プログラム76「最後の生贄(中編)」
プログラム76 第3の恥辱(中編)
「・・・一体どこへいくつもりだ?」
出発してから30分、すでに一般道路に入っているはずなのだが、周りにはお屋敷
の庭園と変わらない景色だけが流れている。
「くくく、知りたいですか?」
卑下た笑みを浮かべて答える下萄。いつもと違って余裕綽々といった感じがする。
一体この自信はどこからきているんだ?
「別に・・・」
そのあまりの不気味さに言葉を詰まらせてしまう。しかし、実際今どこを走ってい
るんだろう?
「まぁ、そんなに興奮しないで。どうです? 飲み物でも?」
「必要ない」
こんな奴が入れた飲み物なぞ飲みたくもない。
「そんなに警戒されなくても大丈夫ですよ。市販の缶ジュースですから」
市販のものか。ならば遠慮することもないか。
「ふん。そういうことなら一応貰っておく」
「そうですか。そこの鞄の中に入ってますからどうぞ」
「これか?」
そう言って後部座席に置いてある下萄の鞄を取る。・・・しまった。こんな奴の
鞄、触るんじゃなかった。
「ポ○リとス○○アか。では遠慮なく貰うぞ」
プシュ・・・ゴクゴクゴク・・・
「ふぅ・・・」
何だかんだいって、秘書の女性の人と遭遇してしまった時の極度の緊張で、喉が渇
いていた。ス○○アを一気に飲み干す。
「随分喉が渇いてたんですねぇ? かなり緊張しているみたいですが大丈夫です
か?」
「貴様にどうこう言われたくない。黙って運転していろ」
「これは失礼」
その後暫く、下萄は私に話し掛けなくなった。
「あと10分ほどで到着しますので、心の準備を決めておいてください」
「そうか」
あれから20分ほど経った。今だに広い田舎道のような場所を走っている。しかし
後10分か・・・。どうやら随分山の方に拠点を構えているようだな。
「まぁ、それまでには効くと思いますけど・・・」
「何がだ?」
「くくく、すぐに解りますよ」
「一体どう・・・いう・・・こと・・・あ・・・れ・・・?」
突然、瞼が重くなってきた。一体何が起こってるんだ?
「くくく、早速効いてきたみたいですねぇ?」
「きさ・・・ま・・・一体・・・なに・・・を・・・?」
しかし、そのまま意識は闇の中へ沈んでいった・・・
「起きろ・・・おい・・・起きろ・・・」
な・・・んだ・・・? 誰かが・・・話・・・かけてくる・・・?
「おい!! 起きろ!!」
誰・・・だ・・・?
「う・・・」
おぼろげに意識が戻っていく。まだ頭がくらくらする。
「な・・・に・・・?」
一体何が起こった・・・? 身体が動かない・・・
「ようやく起きたか・・・」
誰かが話し掛けてくる。この声、聞き覚えがある・・・
「誰・・・?」
「お? キチンと話せるのか? さすがだな」
声のする方へと視線を向ける。
「き・・・貴様!?」
視界の先には、普段は見せない威圧的な態度をした下萄がいた。
「ようやくお目覚めか? まぁ、あれからそんなに経っていないがな」
「これは一体・・・?」
自分の今の状態をよく調べてみる。両腕は上から釣り下がったフックに、縄で吊り
上げられ、両足は肩幅以上の広さに広げて固定されている。更に、身体中、服の上か
ら縄で縛られている。一体何故こんな状態に?
「なんでこんな格好を・・・?」
「くくく、よく眠っていたからしやすかったぜ?」
「なっ!? 貴様がしたのか?」
「あぁ。しかしこうもバカ正直に引っかかるとは思わなかったな。色々と知恵を廻ら
せて計画を立ててたが、一番初歩的な作戦に引っかかるとはな・・・くくく」
「一体どういうつもりだ!! 早くコレを解け!!」
「それは出来んな」
「何だと!?」
「それではせっかく捕らえた意味がない」
「捕らえただと!?」
一体どういうことだ?
「くくく、すぐに解るさ・・・」
いつもの媚びついた態度とは一変した、威圧的な態度。どうやらこれがこいつの本
性らしい。
「ようやく本心を現したようだな? こんなことをすれば旦那さまも黙っていない
ぞ?」
「そうかもな。だが、そんなことはどうでもいい」
「どうでもいいだと?」
「あぁ。それにいざとなったらクライアントが助けてくれるしな」
クライアント? 依頼主? どういう事だ?
「クライアントだと!? 一体誰がこんな依頼をしたというんだ!?」
「そのうち教えてやるさ・・・」
そう言いながら私の頬に手をやる。
「や、止めろ!! 触るな!!」
こんな最低な男に触られたくない!!
「いつまでその強がりが通用するか楽しみだな」
「く・・・一体、何をするつもりだ?」
頬をさすられる感触に嫌悪感を抱きながら、下萄に訪ねる。
「くくく、クライアントの依頼内容はこうだ。甘粕かえで、お前を牝奴隷に調教す
る」
「なっ!?・・・」
私は思わず絶句してしまった。一体、周りで何が起こっているんだ?
「くくく、早速始めてやる。今までの傲慢な態度をとった分も含めてたっぷりとな・
・・」
その言葉に、私の身体に戦慄が走った・・・
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