21愛ゆえに・・・(XC2)前編


 ―――なんなんだろうな、この感覚。
 目の前にある扉の向こうから明日香の声が聞こえてくる。
 少し前までは恋人で、あたしが恋人でいられなくなった明日香。険悪な別れ方をしたわけではなく、クラスで顔をあわせればお互いに笑顔を挨拶をするし、“恋人”と言う特別な関係の部分がなくなりこそしたものの以前と同じように仲のよい幼なじみと言う関係も続いていた。
 ―――あたしは……今でも明日香が好きなんだと思う。
 あたしが女になって、恋人でいられなくなって、だけどずっと傍にいてくれる……そんな明日香が今、自分の部屋で男の人と二人きりで逢瀬にふけっていると言う事実を前にして、あたしは冷めた感情のままその場に立ち続けていた。
「太いぃ……おチ○チンが太いのォ……あん、そんなに激しいの、ダメ、頭がおかしくなっちゃうぅ……!」
気付かれないようにわずかに開いた扉の隙間。そこからのぞく部屋の中では、全裸の明日香がベッドに仰向けになり、同じように一糸まとわぬ姿で覆いかぶさる家庭教師の大学生の腰を、開いた膝の間で受け止めている。
「スゴい、スゴいのォ、こんなの、初めて、わ、わたし、イっちゃう、始めたばっかなのにまたイっちゃうよぉ!」
 明日香があたし以外の男性とSEXしている……その事実を前にしても、あたしの心はざわめきもしない。ただ、口元に残忍にも思える笑みを浮かべた大学生に身体を揺さぶられ、蕩けた表情を浮かべる明日香から目が離せずにいた。
「あっ! あっ! あっ! そこっ……くぅうん! そ、そこ突かれたら我慢できないの、いいの、気持ちいいの、気持ちよすぎるのォ…! こんなに乱れて、わたし、い…いやぁ……もうダメェェェ!!!」
「スゴい、スゴいよ明日香ちゃん。俺のでかいチ○ポに犯されてるのに締め付けが……どうだい、大人の女になった感想は。前の彼氏はこんなに気持ちよくしてくれなかったんだろう?」
 腰を振りながら男の唇からあたしの話題が出ると、さすがに胸がドクンと跳ね上がった。
 男が大きく腰を引くと、大きなペ○スがその姿を現す。明日香の愛液にまみれた性器は淫靡な輝きを放っていて、何人もの女性を喜ばせてきたであろう風格を漂わせている。そのペ○スで明日香のヴァギナをかき回す音が連続して室内に響き渡り、開いている明日香の股間から飛沫のように愛液が飛び散った。
「いいのぉ、こっちのおチ○チンの方が全然いいのぉ……拓也は大好きだけど、でも、おチ○チンはこっちがいいィ〜〜〜!!!」
「どう思うだろうなぁ、その“拓也君”が今の明日香ちゃんを見たら。隣の家に住んでるんだろう? もしかしたら声が聞こえてるかもなぁ、明日香ちゃんのよがり声、でかいからなぁ!」
「そ、そんなのどうでもいいぃ……んっ! ああっあんっあぁんっ! こ…声が、抑えられないの、最初に声出せって言ったからぁ……声出した方が気持ちいいって、言われたからぁ!!!」
「じゃあもっと出せよ。気持ちいいんだろ? イきそうなんだろ? だったらもっと気持ちよくしてやるからよ、もっとおマ○コ締め付けろよ! おっぱいも気持ちよくして欲しいんだろう? そら、すぐにおマ○コにザーメン流し込んでやるから、泣き喚いてでも俺をもっと喜ばせてみろよ!」
 男は明日香の胸を揉みしだき、さらには指先を乳首へ押し込んでしまう。そのまま激しく腰を振り、甘い声を……いや、既に絶叫とも言える喘ぎを明日香の唇から迸らせてしまう。
「んはぁあああああああんッ! いい、おっぱいもおマ○コもいいィ〜〜♪ あん、あんあんあんあんああぁん♪ イっちゃう、イっちゃうから、もっとおチ○チンをおマ○コに突き刺してぇ〜〜〜〜〜〜!!!」
 あたしの前では恥ずかしがって口にする事さえなかった幼なじみの淫らな言葉が耳に届く。
 もう受験も目の前と言う時期で、部屋の中も肌寒い。なのに、明日香の身体は赤く火照り汗まで浮かべている。まるでモノのように陵辱されて長く艶やかな髪を振り乱す姿はスゴく綺麗で、今になってあたしは明日香と分かれなければならなくなった事を少し後悔してしまう。
「くッ、あァあああッ! スゴい締め付けじゃないか。そんなに俺のザーメンが欲しいのかよ。ほら、元カレに聞こえるぐらいに声出して派手にイっちまえよ、お前のおマ○コに今からたっぷりザーメンぶちまけてやるからよ!」
「あぁああああっ、んはぁああああああァ、キてェ、わたしのおマ○コにいっぱい射精してェ……いっぱい射精してェ! あッ、アッ! アアッ! 子宮にまでキちゃうぅ……イくゥ、太いおチ○チンに犯され、イく、イっちゃうぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 男は明日香の腰を抱えると激しく腰を数回叩きつけ、明日香と一緒に獣のような喘ぎ声を漏らす。まるで二人の繋がっている場所から溶け合っているのではないかと思うほどに水音を連続して響かせて、最後に一際大きく音を響かせて腰をぶつけ合い―――動きを止めた。
「んはぁあぁぁぁ――――――――――――――――――ァッッ!!!」
 激しく腰を震わせる男のペ○スを捻じ込まれたまま、明日香は背中を浮かせて全身をビクッビクッとわななかせる。よほど深くイったのか、膣内を精液に満たされながら何度も痙攣を繰り返し、長い時間をかけてようやくベッドへと崩れ落ちた。
「ハァ……あぁ………す…好きぃ……愛してるぅ………」
 射精を終えても身体を離さず繋がりあったまま、明日香と男はお互いの首に腕を巻きつけ、濃厚な口づけを交わす。お互いに汗まみれになった身体を擦り付け合い、膣内射精された精液を処理する事もなく舌と舌とを絡み合わせる。
 ―――そこであたしは扉を閉じた。
 ことここに至っても、あたしの心は冷静なままだった。明日香を別の男に寝取られても悔しいとは思えず、かと言って祝福しようとも思えずにいた。
 ただ、扉を閉めたのとは反対の手の平にはキツく爪が食い込んでいた。今にも皮膚を突き破りそうなほどの痛みなのに、今まで気づかずにいた事が不思議なぐらいだ……だけど、手の平を開こうとしても指は言う事を聞かない。何も入っていない手の平は石のように固く握り締められている。
 ―――ああ、そうか。
 怒っていたんだ、と気付いたのはその時だ。
 恋人ではなくなったけれど一番大切な人である事に変わりのない明日香が、あの男に穢されていくのが我慢ならなかったんだ。
 冷静と思っていたのは怒りを通り越して、何も考えられなくなっていただけなのだ。
『ああぁ……また…なの? んゥ……そんなに激しくしたら、おマ○コから、あ、溢れちゃうのにぃ……』
 扉の向こうから、また明日香の喘ぎ声が聞こえてくる。―――だけどもう、何もかもが十分だった。
「明日香………」
 この場を去る前に一言だけ、明日香に届かない囁きを口にする。扉越しにですら聞こえてくる大きな水音が、明日香の耳に届く前にきっとかき消してしまうだろう。もし届いたとしても、あたしよりもずっと気持ちよくしてくれる相手とのSEXに溺れて聞き逃すに違いなかった。
 だからもう口を開かない。
 明日の朝には明日香はあたしの部屋へ起こしに来てくれる。――その時も普段どおりに接していられるから。
 同じ教室で一緒に授業を受ける。――その時でも特に意識する事無く、友達として接していられる。
 だからあたしは、二人の邪魔をしないように静かにその場を後にした。目蓋の裏に焼きついた明日香の姿は、きっと忘れる事は出来ないんだと確信しながら……





 その女と目があったのは、家庭教師のバイトを終え、地下鉄のホームで帰りの電車を待っているときだった。


 家庭教師と言っても、今では行くたびに片桐明日香と言う教え子の女とSEXしてバイト代を貰う楽な仕事だ。
 女への理想は高くて金やお遊びだけで抱いてるわけではないけれど、自分がSEXの快感を教え込んで日に日に淫らに、そして次第に“大人の女”に目覚めていく明日香を目にしていると、自分が何を教えに行っているのかと苦笑を漏らしてしまう。
 そんなわけで、他に二人付き合っている女がいるけれど、今は俺を楽しませてくれている明日香に一番惚れ込んでいる。
 今日も結局、帰りが遅くなるという明日香の母親が帰ってくるまで時間を延長して明日香を犯すだけ犯してきた。その娘の膣内にどれだけ俺の精子が注ぎ込まれているか知らずに、娘一人で留守番させるよりも安心だと逆に感謝されるのもこそばゆいものがある。
 明日香は膣内射精の方が気持ちいいとねだるので、避妊は膣外射精するぐらいで、危険日以外は全部中出しだ。もっとも、この歳で女を妊娠させて人生を棒に振るつもりはない。今は明日香が一番でも、この先、別のいい女に縁がないと決まったわけではない。
 そしてその縁が、突然向こうからやってきた。
「お兄さん、体から女の人の匂いがしてるよ」
 この時間ではホームに人はほとんどいない。わざわざ見知らぬ男の横に並ばなくても、いくらでも待つ場所はあるはずなのに、その女は俺の横に来て小首を傾げて可愛らしく会釈してきた。
「こんな時間までお楽しみ? て言うか、お楽しみだったのに“こんな時間”?」
 ―――この女……
 立っているのも辛いぐらい腰がだるくなるほど明日香と楽しんではきたけれど、女の指摘されたとおり、恋人同士が逢瀬を楽しみ終えるにしては少し時間が早い。家庭教師とその教え子と言う立場では、一晩中同じベッドで好きなだけハメあう機会なんてめったにないのだから。
 そんな指摘を受けたにもかかわらず、俺は不快になるどころか、隣の女を一目見た瞬間から、なぜか股間に来るモノがあった。
 明日香のおマ○コと擦りすぎてペ○スが腫れ上がるほど射精してきたのに、メガネをかけたその女に微笑まれた瞬間から、今の今までパンツの中で萎えきっていた愚息がムクムクと大きくなっていく。
 ―――確かにいい女ではあるな。
 見た感じ、明日香と同じぐらいの歳だろうか。メガネをかけた幼さを感じさせる童顔の微笑みは真面目な学生のように見える反面、無防備を装って俺を誘っているようにも見えた。不自然にならないように視線を下へずらせば、たわわに実ったバストが服を押し上げて理想的な曲線を描いていた。そのボリュームは明日香でも比べ物にならず、見ているだけでリビドーを刺激されて股間にズンッと重たい血液が流れ込んでしまう。
 ウエストからヒップへかけてのラインも申し分ない。返事を返さない俺に微笑みだけ残して前へ向き直った女の下半身を半歩下がって観察すると、膝上のミニスカートをキュッと引き締まったヒップが押し上げており、痴漢欲求がなくても思わず手を伸ばして撫で回したくなる。
 スカートのわずかなへこみが彼女のヒップの谷間と形、その下に着けている下着や、そこへ指を滑らせた時にする反応など、もうこちらを振り返る事のない女を背後から見つめながら頭の中は様々な事を想像し始める。―――そして、せっかくお知り合いになれそうなチャンスを棒に振るより、ナンパでもして一晩楽しませてもらおう、と言う結論に達してしまう。
「なあ―――」
 と、今度は俺の方から話しかけようとすると、ちょうど同じタイミングで彼女の着ているジャケットのポケットから携帯の着メロが鳴り出した。
「はい、もしもし―――あ、美由紀? うん、そう。今、駅。もうすぐ電車来るから、あと三十分もしたらそっちに着くと思う」
 取り出した電話の向こうに呼びかけた名前からして、相手は女友達だろうか……待ち合わせしてるのなら、無理にナンパしても印象を悪くするだけだ。このあたりに住んでいる娘なら、三十分と言う時間から考えて大きな繁華街に着くまでの間に会話しながら攻略の糸口を探して、いずれ訪れる機会に期待した方がいいだろう。
 ―――だけど、収まりつくかな。
 足の位置を組み替える振りをしながら電話で話している彼女の背後へ回ると、柔らかそうなヒップに目が行ってしまい、ズボンの中で肉棒がビクビクと脈打ち巨大化してしまう。冷たい風に乗って周囲に漂う甘い香りに鼻腔をくすぐられると、今日は諦めをつけたはずの性欲が刺激され、最大限に勃起した分身がズボンに大きなテントを張ってしまう。
「え? 違うって。一人で遊んで遅刻したわけじゃないってば。もう……ホントだってば」
 ここが満員電車でないのが悔やまれる。今いる場所でこの子のお尻に手を伸ばせば、二人きりなのだから間違いなくしょっ引かれてしまう。場所を離れれば誘惑も断ち切れるだろうけれど、それだとみすみすお知り合いになるチャンスを逃がしてしまう事になる。
 このまま擦れ違うだけの関係で終わらせるには勿体無さすぎる獲物だが、出すだけ出してきたペ○スには勃起を持続しているだけでもかなり辛い。このまま生殺しの状態が続くと、自分でもどうにかなりそうな予感がしていた……そんな時に限って、運命はいい方向へと悪戯してくれるものだ。
「じゃあそろそろ切るよ。電車来るし。そっちについたらまた電話するから先に始めて……あっ」
 俺は彼女との距離を詰めないように気をつけていたが、不意に一歩下がられ、思わずその体を両腕で抱きとめてしまう。自然と、前が突っ張った股間と予想通り張りのあるヒップとが密着してしまい、彼女の口から小さな驚きの声が漏れた。
「すみません、電話に夢中になってて……ああ、ゴメン、人とぶつかって……違うって、確かに男の人だけどナンパされたわけじゃないから。何でそうエッチなほうへばっかり邪推するのよ〜!」
 慌てて身体を離した彼女は、電話の向こうへと話しかけながら、片目を瞑って頭を下げる。もっとも、こっちは気を悪くしたわけではない。むしろもうちょっと身体を密着していて欲しかったぐらいだ。
 それから程なく、彼女のほうも電話を終えたようで、携帯をポケットにしまうと眼鏡越しに悪戯っぽい笑みを向けると改めて頭を下げた。
「どうもすみませんでした。さっきまで横にいたから真後ろにいるとは思ってなくって」
「いや、フラフラしてた俺のが悪いんだし、気にしないでよ」
「そうですか?―――でも、ちょっとイヤらしいですよ。それだけ女の子の匂いを漂わせてフラフラって。それに……」
 そこで彼女は言葉を区切り、両膝に手をついて身体を前へと屈める。………が、
 ―――うお、ボリュームがスゴい……!
 明日香よりも……いや、今まで付き合ってきた中にも、これほどボリュームのあるバストをした女はいなかった。重たげに下を向いた膨らみは左右から両腕に挟みこまれて、目に毒なほどに扇情的なまでに押しつぶされている。一瞬目を背けなければいけないと理性が働くが、それを押さえ込むほどにこの巨乳を見ていたいという欲求が勝り、たっぷりと量感のあるバストに視線を突き立てながら膨らみきっている肉棒を脈動させてしまう。
 だが、その直後に全身へ羞恥の熱さが駆け巡った。胸の膨らみに目を奪われて一瞬我を忘れていた間に、今度は彼女のレンズを通した視線が節操なく勃起している股間へとそそがれていたのだ。
 瞬間、自分の劣情を覗かれた気がして顔から火が出る思いをする。しかもその上、硬直して動けない俺の顔をメガネの上フレームの隙間からチラッと見上げて悪戯っぽく小さく笑みを漏らしてから、隠しようのない股間の強張りの先端へ人差し指を滑らせてくる。
「まだこんなに元気なのに。あたしに浮気して恋人泣かせちゃかわいそうだよ、お兄さん♪」
 先端を突付かれて肉棒がビクンと震えるけれど、快感はそこまでだ。身体を起こして微笑みながら小首を傾げた彼女の背後に地下鉄を走る電車が風を巻き込みながら滑り込んでくる。彼女の背後、俺の目の前で車内へ招くように扉が開くと、明日香の事を指摘されて困惑して動けずにいる俺よりも先に、彼女の方が電車へ乗り込んでしまう。
「―――ねえ、あたしブラ着けてないんだけど……見えちゃった?」
「なッ……!?」
 その言葉を耳にした途端、俺の頭の中に先ほど見たばかりの彼女の胸の膨らみの映像が早送りでリピート再生される。………確かに、ボリュームのスゴさに目を奪われていたけれど、先端の辺りが尖っていたように……
 考え込めたのもそこまでだ。ほんの一瞬だと思っていたけれど、数秒間立ちっぱなしで考えていたらしく、俺を残して乗客が全て電車へと乗り込んでしまった地下鉄のホームに発車を告げる音が鳴り響く。
 マズい……電車に乗り遅れる事よりも、さっきの彼女とはなれることへの危機感から、空気の抜ける音を立てて閉まっていくドアの隙間へ身体を飛び込ませた。
 動き出す電車。その車内で視線をめぐらせると、進行方向に対して右側、ここから街までずっと扉の開く側の座席に座っているショートヘアの彼女の姿を見つける。位置は扉と扉の中央。四人が座れる対面座席に一人だけで座っていた。
 時間が遅い事もあって、車内にはほとんど乗客はいない。彼女の後ろの席にサラリーマンが一人いるけれど、疲れて眠ってしまっているし、他の客も遠くに散らばっている。
 ―――これはチャンスか?
 明日香に事を思い出させられてわずかに罪悪感が芽生えてはいるけれど、俺の股間の悪戯とノーブラ発言とで、興奮は収まりのつかないところにまで達していた。電車の中で女を抱いた事はないけれど、明日香を初めて犯したときと同様に、あの女を押さえつけてメガネをかけた顔にザーメンを射精するシチュエーションを何通りも思い描いてしまう。
「―――なあ」
 車内を進み、彼女の座る座席の横へ。逃げ道を塞ぐように対面座席の背もたれについている握り手を左右の手で握り締め、少し昂ぶりすぎて重くなった声で呼びかける。すると窓枠に肘をついて外を眺めていた女はこちらへと顔を向け、
「どうかしましたか?」
 と、何事でもないように笑みを浮かべて小首を傾げた。
「……さっきのはなんだ?」
「さっき?……ああ、突っついたこと怒ってるんだ」
 俺が迫っても悪びれたり怯えたりする様子も見せずにクスクスと笑われると、さすがに興奮よりもプライドを刺激されてカチンと来る。
「そうじゃないだろ。誘ってるんだろ、俺の事。ブラまではずして誘惑までして」
 そう言いながら、俺の目は彼女の胸元へ吸い寄せられていた。残念な事に彼女の胸の先端付近は羽織っているジャケットに隠れて見えないけれど、そのボリュームを再確認しただけでたまらず喉を鳴らしてしまう。
「だったらどうする? 見たい? 触りたい? そんなことしたら、「痴漢よ〜」って叫んじゃうかもね、あたし♪」
 ………もう前置きは十分だ。叫ぶつもりなんて最初からないくせに。
 足を一歩踏み出しただけで、女の体はこちらの射程に入る。俺は見せ掛けだけの参考書の入ったカバンを余った座席へと放り投げると、窓と背もたれに手を置き、彼女へ覆いかぶさるように身をかがめていく。
「友達にはいけなくなったって電話するんだな。年上の男をからかったんだ、ただでは帰さないぜ」
 顔を近づけても彼女の表情に変化はない。最初は見かけに惑わされて真面目な女の子と判断したけれど、かなり経験豊富なようだ。この状況でもかわいらしい笑みを浮かべたまま、メガネを掛けた瞳で俺の顔を見上げ―――
「だ〜め。キスは彼女に悪いからご遠慮いたします」
 と、俺の唇に人差し指を押し当て、近づく顔を押し止める。せっかく雰囲気を盛り上げようとしていた出鼻をくじかれ、その手を払いのけると、
「いいじゃないか。今は明日香の……他の女の事は関係ないだろ」
「関係あるに決まってるでしょ。あたしはね、男の人を寝取ったりする趣味はないんだから。その人の事が好きなら、唇の貞操くらいはちゃんと置いてたら? その代わり……」
 唇はダメでもSEXはいいのか?……俺の口を塞いでいた彼女の指は口火利から頬、喉へと滑るように移動し、スポーツで鍛えた胸板をくすぐり、余計な脂肪のついていない腹筋をなぞりながら俺のいきり立った股間へと到達する。
「その代わり……こっちのほうで楽しませてあげるから。あたしが電車を降りるまでの間、ね……♪」
 テントの支柱のようにズボンを持ち上げている怒張を指先でなぞり上げた女は、そのまま俺のチャックを下ろし、明日香のヴァギナを犯し抜いてから一時間と経っていないペ○スをパンツの中から引きずり出した。
「わぁ……思ってたよりもおっきぃ……♪ このおチ○チンで彼女を可愛がってるんだぁ……♪」
 目を輝かせ、とびっきりの美人にうっとりとそう言われ、電車の中で局部をさらけ出して恥ずかしい反面、悪い気はしない。少し冷たくなっている指先は熱い血液が駆け巡っているペ○スにはむしろ心地よく、包み込むように軽く握られて扱かれるだけで、股間の奥からドクドクと思い疼きが込み上げてくる。
「ふふふ……恋人さんの愛液で、スゴく湿ってる……どれだけ可愛がってきてあげたの? スゴく匂ってきて……あぁ…嗅いでるだけで興奮しちゃうォ……♪」
「ちょ…待てよ!」
「ヤダよ〜。この匂いが残ってるうちに、あたしがお口で嘗め回してあげるんだから……♪」
 他の女の愛液を吸ったペ○スだと言うのに、目の前の女は嫌がるどころかむしろ嬉々として股間へ顔を寄せてくる。バランスを崩して後ろの座席へ倒れこむと、女は俺の足の間へペ○スを追いかけるように座り込み、冷たさを感じさせるメガネのレンズを輝かせながら肉棒の先端へ口付けをした。
 ―――こいつ……上手い!?
 火照って赤くなった顔にトロンとした目……まるで本当に肉棒の匂いに酔いしれるように、女はネットリと舌を絡みつかせてくる。
「んっ……チュパ……んフゥ……おっきいから……全部咥えられないかも……ぁ…んぅん……」
 咥えられないどころじゃない……柔らかい唇と舌が吸い付くたびに、こちらの肉棒には甘い痺れは駆け巡っている。たっぷりと擦り込まれた明日香の愛液を舐め取り吸い取るように、ぬめりを帯びた舌が血管が脈打つ肉茎へと巻きつき、唇が敏感な場所へキスを繰り返す。まるで男の感じるツボを全て心得ているような口奉仕に、心地よくもむず痒く、焦らされているかのような心地で腰を震わせてしまう。
 焦らされるような至福の時間が流れていく。今にも果てたがる欲求を奥歯で噛み殺し、唇が亀頭の裏筋に吸い付いた瞬間、たまらず腰がビクッと跳ね上がる。
 もしこれと同じことを明日香がやっても、全然もの足りはしないだろう。同じように、明日香の部屋で同じ事をされてもここまで興奮する事はない。
 人が込み合っている車内で痴漢を働くならまだしも、人がいない電車の中で行為に及んでいると言う異常な状況が否応無しに人の目を意識させる。肉棒を舐める舌がピチャピチャと音を響かせるたびに周囲に気付かれはしないかと緊張してしまうのだ。
 ―――俺の方が弄ばれてるじゃないか……!
「んふぅ……んっ、んゥ〜……ぷぁ………ふふっ、こんなに大きくしてるとこ、恋人さんが見たら泣いちゃうかな? ごまかし効かないよね。ビクビクしてるし、顔が強張ってるし……気持ちいいの、我慢しなくてもいいんだよ?」
「馬鹿言うなよ……この痴女が。それよりもほら」
 “痴女”と呼んで皮肉ることだけが、今の俺にとって唯一の抵抗だ。だったら俺も、それにふさわしい接し方をしてやろうと、催促する意味も込めて腰を大きく突き出したのだが……
「どうかしたのか?」
 さっきまで気分を出してペ○スを嘗め回していた女とは思えない……それほど痴女呼ばわりされたのがショックだったのか、メガネの女はこちらの様子をうかがっていた上目遣いの視線を逸らし、フェラをやめて暗く俯いてしまう。……だが、それがどうしたと言うのだ。快感が中断した事で一息つけた俺は女の髪を掴むと、いきり立ったまま放置された股間へと引き寄せた。
「こんなところでやめるのかよ。ほら、さっさとしないと、その口に無理やり捻じ込むぞ」
「………そんな事したら噛んじゃうけど? 今そんな事したら、困るのはそっちじゃないの?」
「なに……?」
「分からないなら教えてもらえば? もうすぐ聞こえてくるはずだから……ふふふ♪」
「うっ…うあッ……!」
 肛門を引き締めて会館に耐えるつもりでいたのに、女の唇が先端に触れると、精液の塊が射精感を押し広げて込み上げてくるような圧迫感に喉から声が押し出されてしまう。
「強気に出るんじゃなかったの? 年下の女の子にいい様に弄ばれちゃって……ふふふっ、か〜わいっ♪」
 茶化されても反論の言葉も出せない。それほどに歯を食いしばっていなければ、今にも精液を撃ち放ってしまいそうだった。先走りがにじんでいた射精口を中心に、舌の先端と唇とが巧みに絡み付いてくる。明日香の愛液の代わりに十分すぎるほど唾液を塗りつけられた肉棒を手でニチャニチャと音を響かせながら手で扱き、今までの行為がお遊びだったかのように、柔らかい女の唇に亀頭を舐めしゃぶられる。リズミカルに上下の唇が先端を挟んで締め付け、既にペ○スの中を通り抜けてきた透明な液体を強烈にすすり上げる。しかも時折、限界以上に膨らんだ亀頭へ硬い歯の感触を滑らせられると、子供が怯えるように心臓を締め上げられてしまう。
「ま…待てよ……そんなに激しくされたら、出ちまうよ……」
「あら? さっさと終わらせて欲しかったんじゃないの?」
「それは―――」
 このまま終わらせるのは勿体無い……ペ○スから顔を上げた女の顔に精液を撒き散らしたい衝動を必死に押さえ込みながら、それでも敗北宣言に等しい言葉を言えずにいると、助けに入ったように、それでいて俺が忘れていた事を告げる言葉が突然車内へ響き渡る。
『次は○×駅〜、○×駅〜』
「なっ……!?」
 女の降りる駅まで三十分あるとは言え、その間に電車は何度も他の駅で停車する。そんな当たり前のことをいまさら思い出すと、慌てて舐めしゃぶられていたペ○スをズボンの中へしまおうとする。
「隠しちゃダメ〜♪ どうせほとんど乗ってこないんだし、このまま楽しみましょ?」
 ガクンと大きく揺れ、電車が減速に入る。あと一分もしないうちに暗いトンネルを抜けて明るい地下鉄の駅に出るのに、メガネの女はそんなタイミングで俺の腰へ腕を回し、喉の奥へ触れるほど深く肉棒を口の中へと飲み込んでくれた。
「うお…おッ………! それ以上されたら……で…出る……ッ!」
 最初の焦らすような吸い付きとも、感じる場所を執拗に責める舌使いとも違う。今にも喉の奥にまで入り込んでしまいそうなほどに俺のペ○スを大きく飲み込むと、女は鼻から甘ったるく気分を出した息を漏らしながら首を上下に降り始めた。それほど長くないけれど柔らかく、尾行の奥をくすぐる香りを漂わせる髪を揺らしながら、舌の上と唇、そして口内の粘膜とで俺のペ○スはいい様に扱かれてしまい、喉の奥の壁が亀頭を包み込んで締め付けると、突き抜ける快感に座席から腰が浮き上がりそうになる。
「どう? 気持ちいい?」
 言われるまでもない。口を離した途端に射精口には舌先が捻じ込まれ、根元をキツく締め上げる指が激しく幹を扱きたてる。もうすぐ電車が駅についてしまうという緊張と容赦ない責めたての板ばさみの中で、頭の中では何度も快感が爆発を繰り返し、口を開けばたちどころに情けない声を上げて達してしまいそうだった。
「声も出せないぐらい気持ちいいんだ……じゃあ、もっと気持ちよくしてあげるね……♪」
 ―――こ、この女、マジでサドか!?
 電車は今にも止まりそうなほど減速している。それなのに女は大きく開いた唇をためらう事無く亀頭にかぶせ、精液がすぐ傍今でこみ上げている射精口を執拗に舌先でほじくりながら、唾液まみれの唇でカリ首を締め付け、そのまま首をよじりたてた。
「―――――――――ッ!!!」
 縦方向ではなく、横へ回転した唇に張り出した肉エラをこそがれて、堪えていたものがついに爆発した。
 今は明日香の事なんて思い出したくもない。奥歯が砕けそうなほど歯を食いしばり身をかがめた俺は、この悪魔のようにいやらしい女の頭を抱えて体を折り曲げた。。
 このまま女の唇に射精する……その甘美な誘惑に身を委ねようとした瞬間、決して俺の思い通りにさせないと言う事なのか、女は押し付けられるのではなく自分から頭を小刻みに振り、深々と肉棒を飲み咥えてしまう。
「うあ……や…やめ…ろォ………!」
 思いがけないタイミングでのディープスロートでの吸い上げに、迸ろうとしていた精液が押しとどまるどころか、むしろ加速して爆発してしまう。
 声が出ない……先ほどと違って、今は口を開いているのに、あまりに快感が強烈過ぎるせいで声が出せないのだ。興奮と言う名の熱で煮詰められて濃厚になった精液が肉棒の中を走り抜けるたびに、まるで固まりが通り抜けるような圧迫感に玉袋も締め上がり、座席が軋む音を響かせるほどに腰を痙攣させてしまう。
 このままなら何度でも射精してしまう。―――だが、電車がホームに滑り込むと、その思いも瞬く間に霧散してしまう。
 ―――誰かに見られたら……!
 けれど明日香とのSEXよりも強烈な射精快感に抗うことが出来ない。出来る事と言えば、股間にメガネの女を吸いつかせたまま窓際による事だけだ。
 喉の奥に精液を撒き散らしながら女の上に覆いかぶされば、離れるよりも逆にホームからは見えにくいはず。後は誰も乗り込んでこない事だけを祈るだけ……すさまじいまでの勢いの射精はなかなか終わりを迎えず、それに終わっても、絶頂の余韻で今は指一本まともに動かせない。
 背中にすさまじいプレッシャーを感じながら、その重みに絞り上げられるように肉棒が脈打ち、白い塊を何度も弾き出してしまう。もう限界だと思っても、射精の最中に微細に震える女の舌が肉茎を這い回ると、すぐさま頭の中は真っ白になり、ドクンとペ○スを震わせてしまう。
 ―――い、いつまで続くんだよ……!
 今まで体験した中で最高だけれど、最悪のフェラ……結局電車がゆっくりと動き出すまでペ○スの絶頂脈動は収まらず、明日香を抱いてきた後とは思えないほどの精液を吐き出してしまう。
「ハァ……ハァ……くッ………!」
 幸い、すぐ横の四人掛けの対面座席に誰かが座る事はなかった。それほど車内に人が増えた様子はなく、射精を終えたこともあって全身を弛緩させて安堵すると、ピチャピチャとペ○スを舐め清めている女へ呼びかけた。
「おい…もういいだろ」
「ふふっ……いっぱい飲ませてもらったんだもん。少しは綺麗にしてあげなくちゃね♪」
 そう言って顔を上げた女の口元には精液で汚れた様子はない。やはり明日香との後だけに、出したと思っていた量よりも精液は少なかったのかもしれない。それでもいやな顔一つ見せずに喉の奥に撒き散らされた精液を飲み干したのかと思うと……
「あれ? またおチ○チンが硬くなってきたよ。出したばっかりなのに……エッチ」
 むしろ勃起させられたのだけれど……と口にするのは、ちょっと癪だ。もう一度あのフェラを味わいたいと思うが、いい様にされ続けるのも男のプライドを傷つけられるようで面白くない。
「なあ、今度は俺がしてやるよ」
 まだ一つ目の駅だ。時間ならまだある。……思いもかけず早くイってしまったおかげだと思うと、ますます面白くないが、残りの時間で逆にこの女をイかせてやれば溜飲も多少下がるだろう。
「もう……あたしに任せてくれてればいいのに……♪」
 言葉では嫌がっているようだけれど、赤らめた顔に浮かべた表情はそうは言っていない。腰を上げて座席へ座りなおした女は、膝を開いて俺に見えるようにスカートをたくし上げ、中心に染みの出来た下着をさらけ出した。
 ―――紐パンかよ。それにフェラで股を濡らす女って、どれだけスケベなんだか……
 あるで“最初からこうなる”ことを考えていたように脱がせやすい下着だ。入れ替わりに、女の足元へひざまずいた俺は、スカートの中へ手を差し入れて、腰の左右の結び目を同時にほどくと、形よく盛り上がった女の恥丘に我を忘れてむしゃぶりついていた。
「ちゃ〜んと満足させてよね。イかせてくれなきゃ彼女にばらしちゃうからね♪」
 ―――言われなくて……!
 もう明日香なんて関係ない。俺は女の股間から立ち上る濃密なフェロモンを鼻から大きく吸い込むと、濡れている割に処女のようにほとんど口を開いていない縦筋へ舌先を滑らせた―――


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