第1話 旅立ち


2010年、遊園地は不況から撤退を始めていた。バーチャルゲームの進出に伴い、レジャー業界も大きな 転機を迎えていた。 そんな中、2010年8月1日、ついに時代を変える新たなレジャースポットが誕生した。 「The Battle Island 〜バトルアイランド〜」である。 従来のアトラクション施設は体感型の乗り物や見る施設が中心であったが、さらに刺激を求める若者と、 テレビゲームの 普及が生み出した究極のゲーム型水上遊園地である。 バーチャルで作り出された怪物や魔物がリアルに動き、自分に襲い掛かってくる。 これを自ら攻撃して倒して進む、まさに体感リアルアクションゲームである。 疲労だけでなく、敵からの攻撃による痛みが伝わり、命には関わらないが、戦闘不能になるまで戦い 続けることができる。 このプレオープンイベントとして、全国から募集した女子高生がチャレンジすることとなった。 オープン前月の7月1日、部外秘として試行が行われた。 1日朝7:00、全国から女子高生が200名集まってくる。 そして、スタッフから説明が始まる。 「それでは、ルールの説明をする前に、皆さんには着替えをしていただきます。」 この施設は撤退した巨大プール「東京サマーマリンランド」を改造して作ったものである為、プールが ベースとなった 施設である。つまり、通常営業では、水着で楽しむ施設なのである。 その時に、冒険者になりきる為、入場者にはRPGさながらの水着ベースの服装に着替えてもらう事になる。 ここで彼女達に配布されたものは、すべて女冒険者用のものであったが、プレオープン仕様の特別製であった。 女戦士、魔法使い、エスパーなど、様々なものであったが、どれも水着ベースの為露出度の高いものであった。 そして、忘れてはならないものといえば武器である。 この武器もバーチャル化しており、戦士はレーザービームによる剣、魔法使いは魔法のビームを飛ばせる杖、 そしてエスパーには手から特殊な波動が発生するグローブが手渡された。 これらはすべて攻撃力、連射などの特徴をもっており、有利不利がでてくるのである。 女の子達は、手渡された服装を更衣室で着替え、スタッフの下へまた戻ってきた。 本格的は施設である為、服装もリアルであり、映画顔負けの冒険者たちが勢ぞろいした。 「では、ルールを説明します。みなさんには冒険者になってもらい、この施設にある関門を潜り抜けて  いただきます。」 中はドーム状になっており、照明や特殊効果がセットされている。そして、中央には不気味な城が佇んでいる。 「この施設の中央には、ボスの魔女エキドナが住んでいます。この魔女を倒し平和を取り戻せばクリアです。 そして、この施設全体が巨大なプールとなっています。」 下にはドライアイスで不気味に浮かび上がった、血の池をイメージしたプールが広がっている。 「みなさんは冒険者で、武器を手にしています。途中には魔物やトラップが仕掛けられていますので、それを  倒したり避けたりしながら進んでいきます。」 では、魔物から攻撃を受けるとどうなるのか? 「魔物はもちろん作り物ですが、最先端の技術で作り出したモンスターたちは実際に攻撃を仕掛け、みなさんを  苦しめます。攻撃を受けると皆さんの体力は減ってしまいますが、これもリアルに皆さんの体に伝わります。  そして、その体力もモニターを通してステージ上にゲージで表示されます。ゼロになった瞬間、皆さんは  もはや立つこともできず、そこで力尽きます。つまり、ここで戦死してしまい冒険は終わり、ゲームオーバー  となってしまいます。」 「それから、下には血の池が広がっていますが、この水は今回特別に水よりも比重の低い液体となっていますので、  浮く事ができません。プールへ転落してしまった時点で、即体力は0になり、ゲームオーバーです。」 女子高生達からは、ざわめきが起こる。 「もちろん、体力が0になったとはいえ、一時的なものですから、健康に害はありません。しかし、戦いに敗れて  しまった女の子達は、あそこに見える墓地エリアへと運ばれ、晒されてしまいます。」 更に女の子達からはざわめきがおこってきた。 つまり、このゲームは最後までたどり着かないと、恥辱を受けてしまうというゲームなのであった。 「最後の魔女を倒した女の子には、賞金200万円が与えられます。また、途中にはアイテムや武器が落ちており、  これを使って有利に進めていく事ができます。そして敵を倒すごとにレベルアップしていき、受けるダメージ  や与えるダメージが強力になっていきます。でも、血の海に落ちた時点でアウトですが。」 そしてスタッフは、女戦士を案内し、場内へと連れて行った。 ステージ上部には、女の子たちの写真と体力が大きく200人分映し出された。 「それでは、一斉にスタートです!!」 鳴り響くラッパの音 女の子達は、武器を握り締め、クリアを目指して立ち上がったのだった。 (続)


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