たくやちゃんと赤ちゃんパニック −2


「アブゥ……」
「よしよし……そろそろ眠くなってきた? いっぱいミルク飲んだもんね〜♪」
「ダァ……アブ…クゥ……」
 ふぅ……やっと眠ってくれた。結構大変…だったかな?
 名前も聞かされていない赤ちゃんは、散々あたしの手をてこずらせてくれた。
 まずお漏らし。最近の紙おむつがいかに吸収力がよくても、取り替えないわけにはいかないわけで。その際に小さなおチ○チンをきれいに拭いて、何故か股間を見ているあたしの方が気恥ずかしさを覚えながら新しい紙オムツを履かせる……すると、その後はミルクの時間。知らせてくれたのは遠慮ない赤ちゃんの鳴き声だった。
 最初こそあたしの胸を吸いたがったけれど、人肌に温めたミルクをお腹いっぱい飲むと、赤ちゃんは幸せそうな表情を浮かべて胸にしがみついて眠りに落ちていった。……よほど、あたしの柔らかい胸は心地がよいらしい。
 ――こういう時はふくよかな胸と言うのも役に立っているのかもしれないわね。
 嬉しいような嬉しくないような……けど、もし抱いているのが明日香だったらと想像すると、赤ちゃんが胸が小さいとワンワン泣き出しているところを思い浮かべてしまい、クスッと笑ってしまう。
「明日香ならそつなくこなしそうだけどね」
 まぁ……明日香の抱いてる赤ちゃんがあたしとの子供とか〜…と未来予想図を描いてしまうと、今度は気恥ずかしくなる。―――ただ、横に立ってるあたしの姿が女のままって言うのは、絶対に女性化の弊害だ。
「ほんと……男のあたしがお母さんだなんて、おかしいよね」
 ツンッと真っ赤なほっぺを指先でつついてみると、ンーンーとむずがる赤ちゃんの仕草に、あたしの笑みが途切れる事は無い。
 今日は研究の続きは出来ない……けれど、赤ちゃんの温もりと重みを腕の中に感じていると、胸の奥にまであったかい気持ちが広がってくる。
 余所様の子供なんだから、あたし自身が出産とか育児の責任を負っていないためもある。泣くとうるさいし、あたしに他の事はさせてくれないし、今日の夜はどうすればいいのか困って入るんだけど、それでも、
 ――かわいいな。
 腕の中にいる赤ちゃんがとても愛おしかった。
 自分で産んだとか、そんな事は関係ない。ほんの少し腕に力を入れるだけで壊れてしまいそうな弱い存在を、守るように優しく抱きしめる……ただそれだけのことなのに……
「ふふっ……今日のあたし、どうかしてるのかな……」
 バスの中で妊婦さんに出会ったからだろうか? その時に話を聞かせてもらったからだろうか? お腹の中にいる赤ちゃんが……そして腕の中にいる赤ちゃんが……あたしは愛おしくて仕方がなくなってしまっていた。
「もしこの子があたしの赤ちゃんなら……お父さんは誰なのかな?」
 パパっぽいと言えば、お屋敷の旦那様とか。………まあ、優しく愛してくれたし……あたしも…ああいう人ならいいかなって……ユーイチさんはちょっとアレだけど、ユージさんも………ただ、
「あんたのお父さん、弘二じゃない事だけは確かね、ふふふ♪」
 ツンツンと、安らかな寝顔の赤ちゃんを突っつきながらくすくす笑みをこぼしていると……不意に部屋の入り口から物音が聞こえてきた。
「?」
 それはドサッと言う感じの、カバンのような何かが落ちる音。
 気になって、それでも赤ちゃんを驚かさないように背を向けていた扉へ振り返ると……そこには、呆然とした弘二が突っ立っていた。
「あ……今の、聞いちゃった?」
 マズった。……とは言っても、あたしの体が目的の弘二なんかとは、絶対にそう言う関係になりたくない。……って、あわわわわっ! あ、あたしは何で自分の旦那様とか考えてるのよ!?
「そ…そうだ弘二。ちょうどよかった。実は――」
「その子はいったい誰の子ですか――――――!!!」
 ああ、やっぱり……想像どおりと言うか、赤ん坊を抱いたあたしを前にして、弘二はいきなり誤解した。
「あのねぇ……ちょっとは考えなさいよ。あたしがいつ妊娠してた?」
「誰なんですか!? 僕以外の誰が先輩とそんな…そんな不純な行為で赤ん坊なんて作ってるんですか!!?」
 弘二はまるで親の仇でも見るような目であたしの腕の中にいる赤ん坊を睨みつけ、叫ぶ。しかもあたしの声も聞こえてない……激しい怒りと動揺で肩を小刻みに震わせており、目の焦点さえあって無いように見える。
 ――こう言う時の弘二は危険すぎる。あたしは脱いだジャケットを折り畳んだ上にタオルを重ねておいたところへ赤ちゃんをそっと横たえると、頭の中が切れかけている弘二へ近づいていく。
「弘二、落ち着いて。あたしのお腹も大きくなってなかったでしょ? それに女になってから、どう逆算したって子供が産めるはず無いじゃない」
「僕は……僕はぁ〜〜〜!!!」
 あたしの言葉は弘二に届いていない。――それでも何とか説得しようと弘二の肩に手を置くと、それだけで弘二は容易く暴走した。いきなりあたしのシャツの襟を掴み、音を立てて左右へと引き裂いてしまう。
「きゃあああああっ!」
「許せない……どこの誰とも分からない男の子供よりも、ボクの子供を産むのが順番的に先じゃないですか!!!」
「だ、だ、だからっていきなり……んムゥ!」
 胸を押さえてしゃがみこんだあたしに弘二が覆いかぶさり、荒々しい言葉を吐く唇であたしの口を塞ぐ。そのまま固い床へと押し倒され、頭上で両方の手首を押さえつけられてしまう。
「弘二、今はダメ。ここで変な事したら赤ちゃんに……」
「あんな子供、僕らの間には関係ありません!」
 そう叫んだ弘二は、右手一本であたしのズボンをズリ下ろすと、その手で自分のチャックもあけ、既に勃起しているペ○スを引っ張り出した。
 ――え……ちょ、まさかいきなり!?
 弘二の目を見れば尋常な精神状態で無いことは分かる。だからといって強引なキスひとつしかされていないあたしの体は、男性を迎え入れる準備なんて何一つできていない。乾いた秘所はぴったりと口を閉じている…と言うのに、大きく充血したペ○スを筆のように擦り付けて先走りの透明な液体を塗りつけた弘二は、唾液も愛液も何もその場所へ、強引に自分の分身を捻じ込んできた。
「ハウうううッ! くッ…ん、あッ……んんゥ!!!」
 祈祷がめり込んだ直後、まるでアソコを引き裂かれるような痛みがあたしの股間から駆け巡ってくる。潤滑液の少ない粘膜同士が擦れあい、滑るどころか張り付きあうような密着感が弘二が腰を動かすたびに痛みへと変わってしまう。
「こ…弘二……抜いて……痛い、痛いよぉ………」
「そんなこと言って……僕はだまされません。もう誰にも先輩を奪わせるもんか!」
「クあアアああああァァァ!!! ダメ、本当に……んッ、んんんぅ〜〜〜〜〜〜!!!」
 痛みのままにあたしの口から絶叫が迸る。……けれどその直後、あたしの意識は机の上に寝かせた男の子の赤ん坊の事を思い出してしまう。
 ――ここで声を上げたら……あの子に気付かれる………!
 とっさに下唇を噛み、悲鳴を飲み込んだあたしの体へ、弘二が腰を擦り付ける。締め付けがキツく濡れてもいない膣内ではさすがに根元まで挿入なんて事は出来ないけれど、乱暴な腰使いで膣内を突き上げられるたびに痛みが駆け巡り、あたしの腰がビクッと跳ね上がる。
「ほら、やっぱりボクのチ○ポが気持ちいいんじゃ無いですか。挿れただけでビクビク震えてますよ、先輩」
 ――い、痛いからに決まってるでしょうがぁぁぁ〜〜〜!!!
 そう言い返したいけれど、唇を開いた途端、迸るのは文句よりも涙混じりの叫び声の方が先になりそうだ。それに加えて、いつもならこんな風に乱暴に犯されても感じてしまうはずのあたしの体も、赤ちゃんの事を気にしているせいか、痛いだけで一向に濡れてこない。そんなあたしの膣内を、弘二は先ほどまでの不機嫌振りがウソのように恍惚とした表情を浮かべ、滅茶苦茶にかき回し続けていた。
「ああぁ……やっぱり先輩は最高です。僕のおチ○チンを締め付けて離してくれないですよぉ……!」
 ――こ…この……!
今にも地が噴出すんじゃないかと思うほどの摩擦の痛みに耐えかねて、あたしの目じりから涙が零れ落ちる。けれど弘二はそれに気付かない。あたしを蹂躙する事に一人で悦に入って、無我夢中で太いペ○スを押し込んでくる。
「もう、もう、我慢できません! 先輩に、ボクの子供を、孕んでもらいますから…ああ、ああぁぁぁ〜〜〜!!!」
「あっ……ダメ、外に、外にィ〜〜〜〜〜〜!!!」
「先輩、愛してます、センパァ〜〜〜イ!!!」
 あたしの事を呼ばれても全然嬉しくない……弘二はグイッと腰を突き出して脈動するペ○スをヒリヒリするあたしのヴァギナへ強く突き立てると、一人勝手に絶頂を向かえ、精液を迸らせた。
「ッ………ッゥ………!」
 ようやく弘二の動きが止まったものの、結局一度として気持ちよい感覚を覚えることもなく、あたしはただ、乱暴にこすりたてられた膣内の痛みと、広がっていく弘二の精液の感触のおぞましさに涙を流しながら身体を打ち震わせる。けれど、こんな目にあってもまだ、ようやく眠りに付いた赤ちゃんだけは起こしたくないと、歯が皮膚を突き破りそうなほどに強く、唇を噛み締めてこの屈辱の時間を耐え続けていた。
「さあ、第二ラウンドです。さっきは僕一人でイっちゃいましたけど、今度は先輩と一緒ですよ♪」
「こ…の……あんた、いい加減に………!」
 これはれっきとしたレイプだ。犯罪だ。後で絶ッ対にぶん殴ってやる、去勢だ、ちょん切ってやる!!!
 弘二の行動と物言いに激しい怒りを覚えながら睨み返す。……と、
「フ…ファ……」
 ――マズい、目を覚ました!?
 あたしがいくら声を押し殺していても、弘二がアレだけ叫んでいては元も子もない。床に倒れているあたしからでは見ることは出来ないが、もぞもぞと動く気配だけは伝わってきて……そして赤ん坊にとっては当然の行動としてぐずりだし、すぐに大きな声で泣き出し始めた。
「む、あの子、僕たちの邪魔をするつもりですか?」
「なに…言ってるのよ……赤ちゃんは泣くのが仕事じゃない……」
「そんなの知りませんよ。―――よし、いい機会だから先輩はボクのものだってあのこの目の前で教えてやる!」
「あ…やめて、弘二、この…やめてぇぇぇ!!!」
 精液と言う潤滑液を得たヴァギナへペ○スを押し込んだまま、弘二はこちらの背中へ腕を回して、見かけからは信じられない力であたしを抱え上げる。
「目の前で先輩が僕と繋がっているところを見せ付けてやります。そうすればいくら子供だって――」
「子供なのはあんたの方でしょうがァ!!!」
 自由になった腕を頭上へもう一度振り上げると、弘二の両肩へキッツい肘を叩き込む。
「ぬグアァ!! せ、先輩、何するんですか!?」
「ナニかしたのはあんたでしょうがぁ!!!」
 そしてよろめく弘二の腕から逃れて床を踏みしめたあたしは、両手を組み合わせ、横殴りに弘二の顔をぶん殴った。
「このキツく、外道、人でなし! あんたなんかとはもう絶交よ、二度とあたしの前に顔見せるなァ!!!」
 下半身丸出しで叫んでも格好は付かないけれど、アソコから弘二の精液が垂れてきているのでパンツもズボンも上げられない。
 赤ちゃんは泣きじゃくっている。弘二はあたしに殴られた場所を手で押さえて「信じられない…」といった表情を浮かべている。―――もしこんなところを誰かに見られたら痴話喧嘩と思われるかもしれない。
「さっさとこの部屋から出て行って。あたしの視界から消えて!」
「そ…そんな……」
 今は弘二は弘二と視線を合わせるのさえ嫌な気分だ。とりあえずまず第一にと、弘二に背を向けて赤ちゃんを抱きかかえる。
「僕よりも……そんな小さい子を選ぶって言うんですか? そんなの、そんなのあんま―――!」
 ――ん? 変な言葉の区切り方だったけど……
 そこで思わず振り向いたあたしの目に飛び込んできた光景は……何故かやけにスローモーションのように遅く感じられた。
 開いた扉の直撃を背後から食らっている弘二。
 その弘二にぶつかってるのは麻美先輩で、
 さらにその後ろでは千里が麻美先輩の背中にぶつかって両腕を振り上げている。
 そしてあたしのすぐ目の前には赤い色した液体が入ったビーカーが飛んできていて、
 天井付近から弘二の前に発炎筒か古い手榴弾のような長細い物体が落っこちてきていた。
 ――なんか物凄く嫌な予感が……
 そう思った直後には、世界は普通の速度で動き出していた。
「アブッ!」
 ビーカーの中身はあたしのうでのなかにいるあかちゃんへ浴びせかけられる。そして同時に、弘二の目の前辺りから爆発音が響き、部屋中に白い煙を伴った暴風が吹き荒れた。
「なんなのよ、これぇ!?」
『み、見ましたか!? これが新開発の携帯型クイックレボリューションミニマムの、ケホッ、ケホッ』
 この声は千里ね。まったく、あいも変わらず爆発する発明品ばかりを……と思いながら、過去にあたしを女性へ変えたことのある千里の発明品「クイックレボリューション」の忌まわしい名前に、あたしの中の嫌な予感が加速度的の増大していった。
『相原くん、大丈夫!? もう……私に破壊力でしか勝てないからって、何も毎回爆発させる必要は無いでしょ!?』
 む、こっちは麻美先輩の声か。……この煙じゃ入り口の辺りでさえ全然見えないや。
 あたしは赤ちゃんを片手に抱え、部屋の窓を全開にする。するとすぐさま風が流れ込んできて、開け放たれたままの扉から外へと煙を押し出していく。
「ケホケホッ……麻美先輩、千里、二人して何しに来たんですか!? 爆破○ロですか!?」
 薄れていく白煙の向こう側に二人の姿を見つける。……が、千里の爆弾(間違い)の直撃を受けたらしい弘二の姿は見当たらない。先から声もしないところを見ると、気絶でもしたようだ。
「私は爆破○ロなんてしないわよ。河原さんじゃないんだから」
「な、何を言うんですか! 私だって故意に爆発させてるわけじゃありません。あくまでこれはおまけのようなもので……」
 おまけでゼミ教室を爆破されたらたまったもんじゃない。先ほどの爆風のおかげで本やらなにやらまとめて吹き飛ばされている。赤ちゃんの紙オムツや哺乳瓶もだ。
「え〜っと……ま、まあ、片付けは手伝いますから。今日のクイックレボリューションは成功だったようですし、本来ならすぐにでもデータのまとめておきたいのですが……」
「んなの後にしなさい。どうせ千里の研究は役に立たない……ん?」
 ――今、「成功」って言ったよね。じゃあ……クイックレボリューションであたしの身体は元に?
 身体を見下ろしてみるけれど、服を引き裂かれて露出したままの胸元はやっぱり膨らんだままだ。麻美先輩も千里も見た目も越えも何一つ変わって無いようだし……じゃあ、やっぱり、


「「「あっ」」」


 あたしも含めた三人が異口同音の驚きの声を上げる。
 麻美先輩と千里は、服を破られてる上に股間丸出しで赤ちゃんを腕に抱いているあたしを指差して。
 あたしは、服がボロボロで床にのびている弘二の、かなり立派に大きくなってる胸を指差して。
 そしてもう一つ……千里が性転換機械のクイックレボリューションを持ってきてた時、たいていの場合において麻美先輩もまた―――
「色々あるけどとりあえずこれだけは聞いとかないとね。……麻美先輩、さっきの液体、なに?」
 もっとも、さっきの液体……いや、薬がどんな効果があるものなのかは、実はもう既に分かっていたりする。
 なにしろ赤ちゃんの股間、触ってみても小さなアレの感触がどこにもまったく全然なくなってしまっているのだから……


3へ