「真夜中の図書室」作品
祭りの夜 第6回
(6) 実崎神社の夏祭りのクライマックス。 町中がにぎわっている。 午後は、神輿がたくさん出る。 商店街、企業、団体。 緒実川を渡った向こうの町からも、見物客がやってくる。 神輿の担ぎ手たちには、ハレの日だ。 男も、女も、朝から張り切っている。 出走を待つ競走馬のようなものだ。 鼻息が、荒い。 「ヤッサン! 〆こみ、似合うぜ!」 茶谷紘志は、長岡安雄に声をかける。 男神輿の集合場所に、男たちがグループごとに集まっている。 紘治は、輪島金属加工の、ヤッサンは藤武信用金庫の神輿を担ぐ。 ホントは、ヤッサンに、〆こみ姿はちっとも似合っていないのだ。 紘治の顔には、ヤッサンを見下す表情が、ありありと出ている。 ……テメーに、〆こみ、似合うわけねえだろっ! ……ナンジャク野郎が! ヤッサンは、藤武信用金庫の従業員たちに、あれこれ指図をしているところだった。 紘志の冷やかしは、明らかだった。 こめかみがひきつる。 谷口さをりが、紘志のアパートから出てくるところを目撃していたのだ。 ……オレの女を、寝取りやがって! 歯ぎしりする。 みこしを担ぐ男たちは、はっぴに〆こみ姿だ。 新人たちは、ベテランに教えてもらいながら、〆こみをつける。 ベテランは、しっかり〆こみながら、サオもタマも痛くない。 締めぐあい、結びぐあいの勘どころを心得ているのだ。 男らしいふんどし姿に、はっぴを羽織る。 みこしの出発場所になる、公民館の駐車場で、ひと目を気にもせず、むき出しにして、〆る。 通りから、股間にぶら下がるイチモツが丸見えなのだが、恥ずかしがるものはいない。 恥ずかしがるようなヤツは、沿道で見物でもしてろ! 輪島金属加工の男たちも、準備を終えた。 「テツオは、どうした?」 「あの野郎、怖気づいたんじゃねえか」 「しょうがねえなあ」 今年65歳のハルジイでさえ、〆こみ姿で、参加しているのだ。 みこしを担がせるわけにはいかないが。 ハルジイの男気に、商店街の連中も感心する。 「あの野郎!」 「どうした、シン」 間野新治は、商店街の連中の中に、まる花ストアの店長、小出辰美を見つける。 ……あゆの弱みにつけこんで、イッパツやりやがった、クソ野郎。 ……キンタマ、蹴り上げてやる! 女みこしの準備も進んでいる。 商店街の裏手の空き地。 赤座映美、あゆの姿がある。 さすがに、〆こみというわけにはいかない。 映美もあゆも、Tバックは日ごろご愛用なのだが、人前で尻をさらけ出して走る勇気は、なかろう。 上半身は、ブラの上に、はっぴをつけている。 下半身は、ショートパンツ。 直にはいている。 パンティをはいていたら、浮き出して、みっともないのだ。 あゆは、直にはくなんて気持ちが悪いので、Tバックをはいてきた。 「あんた、そんなもん、はいてたら、お尻が裂けてしまうよ」 「アソコが腫れ上がって、しばらく、使えなくなるよ」 輪島金属の従業員のオバサンたちに注意される。 「脱いどいで」 映美に言われて、ふくれっつらをしながら、便所を借りて、脱いだ。 花火が打ち上げられる。 女みこしのスタートだ。 まる花ストアのみこしの担ぎ手には、谷口さをりも混じっている。 長距離トラックの運転手、夫のヒロシも、まる花の男みこしの加勢だ。 商店街の担ぎ手には、紘志の妻のよしえがいる。 女みこしは、神社の本鳥居の中まで、500メートルほどの距離だ。 2基目、3基目… 輪島金属のみこしも、威勢のよい掛け声を上げながら、出発。 沿道には、従業員の家族が並んで、声援を送る。 2度目の花火は、男たちのみこしのスタートだ。 男たちは、喧嘩みこし。 参道の入り口にある一の鳥居に集結したら、そこから本殿まで激しく競り合う。 一番乗りの栄誉をかけて、互いに譲らない。 殴り合いなど、当たり前。 それが、楽しみというものだ。 街中で、いきなり人を殴りつけたら、暴行傷害。 喧嘩祭りの最中なら、多少のことは許される。 手加減なんて、するやつは、いない。 このときとばかり、ぶつかり合い、殴りつける。 ヤッサンは、紘志をぶん殴ろうと、虎視眈々である。 まる花ストアの店長は、新治に仕返しをするつもりだ。 みこしは、次々に、一の鳥居前の広場目指して、繰り出していく。 沿道は、近くの町からの見物も含めて、にぎわっている。 炎天下だというのに、熱気は高まるばかり。 通りの角々には、当番が待ち受けている。 みこしが来ると、《ちからみず》を浴びせかけるのだ。 みこしも、担ぎ手も、ずぶ濡れになる。 男の担ぎ手たちには、酒も振舞う。 渇いた喉を酒で潤すと、興奮は、いや増す。 ずぶ濡れになりながら、一の鳥居広場に着くころ、女みこしは、本鳥居をくぐって、終わりになる。 噴出す汗をタオルで拭う。 タオルが、びっしょり濡れてしまう。 「キモチ、いいだろ?」 映美に聞かれて 「うん」 あゆは、うなずいた。 「男たちの、応援だよ」 参道の両側に、女みこしの担ぎ手たちが並ぶ。 その後ろに、見物の人並み。 祭りのクライマックス。 喧嘩みこしだ。 一の鳥居の向こうに、男みこしが勢ぞろい。 太鼓を合図に、一斉にこちらに向かって、駆け出す。 第一の関門が、一の鳥居だ。 並んで通れるのは、2基がやっと。 まる花ストアのみこしが、弾き飛ばされる。 鳥居に激突したみこしが、ばらばらに崩れる。 歓声が上がる。 まる花の店長は、ドサクサに新治を殴ろうとして、殴り返され、鼻血が噴出した。 悲鳴と歓声が上がる。 商店街が、一番手で参道を駆け上がる。 それを輪島金属が追いかける。 社長の輪島修斗が先頭に立ち 「負けたら、てめえら、みんな、ぶっ殺すからなあ」 大声で叫ぶ。 紘志も、新治も、「おおおっ」と応える。 藤武信用金庫のみこしが、追ってくる。 一番手にさえぎられて輪島金属がもたついていた。 ヤッサンの目の前に、紘志がいた。 チャンス! ヤッサン、紘志に体当たり。 紘志がよろけたところに、折り重なるように倒れこんで、後頭部を殴りつけた。 紘志は、すばやく仰向けになると、覆いかぶさってくるヤッサンの股間に、膝蹴りを見舞った。 ぐにゅ 「うぎゅ」 ヤッサンの息が止まる。 キンタマが、キンタマが… 下腹部を抱え込むようにしてヤッサンはうずくまった。 紘志は、勢いよく立ち上がると、みこしに追いつく。 飛び出したチンポを、しまいこみながら。 沿道の見物は、男たちの激しいぶつかり合いに、声援を送り続ける。 女みこしの連中の歓声が凄まじい。 「やっちまえ!」 「もたもたしてるんじゃねえ!」 「キンタマ、ついてんのかよ!」 「踏み潰しちまいな!」 あゆも、夢中で叫んでいるのだった。 「シンちゃん! そんなヤツ、ぶっ殺せ!」 芯から熱くなっている。 こんなに燃えたのは、生まれて初めてだ。 エッチのときみたいに、興奮している。 ぱらぱら振り出した夕立が、あっという間に本降りに変わる。 見物客は、木の下に逃げ込む。 雨よけが見つからないものは、見物を諦めて、駐車場に向かって、駆けていく。 雨は、土砂降りになった。 女たちは、ずぶ濡れの髪が、顔にべったり張り付く。 男みこしのあとを追う。 商店街のみこしが、足を滑らせ、もんどりうって参道の脇に転げ出た。 「いまだっ! いくそおおおおっ!」 輪島修斗の声が響く。 「ううううおおおおおおおおおおおおおおっ!」 遮る者は、ない。 数メートル先が見えない土砂降りの中を、輪島のみこしは、本殿に向かって、ひた走る。 「一着! 輪島金属加工!」 宮司の勝ち名乗りに、男たちも、女たちも、歓声を上げる。 処女の証し、白衣に緋のハカマをはいた巫女から、角樽を受ける。 「工場長、おまえ、受け取って来い」 社長に言われて、紘志が巫女の前に出る。 見覚えのある顔。 なんだ、隣の学生のカノジョじゃねえか。 つい、2,3日前も、ひいこら、いい声聞かせてくれた。 角樽を渡す巫女の表情が、きっとなった。 「どした?」 「あいつ…」 巫女の目線を負うと、隣の学生、恵庭一樹のガキが、ずぶ濡れになった女みこしの連中の写真を撮りま くっているのだった。ロー・アングルから。 「あの野郎っ!」 「ぶん殴って!」 「まかしとけ!」 紘志は、しゃがみこんでシャッターを押し続ける一樹に歩み寄ると、おもいっきりぶん殴った。 「な、なにするんだよぉ!」 「てめえ、女のまたぐら、写真に撮りやがって!」 女みこしの連中の下半身は、真っ白いショートパンツ。 ずぶ濡れになって、ヘアが黒々と透けて見えている。 中には、しっかり割れ目に食い込んでいる女たちもいた。 「この、馬鹿野郎っ!」 一樹は、カメラを取り上げられただけでない。 祭りの興奮そのままの女たちに、小突き回され、蹴飛ばされ、踏みつけにされたのだった。 本殿の脇で、桑名夕夏は、べそをかきながら、その様子を見ているほかなかった。 飯田鉄夫は、自分の部屋に閉じこもっている。 喧嘩みこしなんか、怖くていけるはず、ないっしょ! 赤座映美の家の軒先から盗んできた黒い下着。 映美の黒いパンティをはいている。 映美を《感じ》たくて。 そのパンティは、先走りや、ザーメンまみれで、べとべとなのだが、洗濯するつもりはない。 洗うと、映美のマンコの匂いが消えてしまう。 ブラジャーに顔を埋めて、チンポをしごいている。 もう直ぐ、5回目の射精だ。 クッ…でるっ…! よしえは、熱い湯が傷にしみて悲鳴を上げる紘志に、笑い声で応えながら、夕食の仕度を整える。 今朝から用意しておいた、簡単な食事だ。 紘志の傷の手当てが済んだら、食事をして、そのあとは… ずっと、濡れっぱなしなのだ。 女みこしを担いで興奮して濡れた。 紘志を応援する興奮で、濡れた。 男らしい紘志が、誇りに思えてならない。 ……今日のあんた、すごくよかったよ ……今夜は、思いっきり、しておくれよ ……あんたがしたいこと、何でもさせてあげる 喧嘩みこし、出鼻であっさり脱落したまる花ストア。 谷口ヒロシは、さをりが勤めている関係で、担ぎ手に加わっていた。 悔しさで一杯だった。 ……あの、ばか店長! ……何を考えてやがる! 店長がどじをしたおかげで、一の鳥居をくぐる前に、失格したのだった。 悔しさを、さをりのからだにぶつける。 凶暴に。 さをりは、普段と違うヒロシに、興奮していた。 ……犯されてるみたい… 突きが、激しい。 子宮を、がんがん突いてくる。 ……あ、お隣、始めた… ……よしえさん…いやらしい声… ……ああ…出る…あたしも…いやらしい声が… 安アパートの2階、隣り合った2組の夫婦が、深夜まで、あたりをはばからず、獣の声を上げる。 輪島金属加工の社長室。 土砂降りの雨は、やみそにない。 赤座映美は、ずぶ濡れの髪をドライヤーで乾かしている。 ずぶ濡れのはっぴとショートパンツを床に脱ぎ捨てて、Tシャツとパンティに着替えている。 輪島修斗は、裸になって、擦り傷に軟膏を塗りこんでいる。 祭りの興奮は、修斗の肉棒を膨れ上がらせたままだ。 「乾いたか」 「うん」 「こっち、来い」 机に両手をつかせると、パンティをぐいと押し下げて、映美の背後から、ぶっすりと挿しこんだ。 祭りで燃え盛った動物的本能が、修斗の全身の筋肉を躍動させ、ぐい、ぐい、ぐいと映美を突きまくる。 映美も、しっかりと応える。 たくましいオスにくみ敷かれるメスの悦び。 肉の奥から、快感が噴出して、大声を上げる。 「叫べ、映美、もっと、叫べ!」 乳房をつかむ修斗の指に力が入る。 映美のからだを走るのは、苦痛を超えた、快感。 修斗の尻の筋肉が、ぶりっ、ぶりっ、とリズムを刻む。 やがて訪れる射精のときまで、修斗は、映美をハメ抜く。 《完》戻る