その2A
その2A
「どう?結構ショック?真面目な担任だと思ってたのに、俺達と変わらないスケベな奴で」
「…」
「俺達に正義面して説教しといて、その直前までず〜っと覗いてたんだからな。とんだエロガッパだ」
「古いなぁ、佐藤。エロガッパだってよ」
くくっ…あははは…三人組の笑い声が屋上に響く。しばらくしてたくやが重い口を開いた。
「…違う…もん」
「何が?もしかしたら覗きの途中でトイレで抜いてたかもよ。あいつも普通の男だって…」
「違う!先生はほんとにあたし達の事心配して」
「それこそ違うね。宮村が心配なのはたくやちゃんだけだよ。俺達なんかどうでもいい。女のたくやちゃん
に惚れたんだよ、あいつは!」
「違うの!先生はそんなんじゃない!立派な教師だわ!」
「OK、OK!じゃあ賭けようか、たくやちゃん」「何をよ!」
「ほんとに真面目な正義感溢れる先生かどうか…もちろん俺達はバツだ」
「…それをどうやって調べるのよ」
「だからメールの件だよ」「あ!」顔を逸らしていたたくやが佐藤の方を見る。
「ほんとに真面目な先生様なら、どんなにたくやちゃんが誘惑しようともそれを受け入れず、しかもたくや
ちゃんを叱るはずだ」
「…」黙って話を聞くたくや。この時点で三人の悪巧みに半分乗っかってしまったようなものだった。
「しかし俺達の言う通りなら…たくやちゃんに襲いかかるか…まぁそんな勇気はなくても口説き始めると思
うね。…間違いない!」
「どっかで聞いたフレーズだね」ずっと黙っていた田中がボソっと呟いた。
「ふん…どうかなたくやちゃん?俺ならたくやちゃんに誘惑されたらすぐにコロっといっちゃうけど。宮村
先生様なら大丈夫でしょ」
“様”を強調することで、あからさまに宮村を小ばかにしている佐藤。
「いいわ!その賭け乗ってあげるわよ。先生なら間違いなんて無いから!」思わず賭けに乗ってしまうたく
や。佐藤は後ろの二人に振り向きニヤっと笑った。
「じゃあね!今度こそ、もう行くわよ」三人の間を抜け階段へ向かおうとするたくや。
「おいおい!まだだよ!まだルールも賭けるモノも決めてないじゃない」
「…早く云ってよ」
「判った。ルールは今日から5日間。丁度良い事に、たくやちゃんは宮村と一緒に帰るらしいからその時毎回
誘惑して頂きましょうか」
「ど、どうやって?」
「それはたくやちゃんに任せるよ。単刀直入に『セックスしよ』でもいいし」
「そ、そんなこと出来るわけないでしょ!」
「まあそれは半分冗談だけどね。元々男なんだから判るでしょ?どうやったら男がその気になるか」
「……」
「で、手を出したらたくやちゃんの負け。もし5日間、あの教師が堪えられたら俺達の負け」
「…判ったわ。で、賭けるモノは?」
「たくやちゃんが負けたら…俺達のセックス奴隷。断わる事は一切許さない…ってHなたくやちゃんにはどう
って事ないかな、今までと変わんないし」
「そんな訳ないでしょ!…そ、そんなの…」
「怖い?でも信頼してる先生の為なら大丈夫でしょ?」
「あ、当たり前よ!そ、それよりそっちが負けたら何してくれるのよ」
「あぁ、今後一切たくやちゃんとは関わらない…ってどう?」
「そんなの…こっちの賭けるモノの方が明らかに重いじゃない。あたしに関わらない、って大した事じゃない
でしょ」
「じゃあもうひとつ…パンツ一丁で校庭を三周するよ。お昼休みにね」
「おいおい!」「えぇ、聞いてないよぉ」事の成り行きを見守っていた鈴木と田中が不満の声を漏らす。
「判った。それでいいわ!」たくやはその様子を見て初めて笑みを浮かべる。
「それとたくやちゃん。コレ」
そう云って佐藤はポケットから何やら取り出したくやに渡す。
「コレは?」「実際、近くに居られるわけじゃないからさ。たくやちゃんがほんとに誘惑してるかどうか判ら
ないじゃない?だからコレ。『レコーダー』小型だけど最長6時間まで音声録音が可能なんだよ。結構集音
能力もあるからさ。これを毎回帰る時にセットして胸ポケットに入れる。そして翌日俺達に渡す。OK?」
「…判った。じゃあもういいでしょ?」
「たくやちゃん」急に険しい顔で、厳しい口調になる佐藤。
「な、何よ」
「この事は絶対に宮村には内緒だよ。俺達との賭けをばらしたら間違いなく停学か退学だ…その時はたくや
ちゃん…俺達どう出るか判らないからね…じゃあがんばって、たくやちゃん」
「…ふん!」そう言い残し振り返らずたくやは屋上から降りて行った。
「おい〜大丈夫か?俺パンツ一丁なんかヤダぞ!」「…僕も」
たくやが消えてから鈴木と田中が佐藤を囲む。
「何、云ってんだよ。勝てば今まで以上にたくやちゃんとエロエロ生活だぞ。それに見合ったモノ賭けなきゃ
たくやちゃんも納得しないだろうが」
「そうだけどさぁ…勝ち目あるんだろうな?」
「それは田中の証言の信憑性次第だな」「ぼ、僕の?」
「あぁ…ほんとに覗いてたのが宮村なら、9割方俺達の勝ちだ」
「もし、違ったら…」
「それでも5割以上はこっちだ。相手はあのたくやちゃん。誘惑されたら男なら…」
「…据え膳食わねば?」「古い言葉知ってるなぁ、田中」
「まぁ確実にこの賭けは俺達に有利だ。万が一…負けたってパンツ一丁だ。大した事じゃねぇよ」「そうか
なぁ…」
「そろそろ午後の授業始まるぞ」鈴木がそう云うと三人は揃って屋上から降りて行った。
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