肉欲の罠(修正版) 19
沼 隆 おことわり この作品は、フィクションです。 登場する人名、地名、団体名は、 実在するものと一切関係がありません。 また、旧作『淫獣たちの宴』を改作したものです。 登場人物 瀬口美恵子 ビューティサロン〈グランス〉の女主人 残間 章吾 〈残間金融〉社長 * * * 和久井優香 〈犀星学園〉教諭 香西 剛 〈犀星学園〉教諭 (1) 〈ツバメ返し〉 瀬口美恵子とふたりの娘が、相模栗原の家を出て、 おんぼろアパートに越してきて、 短い間に、いろんなことが起こった。 美恵子は、残間との関係が深まった。 長女の梨奈は、二階堂千佳子先生のところで、バレエのレッスンを続けている。 短大が夏休みになって、千佳子先生のアシスタントをするようになった。 「夜遅くお家に帰るのは、物騒だから、ここに越していらっしゃい」 梨奈は、マンションの一番狭い部屋を与えられた。 「お部屋代は、いただかない代わりに、お掃除やお洗濯、お願いね」 梨奈は、あの、蒸し暑いおんぼろアパートから抜け出せるだけで、大喜びだった。 千佳子は、細かいことにうるさい。 けれど、梨奈は、いやだとは思わなかった。 梨奈と千佳子は、特別な関係になっていた。 夜は、千佳子のベッドで、素っ裸になって絡み合う。 美奈は、ファストフード店で、バイトをしている。 狭苦しく、蒸し暑いおんぼろアパートの部屋にいるより、 お店で働いている時間のほうが、楽しい。 美奈は、接客がむいているのかもしれない。 月曜日、美奈がバイトに出て行く。 美恵子の店、ビューティサロン〈グランス〉は定休日。 今夜は、残間に夕食をごちそうになる。 横浜の〈瀞香苑〉で、中華料理を食べる約束だ。 「〈瀞香苑〉の、ロンフェイシャオスーは、一級品だからね」 と、残間が言う。 〈瀞香苑〉は、中華街の名店だ。 一度行ってみたいと思っていた。 料理の名前は、初めて聞いた。 「どんな料理なの?」 と訊くと、 「ははは、店での、お楽しみ」 と、電話の向こうで、残間が笑った。 賑やかな通りの真ん中で、章吾は美恵子を抱きしめて、 舌をからませてきた。 「うふ、こんなところで?」 「ああ、見せつけてやるさ」 「うふ」 下腹部を押しつけられて、 美恵子は章吾が勃起しているのを知った。 「チンポが、美恵子、欲しいって、だだをこねてるよ」 「そお?」 「ああ、感じるだろ?」 「ウン、感じる」 章吾が、腰を振って、肉棒をこすりつけてきた。 「こんなところで、イケナイ子ね」 「ああ、こいつ、正直者でね」 おいしい中華料理を食べて、 幸せな気分になって、 章吾も、美恵子も、欲情していた。 ホテルのベッドで、抱き合って、 舌をからませる。 中華料理の、凝ったソースの香りが、ふたりの鼻腔を満たす。 「おいしかった」 「ああ、美恵子が悦んでくれて、うれしいよ」 「おお」 「どうしたの?」 「美恵子の、おマンコ、濡れぬれだよ」 「もぉ」 ベッドインが待ちきれなかったふたりは、すぐに一つになった。 肉棒は、ずっと立ちっぱなし状態、 肉穴も、入れて欲しくて、ずっとよだれをしたたらせていたのだ。 「ああ、章吾、ごめんなさい、おなかに、乗らないで」 「ん? どうした?」 「食べたばっかりだから」 「はは、そうか、そうか」 美恵子は、腹を圧迫されて、苦しくなったのだ。 章吾は、肉棒を抜いた。 「いやん、やめなくて、いいのよ」 章吾の腕をつかみながら、美恵子がねだる。 「じゃあ、こうするか」 章吾は、美恵子の左足を抱き上げると、 右肩に背負うようにして、美恵子の両足に割り込んでいく。 陰毛に縁取りされた淫裂、 紫がかった褐色の大陰唇が、ぱっくりと口を広げる。 粘膜は、充血して朱色に染まり、 ヒダを淫水が濡らしている。 肉穴を取り囲むように、小さなビラビラ重なっている。 肉穴は、 ぱふっ、ぱふっ、ぱふっ と、呼吸する生き物の口のように、開いては閉じている。 閉じるとき、中から蜜が吐きだされてくる。 肉棒を待ちこがれて、よだれを垂らしているみたいだ。 美恵子は、章吾の肉棒を、おねだりするように、見つめている。 章吾は、美恵子の左足を、ぐっと起こして、 両足を Lの字のように開かせる。 章吾は、ゆっくりと腰を沈めながら、 そのLの字の折れ曲がった場所に開いている肉穴に、 肉棒を埋め込んでいく。 ずちゅっ 「あうっ」 美恵子は、上体を反らせて、うめいた。 そして、尻を、わなわなさせた。 「そんなに、いいか?」 「あう」 「そうか」 この体位《ツバメ返し》だと、ずっと奥まではいる。 そして、美恵子が腰をそらせているだけ、膣がゆがみ、 肉棒と肉穴の摩擦が大きくなって、 美恵子にも、章吾にも、大きな快感をもたらすのだ。 「いいっ……すっごくっ……ううっ」 章吾は、肉棒をゆっくり出し入れしながら、 美恵子の腕をつかんで、引き寄せた。 穴が、ぎゅうううっ、とゆがんで、 肉棒を締め上げ、 肉穴を突き上げた。 「ぐふっ」 美恵子は、大きくうめいた。 章吾にも、その感触があった。 肉棒に、いつもと違う感触があった。 びゅっ 肉棒と肉穴の狭い隙間から、 液体が噴き出した。 一瞬の出来事だった。 噴き出した液体が、美恵子の股間を、章吾の股間をぐっしょり濡らし、 シーツに大きなシミをつくっていた。 章吾が、もう人こすりすると、 液体が、噴き出した。 「ああああああっ、ああああああっ、いいっ、いいっ、いいっ」 美恵子が、大きく叫んで、 全身を激しくふるわせて、 章吾の肉棒を痛いほど締め上げて、 それから、美恵子の全身から、がっくりと力が抜けていった。 章吾は、射精しないまま、肉棒を抜いた。 股間の液体は、さらさらしていた。 匂いもなかった。 章吾は、美恵子の寄り添うと、 勃起した肉棒を、ゆっくりとしごきながら、 美恵子を見つめる。 絶頂に達して、呆然としているように見えた。 「ふううっ」 美恵子は、大きく息をして、それから、章吾を見た。 「なんだか、変な気分……キモチ、よすぎて……怖いくらい」 「そか」 「どうしたの?」 章吾が、自分で肉棒をなぐさめているのに気がついて、美恵子はたずねた。 「あたし、ひとり、イッたの?」 「すごく、よかったんだろ?」 「うん、初めてだよ、こんないいキモチになったの」 「シオ、吹いたよ」 「え?」 「潮吹き、したんだよ、美恵子」 「しおふきって?」 章吾は、美恵子の指先を、シーツの濡れた箇所に導いた。 「あっ……やだっ、あたし……」 「美恵子、おしっこじゃないよ」 「ほんとに?」 「ああ、潮吹き、したんだよ」 (2) 誘い 美恵子は、バスルームで股間を洗って、 ベッドに戻ってきた。 シーツに、大きなシミができている。 さっき、美恵子の腰が当たっていた場所だ。 「やだ、こんなに……」 「たくさん噴き出したからね」 「わかんなかったよ」 「そうか……おしっこなら、わかったかな?」 「もお」 「あははは」 美恵子は、シーツが濡れた場所をよけて、章吾に寄り添った。 裸身が密着する。 「このあいだのビデオ、評判いいんだよ」 と、章吾が言った。 美恵子も出演したアダルトビデオのことだ。 鮫島雪絵は、〈雪乃〉とクレジットされている。 そして美恵子は、〈真珠〉。 〈真珠〉は、Sの女王。 〈雪乃〉は、M女。 〈真珠〉と〈雪乃〉と、熟女が熟女を責める。 ふたりとも、肉感的なプロポーション。 〈真珠〉は、蝶の形をしたマスクで目元を隠し、 男心をかき立てる。 〈カイカン企画〉は、当初考えていたタイトル、 《モロ出し熟女 チ●ポが欲しいの》を、 《ドキュメントSM 熟女ふたり責め地獄》 に変更した。 本当に〈ドキュメント〉になってしまったのだ。 雪絵のせいで、亜美のせいで、 美奈が辱められ、 美恵子は万田に犯された。 おかえしは、きっちりさせてもらうよ! 美恵子は、怒っていたのだ。 雪絵と亜美に、容赦なく鞭を振るった。 美恵子が振り下ろす鞭で、 雪絵の尻にみみず腫れが走り、 血がにじみ、裂けたのだから。 沢井みあの尻も。 「評判って?」 「DVD売れてるし、レンタルも、出てるし」 「ええっ!」 「美恵子、SM部門で、ベストテンに入ってるんだよ」 美恵子は、うろたえた。 そんなことになるなんて。 「知ってる人が見たら、どうしよう」 「だいじょうぶだよ、そんなこと、心配すること、ないよ」 「だって」 「誰かに言われても、知らないって、通せばいいんだから」 「そうかなあ」 「世間の人間って、気がつかないものだよ」 「……」 「雪絵のやつ、自分から出たいって言ってきてる」 「雪絵に、会った?」 「いいや、〈カイカン企画〉のやつから聞いたんだよ」 章吾は、フーッと、たばこの煙を吹き出した。 「なあ、美恵子、おまえも、出てみないか?」 「ええっ、章吾、変なこと、言わないでよ」 「あの時の美恵子、とってもきれいでさ」 美恵子が、無我夢中でやったSMプレイ、 ていうか、本気でやったのだから、 撮影が終わったとたん、美恵子は、 緊張が解けて泣き出したくらいなのだから。 撮影中、美恵子は、感じていた。 体を締め付けるコスチュームが、キモチよくて、 股間に食い込むパンティが、キモチよくて、 空を切る鞭の音が、尻を打つ音が、 雪絵の悲鳴が、亜美の悲鳴が、キモチよくて、 おマンコ、びしょびしょになった。 スタッフの男たちが、おチンポを堅くしていたのが、 はっきりわかった。 章吾さんも、すごく興奮して…… となりの部屋に、スタッフがいるのに、 章吾さんと激しくエッチしたのだ。 そして、出演料100万円を受け取っていた。 やりたいキモチが、心の隅っこで、ふつふつ燃えている。 (3) 露見 犀星(さいせい)学園。 夏休みに入って、補習授業が終わって、 部活動をする生徒たちの声が聞こえるくらいで、 校舎内は、静かである。 和久井優香教諭は、教頭に呼ばれた。 何の用だろう、と思いながら、 教頭室のドアをノックした。 「和久井です」 「おはいりなさい」 「和久井先生、学校宛てに匿名の投書がありましてね。 本校の女教師が、男子生徒と関係しておる、というんですよ」 テーブルをはさんで榊原教頭と向かい合って座っている。 「見なさい」 教頭はテーブルの上においてある封筒を優香のほうに押しやる。 封筒には、ワープロで打ち出した宛名シールが貼ってあった。 写真が十数枚入っていた。 亮の部屋がある、〈スカイメゾン〉の入り口を写した写真。 優香の写真、亮の写真、ツーショット。 マンションの駐車場にとめてある優香の車。乗り込む優香。 十分な状況証拠といえそうだった。 「ここは、どういう場所ですか、和久井先生」 言い逃れをしても意味がなさそうだった。 「お返事をしていただかないと困ります」 「わたし、鰍沢くんを愛しています」 「おやおや、率直なお返事ですな」 榊原は、苦虫をつぶしたような顔をして見せたが、 冷静沈着というより、感情を欠いた冷酷な目つきをしていた。 「香西先生、お話があります」 優香は、香西剛を生徒指導室に呼び出した。 「あなたって、性根の腐った、 卑劣で、いじましい、クズね」 「おい、なに言ってんだよ。 そんなこと、おまえに言われる筋合いはないぜ」 「あなた、わたしを2度も襲ったし、 鰍沢くんにけがを負わせてるのよ」 「……」 「そのうえ、学校に投書するなんて、」 「投書? なんのことだよ」 「とぼけないで。あんたがわたしたちの写真」 「しゃ、写真てなんだよ」 「あんた、ほんとに、知らないって言うの?」 「知らないよ」 「覚えといて。あんたを警察に突き出してもいいのよ」 「なに言ってるんだ、えらそうに」 「忘れたの、目撃者がちゃんといるのよ」 「う」 「あんたの顔は、あのひとたちがちゃんと覚えてる。 駐車場で助けてくれた人、証人になってくれるって、 名刺をくれてるのよ」 「……」 「警察に突き出されたくなかったら、おとなしくしてることね」 「わ、わかったよ」 * * * 昨夜11時ごろ、相模原市栗原**町のマンション駐車場で、 強姦事件が発生しました。 被害者は、高校教師Aさん28歳。 付近の人の通報で駆けつけた警察官は、 現場にいた主犯格の高校教諭香西剛容疑者24歳、 香西容疑者の大学時代からの友人、堤下繁容疑者26歳、 おなじく壺井晋容疑者25歳の3人を逮捕しました。 3人は、香西容疑者がAさんに交際を求めたのを断られたことに恨みを抱き、 犯行に及んだもので、刃物を突きつけ、 顔を覆面で隠すなど、きわめて悪質なものでした。 * * * 「声を出すな、騒ぐと、殺すぞ」 「ヒッ」 突きだされたナイフが、 薄明かりの中で、ギラッと光った。 男たちは優香をうしろ手に縛り上げ、 猿ぐつわをかませた。 手際がよかった。 押し倒されて、ひざと足首も、縛り上げられた。 優香の体のあちこちが、地面の舗装で擦りむけて、 傷口から、血が流れる。 男たちは、縛り上げた優香を、 駐車場の奥、貯水タンクの陰に引きずり込む。 靴が、どこかに転がっていった。 壺井が、ブラウスを引き裂いた。 薄明かりの中に、優香の白い裸身が浮き上がる。 「すんげぇ、エッチな下着、着けてるぜ」 堤下が、ナイフでブラジャーを切り裂く。 「ひぇ、いいおっぱいしてるじゃねぇか」 堤下が、乳房に吸い付く。 「うぐぅ」 猿ぐつわの奥で、優香がうめく。 「キモチ、いい、ってか?」 「うぐぅ」 「おい、こいつも、裂いてしまえよ」 「おお、そうだな」 堤下のナイフが、スカートを引き裂いた。 「ひぇひぇひぇ、エロパンティ、はいてるぜ」 「おれからだ」 その声で、優香は、覆面の男のひとりが、誰だか、わかった。 「うぐぅ」 優香の怒りに満ちた目が、香西にむけられる。 「ふふ」 香西が、ベルトを緩め、ズボンをおろす。 「たっぷり楽しませてやるぜ」 「うぐぅぅ」 「声を出すな、って、言っただろ」 「うぐぅぅ」 「てめぇ、痛い目にあわないと、わからないようだな」 「うごっ」 壺井が、優香の顔を殴りつけた。 「おれぁ、本気なんだ」 「優香、こいつを怒らせるなよ」 「ふん、雌ブタ殴るのが、おれの趣味なんだよ」 「うぐぐ」 優香は、恐ろしさのあまり、声を失った。 「いれるぞ」 「濡れてないだろ」 「入れたら濡れる」 「おれ、チンポくわえさせる」 「バカか! こいつが大声出すだろ」 「す、すまん」 「ぐぐ、ぐぐ、ぐぐ」 「声を出すなって言っただろ、顔をずたずたにされてもいいのか」 堤下が、ナイフを優香の目の前に突き出した。 暗がりの中で無気味に光る。 優香は、うつぶせにされた。 ひざと、足首を縛ってある。 バックから挿入しようというのだ。 ひざが、痛む。 ねじ上げられた腕も、背中も、体中が痛い。 さっき殴られた顔面も。 優香は、涙があふれてきた。 「うう、ううう、ううう、うう、うう」 香西が、優香の背後に立つ。 堤下が、優香の後ろ髪をワシヅカミにして、引っ張り上げた。 優香の上半身が、エビぞりになって、その苦しい姿勢のまま、 香西に腰をしっかりと押さえられる。 肉棒が、汚らし肉棒が、 淫裂をこすりあげる。 優香は、香西の侵入を必死で拒んだ。 無駄だった。 香西の肉棒は、ずぶずぶとねじ込まれていった。 「濡れてる」 ついさっき亮が出した精液と、 優香の分泌したものの残滓が、そこを潤していた。 「手縄が邪魔になるな」 「腕、へし折るか」 恐怖のあまり優香のからだが硬直する。 「グホ、絞まるう!」 「もうふたり連れて来るんだったな」 「そのほうがやりやすかったな」 「ヤマダ、呼び出すか?」 「おい、しっかり押さえてろ」 「す、すまん、すまん」 「いいおっぱいしてるな」 のぞき込みながら、壺井は優香の乳房を揉む。 「カアッ! きもちいいぜ!」 香西が、うめいた。 「ウ、ウ、ウウ、フゥ」 「タケシ、イッたな。今度はおれだ、ゲ、グチョグチョ!」 「おれのザーメンだよ」 「げ、きたねえ」 「こいつで拭き取れ」 香西は、壺井に優香のブラウスの切れ端をわたす。 3人がかわるがわる優香を犯しつづけ、 1時間もたったころ、警察官が駆けつけた。進む