隣人の妻 U 第2回

作 沼隆(ヌマ・タカシ)

登場人物
  岡下 美咲
  岡下 宗男  美咲の夫
  四方 郁恵  美咲の友人
  郷田 軍治  岡下夫婦の隣人
  郷田 琴音  軍治の妻
  沼田 ルミ  美咲の隣人


(1) 四方郁恵

〈ふふふ、バカねぇ〉
と、郁恵(いくえ)が笑う。
〈琴音って子、人妻なんでしょ?〉
〈そうだよ〉
〈だったら、エロくったって、かまわないじゃない〉
〈そうかもしんない……でも〉
〈美咲、ヤキモチ焼いてるんじゃない?〉
〈やきもち?〉
〈そうだよ、きっと、そうだよ〉
〈そんなことないよぉ!〉
と、美咲は否定した。
ヤキモチなんて、何で、あんな小娘に焼くんだよぉ、と思っている。
〈どうだか?〉
と、郁恵が疑わしそうに言った。
〈なによぉ!〉
〈……美咲、おんな捨ててるんだよ〉
と、郁恵が言った。
〈えええっ!〉
〈不倫ドラマ見て、オナってるんじゃないでしょうね〉
〈まさか……〉
〈ほらね、オナニーもしてないんだよ〉
〈……〉
〈すてきな男に抱かれたぁい、とか、ないんだよね〉
〈……〉
〈ね、エッチしたい男、いないの?〉
〈そんなぁ……〉
〈勝負下着着て、デートする、なんてこと、
 美咲には、ありえないんだよね〉
〈もう、バカにしてぇ……〉
〈図星、ってとこだよね〉
〈郁恵には、そんな人、いるって言うの?〉
〈そんなの、当たり前じゃん!〉
〈えええっ!〉
〈なに、驚いてるの、あんたって、ホントに……〉
〈バカ、って、言わないでっ!〉
〈アハハハハハ、ゴメン、ゴメン、
 美咲、あたし、これからデートなの〉
〈ウソ!〉
〈フフ、これから、ホテルで、エッチするの〉
〈……〉
〈ごめんね、美咲〉

(2) 岡下宗男

宗男は、美咲が買い物に出かけるのを、
今か、今かと、
いらいらしながら待っていた。
美咲が買い物に出かけた。
郷田の家のカーポートに、
郷田の車はない。
宗男(むねお)は、郷田の家のチャイムを押した。
琴音が出てきた。
宗男は、ゴクンとつばを飲み込み、
琴音のカラダをじろじろ見てしまう。
宗男の期待に応えるように、
大胆で過激なすけすけの服装で現れた。
乳首と、陰毛も、はっきりと見える。
「すっげぇな!」
宗男の言葉に、琴音は表情を変えない。
「なに? おじさん」
「ちょっと、教えて欲しいことがあって」
「いいよ、なに?」
「あの……琴音ちゃんが着ている、そんな下着なんだけど」
「うん」
「うちの……かみさんに買ってやろうと思ってさ」
「ふうん、そうなんだ」
「どんな店で、買ってるのか、教えてもらおうと思って」
「通販だよ」
「あ、そっか……カタログとか、ある?」
宗男が尋ねると、
「……上がって、おじさん、見せてあげる」
琴音は宗男をリビングに招き入れた。
琴音は、宗男に下着の通販サイトを見せた。
宗男は、バリエーションが多いのに驚いた。
「すっげぇ……」
それから、恥ずかしげもなく言った。
琴音が年若いことに乗じたのだ。
「琴音ちゃんの下着、見せてもらえないかな?」
「いいよ、見せてあげる」
あっさり言われて、宗男は拍子抜けした。
「こっちよ」
琴音がドアを開けると、
ダブルベットがあった。
(ここで、セックスしてるのか……)
郷田と琴音のファックシーンを想像してしまう。
このまま、琴音を押し倒して……と、想像する。
(いやん、いやん、おじさん、やめてぇ!)
琴音があらがう様子を想像して
肉棒が充血してくる。

「こっちよ」
琴音は、下着が入った引き出しを開いた。
「おおっ!」
宗男は目を見張る。
AVでしか見たことがない過激な下着が、
きれいに並んでいる。
「すっげぇ」
琴音を見た。
琴音が、この嫌らしい下着姿を想像した。
琴音の乳房が、へそが、陰毛が、透けて見える。
ゴクン
宗男はつばを飲み込む。
「もう、いいでしょ?」
と、琴音が引き出しを閉める。
「あ、ああ……」
宗男は、名残惜しそうに下着のコレクションを一瞥する。

琴音が、先に立って部屋を出る。
廊下を進む琴音を、宗男は追う。
すけすけパンティのせいで、
尻の割れ目がはっきり見える。
思わず、尻をなでてしまう。
「やめてっ!」
琴音が叫んだ。
「そ、そんな大きな声、出すなよ」
「どすけべ!」
「な、なんだと!」
「ゴウちゃんに、言いつけるよ!」
(ゴウちゃん? 郷田のことか……)
強面の郷田を思い出して、うろたえる。
「すまん、すまん、琴音ちゃん……
 琴音ちゃん、あんまりかわいいから……
 つい、へへへ……」

(3) 沼田ルミ

美咲は、車を走らせながら、
郁恵が言った言葉を思い出している。
(郁恵、今日も、男とホテルで………)
(夫がいるのに……)
「いやらしいっ!」
車の中で、叫んでいた。
そのとき、美咲は、郁恵に嫉妬していることに気づく。
郁恵が、この、真っ昼間に、
男と浮気している……
そう思うと、腹が立ってくるのだった。

ショッピングモールで、カフェに入ろうか迷っていたときだった。
「美咲さん」
「あ、ルミさん」
沼田ルミは、美咲の家の向かい、
郷田の家の隣に住んでいる。
「買い物?」
と、ルミが訊いた。
「なんとなく、よ」
「どうしたの、元気ないなぇ」
「ふぅ……」
美咲は、ため息を漏らす。
「なんだ、なんだ、どうしたって言うの」
「なんか、満たされない、っていうか……」
美咲は、つい、愚痴をこぼしてしまう。
「毎日、変わり映えしないし」
「ふふ」
「なに? ふふ、って」
「どきどきすること、ないんでしょ」
美咲は、ルミに痛いところを突かれてしまう。
郁恵に、今度は、ルミに……
(もう、いやっ!)
その時だった。
「おっ、これはこれは、お隣さんがふたり……」
郷田が近づいてきた。
「もしかして、ふたりで、待ち合わせ?」
美咲が尋ねると、
「そうだよ、これから、カラオケに行こう、って」
ルミが答える。
(このふたりも……不倫!)
美咲は、またもや、嫉妬に駆られてしまう。
「じゃあ、私、ここでで失礼するわ」
と美咲が立ち去ろうとするのを、
「美咲さん、待ちんさい」
と郷田が引き留めた。
「あんたも、一緒にどうね?」
「そうよ、美咲さん、一緒においでよ」
「でも」
「ふたりより、3人の方が、楽しいばい」
と郷田が言った。

美咲は、ストレス解消のショッピングのかわりに、
ルミと、郷田と3人でカラオケに行き、
楽しそうに歌う郷田とルミに嫉妬しながら、
ソフトドリンクをヤケ飲みし、歌いまくった。

(4) 夜のイトナミ

子供が寝静まると、
宗男は美咲を呼んで、
セクシーランジェリー専門サイトを見せて、
「美咲、おまえ、こんな下着、着てみろよ」
と言った。
「ばかっ! いやらしっ!」
「なんだよ、つまんねぇなぁ」
「お向かいの、琴音とやれば?」
「なに言ってるんだよ、おまえこそバカだよ」
「ばか、ばか、ばかっ!」
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