麻耶の黒い下着(修正版) 第14回

沼 隆

登場人物  坂下大樹 アマチュア写真家 浩平の父親
      坂下麻耶 大樹の妻
      坂下浩平 大樹の先妻の子


(1)

夕食は、テイクアウトした〈モーヴァン〉のドライカレーだ。
レンジでチンするよりも、フライパンで炒め直すと、もっとおいしい。
浩平は、手を抜かなかった。
時間は、たっぷりあるのだ。
それに、麻耶が貧血を起こしたのは、空腹のせいだろうと、思っていた。
麻耶が、野菜サラダを準備している。
モッツァレラチーズのサラダ。
片付けがすむと、浩平は2階の自分の部屋に上がっていった。
麻耶は、シャワーを浴びたかった。
身体の隅々まで、ていねいに洗った。
アナルも。
ゆっくり、時間をかけて。
  なんだか、おなかが少しへこんだみたい・・・・・・
  たぶん、気のせい・・・・・・
  でも、ホントに引っ込んだのかも・・・だって・・・・・・
浣腸のせいで、たくさん排泄したのだ。
黒い下着を着ける。
あの、浩平に着せられた、蛇皮加工をした下着。
それから、ピスタチオグリーンのワンピースを着た。

麻耶は、リビングのソファに座る。
どうしたらいいのか、わからなかった。
浩平が、呼ぶのを待つ、そうするしか、ない。
今夜、浩平は、何かしかけてくるだろう。
テーブルの上に、カメラ雑誌が載っている。
ぱらぱらとめくっていく。
風景写真や、人物写真、ヌード写真も。
見覚えのある風景。
福岡市や、その周辺を撮った、一群の写真。
撮影者の名前は、坂下大樹。
大樹の写真が、4枚載っている。
次のページの写真には、見覚えのある名前。
沢渡良太。
大樹の高校時代からの同級生。
結婚式で、軽妙なあいさつをしてくれたのだった。
雑誌に掲載されていることで、麻耶は自分のことのようにうれしくなっていた。
それにしても、こんな写真を撮るために、毎週のように、週末に家を空ける大樹。
うらめしくも、ある。

(2)

浩平が、階段を下りてくる。
麻耶は、ソファから立ち上がる。
浩平は、あのグロテスクな仮面をつけていた。
鼻の位置に、男根が垂れ下がっている仮面。
写真器材と、スポーツバッグを抱えて。
床に三脚を立て、カメラを据え付ける。
レンズは、床を見下ろしている。
浩平は、テレビの前にしゃがみ込み、DVDをセットする。
音声をミュートにする。
《華と蛇》のDVD.
「麻耶、脱げ」
麻耶は、素直にしたがっていた。
下着姿になる。
浩平も、上着を脱いで、ボクサーショーツ1枚になった。
浩平が、部屋の明かりを消した。

音のないドラマが、ワイドスクリーンに映し出されていく。
その明かりのなかで、浩平は、麻耶を抱きしめた。
麻耶を抱きかかえるようにして、床に横たわる。
浩平は、すでに勃起していて、それが麻耶の太ももに触れた。
マスクの中央にぶら下がる人造ペニスが邪魔だった。
垂れ下がった亀頭がじゃまになって、麻耶の唇を吸えない。
浩平は、マスクをはずして、麻耶の唇に、吸い付いた。
ブラジャーの蛇柄模様が、浩平の胸をこする。
舌をからませる。
麻耶が両腕を浩平の背中に回す。
サオが恥丘に押しつけられる。
堅くなってる・・・・・・
浩平を抱きしめる。
目を開けると、美しい裸身をさらした杉本彩乃が、黒い下着を着けていくところだった。

「あたし、きれい?」
思わず、訊ねてしまった。
「ああ」
浩平が、応えた。
麻耶は、うれしくなって、浩平を抱きしめる腕に、力が入る。
ブラジャーが、はぎ取られる。
浩平が、力強く乳房を吸い始める。
両方の乳房を、浩平は揉むのだった。
「ああっ・・・・・・」
溜め息が、漏れてしまう。
  こうして、キモチがよくなっていって・・・・・・
  ああ、キモチ、いい・・・・・・
  でも、浩平くん、入れて、くれないんだよね・・・・・・
  入れて、くれなくても、いい・・・・・・
  ああ、いい・・・・・・
  口には、できない。
  入れて欲しい、なんて、言えない・・・・・・
  浩平くん、先走り・・・・・・?
  おちんちんの先っぽ、濡れてる・・・・・・
ショーツからしみ出た液体が、麻耶の腹に触れたのだ。

テレビ画面にあわせて、部屋の壁や天井に映る明かりが、刻々と色彩を変えていく。
浩平は、麻耶の身体を味わっている。
耳たぶをしゃぶり、耳のうしろを舐めた。
麻耶の、敏感な場所。
耳たぶを甘く噛むと、麻耶の恥丘がピクンとする。
浩平は、再び仮面を付けた。
仰向けに寝た麻耶が、じっと見つめている。
浩平のマスクに、テレビの光が反射して、きらきらと妖しく光っているのだ。
セーヌ川にかかる美しい橋、アレクサンドル3世橋、
街灯が、杉本彩乃を照らしている。

浩平が、スポーツバッグから取り出したものを麻耶は見た。
これが、このあいだ届いた道具なのか。
4個の黒革製のかせが、金具でつながれている。
幅5センチほどの黒革のベルトが、両手首に取り付けられる。
あとの2つが、足首に、大きなバックルで、しっかり固定される。
その4個のかせをつなぐ金具は、麻耶の自由を奪った。

つらい姿勢を強いられた。
両手首、両足首を、1カ所にそろえているしかないのだ。
転がされ、蝦のように背中を丸めている。
フラッシュが光る。
浩平は、麻耶の身体の向きを変えながら、シャッターを切っていく。
パンティを、ひざまで引き下ろす。
淫裂をむき出しにした写真。
浩平は、ネットでいろんな女性器を見てきた。
麻耶のそこは、毛深い。
陰悦を取り囲むように、黒い柔毛がしっかり生えている。
浩平は、右指で淫裂を広げる。
粘膜の襞が、花びらのように重なって、ビラビラに囲まれて、肉穴が口を広げている。
リモコン操作で、フラッシュが光る。
「いやぁ」
花びらが、うごめく。
肉穴が、うごめく。
包皮をむいて、顔を出したクリトリスを、刺激する。
「あうっ」
まもなく、充血して、紫色に膨れあがる。
肉穴から、液体がにじみ出す。
「ああっ、あああっ、ああっ」
肉穴が、ひくっ、ひくっ、と呼吸をしているかのように、動く。
チンポが欲しくて、おねだりするかのように。
人差し指を入れる。
たまっている蜜が、指を濡らす。
肉穴が、締め付けてくる。
「スケベな穴」
浩平は、つぶやいた。
「麻耶のスケベ穴」
「いやぁ、言わないで」
「ドスケベ、マンコ」
「ああっ」
肉穴に挿しこむ指を2本に増やし、
なかでぐっ、と広げてみても、
子宮は見えない。
バイブがすっぽり収まるほどの深い場所に、子宮があるのだ。
この手触りは、写真に撮れない。
「入れて、欲しい?」
「・・・・・・」
「入れて欲しいんだろ?」
「・・・・・・」
「入れて欲しいんだろうっ!」
「・・・・・・」
「なんだよっ! 言えないのかよっ!」
「・・・・・・」
「びしょびしょだよ、ここ!」
浩平が、肉穴に挿しこんだ指をグリグリする。
「い、いたいっ!」
「なんだよぉ、麻耶、バイブの時は、痛いなんて、言わなかったじゃないか!」
「い、いたっ・・・・・・」
浩平は、指を抜く。
「乱暴にしたら、痛いよぉ」
「ふん」
浩平は、スポーツのバッグから取り出した道具を、テーブルに並べていく。
「これを入れてやるよ」
麻耶の目の前に突きだされたのは、グロテスクな凹凸を持った、ディルドーだった。
「いやっ!」
「オレより、こっちのほうが、好きなんだろ!」
「いやっ!」
「こいつを、入れて欲しいんだろっ!」
「ああああああああっ」
ディルドーは、するりと潜り込む。
浩平は、ディルドーをゆっくり出し入れしながら、写真を撮っていく。
「ああっ、ああっ、ああっ、ああっ、ああっ」
「ほら、麻耶、感じてる」
「ああっ、ああっ、ああっ、ああっ」
「スケベ女」
「あうぅ!」
「へえ、ここが、いいのか」
ふとしたハズミで突いた場所に、麻耶は強く反応した。
「あうっ、あうっ、あうっ」
穴のなかにも、感じる場所と、そうでもない場所があるのか・・・・・・
浩平が、力を緩めたとき、うごめく膣が、ディルドーを押し出した。
床に、ことんと落ちる。

浩平は、いらついている。
いろんな道具をつけた麻耶の写真を撮っていっても、
SMグッズのカタログをまねしているだけだ。
くそっ!
くそっ!
くそっ!
いちばんやりたいことは・・・それは・・・それは・・・
麻耶を縄で縛り上げて、鞭打つことだけれど、
できるわけがない。
くそっ!
くそっ!
くそっ!
肉穴と、アナルに、2本のディルドーを埋め込まれた麻耶の写真を撮り終えると、
浩平は、無力感にさいなまれるのだった。
3本目のディルドーを口にくわえさせた写真を撮ってしまうと、
完璧なカタチで、麻耶とするには、もっともっと条件が整う必要があると、
思い知らされた。
ディルドーを抜き、拘束具をはずす。
麻耶は、身体の自由を取り戻して、ほっと溜め息をついた。

テレビは、杉本彩乃が縛られ、つるされ、股間を大きく広げられて、
〈汚い場所〉を観客に見られている場面だった。
音は、消してある。
カメラは、苦悶する彩乃を大写しにし、
縄で絞り上げられた乳房、下腹部、黒々と茂る陰毛、それから淫裂に、パンしていく。
腕に、腹に、太ももに、縄の跡が赤く付いている。
くそっ!
浩平は、ショーツを脱ぎ捨てる。
いきり立った肉棒が、そそり立っている。
麻耶が、それをうつろなまなざしで見上げている。
浩平は、麻耶に両足を広げさせ、覆い被さっていく。
麻耶の乳房をつかむと、指先にグイグイ力を入れていく。
「ああああっ」
仰向けになった麻耶が、背中をのけぞらせて悶えたとき、
亀頭が淫裂に潜り込む。
そのまま、肉穴の入り口まで、滑り落ちていく。
「あっ」
亀頭の先端が、わずかに肉穴に潜り込む。
「うっ」
麻耶の花びらが、吸い付くように亀頭にからみつく。
  入れて・・・・・・
麻耶は、尻をほんの少し動かして、浩平を受け入れやすくする。
  して・・・・・・
  そのまま・・・・・・
  そのまま、入ってきて・・・・・・
言葉には、できない。
でも、麻耶の思いは、つのるばかりだ。
浩平は、濡れた襞の感触を、しっかり味わっている。
ちょっとだけ、腰を突きだして、
ほんのわずかに突きだして、亀頭を埋める。
「あっ」
「うっ」
  入れて・・・
  浩平くん、ググって・・・
  入れて・・・・・・!
麻耶のせつない顔が、なにを求めているのか、浩平には伝わらない。
麻耶の秘肉の、ヌルヌルした感触に、亀頭がむずむずと刺激されて、いいキモチなのだ。
それは、麻耶には、浩平がためらっているように見えるのだった。
ちゅぶ
股間で、湿り気を帯びた、飲み込むような音がして
肉穴の入り口の、すぼまった場所を亀頭が通り抜けたのだ。
くわえ込んだ亀頭を、サオの太さ、硬さを、麻耶は肉鞘で確かめる。
きゅん、きゅん、きゅん
「うっ」
  浩平くん、初めてなの・・・・・・?
  するの、初めてなの・・・・・・?
浩平の視線は、麻耶の淫裂に飲み込まれている自分の肉竿を見つめている。
麻耶の視線に気がついて、浩平はかすかに微笑んだ。
  気に入った・・・・・・?
  あたしの、おマンコ・・・・・・
「麻耶、おマンコ、キモチ、いいよ」
麻耶は、うん、とうなずいた。
「ああああああっ」
浩平が、一気にサオを埋め込んできて、
ずん!
と、子宮を突き上げられた。
「あああっ」
肉鞘は、肉棒をしっかりと包み込む。
  もっと、もっと、突いてっ・・・・・・!
ずっ
浩平が、腰を退き、サオが退く。
ずん
浩平が腰を突きだし、サオが打ち込まれる。
  そうよ、そうよ、そうよ・・・・・・
  して、もっと、もっと、して・・・・・・
  浩平くんが、とうとう・・・・・・
  入ってる、入ってる・・・・・・
  ああっ・・・・・・
  いいっ・・・・・・
浩平は、しっかり突いてくる。
サオの根元まで、しっかり打ち込んでくる。
一打ち、一打ちが、
ずん、ずん、ずん、と
たしかな手応えで、
手で受けているのではないのだが、
麻耶を芯から熱くさせていった。
浩平の目は、麻耶を見つめている。
やがて、浩平の腰の動きが、速くなっていって、
やがて、腰を痙攣させながら、麻耶のなかに出した。

DVDは、本編の再生が終わって、メニュー画面の静止画像を映し出している。
杉本彩乃が、黒い下着で窓際にたたずむ写真。
浩平は、サオをティッシュで拭い、ショーツをはく。
麻耶は、流れ出した精液をティッシュで始末すると、黒い下着を着けた。
テーブルには、浩平が麻耶の身体に使った道具が、並んでいる。
静まりかえったリビングで、見つめ合っている。
父親の女と寝た息子。
夫の息子と寝た女。
女は、この若者に強く惹かれているのだった。
さっき、縛られて、身動きできなくなったとき、
ディルドーを埋め込まれて、
恥ずかしい写真を撮られていくとき、
麻耶は、悦んでいる自分に、気づいていた。
杉本彩乃が、縄で縛られ、吊されて、ムチで打たれる場面が見えたとき、
  あたしも、あんなに、して欲しい・・・・・・
と、思っていたのだった。
父親の女に、言い訳のできない傷を付けられなくて、浩平が悶えているときに、
麻耶は、それを求めていたのだった。

浩平は、本編再生ボタンを押す。
今度は、少しだけ、音を出して。
夜が更けて、外は静かだ。
ソファに座った浩平の脇に、麻耶は寄りそう。
浩平に片を抱き寄せられて。
彩乃の黒い下着姿は、きれいだった。
パリのアパルトマンで、彩乃が犯されるシーンが始まる。
遠藤浩市に犯される場面は、演技とは思えない迫力だった。
そして、本番セックス。
あの杉本彩乃と、遠藤浩市が、本当にセックスをしているのだ。
彩乃の悲鳴、遠藤の叫び声、
そして、肉棒にこすられて、苦痛の表情が、恍惚のそれに変わっていき、
ベッドをきしませながら、激しく交わり続け、そして、射精する。
ガンシャではない。
遠藤のペニスが抜かれていくとき、彩乃の膣から流れ出す白濁液が、
はっきりと撮影されているのだ。
10分近いこの場面を見ているあいだに、浩平のサオは鋼のように堅くなり、
麻耶の淫裂も蜜をしたたらせて、パンティを濡らしているのだった。
レイプに始まるシークエンスを、繰り返し再生にセットして、
彩乃の悲鳴や、遠藤の罵声、彩乃のあえぎや、遠藤のうめき声をBGMにして、
映画さながらに、激しく腰を打ち付けあって、セックスしたのである。
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