麻耶の黒い下着(修正版) 第11回
沼 隆 登場人物 坂下大樹 アマチュア写真家 浩平の父親 坂下麻耶 大樹の妻 坂下浩平 大樹の先妻の子 峰 冴子 麻耶のいとこ ランジェリーショップ〈ラオラ〉の女主人 (1) 「あ、いや、いや、いやっ」 麻耶が、腰をひねって、逃げようとする。 浩平の手に、小さなディルドーのようなものが、握られている。 麻耶を全裸にして、乳房を吸い、性器を味わい尽くした浩平が、 ベッドの下から取り出したもの。 「ね、いや、いや、やめてっ」 浩平は、抵抗する麻耶の手を払いのけると、 必死に閉じている両ひざを開かせて、 それを麻耶の股間にあてがい、プスリと挿しこんだ。 それは、麻耶が知っているディルドーよりも、ずっと小さかった。 長さが5センチほどだろうか。 いったい・・・ 子宮を突き上げるだけの長さはない。 ただ、それは、ちょっと変わっていて、 ディルドーの付け根の部分に、薄っぺらな、帽子のつばのようなものがついていて、 それが、麻耶の淫裂にぴったりとフタをするように、押しつけられた。 浩平は、なにをたくらんでいるのだろう・・・ 麻耶は、この道具を知らなかった。 浩平は、麻耶の足首を持ち上げると、片足ずつパンティを通す。 「あああっ、いやあっ!」 浩平は、麻耶の悲鳴に驚いた。 「いやぁ、いやぁ、いやぁ」 どうして? と、訊ねるように見つめる浩平に、 「黒い下着は、いや・・・いや・・・いや」 麻耶には、黒い下着にまつわるいまわしい記憶があるのだった。 浩平は、知るよしもない。 黒い下着が、いやなのか・・・ 浩平は、気がついた。 麻耶の下着がきちんと整理されている引き出しの、 カラフルな下着や、セクシーな下着のあいだに、 黒い下着が一枚もないことを。 そうか、黒い下着、いやなのか・・・・・・ 浩平は、麻耶にワケを聞こうとはしなかった。 麻耶が抵抗して身体を動かしたので、ディルドーが抜け落ちる。 浩平は、麻耶を押さえつけながら、パンティをはかせる。 両ひざから太ももへ、パンティが引き上げられる。 麻耶が押しとどめようとパンティをつかむのを、浩平は激しくはねのけた。 麻耶をうつぶせにして、パンティをモモの付け根まで引き上げる。 つき出された尻の割れ目をグイッと広げて、ディルドーを埋め込んだ。 パンティが腰まで引き上げられた。 思っていたとおりだった。 麻耶に、黒い下着が似合う。 麻耶が持っているどんなセクシーな下着よりも、 この黒い下着が、麻耶には似合っている。 ただ、ちょっと違っているのは、股間に奇妙なふくらみがあることだ。 ディルドーの根元にある、あの、帽子のつばのような部分。 麻耶の股間をおおう、ひだに食い込む部分が、 奇妙に浮き上がっているのだ。 「起きろ」 麻耶が、のろのろとベッドに起きあがる。 肉穴に埋め込まれた異物のせいで、尻の片方を少し浮かせている。 浩平は、一言も口をきかないで、 摩耶に黒いブラジャーをつき出した。 「いや・・・」 哀願するように見上げる麻耶を、浩平は冷ややかに見返す。 ブラジャーは、麻耶のお気に入りのブランドのものだ。 サイズも、ピッタリ。 浩平は、麻耶の下着をよく知っている。 知り尽くしているのだ。 もしこれが、黒い下着でなかったら、 麻耶はうれしくて浩平に抱きついてたかもしれない。 「いや・・・」 そう言いながら、麻耶はブラジャーに腕を通し、後ろ手にフックをかけ、 それから乳房を整えた。 「出かけるよ」 「え?」 「お昼ご飯、食べに」 「わかった」 浩平が出かけたあと、これを脱いでいればいい。 「一緒に、行くんだよ、麻耶」 「え?」 「〈モーヴァン〉のドライカレー食べたいんだ」 「・・・・・・」 「着替えをして。早く」 麻耶が腰を浮かせると、 股間に埋め込まれたものが抜け落ちようとする。 薄いパンティで押さえつけるのは、無理。 「これ、抜けるよ」 「しっかり、締め付けろ」 「んっ」 「つまんないこと、いちいち、指図させるなよ」 麻耶は、ディルドーが抜け落ちないように、パンティの上から抑える。 「なんだよ! みっともない格好、するんじゃないよ!」 「でも、出てくるんだもん」 「くそっ」 「抜いて、いい?」 「バカ、言えっ!」 「・・・・・・」 「そうだ、ガムテープで、止めればいい」 「いやよっ!」 「しかたないだろ!」 「どうしても?」 「ガムテープ、どこ?」 「あの・・・」 「なんだ?」 「ぱ、パンティガードルはいたら・・・」 「なんだよ、それ?」 「こっちに、来て」 麻耶が、下着の引き出しから取り出したのは、 モカブラウンのパンティガードルだ。 「なんだよ、早く、言えよ!」 浩平は、気がつかなかった。 麻耶の引き出しに、パンティガードルが数枚入っているのは知っているけれど、 使い道まで、頭が回らなかったのだ。 で、麻耶はそのパンティガードルをはいて、 ディルドーが抜け落ちないようにしたのだった。 「着替えろ。下で待ってる」 麻耶は、鏡に映った自分を見る。 黒いブラジャーが、胸を包んでいる。 思わず目をそらす。 けれど、黒いブラジャーを着けた姿が、脳裏に焼き付いた。 濃い色の下着が透けない上着を選ぶ。 階下に降りる前に、トイレに入った。 出かける前に、おしっこがしたかった。 スカートをたくし上げ、パンティガードルとパンティを引き下ろす。 麻耶の身体に埋め込まれているものの一部が、目にはいる。 そっと引き抜いた。 便座に腰を下ろす。 小水をほとばしらせながら、手の中のものを見た。 バイブレーターのようだが、長さが5センチほどしかない。 太いことは太いけれど、 身体の奥深くに挿しこまれるというより、 膣口と括約筋で感じさせる道具だ。 けれど、ちょうど割れ目全体を覆うような、この帽子のつばのようなものは・・・ クリトリスの位置に、小さな隆起がある。 クリトリスも、刺激するのだ。 歩くたびに、感じるというのか・・・ 排尿が終わり、後始末をして、 麻耶はそれを身体の中に納めた。 自分でするのは、ためらいがあったけれど、 浩平が許すはずはない。 黒いパンティを、目をそらせながら腰まで引き上げ、 それから、パンティガードルで隠すようにして、下腹部を引き締める。 シリコン製の、道具のふくらみが、パンティガードルに、 微妙な凹凸を浮き上がらせている。 浩平は、玄関で待っていた。 「待って!」 靴を履こうと足を下ろしかけた麻耶を止めて、 浩平はスカートの中に手を挿しこむ。 「あっ」 麻耶は、身体を硬くする。 浩平は、アレがちゃんとおさまっているか確かめたのだ。 麻耶が、こっそり抜いていないか、調べたのだ。 ソレが、肉穴にはさまっている感触が消えることはないけれど、 はさまったままでいると、あんまり意識しなくなる。 ソレの、つばの部分、麻耶の陰唇に貼付いている部分が、 ちょうど、生理ナプキンのように貼付いているのだが、 シリコン製ということもあって、異物感が消えない。 車の運転席に腰を下ろしたとき、ぐっと押しつけられたのだ。 浩平は、気がつかないのか、助手席に座ってシートベルトをロックしている。 その時、麻耶の股間をちらりと見たのだが、スカート越しにソレが見えるはずもない。 (2) 〈モーヴァン〉で食事をすると、麻耶は聞かされたのだが、 浩平は気が変わった。 〈モーヴァン〉の数軒先にある中華料理屋〈aa〉に入った。 中華料理屋というのは、小さなお店なのだ。 小さなテーブル、堅い椅子。 豪華な中華料理を出すわけではなくて、看板には 「中国家庭料理の店」 と書いてある。 〈aa〉の厨房を仕切るのは、唐菜華というおばさんで、 普通の食材で、おいしい食事を出してくれる。 で、菜華おばさんの娘夫婦や、息子夫婦が、店で働いている。 浩平は、餃子定食を注文した。 餃子は、この店の看板料理なのだ。 とまあ、〈aa〉はそういう店なのである。 麻耶は、初めてだ。 菜単を眺めながら、迷っている。 「餃子、嫌いなの、麻耶?」 浩平が訊ねた。 「嫌いじゃないけど・・・」 「ハルサメの、海鮮イタメ、おいしいョ」 オーダーを待っている女の子が、言った。 「それ、ください」 麻耶が、厨房に向かう女の子の後ろ姿を見送る。 いきなり、それが始まった。 麻耶の淫裂がくわえ込んでいるディルドーが、グリグリうごめきだし、 クリトリスに押しつけられた隆起が、ブーンと振動し始めたのだ。 麻耶は、堅い椅子に座っている。 ディルドーと椅子が立てる振動音が、麻耶の身体に大きく響く。 脂汗が、にじむ。 狭い店内で、厨房の喧噪、店内の客たちのおしゃべりで、 他人には聞こえるはずもないのだが。 ディルドーを止めようとでもするように、膣を締め付けてしまう。 それは、逆に、ディルドーのうごめきを強く感じることになるのだった。 ディルドーは、麻耶自身の体の重みで、 淫裂にしっかりと押しつけられている。 それが、クリトリスに細かな振動を与える。 短くても太さ十分の疑似ペニスが、肉穴を責め立てる。 強い刺激だ。 強すぎる。 麻耶の目は、焦点を失っていた。 向かい合って座っている浩平の顔が、見えてはいても、見てはいない。 一瞬、バイブレーターが停まる。 ほっとして浩平を見る。 浩平は、麻耶を冷ややかな目で観察している。 やめて、と哀願するような視線を送ったときだった。 もっと激しい振動が、もっと激しいうごめきが、 麻耶の淫裂に、麻耶の肉穴に襲いかかる。 刺激が弱くなるように、片方の尻を浮かせる。 バイブレーターが、クリトリスからわずかに外れて、麻耶は一息ついた。 ほっとした。 同時に、ディルドーが停まる。 目を上げると、浩平が険しい表情をしていた。 「ひどい・・・」 麻耶は、つぶやく。 「感じるだろ?」 ・・・・・・感じるって・・・ 麻耶は、返事ができない。 「感じてるんだろ、麻耶?」 浩平が、ささやく。 「感じてる自分が、恥ずかしい?」 ・・・・・・そ、そんな・・・ 隣の席の中年の男が、こちらを見ている。 麻耶は、あわてて視線をそらす。 救いを求めるように、浩平を見る。 「感じてるんだろ、麻耶?」 浩平は、さっきの言葉を繰り返す。 麻耶には、答えようがないのだ。 隣の席の、別の中年男も、麻耶を見つめる。 そして、摩耶に向かって、にやりとしたのだ。 ・・・・・・い、いや・・・いや・・・いやぁ・・・ ディルドーが、うごめき出す。 「や、やめて・・・」 「ここの餃子、すごくおいしいんだよ」 「おねがい」 「なんか、カリッとしてて、モチモチしてて」 「ああっ」 「でもさ、皮は、薄いんだよ」 「んんん」 「で、具がさ、おいしいんだ」 「お、おねがい・・・止めて」 「酢醤油つけるでしょ、普通は。ラー油とか」 隣の二人連れの中年男が、ニヤニヤ笑っている。 「んんん」 麻耶は、必死でこらえる。 必死でこらえている表情が、浩平には、たまらなかった。 こんなに、面白いことになるなんて。 「で、何にもつけなくても、おいしいんだよ」 「そ、そう?」 「うん、麻耶にも、食べて欲しかったな」 「う、うん・・・」 「半分こ、しようよ」 「・・・・・・う、そ、それが、い、いいね・・・」 隣の席の中年男の声が、麻耶の耳に届く。 「・・・オネエチャン・・・・・・」 「・・・・・・イク・・・・・・」 「・・・・・・ヌレ・・・・・・」 切れ切れにしか聞こえない。 「・・・へへへ・・・・・・」 「・・・・・・えへへへ・・・・・・」 野卑な笑い声。 「・・・バイブ・・・」 「・・・へへ、バイブ・・・・・・」 麻耶の顔から血の気が退く。 ・・・・・・バイブ、って、あそこに入れてるの、気づかれた・・・・・・ 「麻耶、どうしたの?」 「ううん・・・・・・」 麻耶の身体にしかけられたバイブが停まる。 「お待たせ、シマシタ」 こんがりときつね色に焼けた一口サイズの焼き餃子が、 湯気を立てている。いい香りだ。 麻耶の前に置かれた春雨の海鮮炒めも、 ボリュームたっぷりだ。 「麻耶、先に、餃子食べてよ」 「うん・・・・・・」 ディルドーが停まり、料理が運ばれてきて、ほっとしたところだった。 春雨に箸を付けようとして、浩平に餃子の皿を指さされた。 隣の中年男が声をかけてきた。 「おネエさん、この店の餃子、抜群なんだよ、食べてみなよ」 「えへ、元気も、出るよ、ネエさん」 麻耶は、うなずき、餃子をつまむ。 「熱いから、気をつけるんだよ、ネエさん」 熱々の餃子を、吹き冷まして口に入れる。 かりかりした食感と、いい香りが口腔から鼻腔に広がっていき、 ひと噛みすると、しっかりとした味付けの具材が広がっていく。 「おいしい」 「だろ?」 浩平のかわりに、隣の中年男が応えた。 お節介な中年男・・・・・・ 浩平は、つば付きディルドーの威力にうれしくなっていた。 麻耶が、こんなに激しく反応するとは思わなかった。 いい加減なオモチャかもしれないと思いながら、通販で買ったのだが・・・ 食事がすむと、麻耶はトイレに立った。 パンティが、ぐっしょり濡れていた。 パンティガードルまで濡らしていた。 ディルドーを抜く。 奇妙に短い男根がつき出した、グロテスクなつばを持つそれを、 左手につかんで、排尿する。 左手の中の、それを見つめる。 つばには、女性器をかたどったような凹凸が波打っている。 もしも、この短いペニスがついていなかったら、女性器をかたどったものに見えるだろう。 感じた。 感じていた。 周りの他人に気づかれているという不安、 隣の席の中年男たちに見破られたという恐怖、 それなのに、麻耶は感じていた。 膣口で、クリトリスで。 我に返る。 店のほうから、食事をする人たちのひとのにぎやかな音が聞こえてくる。 これを、このいやらしい道具を、あそこに、戻すしか、ない。 両足を開き、かがみ込むようにして、 それを身体の中に納めていく。 「ああっ」 思わず、かすかにあえいでしまう。 ひんやりとしたシリコンが、麻耶の肉穴を開きながら、潜り込んでいった。 下着を引き上げた。 浩平が、待っている。 店の外には、さっき隣の席に座っていた中年男の二人連れが立ち話をしていた。 出てきた麻耶たちに向かって、軽く手を挙げ、 それから、にやりとしたのだった。 〈モーヴァン〉で、ドライカレーをテイクアウトにしてもらう。 夕食用だ。 これから家に帰って、それから外出するつもりはない。 浩平は、麻耶とふたりきりで、だれにも邪魔されないで、 明日の午後まで過ごすのだ。 準備は、整った。 (3) 浩平と麻耶は、〈モーヴァン〉を出て、駐車場に向かった。 女のほうが10歳ほど年上だけれど、 並んで歩く様子は、恋人同士に見える。 「麻耶ちゃん!」 数軒先の店先で、女が手を振って、いる。 女は、浩平を見つめている。 「あ、浩平くんね。おひさしぶり」 浩平は、思い出せなかった。 どこで会ったんだろう? 「こちら、冴子さん、従姉妹の」 「浩平くん、あたしのこと、憶えてないのね。 浩平くんのお父さんと、麻耶の結婚式で会ったきりだから」 浩平は、憶えていなかった。 ウエディングドレスを着た麻耶にばかり気をとられていた。 浩平は、お辞儀する。 「仲、よさそうね、安心した」 冴子が、言った。 冴子は、いとこの麻耶が、浩平と、いっしょに暮らすようになったのは、知っている。 浩平は、年頃だから、あつかいかねているんじゃないか、 と気になっていたのだ。 だから、ふたりが愉しく昼食をした様子なので、冴子は安心するのだった。 「寄っていきなさいよ」 と冴子が誘う。 「ケーキ買ってくるから」 麻耶が、浩平を振り返る。 浩平は、いやがっていないようだ。 もしかしたら・・・ 冴子の店に、入ってみたいのかもしれない。 ランジェリーショップ〈ラオラ〉 麻耶の下着は、ここで買ったもの。 ・・・・・・今着ている黒い下着は別。 これは・・・これは、浩平が買ったもの。 いつ? どこで? 浩平が、ランジェリーショップで黒い下着を買うところ・・・想像できない。 「なかで、待ってて。〈シャンティ〉まで行ってくる」 麻耶は、ドアを開き、浩平を先に入らせた。 浩平は、美しい下着を、眺めた。 「奥に、事務所があるから」 店の奥に進む。 狭いスペースに、事務机と応接セットが置いてある。 「麻耶、この店で、下着、買ってるんだね」 麻耶のお気に入りのブランドが、並んでいる。 「エッチな下着も?」 麻耶は、うんと、うなずいた。 「イーブル・ウィーゼルも、売ってるんだ。すごいなあ」 「知ってるの?」 「ネットで見たよ」 イーブル・ウィーゼル ( Evil Weasel ) は、オーストラリアの水着メーカーだ。 アレが、水着と呼べるか? 日本の、アジアの海水浴場で着るのは、無理だろう。 南太平洋や、オーストラリアの海浜リゾート向きか。 この会社のホームページでは、イーブル・ウィーゼルの水着をつけた女性の写真を募集している。 30代後半の女性も応募しているので、びっくりする。 すごく大胆な水着なのだ。 あ、そうだ、日本人の女の子で、投稿した子がいたなあ。 そうそう、Yumi さんだった。 見せたくなるのが、納得できるナイス・バディでした。 「麻耶、持ってないみたいだね」 「だって、着れるとこ、ないモン」 冴子が、戻ってきた。 〈シャンティ〉は、〈ラオラ〉からほんの50メートルほどなのだ。 麻耶がセットしておいたコーヒーメーカーから、いい香りが漂ってくる。 「浩平くん、カノジョ、いるの?」 浩平は、あいまいに微笑む。 「いるのね。どんな子よ?」 「いませんよ」 「だめよ、うそ、ついても」 「うそじゃないですよ」 「カノジョがいるって、顔してるモン」 オンナを知っている顔、という意味か。 冴子、これから、あんたの従姉妹を、知るとこなんだよ・・・ 「なによ、浩平くん、ニヤニヤして」 浩平は、リモコンのスイッチを入れた。 ブン、というかすかなうなり音がする。 冴子が、あれっ、という表情で、首をかしげる。 麻耶のからだが、こわばっている。 「男が、下着をプレゼントしたら、女のひと、うれしいですか?」 「そうね、きっとうれしいと思うな」 「そうか」 「浩平くん、下着を贈りたいひとがいるってこと?」 ・・・・・・そうですね、黒い下着を贈りたい相手が、 ほら、冴子さん、あなたの隣に座ってるんですよ・・・・・・ 「いません」 ・・・・・・麻耶は、黒いパンティをはいて、 黒いブラジャーをしているんですよ、冴子さん・・・・・・ 「どんなの、贈るのかなあ?」 ・・・・・・麻耶には、黒い下着にきまってます・・・・・・ 麻耶はねえ、冴子さん、黒い下着が、大嫌いなのですよ・・・・・・ 「どんなのって・・・」 「かわいらしい、真っ白な下着とか・・・・・・」 「はい・・・・・・」 「花柄の、かわいいのとか」 ・・・・・・ははは、バカ言うなよ、スケベ女には、 スケベ下着が似合うんですよ、冴子さん・・・・・・ 「浩平くん、プレゼントするときには、お手伝い、させてね」 「えええっ」 「どんな子なのかな、浩平くんのカノジョ」 「年上なんです」 ・・・・・・黒い下着が、よく似合う、オンナなんですよ、冴子さん・・・ 浩平は、麻耶を見る。 ディルドーの刺激に、耐えている。 「へえ、そうなんだ・・・ふふふ、浩平くん、カノジョ、いるんじゃない」 「あっ・・・」 「ははははは」 冴子は、さもおかしそうに笑った。 「じゃあ、おとなっぽい下着が、いいのかなあ」 浩平は、答えなかった。 「オレ、〈シャンティ〉のチョコレートケーキ、大好きです」 「そうだよね、チョコの使い方がいいっていうか」 「コーヒーも、おいしいですよ」 「麻耶ちゃんがいれてくれたんだけどね」 「麻耶さん、コーヒーにこだわりがあるから」 「じゃあ、浩平くん、毎日おいしいコーヒーが飲めるってことだね」 「うん」 浩平は、麻耶を見つめる。 その浩平の目に、麻耶への優しさを感じて、冴子は安心するのだった。 麻耶は、下半身をぎゅっと締めて、 ディルドーの振動がソファに伝わらないように、必死だった。 その様子を、浩平はおもしろおかしく眺めていたのである。 冴子は、浩平のカノジョのことを知りたがった。 浩平は、はぐらかしながら、ケーキを食べる。 「こ、浩平くん、あ、あたしの、あげる」 麻耶が、言う。 「いいの?」 「うん、食べて」 「じゃあ、いただきます。ありがとう、麻耶さん」 麻耶は、冴子が好奇心をむき出しにして、 浩平とのおしゃべりに夢中になっていることに、 救われていた。 膣口で、ディルドーがうごめき続け、 バイブレーターが、クリトリスを刺激し続けている。 音が漏れるのが、怖かった。 冴子に知られてはならなかった。 振動が停まる。 麻耶は、ほっと溜め息をつく。 「ごちそうさまでした」 「どういたしまして」 「じゃあ、オレ、帰ります」 麻耶は、一瞬、ここに残れるのか、と思った。 立ち上がって、冴子の死角に入った浩平は、 いっしょに帰るんだよ、と合図を送った。 「じゃあ、あたしも」 「そう、また、来てね」 美しくディスプレーされた黒い下着。 浩平の目がとまる。 「きれいでしょ?」 「うん」 「浩平くん、おとなっぽい下着が好きなんだね」 ブラジャーと、パンティと、ガーターベルト。 ・・・・・・今度、買いに来ますよ、冴子さん・・・・・・ 冴子に店の外で見送られて、麻耶と浩平は駐車場に向かった。 浩平の携帯で、メールの着信音が鳴った。 九鬼杏奈だった。 〈講習会、愉しい?〉 浩平は、無視することにした。 杏奈には、写真の講習会に行くと、ウソをついたのだ。 杏奈は、浩平がどこにいるか知っていた。 母親と花屋の店先にいて、 数軒先のランジェリーショップ〈ラオラ〉から出てくる浩平を見たのだった。 浩平は、麻耶といっしょだった。 なんで、ランジェリーショップなんかに! なにが、講習会だよ! (4) 「脱げよ」 麻耶は、どきりとする。 窓を閉め切った浩平の部屋。 若い浩平の体臭がする。 オスの匂い。 「脱げよ」 スカートを脱いだ。 恥ずかしさと、不安と。 浩平とふたりきりになった家の中で、 窓を閉め切り、カーテンも閉め回した家の中で、 浩平は、何をしようというのか。 「それも」 浩平が目で示したのは、パンティガードル。 浩平の冷ややかな視線を感じて、 その視線から少しでも隠そうとするかのように、 わきを向いて、モカブラウンのパンティガードルを、 尻にピッタリ貼付いたパンティガードルを、 剥ぐようにして押し下げる。 肉穴に挿しこんだディルドーが、股間に押しつけていた圧迫から解放されて、 麻耶の体内から降りてくる。 パンティがいっしょに脱げそうになるのを、麻耶は片手で押さえる。 薄いパンティ越しに、ディルドーの手触り。 「これ、はずして、いい?」 「だめだ、オレに言われたことだけするんだ」 「うん・・・」 「はい、だろうが!」 「は・・・はい」 片手で股間を押さえながら、パンティガードルを脱ぐ。 麻耶は、すこし前屈みになりながら、股間を押さえている。 「来い、抜いてやる」 ベッドに腰を下ろした浩平に近づく。 浩平は、グイッとパンティを引き下ろした。 麻耶は、陰毛が浩平の目にさらされる恥ずかしさに、手で隠そうとする。 浩平は、麻耶の手を払いのける。 股間に潜り込んでくる浩平の手を、麻耶は拒もうとして 締め付ける。 それを、浩平は握りこぶしでグイッと押し開き、 ディルドーのつばの部分をつかむと、ずるっと引き出した。 ちゅぽっ 浩平は、手のひらに載せたディルドーを眺めている。 流れ出して、乾いた淫水が、垢のようにこびりついている。 「はけ」 「え?」 「パンティ、はけ」 麻耶が、パンティを引き上げるのを、浩平はじっと見ている。 おろしたてのパンティが、ディルドーのせいで、すっかりよれよれになっている。 「上、脱げ」 「え?」 「いちいち、聞き返すんじゃないっ!」 「・・・・・・」 「上着、脱げって」 こうして、麻耶は、黒いパンティとブラジャーだけを着けて、浩平の前にたたずんだ。 「麻耶」 「・・・・・・」 「おまえは、奴隷」 「・・・・・・」 「麻耶、おまえは、オレの奴隷だ」 「こわいよ」 「脱げ」 「・・・・・・」 「下着を脱いでしまえ」 麻耶は、浩平と向き合う恥ずかしさから、後ろを向いた。 「こっちを、向け」 「恥ずかしい・・・」 「ふん、こっちを向いて、脱げ」 麻耶は、背中に両腕を回して、ブラジャーのフックをはずす。 両腕を、胸で隠す。 「ちゃんと、オレを見ろ!」 「・・・・・・」 「それも、脱げ」 麻耶は、前屈みになりながら、片膝をあげて、パンティを脱いでいく。 黒いパンティを脱いで、麻耶が身体をくねらせて隠そうとする場所に、 黒々と茂った陰毛のデルタが現われる。 浩平は、ベッドに寝そべった。 「こっちへ、来い、麻耶」 麻耶はベッドのそばにゆく。 「右足を、ベッドにかけろ」 麻耶は、股間を手で隠しながら、右足をベッドの縁にかけた。 「開け」 「え?」 「開いて、見せろ」 「・・・・・・」 「おマンコ、見せろって!」 麻耶は、浩平が命じるままに、両手の指先で、淫裂をわずかに広げた。 「麻耶、わからないのか」 「・・・・・・」 「おマンコ、見せろって!」 麻耶の羞恥心が、浩平の求める場所を開くのをためらわせていた。 淫裂の始まる部分、クリトリスと、尿道口のあたりを、 わずかに開いて見せたのだが、浩平を怒らせただけだった。 ためらいがちに、指を這わせていき、 それから、淫裂を広げた。 「麻耶、おマンコ、見えてる」 「いや・・・」 「麻耶のおマンコ、見えてる」 「いやぁ・・・」 「すごく、いやらしいよ、麻耶」 「やめて」 手で覆い隠そうとする麻耶の腕を、浩平はぎゅっとつかんで、麻耶を抱き寄せた。 麻耶は、浩平に重なるようにして、ベッドに倒れ込んだ。 浩平の肉棒が、堅く堅くいきり立っている。 浩平は、起きあがると、服を脱ぎ、ボクサーショーツ1枚になった。 サオがもっこりと膨らみをつくっている。 麻耶は、浩平が脱いでいくのを見ていた。 浩平の手で、何度か裸にされていたのだが、 浩平は一度も脱がなかったのだ。 浩平が、麻耶の身体を求めてくると思うのに、そうならなかった。 それが、きょうは・・・ お尻が、キュンと引き締まっている。 両足が、すらりと伸びている。 こちらを向いたとき、胸も、おなかも、筋肉質なのに驚いた。 麻耶を見つめながら、浩平がショーツを脱ぐ。 麻耶は、浩平の男根を、初めて見せられた。 堅くそそり立つ男根に、血管が青黒く浮き上がり、 節くれ立って、びくん、びくん、と脈打っている。 浩平は、ベッドに上がる。 麻耶の腹をまたぐようにして、腰を落としながら、 麻耶の口元に、サオをつき出した。 「舐めろ」 麻耶は、サオに指を添える。 堅い。 堅い。 堅いのに、弾力がある。 「舐めろって」 麻耶は、頭を少しもたげながら、口を少しだけ開き、舌先で、亀頭を舐めた。 しょっぱい。 「もっと!」 麻耶は、ちゅっとキスをするように、亀頭に唇を押し当てる。 浩平は、まどろっこしくなった。 麻耶の後頭部を抱き上げるようにして、サオを麻耶の口に挿しこむ。 麻耶は、口を大きく開き、亀頭をくわえ込むと、舌先で亀頭の裏側、 筋の部分を、ネットリと舐めるのだった。 歯が、サオに触れているのだが、 そっと触れているだけで、浩平が感じているのは、 唇と、舌なのである。 浩平は、ベッドに横になった。 麻耶は、ごく自然に上体を起こして、 サオをすわぶり続ける。 右手をサオに添え、左手を浩平の下腹部に置いて。 ちらっと浩平を見て、すぐに目をそらし、 それから、ゆっくりとサオをしゃぶり始める。 根元を右手でつかんでいて、その右手からはみ出しているサオを、 しゅぷっ、しゅぷっ、しゅぷっ 股間で上下する麻耶の髪を、浩平は見ている。 サオをしゃぶる長さの分だけ、髪が上下する。 「もっと、くわえろ」 「・・・・・・」 「根元まで」 「・・・・・・」 麻耶は、もっと深くしゃぶろうと、右手をサオのつけ根まで下げていく。 「もっと」 「・・・・・ンぐっ」 「もっと!」 「・・・・・・ンぐっ」 浩平は、根元までくわえさせたいのだ。 麻耶の唇と舌は、サオをしっかりしゃぶっているのだが、 すっかり口に呑んでしまうのには、長すぎた。 麻耶の唾液で、サオがべとべとに濡れていく。 麻耶は、いったんサオを口から出した。 「はぁ、はぁ、はぁ」 荒い息をしている。 「続けろ」 「・・・・・・ン」 「もっと、続けろ」 「うん・・・・・・」 麻耶は、今度は亀頭ではなく、 サオの幹に唇を這わせ、舐め始めた。 サオをすっかりくわえることができなくても、 こうすれば根元までしゃぶれる。 根元を、親指と、人差し指と、中指でつまむようにして。 左の手のひらで、亀頭を包み込むように支えながら。 しっかりとしゃぶりながら、 麻耶の右手は、タマ袋を包み込む。 手のひら全体でそっと揉まれると、 浩平は、思わずため息を漏らすのだった。 麻耶の指が、しなやかにタマを転がすと、 フクロのつけ根に、鋭い快感が走った。 そこは、浩平がオナるときに、 右手がサオをしごきあげるあいだに、 左手できゅっ、きゅっ、と押してやる場所。 こうすると、サオも、タマも、 しびれるほど、気持ちよくなるのだ。 そこを、麻耶が攻めてくる。 サオの根元も、タマ袋も、麻耶の唾液でヌルヌルになってきた。 麻耶の右手が、タマ袋から、サオのなかばあたりまで往復する。 いとおしむように。 浩平を、感じさせるように。 そっと触れている。 時には、握るようにする。 その握る力が絶妙で、強すぎることもなく、弱くもない。 浩平は、サオのつけ根をつまむと、亀頭を麻耶の口元に運ぶ。 麻耶は、素直にくわえ込む。 開いた口が、サオをすっぽり包み込んで、 亀頭からサオのなかばまでをしゃぶる。 ちゅぽっ、ちゅぽっ、ちゅぽっ 舌が、亀頭の裏側、サオの裏側をぬめぬめとこすりあげて、 浩平の快感を高めていくのだった。 仰向けに寝ていた浩平は、麻耶の頭を抱え込むようにして、身体を入れ替えた。 浩平は、四つんばいになる。 両ひざを、左手でしっかりと自分の体重を支えながら、 右手で麻耶の後頭部を抱え、 右腕を、ゆっくりと上下させる。 麻耶の口が、浩平の右腕にあわせて上下し、 サオをしゃぶり続ける。 浩平は、腕の動きを早めていく。 麻耶は、サオの動きにしっかりついてきて、 そして ついにその時がやってきた。 浩平の腰のあたりに激しい快感の稲妻が走って 熱い白濁液を、麻耶の口腔に放ったのである。 サオの根元を握る麻耶の指先に、その瞬間は、はっきり感じ取れた。 痙攣しながら、吹き出していく感触。 瞬間、熱く、青臭いものが、口腔にあふれる。 うっ、と息を止める。 口腔に、ネットリとした液体が貼付き、広がり、 鼻腔に、あの匂いが広がる。 栗の花の匂い。 「呑め」 浩平の一言に、麻耶は応えた。 ごくん 浩平の精液が、喉をつたい、食道に落ちていく。 サオが、口から出ていく。 口の粘膜、舌、舌の裏に、精液がからみついていて、 舌で舐めはがし、唾液といっしょに、ごくんと飲んだ。 「おいしいか?」 麻耶は、おいしいかと聞かれて、うん、とうなずいた。 浩平は、にやりとした。 浩平の若々しい精液は、濃く、それだけに、匂いも強かった。 おいしいと思わないけれど、 おいしいということで、浩平が喜ぶなら、おいしいと言える。 浩平が、キスをしてきて、舌が絡まる。 浩平は、自分の精液の味を知った。 麻耶は、不思議だった。 浩平は、麻耶の体内に射精するのに、 まず口を選んだのだ。 性器ではなく、口を。 どうして? セックスは、したくないの? フェラチオだけで、いいの? フェラチオだけで、満足なの? あそこ、嫌いなの? そんなはず、ない。 もう、2度も、浩平は麻耶の性器を味わっているのだ。 麻耶は、求めていた。 あそこに、これを入れて欲しい、と。 フェラチオが、麻耶の身体を、芯から火照らせていた。 フェラチオすることで、麻耶は欲情していた。 口じゃなくて、ここで、したいの! 浩平が、上体を起こす。 ほんの数分、横になっただけで、浩平は回復していた。 サオが、屹立している。進む