性獣の家 第2回

沼 隆(ヌマ・タカシ)

登場人物

寺前 悠斗 電気学校生 美利のいとこ

塩津 美利 美容師
塩津由紀江 美利の母 悠斗の叔母

丸岡  稔 自動車修理工
丸岡  晋 稔の父 農業
丸岡 絹子 稔の母


(1) 美利の結婚

悠斗(ゆうと)が電気学校から帰ると、店には、誰もいなかった。
店の奥の部屋に、叔母の由紀江(ゆきえ)が来ていた。
悠斗の両親と話をしていた。
悠斗は、
「いらっしゃい」
と、挨拶をする。
由紀江は、悠斗を振り返ると、
「お帰りなさい」
と答えて、
「美利(みり)の結婚が、決まったよ」
と、うれしそうに言った。
「そう」
悠斗の返事は、素っ気ない。
「美利と稔さん、うちの2階に住むことにしたんだよ」
「へぇ」
このことは、稔から聞いて、知っている。
「それで、ちょっと、部屋の模様替えとか、光男さんに相談に来たの」

悠斗の父、光男は電器屋で、工務店ではないのだが、
簡単なことならやってくれるし、
光男が手に負えないことは、業者に頼んでもらうつもりだ。
「稔さん、結婚を機会に自宅を出たいけど、
 自分の工場を持ちたいって言うんだよ、
 で、資金が貯まるまで、いさせてくれって言うんだよ」
稔の母が、口をはさんだ。
「姉さん、それで、いいの?」
由紀江は、稔の母、良江の姉である。
「姉さん、まだ41だよ、再婚とか、考えないの?」
「そうだよ、由紀江さん」
光男が、口をはさむ。
「いいひと、いないの?」
女盛りの由紀江が、娘夫婦と同居するのは、気になった。
男ができたら、どうするの?
と、訊こうとして、悠斗がいることに気づく。
「悠斗、おまえ、店番してなさい」
光男が言う。
店番など、する必要は、ない。
客は、滅多に来ないし、品物が盗まれることも、まず、ない。
けれど、悠斗は、父親の気持ちを察して、店に出た。
「由紀江さん、あんた、男ができたら、どうするんだよ?」
露骨な質問だった。
父が、悠斗の耳に入らないように、声を潜めてたずねた。
悠斗には、しっかり聞こえている。
「好きな人、いないの?」
良江が尋ねる。

悠斗は、知っている。
由紀江に、好きな男がいることを。
部活の帰りに、黒井川の土手を自転車で走っていた。
土手のそばに、《パープル・ラビア》というラブホテルがある。
ご休憩……お泊まり……
ノータイムサービス……
コスプレ、無料貸し出し……
ホテルの駐車場から車が出てきて、
助手席に、由紀江が座っていた。
見知らぬ男が運転していた。

ヘアサロン《コックス》の2階にある美利の部屋、
これから新婚夫婦が暮らすことになる部屋に、
新しいエアコンと、新しいテレビを届ける。
悠斗は、光男を手伝っている。
ちょっとした作業なら、光男の手伝いができる。
エアコンの取り付けが終わり、
テレビを2階に担ぎ上げると、
光男は後を悠斗に任せて、次の仕事に行ってしまう。
いったん、店に戻った悠斗は、
用意しておいた装置を収めたバッグをかかえると、
美利の部屋に戻った。
テレビの設定をし、ビデオの設定をし、
それから、装置をセットした。
天井裏は、押し入れの天井板から、簡単に上れた。
いったん店に戻った悠斗は自分の部屋に上がっていき、
美利の部屋にセットした盗聴装置が
正しく動作することを確かめた。
美利の部屋に戻り、後片付けが終わる頃、
由紀江が上がってきて、
「お疲れ様、ありがとう」
といって、小遣いをくれた。


(2) 初夜

ヘアサロン《コックス》の前に、近所の人が集まってきた。
**市の神社で結婚式を終えた新婚さんが、戻ってくるのだ。
ブライダルハウス《キューティー・プッシー》のマイクロバスが停車した。
新郎、新婦が降りて、そのあとに新郎の両親、新婦の母が降りた。
集まってきた近所の人たちは、新婦の花嫁姿が見たかったのだが、
普通の洋服姿なのにがっかりして、不満を言ったりした。
新郎、稔の父親が、酔って真っ赤になった顔をほころばせながら、
ろれつが回らない挨拶をした。
マイクロバスが帰って行き、近所のひとが去っていき、
5人は、ヘアサロン《コックス》の中に入っていく。
「どうぞ、あがってください」
由紀江にうながされて、2階に上がった。
由紀江は、留め袖を着替えるまもなく、客の接待に追われた。
今夜、稔の両親は、ここに泊まっていく。
息子の初夜を見届けるのが、谷影集落のしきたりだ、と言うのだ。
しきたり、と言われては、由紀江は断れなかった。
「本来なら、ワシの家にあんたを泊めるのが筋なんじゃけどね」
と、晋が言うのだった。
「稔が、美利さんとあんたの店の2階に住む、言うもんじゃから」
一晩限りのことだと、ガマンすることにしたのだ。

《松葉寿司》から仕出し料理が届いた。
晋は、酒を飲み続けた。

「由紀江さん、すまんねぇ」
と、絹子が言った。
すまないねぇ、と言う言葉が口先だけなのは、
声にはっきり出ていた。
「絹子さんも、どうぞ着替えてください」

新婚の夜を、新郎の両親が見届けるのが、
谷影の集落のしきたりだと聞いて、
しきたりだと言われたら、由紀江は仕方がなかった。
由紀江の部屋に、新郎の両親の寝床を敷いて、
自分の寝床は、リビングの板張りに敷くつもりでいた。
「由紀江さん、ワシらをお客扱いせんでよか」
と晋が言った。
「あんたの布団も、ここに敷きなさい」
「え?」
「今夜は、3人一緒に寝たら、よか」
「でも」
「あんた、板張りに寝るつもりね?」
と、絹子がたずねた。
「はい」
と、由紀江が答えると、
「痛うて、眠れるもんね」
と、絹子が言い、
「3人じゃ、狭苦しいじゃろうけど、
 おれたちは、がまんするから」
と、晋が言う。
「うちみたいな、大きな家じゃったら、
 窮屈な思いは、せんのじゃろうけど」
と、絹子が言う。
その晋は、由紀江の視線など気にもとめないという風に、
さっさとモーニングを脱ぎ捨てて、ふんどし一つになっている。
由紀江が用意しておいた寝間着を着ていく。
絹子が脱いだ着物を、由紀江は片付けていく。
「さすが、美容師さんじゃね、手際がいいね」
「由紀江さん、あんたも、早う、着替えんさい」
「はい」
由紀江は、晋の視線から身体を隠すようにしながら、
留め袖を脱いでいき、
器用に寝間着に着替えた。

「あっちのふたり、そろそろ、始める頃じゃのぉ」
と、晋が平然というのに、由紀江は驚いた。
「美利さん、風呂から上がってきたようじゃし」
と、絹子が答えた。
絹子も、新婚初夜の成り行きに、耳をそばだてている様子だった。
「わしらも、寝るか」
「由紀江さん、灯りを消してちょうだい」

稔は、パジャマが嫌いだ。
寝間着姿で、美利が風呂から上がってくるのを待っている。
天井灯は消してある。
枕元の電気スタンドのほのかな灯りが、
初夜の寝室をぼんやりと照らしている。
リビングと隔てるふすまがするすると開き、
湯上がりの香りがする美利が、入ってきた。
「えらく待たせるな」
「ごめんなさい」
「来いよ」
美利を抱き寄せる。
手早く寝間着を脱がせ、パンティ1枚にする。
スタンドの明かりに浮かび上がった美利の表情を見つめる。
「うんと、かわいがってやるからな」
美利が、ゴクンとつばを飲んだ。
「ちゃんと、やってあるんだろうな」
「え?」
「ここだよ」
稔の指が、パンティ越しに、美利の性器を強く押した。
美利は、こくんとうなずいた。
「そか、よしよし」
そう言って、稔はニタリとした。
ずちょっ
稔の舌が、美利の唇を押し開けてもぐり込んできて、
美利の舌をネチョッ、ネチョッ、と舐めまわした。
節くれだった指が、美利の乳房をつかむ。
くにゅぅ
「んっ」
「ふっ、キモチ、いいか」
くにゅぅ
「んっ」
「そぉか、キモチ、いいか、もっと、キモチよく、してやる」
稔は、乳房にしゃぶりつき、
乳首を吸い、乳房を吸い上げた。
稔は、パンティの中に指をもぐり込ませて、淫裂を撫でた。
くちゅ
「ふふっ、もう、濡れてやがる」
「ああっ、いやぁ」
「ふふ、いいケツ、してる」
「ああん」
「ぷりぷり、よくしまってるぜ」
「んっ」
稔は、美利の体中を撫でまわした。

「いれるぞ」
美利は、目を閉じて、じっとしている。
稔がパンティに指をかけ、引き下ろそうとすると、美利は腰を浮かせた。
稔は、美利の両足をM字の形に広げさせた。
「いやぁ」
稔は、Mの字の中心に向かって顔を近づけていく。
「暗いな」
そう言うと、稔は立ち上がって、天井灯を付けた。
「いやっ!」
美利は、明るさに目がくらんだこともあって、両手で顔を覆った。
「見ないで」
「確かめなくちゃな」
「いやぁ」
稔は、指で淫裂を広げ、開口部を除いた。
そこをじっと見つめたあと、顔を近づけて、べろりとなめた。
「入れるぞ」
上体を起こしながら、稔は寝間着を脱ぎ捨てる。
サオは、すっかり膨れあがって、
亀頭がてらてらと光っているのだった。
「見ろ!」
美利が、顔から両手を外した。
「こいつを、しっかり、見ろ!」
稔が突きだしたサオに、美利は目を見開いた。
稔の自慢のサオ。
節くれだち、ビクンビクンと脈打つサオ。
「入れるぞ、美利!」
美利は、目を閉じた。
稔が、先端をあてがう。
美利の身体がこわばった。
「楽にしろ、美利」
美利は、ウン、とうなずいた。
「せまいな」
「んんっ」
「痛いか」
美利は、うんうん、と、うなずく。
「ちょっとの辛抱だ、美利」
「うん」
「いくぞ」
美利は、ウン、とうなずいた。
そのときだった。
稔は、両腕で、がっちりと美利を抱きしめながら、
ぐぐぐぐぐぐぐぐぐっ
と埋め込んでいった。
「あはああああああああっ!」
美利は、悲鳴を上げていた。
悲鳴を上げながら、腰を退いて、激痛から逃れようとする。
稔の腕が、美利を逃さなかった。
「あああああああああああっ!」
耐えがたい痛みに、美利の悲鳴が響いた。
向かいの部屋にいる3人のことなど、吹っ飛んでしまっていた。
根もとまで埋め込むと、稔はうれしそうにほくそ笑んだ。
稔の動きが止まると、美利は大きく息を吸った。
激痛のあいだ、呼吸するのを忘れていたかのようだった。
はぁはぁ、とあらい息をする美利は、涙ぐんでいた。
稔は、じっとしていた。
無理矢理こじ開けた美利の肉穴が、サオを締め上げてくる。
ゆっくりと、腰を前後し始める。
「ああっ、ああっ、ああっ、ああっ……」
稔が、腰を前後させるたびに、美利はうめく。
肉食獣が、きゃしゃな草食動物をいたぶるような性交。
「ひぃっ、ひぃっ、ひぃっ……」
稔の腕の中で、美利は悲鳴を上げている。
引き裂かれる激痛は去っても、痛みは続いていた。
美利は、眉間にしわを寄せて、痛みに耐えている。
痛みに耐えようとするのか、
稔にしっかりとしがみついてくるのだった。
「おぉら、おぉら、おぉら」
稔は、リズムを取りながら、かけ声をかけた。
「おぉら、おぉら、おぉら……いくぞ、美利っ」
稔の高まりを感じたのか、美利が一瞬身体を硬くした。
「うぐぅ」
稔は、激しく腰を突きだしながら、射精した。

稔は、サオを抜いた。
サオには、血が付いていた。
稔は、満足そうに確かめた。
「美利、後始末、しろ」
「えっ?」
見上げる美利の口もとに、稔はサオを近づける。
「しゃぶれ」
美利は、突きだされたサオが、
血に染まっているのにたじろいだ。
「手術、うまくいったな、美利」
そう、結婚式の10日前に、処女膜再生手術を受けた。
谷影の集落では、嫁は処女をもらうというしきたりがある、
だから、手術してこい、と言われたのだ。
結婚式が、目の前に迫っていた。
しきたりと言われれば、そうするしかなかった。
ほとんどしぼんでいない稔の亀頭を、美利はくわえた。
精液と、血の味がした。
「もっと、ちゃんと、舐めろ」

始末を終えた美利に、稔はパンティをはかせる。
真新しいシーツの腰のあたりに、
引き裂かれた淫裂からしたたった血液が、
真っ赤な染みを作っている。
稔は、美利を抱き寄せると、
美利の股間に指をもぐり込ませていき、
パンティを淫裂にこすりつけた。

新婚初夜の寝室のとなりの部屋は、
灯りを消してあるが、
窓からさし込む月明かりで青白い。
美利の母、由紀江は、
新婚夫婦の初夜のイトナミを、
身体を硬くして聞いていた。
美利の悲鳴を、
なんてひどいことを、
と、稔に対する怒りで、聞いていた。
薄明かりの中で、稔の両親の会話に驚き、あきれてもいた。
晋と絹子は、息を殺して聞き耳を立てていたが、
美利が激しい悲鳴を上げたとき、
晋は「やった!」と小声で言い、
絹子がうれしそうに、クスクス笑ったのだった。
やがて、カタカタと振動する音が伝わってきて、
それが次第に早く、強くなっていって、
「うぐぅ」
という、稔の大きなうめき声で、振動がおさまった。
「由紀江さん、美利さん、幸せだよ」
と、絹子が由紀江に言う。
「ああ、そうだな、稔と結婚できたんだからな」
稔が言い足した。
薄明かりの中、すぐそこから聞こえてきた声に、
由紀江は、ぞっとした。
「終わったかな?」
「無事に、終わったみたいですね」
「もう一つ、ふたつ、してやらんと、
 美利がかわいそうだよ」
いつの間にか、舅の晋は、美利を呼び捨てにしているのだった。
「そうですね、一つじゃ、かわいそうですね」
「おまえも、一つじゃ、足りんじゃろ」
「もぉ、由紀江さんが、聞いてますよ」
そのときだった。
向かいの部屋のふすまが開いて、
ドスドスという足音が近づいてきて、
こちらの部屋のふすまががらりと開いた。
リビングの灯りの中に、
稔が仁王立ちになっていた。
「おやし、おふくろ、ほら、これ」
と、稔が何かを投げ込んだ。
「由紀江さん、明かりを点けてくれ」
由紀江は、寝床から起き上がり、
部屋の明かりを点けた。
稔が投げ込んだものは、
真っ白いシーツだった。
絹子が、それをたぐり寄せ、そして、
「しるし、ちゃんと、ありますよ、おとうさん」
と、うれしそうに言った。
絹子が晋に差し出したシーツのその部分は、
美利の〈処女〉のしるしが
べっとりと付いていた。
もう一つ、白い小さなものがあった。
絹子がたぐり寄せたそれは、
美利の純白のパンティ。
絹子はすぐに股間が血に染まっていることを確かめた。
「稔、これ、あした、氏神様に奉納しておくよ」
と絹子がうれしそうに言ったとき、
由紀江はあまりのことに身震いしたのだった。
缶ビールを手に、こちらをのぞき込んだ稔の姿に、
由紀江は、慌てて目をそらせた。
稔は全裸で、股間のものが膨れあがり、
こちらに向かって猛々しく突きだしている。
「稔、もう一つ、ふたつ、
 美利をかわいがってやらんとな」
と、晋が言うと、
「ああ、そうする、おやじ」
と言って、稔は新婚夫婦の寝室に戻っていった。

「由紀江さん、驚かせてしもうたな、
 谷影集落のしきたりなんじゃ、ははは」
「子孫繁栄を、願ってのことじゃから、ね、由紀江さん」
由紀江は、灯りを消して布団に入った。
向こうの部屋で、ふたつ目のイトナミが始まった。

(3) 盗み聞き

悠斗は、夕食を済ませ、風呂を浴びたあと、
2階の自分の部屋に閉じこもっている。
美利の部屋の天井灯が消えた。
枕元の小さなランプだけが灯されている。
新婚夫婦の初夜の寝室。
これから、なにが始まるのか。
悠斗も、部屋の灯りを消した。
レシーバや、録音機のインジケーターが、
蛍火のように小さくほのかに光っている。
悠斗が仕掛けたマイクロフォンが、
美利の寝室の些細な音もしっかりとらえる。
ふすまが開く音。
「えらく待たせるな」
稔の声。
「ごめんなさい」
美利が、詫びている。
「来いよ」
稔が美利を呼んでいる。
稔の愛撫が始まり、そして、しばらくして、
美利の悲鳴。
湯とは、身体を硬くした。
……な、なにが、あった?

新婚夫婦の初夜の性行為は、
それから2時間続いた。
悠斗は、聞き耳を立てた。
イトナミは、悠斗のパソコンに
音声ファイルとして記録された。
悠斗は、4度射精した。
精液をぬぐったティッシュが、くずかごにたまり、
青臭いニオイを放っている。
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