第1話


 私は何てことをしてしまったんだろう。気づいたら万引きをしていた。大学受験のストレスが自分でも気づかないうちに溜まっていたのだ。それを店員に見つかってしまった。最悪なことに彼女は私のクラスメイトだったのだ。私は親や学校には連絡しないで欲しいと泣いて頼んだ。そこで彼女が出してきた条件は・・・校内ストリップだった。

 私の学校では体育の着替えは旧音楽室で男女一緒に着替えることになっていた。自分の教室で着替えるより、広い部屋で一斉に着替える方が早いからだ。それに校庭にも近い。

 旧音楽室の真ん中にカーテンを引いて着替える。もちろん相手側が見えることはない。だけどいつのころからか奇妙なショーをするようになった。私を捕まえた女子はクラスのリーダー格だ。彼女を中心にストリップするようになった。ちらっとぶらを見せるだけだったり、下着姿までさらす子もいる。彼女にいたってはブラを外し胸を見せてしまっている。

 旧音楽室は校舎の端っこだし、防音設備もしっかりしているので多少騒いでも周りにはばれないのだ。最も生徒間のやりとりでこのショーの噂は広がり、今はいろんなクラスで行われているらしい。

 何故女子がこんなショーをやるかというと、男子からお金が入るからだ。女子がショーをやる前には自己紹介と金額をいうのだ。例えば、
 「水野里美、下着姿披露するよ、3000円です。」
 といったふうに紹介し、払ってでも見たいというのであれば男子は教室に残り、見終わった後にお金を払うのだ。見たくない男子は部屋からでていく。オプションとして追加料金を払えばボディタッチを許す子もいる。

 女子達はこのショーの主催者であるリーダー格の彼女に1割しはらわなくてはならない。それでもちょっとした小遣い稼ぎとして参加する子は少なくない。男子達にも大人気だ。

 それに私が参加しなくてはならない。彼女は私に半分お金をくれるといっていた。それでもこんなショーに参加したくない。好きな男の子もいるのに。どこまでやるとは言われてないけど多分裸にされてしまう。どうしよう・・・護君。私は好きな男の子の事を考えながら眠りについた。


 俺の名前は神田護。中肉中背で顔も普通で成績も中の下。どこにでもいる普通の学生だ。唯一の特技はマンガを描くのが得意だということ。実はある有名な賞で佳作に選ばれたこともある。オタクっぽいので誰にも打ち明けたことのない秘密だ。

 そんな俺にクラスの女子のリーダー格である佐藤恵子からメールが届いた。明日は雨宮彩香がショーに参加するからお金を余分に持って来いというものだった。俺はそのメールを見て嘘だろ、と思ってしまった。雨宮彩香といえば学校でも1,2位を争う美少女だ。全体的に清純さを与える面立ち。整った輪郭に、澄んだ瞳やすっと通った鼻梁が絶妙なバランスで置かれている。そして腰まで届く程の宝石のように輝く長い髪。文句のつけどころのない美少女だ。そこらのアイドルなんてめじゃないだろう。彼女に告白して振られた男子はかなりの数に登る。俺も密かにあこがれているが、告白する勇気もなく陰から見守ることしかできない。

 でも、何で彼女がと思ってしまう。彼女は成績も良くクラスでもトップだ。ただ物静かでお世辞にもクラスに馴染んでいるとはいえない。話を振られれば答えるが、自分から積極的に話に加わろうとする子ではない。

 イジメ。そんな言葉が脳裏に浮かぶ。だけど、今のところそんな様子はクラスで見たことがない。お金に困っているのだろうか。そもそも本当に彼女がショーに参加するのか。俺は財布にお金をありったけ詰め、想像で抑えの利かなくなってしまった自分の息子を慰めてから眠りについた。


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