28・離婚前のメモリアル・パイロット版「教習所で…」(XC3・弘二ED後)-前
昨晩の激しい“夜の営み”の跡を温かいシャワーで時間をかけて洗い流す。
降り注ぐ温水を頭から浴びていると、三時間と眠っていなかった思考もゆっくりと目覚めていく。この二年でより成熟した女らしいラインを描くようになった曲線を丹念に磨き上げるのは結婚してからの毎日の日課だ。こうでもしないと仕事に出る前の夫に朝食を作ることもままならない……まあ、おかげであたしの寝坊癖も治ってしまった。それも愛する旦那様のためだろうか。
「ん〜……それにしても昨日“も”激しかったな……」
何しろ夫は絶倫で……毎日のように趣向を凝らしてくるものだから、一日として気が抜けない。
普通にSEXする日もあるけれど、全身を緊縛されて目隠しされた格好でバイブ責めにされたり、野外プレイのスポットで有名な公園でわざと覗かれながらしちゃったり、あたしを愛してくれることにだけはいつでも全力投球すぎて大暴投してくれるのだ。
昨晩は…えっと、ひ〜ふ〜み〜……抜かず八発か。「何処まで子宮に精液が入るか」とか言って……ううう、中までしっかり洗わなきゃ。今日は出かけなきゃならないし―――
「………ハァ〜…あたしも十分にスケベだよね」
旦那の事は言えないや……と思いつつ、温水の吹き出るシャワーヘッドを左手に取ると、タイル張りの床にお尻をつけて座って右手で秘所を割り開く。
毎晩エッチしているのに、あたしのココの色は本当に処女のように鮮やかだ。形も全然崩れないし、感度は……あたしは望んでいないのに、快感を知るほどに敏感になってしまっている。
なにしろエッチしているのは愛する夫だけではない。週に一度は隣の奥様のセフレをベッドの上で紹介されてしまったり、強姦魔が押しかけてくるのもこの二年で十回を超えている。街に出れば若妻とも知らずにナンパ男が声を掛けてくるし、知ったらし知ったでさらにしつこい。一度マンションにまでついてこられて“遊ばれ”たりもしたのだが、あの時は……
「あッ…ハッ…んぅ………あ、クウゥ〜………!」
エッチな記憶を思い返しながらクリトリスにシャワーを当て、二本指でおマ○コをグチャグチャと掻き鳴らす。根元まで挿入した指で膣天井を擦り上げ、プックリ膨らんでいるクリトリスにシャワーノズルを擦りつけそうなほど近づけると、指先にかろうじて触れる子宮口がビクビクッと絶頂の予兆を示しだす。股間から掻き出される白く濁ったものの混じった愛液を洗い流しながら、浴槽に背中を預けて頭を仰け反らせ、尿管を下ってくる射精欲求をおマ○コ側から圧迫して押し出すようにGスポットを擦りたてると、
「ッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
激しいオルガズムが全身を駆け巡るのと同時に、膨らみきった尿道口から小水とは違う噴出液が勢いよくよく室内に撒き散らされる。
………これも……毎朝の日課になっちゃったかも……
今日で六日連続、シャワーを浴びながらオナニー射精しちゃった……七日前はしちゃう前に夫が乱入してきて、入社したばかりの会社まで休んで朝からハメ倒されてしまったんだけど。
「さて……と」
日に日に長くなっていくシャワーの時間もこれで終わりだ。まだ絶頂直後の気だるさは残っているけれど、これ以上遊んでいたら、夫の出社時間に朝食が間に合わなくなってしまう。
ところが、
「………また…やったわね。あの馬鹿は……」
毎朝シャワーを浴びるのだから、当然着替えも昨晩のうちに前もって用意してある……いや、用意して“あった”。それなのに、着替えを入れておいた籠の中にはあたしの見覚えのない服と下着が。
広げてみると、あたしの胸には少し小さいんじゃないかと思うぐらいの上に履けば否応なくショーツが覗けてしまいそうな短いスカート、そして見るからに高そうなランジェリー……五桁の値札つき。
それらを見てため息をついたあたしは、水滴を拭った身体にバスタオルを巻きつけ、にこやかな笑みを浮かべて夫婦の寝室へと向かい、部屋の扉を“蹴り”開けた。
「………弘二、あたしの服を何処にやったのかと、このあたしの知らないあたしの服……どういう訳かきっちり説明してくれないかしら?」
………あうゥ、やっぱり目立ってるよ〜……弘二のヤツ、後でタップリお仕置きしてやるんだからァ!!!
二年前、北ノ都学園の学士課程を終えてすぐに、あたしは弘二の求婚を受け入れた。一応“元”は長男だったので弘二は婿養子となり、結婚しても苗字は変わらず相原たくやだ。
で、愛する旦那様の――はずだったんだけど、最近その“愛”にちょっと疑問が芽生え始めてきた――弘二も一年早く卒業して就職し、今では立派なサラリーマンとして毎日勤めに出ている。
体力にだけは定評がある弘二なので、毎晩あたしの中に性欲を吐き出しまくっても少し寝るだけでケロッとしている。付き合いだしてから風邪すら一度も引いたことがない。それでもまあ……惚れた弱みといいますか、せめて駅までの送り迎えぐらいしてあげれば楽だし喜んでくれるかと思い、弘二の両親が車を乗り換えるので古い車を貰えると言う話を機に、自動車教習所に通って免許を取る事を決めたのだ。
おかげで学生時代にアルバイトで溜めていたヘソクリは全部消えた。それでも弘二のためを思えばこその出費だったのだけれど、
………ええ、激しく後悔してますとも。こんな注目集める格好させる旦那のためかと思ったら……!
横乳が覗けて見えそうなノースリーブのブラウスに、歩くだけで太股を這い上がってきて下着が丸見えになるタイトミニ。下着は弘二に処分されるのを免れた自前のものの中からチョイスしたけれど、それでも透けて見えるし……はっきり言って、周りから痴女扱いされてもおかしくない格好だ。
しかもだ、顔は未だに十代の高校生と言っても通じてしまって少しトラウマになりつつある幼顔に、毎日毎日揉まれ過ぎて93センチに育ってしまった美巨乳Gカップ。張りも形も申し分なく、Hカップも秒読み段階だ。だけどウエストの方はぜんぜん太くならずに初めて女になった時の数値のまま。お尻もキュッと切れ上がっていて、「何人子供産んでも大丈夫!」と太鼓判を押されたほどだ。……そんなエッチな身体を今にもボタンがはじけ飛びそうなブラウスで包み込み、生脚を惜しげもなく晒して人前を歩いているのだから、注目度がいつもと段違い。歩くほどにずり上がってくるスカートを引っ張って股間を隠せば、後ろから下着が見えて観客(?)から歓声が上がり、後ろも引っ張ればブルブルと乳房が重たげに揺れて別の場所から歓声が上がる。
―――そんなにオッパイが見たいならエッチなビデオでも見てればいいのにィ〜〜〜!
火を噴きそうなほど顔を火照らせ、ワナワナと震える唇を噛み締める。そのもじもじ太股を擦り合わせて恥らう姿が男性たちを喜ばせてしまっているのも分かっている。
………だからって、今にも泣いちゃいそうなほど恥ずかしがってる女性を集団視姦するのはどうかなァ! そ、それもこれも、全部弘二のせいなんだからァ!
いくら旦那でも、やっていい事と悪いことがある。
何もしていなくてもトラブルの方から尻尾を振ってやってくる体質なので、結婚してからは外に出る時はおろか家の中でも地味な服装をしていることが多い。身体のラインを隠すためにブカブカの大き目サイズの服を着たり、スカートも膝下の長さのものしか持っていない。
ところがである。
『もっとエッチな格好をしてください!』
弘二はそう言って、あたしの持ってる服のほとんどを密かに処分してしまったのだ。あたしの匂いがタップリ染み付いた服を他の人の手に触られるのを嫌がるので捨て去ってるとは思えないから、おそらくはどこかに隠しているのだろう。……が、弘二が働いた収入で生活し、服を買ったお金も弘二の稼ぎから出ているので、最後には大抵の無理もあたしの方が折れるしかない。
―――しくしくしく……裸エプロンやブルマも着せてるくせに、それでも満足してくれないなんて……
惚れる相手を間違えたかな……むなしい抵抗とは言え、弘二のために他の男性の目に少しでも止まらないような格好を自分に強いてきたのに、これじゃあたしの今までの努力の意味が失われてしまう。写メに撮られてるし、今日中に痴女としてあたしの事が知れ渡ることは間違いないだろう。
―――ひ〜ん、弘二のバカ、アホ、トンマ! これでナンパ男が激増したら浮気してやるから―――!!!
それよりも問題は、今日の路上講習だ。
こう言う展開だとたいてい、助手席に座る教官に太股を触られたりしてエッチな悪戯されるはずだ。これまでは「こう見えても人妻です」とか「ここだけの秘密ですけど実は元・男なんです」とか言って男性教官に手を出させる前に予防線を張ってきたけれど、太股むき出しのこの格好だと予防線も何処まで役に立つか分からない。
ところがである……今日の担当の教官は三角定規のように尖った顔をしている、いつもムスッとした生真面目な教官だった。
―――ら、ラッキー♪ この人ならセクハラまがいのことなんて絶対にしてこないし♪
普段から、車に乗る時の女性の服装にまであれこれと文句をつけている人だ。スカートが短い、ヒールは危険だ、車を運転するのに厚化粧など必要ない…などの女性蔑視とも取れる発言を何度も聞かされてきたけれど、今日の場合は幸運にしか思えない。色仕掛けで点数もらおうとしている女の子は特に目の敵にしており、いつも色気を表に出さない格好をしているあたしにとっては怖いけれど信頼も出来る人と言える。
「あの……きょ、今日はよろしくお願いします」
「む……相原さんですか。今日はまた、普段の服装とはずいぶんと……」
―――ううう、睨まれてるぅ〜…違うんです、この痴女みたいな格好には訳がありまして〜〜〜!
昔も今も、“先生”と言うのはやはり何か怖いものがある。への字に唇を引き結び、鋭い視線で見つめられてしまうと、どうしても緊張して手足が強張ってしまう。
「まあ……いいでしょう。さっそく始めます。出発の前にボンネットを開けてエンジンの点検です」
「は、はい。ただいま!」
なんかあっさり流されたけれど、それはそれで女としての魅力がないと言われているようで、結構心中が複雑だ。……ま、スケベな視線でネットリと嘗め回すように見られるよりはいいんだけど。
この時、あたしは最初だけではなく、もっと注意して教官を観察するべきだったのだ。
ボンネットを覗き込むあたしの真後ろに立ち、車に乗り込むあたしをジッと凝視する教官を。
そしてまだ他の教習車が路上に出発するよりも先にあわただしく教習所から走り出さなければならなかった、教官の意図を……
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