入れられる。
「あぁ……ダ、ダメ……食べ物…粗末にしちゃ………」
股間の前にいるたくやの頭に手を置き、表情をゆがませる綾乃。けれどたくやは、適度に表面がゴツゴツとしているチョコバーが膣温で融けてしまう前に綾乃をイかせようと、残酷なまでにグリグリと膣内を抉りぬく。そこにピンク色の肉の突起にも指と舌とで交互に刺激が咥えられると、綾乃は瞳を潤ませながら膝を震わせ、チョコバーを呑み咥えた恥丘を戦慄かせ、絞り上げてしまう。
「んいッ、んイッ、くっ、ん……んフゥ……!」
膣の奥にある子宮の入り口にコンドームをかぶったチョコバーが触れる。熱くぬかるんだ綾乃の膣内で徐々に融け出したチョコバーだけれど、まだ中に入っているキャラメルとナッツでボリュームは保っている。むしろ締め付けが増すほどにチョコバーが形を変え、混入されている砕かれたナッツが膣壁にかすかにではあるが鋭く食い込みながらコンドームの中から茶色いキャラメルと一緒に押し出されてくる。
「あ、あクぅ……! 先輩、わ…私……あ、あそこ、ゴロゴロして、ヒッ、んッ、ダメ、いッ、ひゥんゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
後ろの壁に頭をぶつけるように体を仰け反らせると、綾乃の唇から涙を堪えるような声が漏れこぼれて昇りつめたことを訴える。
同時に、チョコバーのコンドームから柄の様に飛び出していた部分が膣内に収まっている融け始めた部分からポロリと取れる。それを口の中に放り込んでよく噛んで唾液と混ぜ合わせると、たくやは立ち上がって綾乃の唇に吸いた。
「ん……ふゥ………」
「留美先生から貰ったので悪いんだけど……綾乃ちゃんへのチョコレートね」
「ッ………!」
もう口の中に流し込まれているのがチョコか唾液かなんて関係ない。綾乃は必死になってたくやにしがみつくと、コクコクとノドを鳴らし、クリトリスを摘んで揺さぶられるたくやの指のイタズラに二度目のアクメを迎えていた。
たくやから貰ったチョコが痙攣する膣の中でドロドロに融け、ネットリと床に滴る……それをもったいないと思いながら、ひどい事をされているのに甘く感じてしまう自分の気持ちに、今更恥ずかしさを覚えてしまっていた―――
--------------------------------------------------
「〜〜〜♪」
明日香が再びたくやの尾行を始めたのは昼過ぎのこと。それまではゼミ室で過ごしていたようで、恐る恐る様子を伺いにきたときにタイミングよくたくやが出てきたので、そのまま後をつけてしまっていた。
―――恋人の後をつけるのって、実際のところどうなんだろう……もしかしてウザイい女とか思われない? なにも浮気を心配してるわけじゃないんだけど……あ〜もう、何をしてるんだろう、私は……
ゼミ室の中をチラッと覗くと、弘二は机に突っ伏して肩を震わせ泣いていた。あの様子ではたくやからチョコを貰ったりはしてないと思うけれど、それでもまだまだ油断は禁物だ。
そして逆にたくやへ本命チョコを渡した綾乃はと言うと、ほんのり赤くなった顔に笑みを浮かべている。
―――まさか……い、いえ、そんなはずは……
たくやが自分を捨てて綾乃に走るなんて思えない、考えない、信じない。
背筋に冷水を滴らされたように体に震えが込み上げるけれど、弱気な考えはすぐさま頭の中から追い出してたくやに気付かれないように後ろから追いかけていった。
―――大丈夫よね……あの子よりも私の方がたくやの傍にいるし、体だって……って、体を使ってでしか恋人を繋ぎとめられない女なの、私って!? ああ、そう言えばゼミ室にいる時は彼女の方がたくやに接してるんだし、先輩と後輩の間柄だから、教えるふりして体を密着させたりして!
考えないようにしても、次々にたくやと綾乃の関係性を疑ってしまう。自分はそんなに暗い人間じゃないと思っているのに、たくやのことになると気になって気になって気になって仕方がなかった。
そうこうしている内に、たくやは目的地らしい場所にたどり着く。そこは、
―――工業科……河原さんに会いに来たのかしら?
おそらくは北ノ都学園で一番怪しげな建物が工業科の研究棟だ。時々、敷地中に響き渡るほどの爆発音を響かせるし、建築された年月は同じはずのほかの研究等に比べて異様にすすまみれで黒っぽいし、外から目に見える補修の跡も数多い。何故か屋上には黒いカラスたちがたむろしていて、不気味な泣き声をくちばしの奥から迸らせていて、それがこの魔窟により一層の不気味さをかもし出す要因になっていた。
―――き、きっとさっきみたいに作って余ったチョコを渡しに来ただけだよね……ここにいる人に本命なんて……
誰にたくやがチョコを渡すのかがやっぱり気になり、明日香も工業科の研究棟に足を踏み入れる―――が、その行為をすぐに後悔することとなった。
コンクリート壁の向こうから響き渡る悲鳴のような金属音。
廊下にまであふれ出してくる薬品の濃密な臭い。
何に使うか分からないし分かりたくもない謎の巨大機械。
割れたガラスのすぐ下に転がされたツナギ姿の学生たち。
床が抜け落ちるのではないかと思うほどヒビだらけの廊下を慎重に進むけれど、ここは明日香の見知った北ノ都学園とは完全な別世界だった。
麻美や千里だけかと思っていたらとんでもない。マッドサイエンティスト養成所かと思うほどに、研究棟の中には黒魔術さながらに怪しい研究をしている教授や学生たちがいる。彼らを横目で見ながら明日香も恐怖を押し殺して歩を進めていくけれど、その一方で彼らの目が自分に集まっていることも意識してしまっていた。
『おい、あの子だれ? スゴい美人だよな』
『まさかバレンタインだからか? チョコか? ここにいるヤツで外に女つくってるのが!?』
『違うだろ。告白に来てるんだよ。て言うかさ……他人のそんな幸せ、お前ら許せるか?』
『お、おれ、試したい道具ある。あの顔がどういう風にゆがむか…クヒ、クヒヒヒヒッ』
『てーかさ、今ならチョコ渡す前ならフリーだろ? 逆に俺たちからアプローチしてみようぜ』
『ずばり「メカに興味ありますか?」って訊いてみるか? けどそれだとキャラ好きの腐女子って事も……』
まさに見るもの聞くもの全てが明日香にとってカルチャーショックであり、今まで自分が慣れ親しんできた常識が根底から揺るがされるような感じがしてきた。
めまいがする。頭痛がする。足元が覚えつかない……が、もしここで倒れてしまったら、アンドロメダまで行かなくても機械の体にされてしまいそうな恐怖のおかげで気を失わずにいられるのは、果たして幸運なのだろうか?
―――そ、そんな事よりもたくやよ! アイツ、一体どこまで行っちゃったのよ……
不安に押しつぶされそうになりながらも、必死に恋人の姿を探す明日香。そしてその目が廊下の向こうで千里と並んで立つたくやの姿を見つけると、反射的に駆け出してしまいそうになり……その足が地面に張り付いたかのように、明日香はその場に立ち尽くしてしまった。
たくやが話しているのは千里ではなかった。教室の入り口に立ち、わずかに覗く白衣姿。背が高く、彼を見上げるたくやの顔には笑顔が浮かび、その頬が紅潮までしているのが明日香にはよく見えてしまっていた。
―――う…ウソ……まさか……その人……が?
誰かまでは見えない。見えるのは白衣を着た肩に、足元の革靴だけ。それだけでも薄汚れた印象は感じられず、もしかすると長身の“彼”は学生ではなく教授なのかもしれない見当も付く。
―――違う…よね? 違うって…言ってよ……そうじゃなきゃ私―――
困惑し、体がよろけ、後退さった踵がその拍子に廊下に転がっていた鉄パイプを蹴り飛ばしてしまう。カランカランと響く音の大きさに明日香が体を震わせると、自分を見つめる視線が正面にあることに気付く。―――千里だ。
「あっ……」
声がこぼれると、千里の顔がたくやと話している男性の方に向いた。それを見て自分がここにいることを喋られると思った明日香はとっさにきびすを返し、声を掛けようか掛けまいかと背後に集まっていた学生の隙間をかいくぐって工業科の研究棟から走り出してしまっていた。
―――逃げたって……どうにもならないことなのに……!
たくやが本当に男の人にチョコを渡すのか知りたかっただけなのに、たくやがチョコを渡すところなんて見たくもないし、気になって追いかけてきた自分がここにいることを知られたくない。
全て見なかったことに出来れば気が楽なのに、頭の中では楽しそうに話すたくやの姿がいつまでも離れない。
―――何をしてるのよ、私は! こんなの絶対に私のキャラじゃない!
心の中で自分に向けてそう叫びながらも、明日香の脳裏に展開される最悪の想像。考えるだけで泣いてしまいそうなそれが現実になった事を知るほどに、明日香の唇は声を上げることなくキツく引き結ばれていった。
「よかったのかい、彼女のことは」
「気にしなくてもいいですよ……どうせ別れよと思ってたんだし。それよりも今は……」
研究室に置かれた作業台の上に下着姿で仰向けになったたくやは、傍らに千里がいるのにも構わず白衣の男を抱き寄せて唇を重ね合わせる。
「先輩方、ここでSEXするのは勝手ですけど、騒がしいのはご遠慮願いますよ」
「ごめんね千里。この人を紹介してくれたのはあんたなのに……んッ、ううゥ……くンッ!」
女性になったたくやは、誰の目から見ても美人だ。例え元々男であることを差し引いても、付き合いたいと思っている男性は数え切れないほどいる。
たくやがチョコを渡した相手もそんな一人だった。まさかたくやから告白されるとは思っておらず、その喜びが大きな手の平にも収まらない乳房を揉みしだく力の強さに表れてしまう。
「あ…ああぁ……」
たわわな膨らみが揉みつぶされ、こぼれだした乳首に男の唇が吸い付く。そうして瞬く間に快感の虜になり始めたたくやの巨乳に顔をうずめて思う存分味わうと、男は一旦離れ、いきり立った肉棒をズボンの中から引っ張り出した。
「うわぁ……おっきい………♪」
話に聞いていた以上の彼の巨根っぷりに、たくやの口からこぼれる感嘆の声。熱を帯びた視線は腹に張り付きそうなほど反り返った肉棒に絡みつき、男もそんなたくやを見下ろしながら舌なめずりし、両膝を抱え上げる。
「んっ……ああぁ、はぁあぁああぁぁぁ……♪」
ショーツの下でたくやの股間は興奮でドロドロになっていた。太く、カリ首も矢尻のように張り出したペ○スはそんなたくやの膣口を目一杯押し開くと、ズチュズチュと卑猥な蜜音を連続して響かせながらたくやの子宮を突き上げる。
「ああ、ひあああっ、い…いいっ、おチ○チンが、あッ、あァああああああッ!」
頑丈な作業台が軋むほどの激しいピストンに天井に向けられた90センチを超えるFカップの膨らみが弾むように揺れ動く。まるでペ○スで頭の中をかき回されているかのように、荒々しく貫かれるたびに目の前にまばゆい快感の火花が飛び、一秒でも早く精液を搾り取ろうと膣壁が蠢動を繰り返して肉棒を締め付ける。
けれど、不意に男は腰の動きを緩め、射精口と子宮口を口付けさせるようにペ○スを押し込む。そして膣奥の指ではなかなか届かない性感帯を刺激していると、作業台を回りこんだ千里が緩やかな刺激に涎を滴らせて悶えているたくやの体に次々と電極を取り付けていく。
「では約束どおり、しっかりとデータは取らせていただきますよ」
「ひゃあああうッ!!!」
全身に無数に貼り付けられた電極からビリッと電気が流し込まれるのと同時に、男が力強くたくやのヴァギナをペ○スで押し上げる。
「思う存分オルガズムを迎えてくださって結構ですよ。好きですよね、こう言うの」
「い…いいい今言ってるゥゥゥ!!!……んクゥ! に…二回目……あああああ、三…三回…目ェえええええッ!!!」
硬い肉棒が蜜壷を攪拌し、電気刺激で強制的に緊縮させられているヴァギナを押し広げる。ただでさえ締りの良いたくやの名器に包み込まれているペ○スは、腰と腰とをぶつけるほどに折り重なる膣壁にカリ首を締め付けられる。そこにたくやと繋がっているという喜びが加わってしまうと快感もどんどん膨れ上がってしまい、愛液が飛沫く様に押し出されるほど腰の動きを加速させて、コリコリとした子宮口に亀頭を叩きつけてしまう。
「ひいッ、あひィ、くッ、んあああァ! す…スゴいのがキちゃうゥ〜〜〜! ま…またなの、また…イっちゃ…あ、ああッ、ひああああああああああああッ!!!」
まるで肉棒を杭打ち機のように膣口へとねじ込みながら、男はたくやのヴァギナを抉り抜く。獣のように咆哮しながら、痙攣する膣へ小刻みに亀頭を押し込んでたくやを連続絶頂で狂乱させ、何度も何度も昇りつめさせてからビクビクと震え戦慄くたくやの子宮に大量の精液を迸らせた。
「あひッ、クウううっ、熱…いッ……お、お腹に…熱いザーメンが…ああ、あはあァ………♪」
目もくらむような中出しオルガズム……張り詰めた乳房を上下させて何度も深呼吸を繰り返していたたくやだが、まだ微弱な電流を流され続けている体に男が大きく覆いかぶさってくると、射精しても硬さを失っていない逞しい肉棒が精液を注ぎ込まれた胎内を力強く押し上げる。
「やっ……ひあッ……! また…イっちゃう………こんなに気持ちいいと…壊れそうで……ダメ……もう戻れなくなっちゃうゥ………♪」
「ほら、呆けてないでさっさとイってくださいよ。受精してから出産するまでの詳細なデータをとらせてくれる約束でしょう?」
「わかってるけど……ああァ…やだ、ま、またァ………!」
絶頂を繰り返すたびに、たくやのヴァギナはイヤらしく蠢いて、挿入された肉棒を精液を絞り上げる。甘い喘ぎが唇からこぼしながら、次々と押し寄せてくるアクメを心から楽しんでいると、打ち震える体に何人もの視線が絡んでくるのを感じてしまう。
「あはッ…本当にこんなに紹介してくれるんだぁ……♪」
視線の正体は研究室を覗き込んでいた工業科の学生たちだった。女子が少ないため性欲を持て余している学生たちは、最初の一人が打ち止めになると我先にとたくやの股間の前に位置どろうとする。
「約束どおり、工業科全員に知らせておきましたからね。これからここに来るたびに先輩には誰彼構わず犯されてもらって、一日でも早く受精してもらいます。これも科学の発展のためですから」
「いいヨ、受精するから、だから…あ…はァあああぁぁぁ〜〜〜〜〜〜!!!」
何十人もの女性に飢えた男たちを前にして、たくやは夢見心地になりながら淫肉を震わせる。
ただ、こんなに大勢の学生が集まるとは思っていなかったので、用意していたチョコレートが足りるかどうかだけが少し不安ではあったけれど……
ミニ小説29-後へ