「真夜中の図書室」作品
淫獣の森 第1回
第1章 ポツ・・・ ・・・ポツ ・・・ポツ 水滴が頬に落ちて、エミは目を覚ました。 ここは、どこ・・・? 地面にうつぶせに倒れていた。 大地は柔らかく、暖かい。 心地よく、じっと横になったまま、意識がはっきりするのを、待った。 そうだ・・・ 11時に仕事が終わって、帰り道、公園をいつものように通り抜けようとした。 もうすぐ公園の出口だ。 そのとき、なま暖かい、ねっとりとからみつくような気配に包まれて、気を失ったのだ。 そして、いま、ここにいる・・・ ここは、どこ・・・? あたりは静けさに包まれていた。 目が暗闇に慣れると、あたりのようすが目に入ってきた。 そこは、エミが一度も訪れたことがない、森の中であった。 木々は鬱蒼と生い茂っており、わずかな隙間から月明かりが地上に届いていた。 エミの手足が、その月明かりに照らされて青白く輝いている。 妖精のように透き通った美しい肌。 きれい・・・ 見とれてしまった。 闇の奥からは、物音一つ聞こえてこない。 ただ、静寂が支配していた。 エミがからだを動かすと、カサカサという音が大きく聞こえる。 上体を起こした。どこにも怪我はないようだ。 ほっと安心すると同時に、どうしてこんな場所に来てしまったのか、不思議になり、恐怖心に襲われた。 周囲を見回しても、ただ木々の間を通して広がっているのは闇だけで、助けを求めるのにもどうしたらいいの かわからなかった。 夜が明けるまで待っていようか・・・ エミは、思案した。 この闇の支配する世界で、むやみに歩き回ってみたところで、解決方法が見つかるとは思えなかった。 じっと夜明けが来るのを待つことにしよう・・・ かさかさ・・・ かすかな音が足下をよぎった。 蛇が、月光を受けて、トルコ石のように青く光っている蛇が、エミの足下を左から右に横切っていった。 いきものはいるんだ・・・ ・・・オオカミ・・・! 深い森の中で道に迷った女の子を襲うのは、オオカミと決まっている、 むこうの木の陰から、こっちをじっと見ているかも・・・ 木々の間を見通そうとして、何かが見えたわけではなかったが、それだけエミの恐怖が増した。 そして・・・ かすかな足音が、聞こえてきた。 聞こえるか、聞こえないかほどの、かすかな足音・・・ それが、闇の奥から明らかにエミに向かって近づいてくる・・・ 恐怖のあまり、思わず息を止めてしまったが、エミはゆっくりと立ち上がった。 音を立てないように気をつけながら・・・ しかし、かすかな音を立てないわけにはゆかず、静寂が支配する世界では、それがことさら大きく響く。 近づいてくる音とは反対の方角へ、エミはゆっくり歩き始めた。 靴を脱ごうか・・・ 脱いでも同じかも・・・ 裸足の方が、危ない・・・ エミは冷静だった。 とにかく、あの足音から遠ざからないと・・・ 目は闇になれ、木々の間に獣道が見つかり、それをたどることにした。 生い茂った木々の間を抜けていくことは難しそうだった。 ゆっくりと、慎重に、足をすすめる。 枝が、エミのブラウスを引き裂いた。 痛い思いをしたくなかったけれど、避けようがなかった。 かぎ裂きがいくつもできた。 皮膚が裂けて、血がにじむ。 立ち止まるわけにはいかない。 背後の足音が気になった。 何かが、得体の知れない生き物が、獣か、ひとか、エミを追っている。 ちょっと立ち止まって、耳を澄ませる。 ヒタヒタ・・・ヒタヒタ・・・ かすかな足音が続いている。 距離が縮まっているように思われた。 痛みも、出血も、今は我慢・・・ ひっかき傷を増やしながら、先を急ぐ。 青白いかすかな月明かりを頼りに、しばらく進んで、ふと立ち止まった。 さっきまで背後に聞こえていた足音が、止んでいる。 全くの静けさが、エミの耳には、ジーンという音のように聞こえた。 エミは、胸をなで下ろした。 息が荒くなり、呼吸に合わせて乳房が上下していた。 空耳だったんだ・・・怖くてたまらなかったし・・・ 前方に、少し明るい場所が見えた。 そこだけ、少し開けた場所でもあるのか、ほのかに明るく輝いていて、月の光が地表にたっぷり注いでいるよ うだった。 エミは、そこに向かってまっしぐらに進んだ。 森の中に現れた、不思議な空間だった。 そこだけ、木が一本も生えていず、柔らかな草が一面に広がって、まるで、緑の絨毯を敷き詰めたかのようだ った。それが、青白い月の光で、銀色に輝いている。 エミは、ホッとして、広場の中央に座り込んだ。 ブラウスはびりびりに裂け、スカートも、何カ所も鉤裂きがあった。 やだあ・・・これ、高かったのにい・・・ おもわず口にでた。 そんなばあいじゃないだろ、エミ! と、じぶんでつっこみをいれた。 腕や、からだや、足のひっかき傷から、血が流れていた。 いたあい・・・ ・・・ 突然、背後に人の気配がして、ふりむくと男が立っていた。 エミは凍り付き、悲鳴もでなかった。 あの男が・・・ その男は、エミが勤めるレストランに客として来た。 エミの感情を無視して、一方的に交際を迫ってきた男であった。 色白でほっそりしており、神経質そうで、少し冷ややかな視線を持っている男であった。 力仕事をしたことが一度もないようなほっそりとした長い指をしていて、その繊細な指がエミにラブレターを 手渡した。かすかに香水の香りがした。 男は、何度もエミのレストランにやってきた。注文したコーヒーが冷めるのも気にとめない様子で、それを口 に運ぶことなく、じっとエミの姿を追っていた。 「エミ、あいつ、やばいんじゃない?」 同僚たちが、エミに気をつけなさいね、と忠告してくれた。 男は、1日か2日おきにやってきて、客席に座ると、じっとエミを見つめて時間を過ごし、帰っていくのだっ た。 「あいつ、ストーカー?」 男が、エミをつけてくる様子はなかった。 怖い思いをしたことはなかったのである。 今夜までは・・・ 「エミ・・・会いたかった・・・会いたかったよ・・・こうして、ふたりっきりで・・・」 エミは、声が出なかった。 「怖がらなくていい・・・エミを怖がらせるつもりはないんだ・・・」 「だ、だって・・・」 エミは、のどの奥からやっとかすれるような声を出した。 「ぼくは・・・エミを、愛してる・・・愛してるんだ・・・」 「でも、こんな・・・」 「ひどいことするつもり、ないんだ・・・ただ、愛してるって・・・愛してるって、言いたくて・・・」 「あ・・・」 男はエミにかぶさるようにして顔を近づけた。 エミは、唇を求められるのかと思った。 男の目には哀しみが溢れていた。 「エミを傷つけるつもりなんかなかった・・・ごめんよ・・・ごめんよ・・・」 男は、エミの体中にできた擦り傷や切り傷に気がつくと、血が固まり始めた傷を一つ一つ丹念に舐め始めた。 暖かい、柔らかな舌先が、エミの腕をくまなく舐める。 「いやあ・・・やめて・・・いやあ・・・」 男が舐め始めたとき、気持ちが悪い、と思った。 思わず目を閉じていた。 (いやだ、逃げなくちゃ・・・でも、どうやって・・・) 男の腕はエミをしっかりと捕まえていて、振りほどくことができなかった。 「・・・ん・・・あ・・・いやあ・・・」 男が腹部の傷を舐め始めたとき、エミのからだには別の感覚が芽生えていた。 傷の痛みが一つ一つ丹念に癒されていき、ふと腕に視線をやると、不思議なことに、傷が跡形もなく消えてい た。 固まりかけた血の痕も、消えていた。 男の真紅の舌が、なめ取ってしまったのだろうか。 男の指がスカートの奥に進入してきたとき、エミは思わず身体を堅くしていた。 (あ、だめ・・・だめぇ・・・) 声にならなかった。 エミは知っていた。傷をいやされていく快感のうちに、そこがたっぷりと湿っていることに・・・ (そこ、だめ・・・だめ・・・) 男の指が、パンティにかかった。 気がつくと、エミは、マンションの戸口にたっていた。 夢だったの・・・? やな、ゆめ・・・! バッグからキーを取り出そうとして自分が着ている服に目がいった。 ・・・! 森の中で、枝が引き裂いたブルーのブラウスではなかった。 今朝、出勤前に着た、あのブラウスではなかった。 見覚えがない、真新しいブラウス・・・ スカートも・・・ サンダルも・・・ なにもかも、見覚えがないものだった。 気がついた。 あそこに、あの感覚が・・・そう、男のものが進入した感覚がはっきりと残っていた。 あの男に・・・ エミは、そのときのことがはっきりと思い出せなかった。 おぼろげで、まるで夢の中の出来事のようだった。 意識を失っていたわけではないのに、男がエミのからだに入ってきたことなど、具体的なことが何一つはっき りとしなかった。 しかし、エミの性器には、明らかにペニスが入ってきたという、感覚があった。 ぐいぐい押し広げられたに違いない・・・鮮明な感覚 部屋の明かりをつけた。 静かな部屋だ。 街の音が、ベランダに向いた窓から入ってくるが、まるで遙か遠くの場所からの音のように聞こえた。 どのくらいの時間がたったんだろう・・・ 仕事が終わって店をでたのが・・・ どうやら、わずか1時間ほどの間の出来事のようだ。 もっと、ずっと長いときが流れたような気がして、エミは不思議な感覚にとらえられていた。 あの男は、いったい、私になにをしたんだろう・・・ あの男・・・ エミは、突然そのことに気がついた。 あの男の名前・・・なんて言うんだった・・・? 思い出そうとして、思い出せない・・・ もらった手紙に、なんて書いてあったかな・・・ 手紙・・・ここにあるはずなのに・・・どうしたんだろ・・・ない・・・ないよ・・・なくなってる・・・ 捨てたおぼえはない。 変わった男だったかもしれないけれど、ひどいことをしたわけではなかったし、それに、いやなやつってわけ でもなかった・・・ きのうまでは・・・ でも、今は違う。 エミに薬でも使ったのだろうか。エミをあんなやり方で犯した男・・・ 薬・・・? 薬を飲まされたんだろうか・・・でも、いつ? どうやって・・・ 次々に疑問がわいてきて、それは、解きようがない疑問であった。 シャワー、浴びよか・・・ 上着を脱いだ。 それは、エミが自分で買い求めたはずがないものであったのだが、下着もまた、エミには見覚えのないもので あった。 シルクの下着が、エミの乳房を柔らかく包み込み、小さなパンティが、性器を隠していた。 エミは、身震いをした。 店を出るとき身につけていたもので、残っていたのは、わずかにバッグと腕時計だけであった。 それ以外のなにもかもが、真新しい、エミの見知らぬものにかわっていた。 なにもかも、洗い流したくて、エミは夢中になって身体を洗った。 性器は、いつもよりたんねんに洗った。 見知らぬ男の精液が、残っているような気がして・・・ 誰かに相談してみよう・・・ でも、なんて言う・・・? 誰か、信じてくれるかな・・・? バスタオルで身体を拭いて、パジャマを着た。 受話器を取って、ナミに相談しようとして、思いとどまった。 (エミ、どうしたん・・・疲れすぎやないの・・・?) (やだぁ。エミ・・・欲求不満なんじゃない?) ナミが、どんな答えを返してくるか、見当がついた。 あいつに、きいてみようかな・・・? ノートブックの電源を入れた。 タカシ:そか・・・やられた感覚は残ってるんだ エミ:・・・うん タカシ:やってるときの記憶がないってわけ? エミ:・・・うん、そうなんだ タカシ:ふうん・・・エミ、再現してみない・・・? エミ:ん? タカシ:そん時のこと・・・森の中のこと、やってみましょうよ、きっと思い出すよ、きっと おれ、お手伝いさせていただきますよ・・・特に、そいつとする場面・・・ (ばか!) エミは、いらだちながら接続を切った。 あんなやつに相談するんじゃなかった・・・ 真夜中 エミは、人の気配を感じて、目を覚ました。 戸締まりはしたはず・・・ エミは、金縛りにあって、身動き一つできなかった。 指先を動かすことも、まして声を出すことも・・・ 恐怖が全身を締め付ける。 怖くて、目を開けようとして、あけることができなかった。 金縛りが解けて、全身から力が抜けていった。 部屋の中に、ついさっきまであった人の気配が消えていた。 おそるおそる起きあがった。 どこにも誰もいなかった。 鍵はしっかりかかっていた。 いつしか、眠りに落ちていた。 仕事が終わって店を出たのは、昨夜と同じ頃だった。 公園にさしかかって、どうしようか、エミは迷った。 ここを通り抜けたら、マンションは目と鼻の先だ。 でも・・・ 昨夜のことが思い出された。 負けず嫌いが鎌首をもたげた。 よしっ! 口には出さずに、心の中で気合いを入れると、エミは公園に足を踏み入れた。 昨夜のこと、確かめてやるからね・・・! 森の中のあの空間は、昨夜と同じだった。 月が青白く柔らかい光を投げかけていた。 まるで毛皮の敷物のような手触りの下草が、エミを優しく包んでいる。 春の宵のような心地よい暖かさが、エミを包む。 サンダルを脱いで裸足になると、銀色に輝く敷物から地面の暖かさが伝わってきた。 エミは、何か心優しいもの、この世のものとは思えぬ愛情に溢れた気配に全身を包まれて、悦びがこみ上げて、 着ているものを脱ぎ捨て、一糸まとわぬ姿になって、大地に横たわった。 伝わってくる暖かさを、今度は全身で大地から受け止めていた。 うれしくて、エミの両方の目から涙が流れ出していた。 暗い木々の陰から、かすかな獣の低いうなり声が聞こえてきたのは、その時である。 第2章 下着まで脱いで全裸になって、エミが大地のぬくもりを全身で受け止めていたとき、闇の奥から低い獣の唸り 声が聞こえた。 闇の中に一対の強く光る眼があった。わずかな光をあつめて光る夜行性肉食獣の眼・・・ エミは、はっとして近くにあるはずの衣服に手を伸ばそうとして、恐怖にからだがすくみ、指先をかすかに動か すこともできなかった。 硬直した指先、わずか数センチほどのところに、さっき脱ぎ捨てたパンティがあった。 光る眼が一瞬エミから視線をそらせて、脇を向いた。 エミも、思わずそちらを向く。 闇の中にもう一対の青白い光を放つ眼があった。 グゥッ という、相手を威嚇するような低く鋭い唸り声を発しながら、2頭の獣が広場の中に出てきた。 ネコ科の大型の動物・・・豹のようだった。 獲物を相手に譲るまいとでも言うかのように、牙をむき、互いを威嚇しながら、間合いを取って、広場の中をゆ っくりと移動し始めていた。 形が大きいほうの獣が、敵から視線をそらさずにゆっくりと位置を替え、ちょうどエミのそばにきたとき、股間 に赤黒く膨れ上がったオスの性器を見て取ることができた。 尾をしなやかに揺らしながら、一瞬からだを低くすると、敵に向かって飛びかかった。 2頭の獣はごうごうと唸り声を上げながら、相手を倒そうと懸命に争い、体躯の大きいほうが結局小さいほう を押し倒し、かぎ爪で引き裂かれて血を流しつづけている敵の喉笛を、力任せに食いちぎった。 エミは、小さいほうの悲鳴を聞いたような気がした。 敗者が、全力を出して戦ったからだろうか、勝者は、荒い息をしていた。 荒い息遣いを示す背中の上下動が鎮まっていき、勝利者は、敗者のそばを離れ、エミの方を向いた。 口元は、血で真っ赤に染まり、食いちぎった敗者の肉の破片が、こびりついていた。 それは、ゆっくりとエミに近づいてきた。 そいつは、舌なめずりをした。 血の色をした大きな舌が、口の周りについた肉片を舐めとった。 エミは、後ずさりをしようとして、やはり身動き一つできなかった。 (食べられてしまう・・・) ざらざらとした舌が、エミの下腹から腹部を舐めあげた。 らんらんと光る眼は、エミをじっと見つめている。 エミを見つめたまま、そいつの舌は、エミの乳房を舐めまわす。 まるで、味わうかのように、べろり、べろりと、ゆっくり、時間をかけて、両方の乳房を交互に舐めつづけた。 太い前肢がエミの両足を掻き分けた。 (やめて・・・お願い・・・許して・・・) 野獣の獰猛な頭部を至近距離に見て、エミは声が出ない。 心で叫ぶばかりである。 獣は、エミの股間に頭部を近づけた。 それから、そこを嗅ぐように、鼻をくんくんといわせた。 (ああっ・・・) エミのからだが大きくのけぞった。 そいつは、エミの性器を舐め始めたのである。 やがて、獣は、エミにのしかかるようにして上体をかがめた。 それから・・・ エミは、性器に太い棍棒のようなものが押し付けられ、やがてそれがエミのからだに進入し始めたとき、大きな 悲鳴をあげて、気を失った。 「エミ、大丈夫・・・?」 「・・・ん?」 エミは、優しくささやきかける男の声に意識を取り戻した。 「あ・・・あなたは・・・」 「気がついたね・・・よかった・・・」 エミは、あの男に抱かれるようにして、森の中のあの場所にいた。 「ここは・・・」 「大丈夫・・・怖がることはないよ・・・」 「でも・・・」 「怖い夢でも、見たのかな・・・? うなされていたよ・・・」 「う・・うん・・・」 エミは、自分が全裸でいることに気がついて、先ほどまでの恐怖も忘れ、恥ずかしくて、真っ赤になった。 男は、ずっと自分の裸を見つめていたのだろうか・・・ 思わず、からだを縮めるようにして男の視線から乳房を隠そうとした。 男のしなやかな指先が、いたわるようにエミの裸身をそっとさすっている。 「怖かった・・・」 エミは、男に甘えたい気持ちがして、男の胸に顔をうずめた。 「そう・・・そんなに怖い夢を見たんだ・・・」 どんな夢か、エミは説明できない。 (最近、疲れてるから・・・へんな夢を見るんだ・・・) 男は、エミの裸身を抱きかかえ、背中から腰にかけてそっとさすりつづけた。 エミは安らぎを覚えた。 男が唇を重ねてきたとき、エミはそれにこたえ、挿し込まれる舌に自分の舌を絡ませた。 エミの口から甘い吐息が漏れる。 男は、エミの乳房をいとおしむようにもんだ。 乳首が隆起する。 男はそれを舐め、吸い、そして、そっと噛んだ。 エミのからだを走ったのは、痛みではなく、快感である。 男の指が淫裂に侵入し、開口部を探り当て、それからさらに肉の内部へと侵入する。 「ん・・・んっ・・・」 男の指使いは巧みで、それだけで、エミは達した。 淫水が溢れ出して、男の指をさらに濡らす。 エミは、尻に男の硬くなった肉棒を感じていた。 (入れて・・・) 口には出せなかった。 しかし、エミの期待に男はこたえる。 男は、立ち上がると着衣を脱ぎ捨てて、全裸になった。 見上げたエミの目に、たくましく反り返ったペニスが見えた。 男は、片手でそれをしごいて見せた。 それから、それが、エミの肉の壺に挿し込まれた。 「ああ・・・あああっ・・・!」 エミの肉の通路は、侵入につれて押し広げられ、肉棒は下腹部に深深と打ち込まれた。 先端はすぐに子宮に達し、突き上げた。 エミは突き上げられて、内臓が口から飛び出すのではないかと思ったほどである。 そこにはじめて強い充足感を感じて、エミは喜悦のすすり泣きをしていた。 男の腰が律動を開始し、尻の筋肉を躍動させながら、肉棒を抽挿する。 「ん・・・ん・・・ああ・・・あああっ・・・」 エミの中に精液を噴出したあと、男の肉棒は大して収縮しないまま、まるでずるずると音をたてでもするよう に引き出された。 男は、エミに寄り添い、抱きかかえ、唇を重ねた。 エミは、男の肉棒を手にしたまま、いつしか、眠りに落ちていた。 朝の光を感じて、エミは目を覚ます。 あの男の気配が消えていた。 意識がはっきりして、自分がいるのは、あの森の中の空間ではなくて、自分のマンションのベッドの上であるこ とに気がついた。 ゆめ? 何もかも、夢だったのかな・・・? しかし、下半身には、性交を楽しんだ後の心地よい疲労感が、はっきりとあった。 (やだあ・・・近頃、いやらしい夢ばっかり見てる・・・) エミは、ベッドから起き上がろうとして、ギョッとした。 性器から、何か、体内に残っていたものがこぼれだしたのである。 手を添えると、白く濁った粘り気のある液体が、べっとりとついた。 栗の花の香り・・・ 明らかに精液の臭いであった。 それが、エミの手のひらいっぱいに流れ出してきた。 第3章 「あっ・・・いやぁ・・・やめて・・・やめてください・・・」 支配人の江頭が、背後からエミを抱きすくめ、着衣の上から乳房をつかんだ。 「いやっ・・・!」 「大声出してもいいんだよ、エミ・・・みんなに聞こえてしまうけどね・・・ふふふ」 江頭は、低い押し殺した声でささやいた。 「エミ、おっぱい、大きいもんなあ・・・・ふふふ・・・こんなに、弾んで・・・ぷりぷりしてる・・・」 江頭は、エミの首筋に唇を這わせながら、乳房を揉みしだく。 エミが逃れようとからだをよじると、乳房をつかんだ江頭の指先に、ぐうっ、と力が加わる。 「いたいっ!」 「ふふふ・・・」 「エミさん、支配人が呼んでます」 「さんきゅ、ゆきちゃん」 ゆきは、この春入店したばかりの、かわいらしい後輩だ。 エミを先輩として、上司として慕っている。 支配人の言づてを伝えて持ち場に戻っていくゆきの後姿を見送る。 昼食時の接客に追われる忙しい時間が終わって、ほっとしたところだった。 テーブルには、いくつか空きができていた。 なんだろ・・・? なんか、ミスしたかな・・・? 化粧室で鏡に向かい、化粧直しをしながら考えた。 思い当たるふしはなかった。 ただ、仕事の最中に、ふっと、ゆうべの森の出来事を思い出し、あそこにアレが挟まっている感覚がよみがえっ てきて、乳房がうずいた。 けさ、ベッドから起き上がったときに流れ出してきた、大量の精液・・・ あれは、《彼》のものだけだとは思えなかった。 名前を、どうしても思い出せない、あの男がエミのからだの中に残したものにしては、多すぎた。 エミの手のひらから、溢れたのである。 シーツにも大きな染みができていた。 あの獣に、犯されたんだ・・・ 人よりもはるかに大きいネコ科の猛獣が、エミのからだに残していったもの。 エミには、そうとしか、思えなかった。 気を失ってしまったので、犯されているときの記憶はない。 でも、間違いなさそう・・・ 《彼》がやさしくいたわってくれて、よかった・・・ エミの中で、あの男は、いつのまにか《彼》に変わっていた。 そして、その《彼》がエミのからだに残していったセックスの快楽。 パンティが濡れている・・・ ・・・ぼんやりしていたんだ・・・支配人、怒ってるんだ・・・いやだなあ・・・ 「エミ、夏休み期間中のキャンペーンなんだけどね、おまえのチームのプラン、採用することにしたよ・・・細か い詰めをするんで、来てもらった・・・」 エミは、ほっとした。 支配人からネチネチ叱られるのは、うんざりだ。 何でも、蛇年生まれだとか・・・冗談だけど・・・ 江頭がドアにかぎをかけたことに気がつかなかった。 エミは、江頭のデスクの前に立った。 江頭は、いすに腰をおろさずに、エミの背後に回り、それから、エミを抱きすくめたのである。 「おまえのプラン、最高だよ、エミ・・・おまえといっしょに仕事をしていきたいんだ・・・」 江頭は、耳元でささやくと、唇をエミのうなじに這わせる。 エミに悪寒が走る。 「いやぁ・・・やめてください・・・」 「お互い、もっと知り合わなくちゃね・・・そうだろ? エミ・・・」 江頭は、エミのタイトスカートのホックを手際よくはずし、ファスナーを引き下げていた。 スカートが、足元に落ちる。 あっというまの出来事だった。 パンティストッキングがくるりと剥かれ、尻が剥き出しになる。 江頭は、背後からエミにからだを密着させ、エミの乳房を揉みながら、片手をパンティの中に滑り込ませた。 指先は、たちまち淫裂を探り当て、ずいっと伸びた指先が、肉の壺に侵入した。 「むふ・・・濡れてる・・・」 「やめてっ・・・やめてくださいっ・・・!」 エミの腰に、江頭の怒張した陰茎が押し付けられる。 それは、膨れ上がって、ぴくん、ぴくんと脈打っていた。 「エミの・・・おっぱいが・・・ゆさゆさするの・・・見てると・・・我慢・・・できなくなってね・・・」 エミがなんとか逃れようとするのを、江頭はがっしりと羽交い絞めにした。 「あきらめろよ、エミ・・・おれ・・・学生時代・・・レスリングやってたんだ・・・」 エミが、なおも抵抗を続けると、江頭は両腕に思い切り力をこめて、エミのからだを絞り上げた。 「あああっ・・・!」 「わかったか!」 エミのからだから力が抜ける。 江頭は、エミのからだをソファに投げ出すと、手早くパンツを脱いで、下半身を剥き出しにした。 それは、激しく勃起して、ほとんど臍まで届きそうだった。 「けっ! 乾いてやがる・・・」 江頭は、右の手のひらにペッとつばを吐き出すと、それをエミの淫裂に塗りつける。 それから、エミの両足を開き、下半身を割り込ませた。 もう一度つばを吐き、それを肉棒に塗りつける。 薄笑いを浮かべてエミを見つめると、ゆっくりとのしかかってきて、いきり立ったペニスをエミの淫裂にあて がった。 くちゅ 濡れた粘膜がこすれる音がして、てらてらと紫色に光っている亀頭が、エミの肉の壺に挿し込まれた。 エミの肉は、侵入を阻むように口を閉ざそうとして、無理やりこじ開けられ、エミは、屈辱だけでなく、苦痛も与 えられた。 「いっ・・・いたいっ!」 「ふん・・・処女じゃあるまいし・・・」 エミは、江頭の上体を押し返そうとして、両腕を突き出した。江頭の筋肉質の腕が、エミの両腕をちからまかせ に払いのけた。 はじき飛ばされた腕に、痛みが走る。 エミの腰をしっかり抱きかかえると、江頭はペニスをエミの内部に打ち込んだ。 ググググッ 潤いを失いかけていたエミの肉の鞘は、激痛に襲われ、エミは、悲鳴をあげそうになり、必死でこらえる。 ゆきちゃんたちに知られたくない・・・ 苦痛と怒りで、涙があふれる。 せせら笑うような笑みを口元に浮かべながら、江頭はペニスをエミの奥深くまで進入させる。 「エミ、これから、気持ちよくしてやるからな」 突き刺したまま、江頭は、エミのブラウスのボタンをはずし、上体を抱きかかえてブラウスを剥ぎ取って、テー ブルの上にほうった。 「ああっ・・・いやぁ・・・いやぁ・・・」 江頭は、ブラジャーを剥ぎ取ると、乳房に吸い付いた。 両腕でがっしりと抱きかかえられて、身動きができないエミの乳房を、江頭は舐め、音を立てて吸った。 「おいしいよ・・・エミ・・・おいしいおっぱいだ・・・ふふふ・・・」 乳首に歯をあてると、軽く噛んだ。 「あ・・・・いやっ・・・」 「これから、おれのちんぽ、たっぷり味わわせてやるよ・・・気に入るよ・・・うふうふうふ」 江頭は、ゆっくりと腰を動かし始めた。 くちゅ・・・、くちゅ・・・、くちゅ・・・ 江頭から、顔をそむけるようにしてエミは耐えていた。 ちゅぷ・・・ちゅぷ・・・ちゅぷ・・・ ソファのきしむ音に混じって、性器のこすれる音が静まり返った部屋の中に大きく響いた。 エミは、必死に痛みに耐えていた。 江頭がハンカチを放ってよこした。 性器から流れ出してくる白濁した液体を拭きとって、エミは下着をつけた。 江頭は、照れたような薄笑いを浮かべながら、衣服をつけていた。 化粧室で鏡に向かうと、大粒の涙がこぼれだした。 「おまえ、感度、悪いんだな」 射精したあと、江頭がエミに言った侮蔑の言葉がよみがえり、激しい怒りがこみ上げる。 「おれのちんぽで、ひいひい、泣かなかった女は、おまえだけだ」 シャワーヘッドを近づけて、午後の支配人室で江頭に汚された場所を洗おうとして、ひりひりと焼け付くよう な痛みを感じた。 エミのそこは、傷つけられていた。 江頭の肉棒が、容赦なくこすりつけられて、粘膜に無数のすりきずができていた。 噴き出すシャワーの水に、それが痛んだ。 バスタオルでからだを包むと、パジャマに着替えずにベッドに横たわった。 疲れからか眠り込んでいた。 森の中にいた。 《彼》も、エミも、全裸であった。 《彼》は指先でエミの髪をなで、頬をなでた。 心のこもったやさしいしぐさだった。 口づけを交わし、挿し込まれる舌に舌を絡ませた。 《彼》の唾液をすすった。 透き通るような目が、一見冷ややかだが、やさしさを秘めたまなざしでエミを見つめている。 《彼》の頭部が、エミの胸元に下がっていき、乳首を舐め始めた。 (あ・・・いい・・・) エミの乳首が隆起する。 《彼》は、乳首を歯の先端で軽くこするようにする。 「ん・・・ん・・・」 エミの口元から、甘い吐息が漏れる。 《彼》の指が、おなかから、下腹部の茂みへ、そして、そこから裂け目へと下っていって、秘穴に触れたとき、エミ のからだに痛みが走り、思わず下半身をぴくりとさせた。 どうしたの? とでも尋ねるようなまなざしでエミを見つめる。 昼間の出来事を話す勇気がなかった。 あんなこと、言えない・・・ 困惑して黙ったままでいると、《彼》は顔をそこにうずめ、自分で確かめようとした。 《彼》は、かすかに驚きの表情を浮かべたが、すぐに驚きをエミから隠すためであろうか、表情を消してしま う。それから、淫裂に顔をうずめ、その場所を丹念に舐め始めた。 シャワーの水がかかるとひりひりと痛んだ場所が、《彼》の舌の先で舐められると、癒されていくのがエミには っきりとわかった。 この場所で、初めて《彼》とであったときに、木の枝やいばらで傷ついたエミのからだを舌の先で治してくれた、 あのときのことが今、エミの傷ついた性器に施されていた。 ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ 《彼》は、傷の原因を尋ねようともしないで、黙って、エミの性器を舐めつづける。 「ああ・・・んっ・・・んっ・・・」 《彼》の舌が、エミのからだの奥深い場所まで進入し、すべての傷を治したとき、その舌が、エミに快感を与え始 めていた。 いつの間にか、《彼》のペニスが、エミの顔のそばにあった。 エミは、手を添えようとして、ためらって、それからそっと握った。 《彼》の舌の動きが一瞬止まる。 エミは、《彼》の亀頭を舐めた。 先端には露がつき、月明かりを映して光っている。 エミはそれを舐めとった。 亀頭を口にくわえた。 (遠慮しないで・・・エミのくちに・・・入れて・・・) くちに出して言えなかった。 かわりにエミは、頭を少し持ち上げて、《彼》のペニスの先端をくわえた。 《彼》は、エミがしたがっていることを理解したのか、ゆっくりと腰を沈めて、エミのくちにペニスを挿し込む。 エミのくちは、ペニスの半分を受け入れることもできなかった。 唇と舌を使って、エミは《彼》のペニスを舐めた。 エミの性器から淫水が溢れ出していた。 《彼》は、泉に口を当て、じゅるっと音を立ててそれをすすった。 四つんばいにしたエミの背後から《彼》はペニスを挿入した。 エミの肉の鞘は、蜜でたっぷりと潤っており、《彼》の巨根の進入にあわせて広がり、それを根元まで受け入れ ていた。 膣がぐいぐいと押し広げられ、子宮が突き上げられる。 エミは、悦びのあまり、すすり泣いていた。 獣の体位で交わりながら、《彼》の腰の動きにあわせて、エミも腰を振りたてていた。 「ああ・・・ああ・・・ああ・・・」 エミは、快感に身をよじり、あえぎ、もだえる。 乳房が、ぶるぶると震えている。 時折、エミは頭をもたげるようにして、うつろな目で前方、森の闇の中を見た。 初めての夜、恐怖を呼び起こした闇が、今はエミをやさしく包んでくれる羊水のように思われた。 怖いものは何もなく、安らぎに充たされていた。 《彼》と一緒に上り詰め、《彼》の射精と合わせるかのように達した。 「ああっ・・・・あああっ・・・ああああああっ・・・!」 エミは、からだの奥深いところから噴出してくる喜悦の咆哮をあげていた。 それは、森のずっと奥深いところまで届くほど、大きな叫びであった。 第4章 このまま眠っていたい・・・ エミは、まどろみの中にいた。 目がさめたら、きっとベッドの上だ・・・ もっと、ここに・・・森の中にいたい・・・ まだ、あたしの部屋に、帰りたくない・・・ 暖かい大気が全身を包んでいる。 地面は柔らかな草地で、その草の葉が、まるで絨毯のようにエミのからだを優しく支えている。 目を閉じたまま、指先で草の感触を味わう。 なんてふわふわしてるんだろう・・・ かすかな空気の流れに、草むらがわずかにそよぎ、エミの乳房をくすぐる。 ・・・ん? ぼんやりとした意識の中に、エミは、あそこにペニスがはさまっている感じがした。 くすっ 苦笑した。 膣に力を加えてみると、そこにペニスが挿し込まれている感じが確かにあった。 やだあ・・・ 力をいれたり、抜いたりして、ペニスの質感を楽しんだ。 まだ、夢の続き・・・? だったら、うれしい・・・ でも、目を開けたら、きっと、ベッドに寝ているんだ・・・ いつも、そうだし・・・ ・・・ん? ・・・あ! エミの性器には、《彼》のペニスが、挿し込まれたままであった。 はっきりと目がさめた。 エミは、彼とつながったまま、森の中にいた。 「目がさめたね・・・」 《彼》が、背後から低くやさしい声でささやいた。 「ぐっすり眠ったね・・・気持ちよさそうに、寝息を立てていたよ・・・」 《彼》は、エミを抱きしめ、うなじに口づけをし、それから、エミのあごの先に指を添えてそっと自分のほうに引 き寄せると、エミの顔を覗き込むようにして、唇を重ねた。 舌が絡まり、唾液が交じり合った。 《彼》の指先が、乳房をつかみ、優しく揉みほぐす。 「エミ・・・愛している・・・エミがいないと、生きていけないよ・・・」 透き通るように美しい《彼》の瞳は、憂いを含んでいて、エミを切ない思いにさせた。 「あたし、あなたのこと、まだ、何にも知らない・・・」 「・・・そうだね・・・・でも、それは、じきにわかってもらえるよ・・・」 「あなたの名前も知らない・・・」 「名前はね・・・」 《彼》が指先で乳首を転がすと、エミの子宮が疼き、熱いものがからだじゅうを流れた。 「ん・・・んっ・・・」 エミのからだがしなり、乳房がぶるぶると震えた。 「エミ・・・エミと、ずっと、いっしょにいたい・・・こうして・・・いっしょに・・・」 《彼》の右手が、乳房から下腹へ、そして草むらに下っていった。 それから、肉の裂け目、《彼》を受け入れている場所のとばくちにある、肉のつぼみを探り当てる。 《彼》は、指先をエミの淫水で湿らせると、ぷっくりと膨れ上がったクリトリスをこりこりと擦った。 「ああ・・・」 快感に、思わず膣に力が入り、ペニスを締め上げた。 エミは、自分のからだを充たしている《彼》のペニスの太さと硬さを味わう。 (あ・・・すごい・・・) それは、エミの中でふくらみを増していく。 乳房と、クリトリスと、そして、膣と、エミは、3箇所を同時に刺激されて、味わったことがない快感に、我を忘れ ていた。 目は焦点を失って視界は朦朧としていた。 「ああ・・・ああっ・・・・ああっ・・・」 つながって、横たわったままの格好で、《彼》は腰を律動させ始める。 エミも、それに合わせて、腰を前後に動かし始めた。 グルルル・・・ かすかな、ネコが喉を鳴らしているような音が聞こえた。《彼》のペニスに子宮を突き上げられて、身をよじっ た瞬間、見開いたエミの眼に、2頭の黒い大きな動物が目に入った。 それは、すぐ目の前、手が届きそうなところにいた。 エミに恐怖が走り、全身が硬くなり、《彼》のペニスを締め上げた。 うううっ・・・ 《彼》が、痛みでうめき声をあげるのも、エミには聞こえなかった。 背後から、《彼》の腕がエミを優しく抱きかかえた。 「大丈夫・・・怖がらなくていい・・・」 (そんな・・・・だって・・) 「こいつらは、エミに危害を加えたりしないから・・・見てごらん・・・」 しっかりと抱きかかえてくれている《彼》の言葉に、エミは少しずつ落ち着きを取り戻した。 《彼》、怖くないんだ・・・ 次第に、黒豹の姿がはっきり見えるようになり、そして、2頭の獣が何をしているのか、エミにわかったのであ る。 小さなメス豹に覆い被さるようにして、金色の目を輝かせながら、オスの黒豹が、交尾をしているのだった。 オスの尻の筋肉が、リズミカルに弾んでいた。 《彼》の腕の中に抱かれたエミから恐怖心がすっかりうせるのを待っていたかのように、《彼》も腰を使い始 めた。 黒豹と同じように、彼は次第にピッチを上げていく。 エミは、背後から激しく突き上げられながら、眼前の黒豹の交尾を見つめていた。それは、神々しい営みに見え た。 オスが口をあけ、真っ赤な口腔を見せながらハアハアと荒い息遣いで高まっていくのに合わせるように、《彼》 の律動も早まっていき、そして、黒豹が果て、《彼》もエミの中に精液を放った。 オスが、組み敷いたメスをいたわるように舐めている。 《彼》の唇も、いとおしむように、エミの乳房や首筋を舐め、そして、唇を吸った。 メスは、オスの行為を目を閉じて気持ちよさそうにうけている。 エミも、目を閉じた。 気がつくと、黒豹は消えていた。 そこにいた形跡もなかった。 まるで、夢の中の出来事のようであった。 《彼》が、寝息を立てている。 起き上がると、性器から、《彼》の精液が流れ出した。 静まりかえった森の空き地に、音もなく、霧のような雨が降ってきた。 エミは、空を見上げる。 群青色の空からまっすぐに、霧のシャワーがふって来る。 エミは、全身に溢れる喜びでそれを受け止めた。 《彼》が起き上がって、立ち上がろうとしていた。 エミは、駆け寄って、おおいかぶさり、彼の唇を吸った。 「ほしい・・・あなたが・・・ほしい・・・」 エミの唇は、仰向けに寝た《彼》の口から、首へ、胸へ、腹へと下がっていき、そして、再び回復し始めている《彼》 のペニスを口に含み、ジュボジュボと、音を立ててすわぶった。 それが太く、長く、硬くなり、天をつくようにして完全に立ち上がった。 エミは、《彼》の腰にまたがると、ペニスを自分の淫裂にあてがい、ゆっくりと腰を沈めていった。 それは、ズブズブとエミの体内に埋まっていって、そして、子宮をぐいぐいと突き上げながら、根元まですっか り収まった。 赤ん坊の腕ほどもある《彼》のペニスがエミの下半身を充たしている。 エミは、ゆっくりと腰を上下し始めた。 エミの肉の襞と、ペニスとが擦れて、ジュプジュプと、音を立てる。 エミは、手を《彼》の腹について、上体を支えた。 《彼》の腕が伸びてきて、乳房をつかむ。 《彼》の指先にちからがはいり、乳房を絞り上げるようにしたとき、エミの口からもれたのは苦痛の叫びでは なく、愉悦のあえぎであった。 「んん・・・ああ・・・・ああああ・・・」 《彼》も腰を上下に動かし始めると、ふたりの腰の動きが重なって、エミは、突き上げられ、刺し貫かれた。 エミの体が中空で揺らぐのを、《彼》の腕が下から支えた。 エミは、おのが肉壷を彼のペニスに擦りつけ、しごきあげた。 やがて、《彼》が腰を激しく振りたてた。 エミが振り落とされそうになるほど激しく突き上げられた。 グゥゥゥォッ 獣の唸りにも似た声を発しながら、精液がエミの体内に噴きあがった。 ひとつになったふたりの裸身に、霧雨が降り注いでいた。 窓の外は、夕暮れだった。 エミは、はっとして飛び起きた。 全裸のまま、ベッドに横たわっていた。 何時だろう・・・ 時計は、6時を指している。 いやあ! 会社、無断欠勤しちゃったよぉ・・・! ・・・! たしか、今日は、非番だ! カレンダーを見る。 よかった・・・ ・・・あそこに・・・森に、一日いたのかなあ・・・? 三度目に、自分から彼を求めたことを思い出して、エミは恥ずかしくなり、顔が赤くなる。 やだぁ・・・どうしよぉ・・・恥ずかしいよぉ・・・ しかし、もうひとつ、エミの心によみがえったできごとがあった。 江頭支配人に、よりによって支配人室で犯されたこと・・・ どうしたらいい・・・? 彼には、言えなかった・・・ 言えないよ、あんなひどいこと・・・ 明日から、会社、どうしよう・・・ あんなひどいやつに、負けたくなんかない・・・ 絶対、会社に行ってやる・・・! ああ、はらがたつ・・・! シャワーを浴びる。 乳房の下に、赤いあざができていた。 ・・・キスマーク! 《彼》がつけたんだ・・・ エミは、うれしくなった。進む