二章〜『美術』〜


今は三時間目と四時間目の間の休み時間。私は疲弊していた。
一時間目の後の休み時間の時に、再び如士月にあそこを弄られたのだ。
しかも今度は十分間じっくりと時間をかけてだ。
その間、両手を姫慈に固められていたので、私は腰をくねらせるしか抵抗する術はなかった。
そんな私を見て、周囲のクラスメイトの女子は皆嘲笑していた。男子は鼻の下を伸ばし、ニヤニヤとした顔で眺めていた。
私を助ける者など一人もいない。
当然と言えば当然だろう。私は彼らにとっておもちゃなのだから。
この世のどこにおもちゃが可哀相だからと言って庇う者がいるのか。
だから、私は諦めていた。諦め、一人でこの恥辱を我慢すると決めたのだ。
「ちょりす」
私が前の休み時間の事を思い出して憂鬱になっていたその時、教室のドアの所から声が聞こえてきた。そこに立っていたのは如士月盾子、によく似た顔だった。ウェーブの掛かった短い髪を肩の辺りで切りそろえたその少女の名は、隣のクラスの如士月矛子(じょしづき ほここ)。何を隠そう如士月盾子の双子の姉だ。ちなみにウェーブの掛かっていないのが如士月盾子だ。
「あ〜、矛ちゃん〜」
ぱたぱたと足音を立てて如士月盾子が矛子に歩み寄る。
「ちょりす」
「あ、わざわざ持ってきてくれたんだ〜、ありがとうぉ」
「ちょりす」
「うん。じゃあねぇ〜」
「ちょり〜す〜」
そんな短いやり取りを終えると、矛子は教室を去っていった。私の場所からは盾子の背中で見えなかったが、盾子は矛子から何かを受け取ったようだった。
会話の内容から察しようにも、矛子はちょりすしか言ってないので、全く理解できない。まぁ、矛子は飽きっぽい事で有名だから、次に会った頃にはまた別の口調に変わっているだろう。
そんな事を考えていると、如士月は姫慈と目配せをし、私の方に向かってきた。
嫌な予感しかしない。
特に、直前に盾子が矛子と会っていたのがそれを助長する。
如士月矛子は、発明家であった。
図工や科学の成績は校内でもトップクラスで、日夜あらゆる物を発明しているという噂だ。
そして、その発明のレパートリーの中には、エッチな物も含まれているという。
如士月が手を腰に回して歩みよってくる。私の見えない所でいったいなにをしているのだろうか。
「隙だらけだよ」
いつの間にか、姫慈が背後に回っていた。私の両手を取り、椅子の背もたれを利用して私の動きを封じてくる。
「な、なにするのよ!」
「まぁまぁ〜、痛くしないし、すぐ終わるからぁ〜」
「きゃっ!」
如士月の手が私のスカートをまくりあげ、股間に突っ込まれる。
指が私の股を押し広げ、私のあそことクリトリスになにかひんやりとしたものが塗り広がった。
「ひゃっ! ちょ、なに!?」
「はぁいお終い。あ、チャイム鳴っちゃうねぇ〜。次は美術の時間だよ〜。さ、行こ行こ〜」
姫慈が私の拘束を解く。しかし、すぐに私の両手は如士月によって掴まれた。
「はい、レッツゴ〜」
「ちょっと、あなた、手がなんだかぬるぬるして……」
「ん〜? 気にしない気にしない〜」
歩きながら、如士月の指が私の指にからみつく。まるでタコのようだった。
「美術の授業で使う物は私が持って行ってあげるわ。知華さん」
姫慈の声を耳にした時、私は既に廊下に出ていた。
……



……
ここは美術室。私は席に座って、ぬるぬるになった両手を服で拭いていた。
「はい。皆さんおはようございます。起立。礼。着席。はい。それでは今日の授業ですが、デッサンをします。はい。モデルは何がいいかリクエストはありますか?」
教卓に立ったおよそ美術の似合わないマッチョでさらにオカマ口調な先生が、無計画を恥じる事なく生徒にリクエストを募った。
その時点で、私は既に展開が読めたので、一人ドキドキしていた。
「はい先生」
「はい。姫慈さん」
「真夜原さんが美術の用意を忘れたそうです」
「あらそうですか。では、一人だけ授業に参加できないのも可哀相なので、真夜原さんモデル頼めるかしら?」
ほら、やっぱり。
「……はい」
私は渋々返事をする。どうせ私に拒否権などないのだ。下手に駄々をこねて授業を妨害した罰をさせられる事になったらたまらない。
私には早く嵐が過ぎ去れと祈るしかないのだ。
「さ、皆、椅子を動かして。真夜原さんを中央にするように!」
私が教室の中央に移動すると、私を囲むように皆が椅子を配置した。
私の正面には男子が期待するような顔で集まり、女子は飽きれた顔で背後に回った。
もっとも、姫慈と如士月だけは私の真正面に座っているが。
「さ、じゃあ皆準備はいいわね、それじゃあポーズはどうしようかしら……」
「先生!」
姫慈が私を見てニヤつきながら、高らかに手を挙げた。
「なにかしら姫慈さん」
「私達にはまだ服を書くのが難しいので、ここは真夜原さんにヌードになっていただくというのはどうでしょうか?」
「あらそう? うーん、でもヌードデッサンは流石にねぇ」
「先生! オレも服は難しくて書けません!」
「先生オレも!」
「オレもオレも!」
そう言って、大勢の男子が手を上げだした。それを見て女子が男子サイテー、と言っていたが、中には面白半分で「私も!」と手を挙げる者もいた。
「あらぁ、殆ど全員だわぁ、じゃあ真夜原さん、申し訳ないけど、脱いでくれる? はい、バスタオル貸すから」
「……はい」
私はもう諦めていた。
もう何を言っても無駄なのだ。そもそも、この美術教師も、ついこないだ突然赴任してきたばかりなのだ。恐らく、姫慈の差し金だと私は思う。姫慈が私をオモチャにするようになって、あからさまに教師の入れ替わりがあった。
恐らく、このオカママッチョだけでなく、私のクラスを受け持つ殆どの教師が、姫慈の息がかかっているのだろう。
故に、私は、この学校が地獄だ、と表現したのだ。
「じゃあ姫慈さん、先生ちょっと仕事あるから、委員長であるあなたが授業進めてくれる?」
私がバスタオルを体に巻いて、制服を脱いでいる間に、オカマッチョは教室の隅に移動した。余った机に座って、紙を広げている。目を凝らして見てみると、脳トレだった。大した仕事だと思った。
「さ、知華さん、もう脱いだわよね? バスタオル取るわよ?」
「ちょ、まだ、待って!」
私はすでに制服も下着も脱いでいたが、まだ心の準備が出来ていなかった。
しかし、姫慈が私の言葉を聞くはずもなく。
「そぉれ!」
バスタオルの端を掴み、勢いよく剥ぎ取った。
私は咄嗟に無駄に大きな胸を腕で隠し、あそこを右手で覆い隠した。
「あら、やっぱり脱いでるじゃない。うん。いいポーズよ。やっぱり女だもの。大事な所は隠さないとね」
その言葉に、私は疑問を覚えた。
いつもの姫慈なら、私に恥ずかしい部分を隠す事など許さないはずだ。
にもかかわらず、今私は乳首も腕と手で隠しているし、あそこも手で覆い隠している。
私は少しの安心と同時に、不安を感じた。
「はい、じゃあ皆、書き始めましょう」
姫慈が椅子に座り、みんなに合図を出した。
女子は鉛筆を走らせるが、男子の大半はここぞとばかりに私の体を眺めるだけだ。
服を着てないので多少は恥ずかしいが、大事な部分は隠してあるので恥ずかしくは……
その時、突然不思議な感覚が私の体を襲った。
乳首とあそこが、やけに疼くのだ。
確かに休み時間に弄られたのもあって多少は興奮していたが、この疼き具合は異常だった。
ああやばい。
やばいやばい。
頭がぼーっとする。体が疼く。抑えた手で性感帯を弄りたくなる。
だが我慢だ。私は今大勢の目に晒されている。
こんな状況で感じては、まるで露出狂ではないか。ましてやオナニーなど始めてしまっては、完全な変態だ。
それだけは、それだけは出来ない。
「……なぁ、なんか真夜原の奴クネクネしてね?」
一人の男子がつぶやいた。私はビクッと体を強張らせる。
「そうそう、なんか、すげーエロいよな」
「やべ、オレちょっと興奮すてきた」
男子の言葉で、私は耳まで赤くなるのを感じた。
とりあえず、このままじゃ危険なので、覆い隠している手を少しだけ浮かび上げ、直接触れないようにする。
「あら、だめよ知華さん」
突然、目の前から声がした。いつの間にか姫慈が立ち上がり、私の目の前まで来ていたのだ。
「ほら、ちゃんと押さえとかないと、見えちゃうわ」
そう言って、姫慈が私の手をぐっと押してきた。
胸もだが、特に股間はやたらと強かった。
私の手を持って、クリトリスに押さえつけるように押してくる。
「んん!」
「そうそう、それでいいのよ。ああ言っておくけど『オナニー』なんてしちゃダメよ? 女の子なんだから。そんな事するのは露出狂の変態さんよ」
オナニー、の部分をやたらと強調して姫慈が言った。
「そ、そんな事、しないわよ」
「そう? そうよね。じゃ、じっとしててね」
姫慈がセミロングの髪を手で払いながら、席に戻る。

……

暑い。
「……はぁ……はぁ」
あれから約三十分。私はずっと同じ姿勢のまま動かないでいた。
しかし、性感帯の疼きは収まるどころか強まる一方で、乳首を押さえる手や、あそこを押さえる指が自然と動きだしそうになる。
特に酷いのはクリトリスだった。
手で隠しているから見えないが、恐らく恥ずかしすぎるくらいに勃起しているはずだ。
その弄ってと言わんばかりに勃起したクリトリスが、異常なまでに疼いていた。
もし私が立っているのがクラスメイトの中心ではなく自室だとしたら、きっと狂ったように弄っているだろう。
あそこを押さえる手が少し動いただけで、体が跳ねそうな快楽が走る。
もし一度本格的に弄ってしまえば、止める事は出来そうになかった。
(あぁ、いじりたい、クリトリスを指で摘まみたい……乳首を捻りたい……。だ、だめよ! こんな所でオナニーなんかしちゃ、それこそ姫慈の思う壺!なんとか、なんとか我慢しなくちゃ……)
私は半ば意地だけで、快楽に耐えていた。もはやクラスメイトの視線すら気にならない程に集中して、授業が終わるのを待っていた。
「……」
その時、姫慈が動いた。ゆっくりと笑みを浮かべながら、私に近付いてくる。
(や、やめて、今なにかされたら、私!)
「知華さん。ゴミが付いてるわ。デッサンの邪魔だから取ってあげるね」
しかし、私の思いは空しく、姫慈の手が伸びる。
股間を押さえる私の手を掴み、人差し指を垂直に立てた右手を、私の股の下に持ってきた。
「や、やめて……」
「んふ。い・や・よ」
呟き、姫慈が垂直に立てた人差し指を私の膣に突き刺した。
「んっひゃあああ!」
「あら、ごめんなさい。間違って入ってしまったわ」
指を根元まで突き刺し、すぐにそれを抜く。
「ひうぅぅぅ!」
「本当にごめんなさいね。どうしようかしら、もしかしたら膣の中が傷ついているかも……そうだ! 私の薬を塗ってあげるわね」
言いながら、姫慈はポケットから出したビンに指を突っ込む。
「ぃや、やめてぇ」
「はい。これで安心よ」
謎の薬、恐らく媚薬が付いた人差し指が、再び私の膣に突き刺された。
「ぁああああ!」
姫慈の人差し指は周囲の膣壁をなぞるように動くと、すぴゅ、と膣から抜き、私のクリトリスを弾いた。
「……!」
私は咄嗟に口を押さえた。大きな胸が揺れ、男子の歓声があがる。
媚薬の効果がもう出たのか、体の奥が燃えるように熱い。
「あらダメよ知華さん。ちゃんと大事な所は押さえないと。はい。これでオッケ。じゃ、あと十分程、頑張ってね」
私の両手を取り、胸とあそこの前まで持ってくると、姫慈は席に戻っていった。
震える手があそこと乳首を押さえる。
「ん!……っむ、無理ぃ」
次の瞬間、私は指を動かしてしまった。
乳首を抓り、クリトリスを掌で転がしながら、人差し指と薬指を膣に入れ、中を弄くる。
「んひゃ! ああああぁぁ!」
一度動き出した指はもう止まらない。
狂ったように、壊れたように指が動く。腰が痙攣し、体が反り返る。
「無理ぃ! 無理いいぃぃ!」
恥ずかしいのに、嫌なのに、指が止まらない。
体の疼きに答えて、勃起した乳首とクリトリスを転がす。
男子の視線が刺さるように私の秘部に集中する。
「お、あ、だめぇ! 見ないでぇ!」
私は膝から崩れ落ちるようにその場に仰向けに倒れると、家で自慰をするのと同じしせいで、股を開いてあそこに指を入れてかき回す。
「あーらあら。知華さんったら」
姫慈が歩み寄ってくる。耳元に顔を近づけて囁いてきた。
「まさか本当にクラスメイトの見ている前で『オナニー』しちゃうなんて……。変態さんなんだから」
「違うの……、違うのぉ!」
「んふふ。しょうがないんだから。このままじゃ、昼休みまでオナニーしてそうだから、特別に手伝ってあげるわ。如士月!」
「は〜い」
姫慈の声に反応して、如士月が待ってましたと言わんばかりに歩み寄ってきた。
「やぁ……やめてぇ……」
「そんな事言いながら、あなたの手は全く止まっていないじゃないの。一心不乱にオマンコを弄っちゃって。さ。如士月。やってあげなさい。クラスの皆も見てあげてね! 知華さんはエッチな事が大好きな変態さんなんだから、見てあげると喜ぶわよ!」
「にゅふふ〜ん。さ、知華ちゃ〜ん。気持ちいい事しましょ〜ね〜」
「いやぁぁああぁぁ! 許してぇ! 見ないでぇぇぇぇ!」
如士月の手が伸びてくる。
それでも、私の手は止まらない。

その後。チャイムが鳴るまでの十分間。私はクラスメイトの見守る中、獣のように激しいオナニーをして、チャイムが鳴ったと同時に気を失ったのだった。


……続く