第七話「会場に浮かぶ虚像」
「おっと、私としたことが失念していました。少々お待ち下さいますか?」
今にも羞恥の部分をさらけ出そうとしていた少女に黒崎が声をかけます。当然足を止める少
女、彼女は何事かと魔術師の方を振り返ります。
「おいおい、なんだよ」
来たる時を前に、テンションを高めていた観客からブーイングが飛びます。当然でしょう。
他でもない、マジシャン自身によっておあずけを食らわされたのですから。
「いえいえ、そんなに気を立てないで下さいませ。せっかくの瞬間をより皆様に拝見して頂こ
うと思いましたので」
そう言うとマジシャンは懐から小瓶を取り出します。虹色に輝く粉が入っています。魔術の
触媒か何かでしょうか。
「じっとしていて下さいませ」
魔術師はビンのふたを開け、中の粉を少女にふりかけました。虹の粉がライトの光を反射し
キラキラと輝きます。光の粒子に包まれる全裸の乙女。まるで、妖精の国の人物みたいですね。
粉はヒロインの体に降り注ぎ、その肢体をも輝かせていましたが、すぐに少女の体に溶けて消え
ます。夢のような光景が終わり、静けさが会場を包み込みました。
シーンと静まり返った場内から、思い出したように拍手が巻き起こります。
「こんな素敵な演出もできるのね」
先程の憤りはどこへやら、観客達は魔術師を称えます。しかし、黒崎は観客の喚声を手で制し
ます。
「お褒め頂くのはこのマジックを見てからにして頂きましょう。それではご覧に入れます。黒崎
マジック、『仔細なる模写』!」
黒崎の言葉と共に少女の体が一瞬光ります。そして頭上に巨大な物が現れました。
「おっ!」
観客が見上げるその先に巨大な人の姿がありました。何も身に纏っていない少女の像、ステー
ジの娘の姿がそこにありました。彼女が驚きの表情で目を瞬きさせると、現れた巨像も全く同じ
表情をします。どうやら、少女の動きと完全にシンクロしているようです。
「これで、みなさまにもお楽しみ頂けますでしょう」
どうやら、魔術師が作り出した立体映像のようなもののようです。少女の虚像は上下を反転さ
せた状態、体の正面を下に向ける形で映し出されています。形の良い胸が、見上げた者達の注目
を浴びていました。頭はステージに向けられており、少女の下半身は客席の真ん中よりもやや後
ろにあります。残念ながら、この場所からは見にくい位置です。もっとも、ここならば生の少女
の姿が拝見できるので特に問題はないですね。逆にステージが遠い後方の席の観客にも、少女の
部分をしっかりと拝見できる趣向のようです。
そして、その少女の体の下には、一枚の大きな紙が映し出されていました。座り込む少女の体
をすっぽりと収めるほどの大きさの白い紙。彼女の体は、ちょうど紙の中央に位置しています。
黒崎があれほど座る場所にこだわっていた理由はこれだったようです。下の紙までも映し出され
ているということは、どうやらこの紙にまで粉がかかっていたようです。元々、この紙自体がス
テージに粉を広げないための敷き紙だったという所でしょうか。
「白沢さん、それでは続きをお願いしますね」
自分の映像に見入っていた少女が、マジシャンの言葉で我に返ります。中断がなければ行なわ
れていた行為、それを魔術師は要求していました。
「え、ええ。わかってるわよ」
少女は再び客席に目を向け、呼吸を整えます。せっかく決心していたのにタイミングをずらさ
れ、とまどいを隠せない様子です。ステージに飛び出した勢いでやってしまった方が、彼女にとっ
ては楽だったのかもしれませんね。しかも、今度は自分の姿が大きく映し出された上での行為な
のです。ためらうのも当然でしょう。横槍を入れて中断したことで、観客を煽り、少女の心を乱
した魔術師。その澄ました表情を見ていると、本当に忘れていたのか疑わしくなりますね。
「いくわよ」
決意を固めたのか、少女がゆっくりと開脚を始めます。それにつれて頭上の像も脚を広げます。
当然、その様子は少女自身の目にも入っているはず。自らの痴態を見ながら脚を広げる乙女の心
境はいかがなものでしょう。しかし、意外にも壇上の娘は怯まずに開脚を続けます。そして観客
達が見つめる中、少女と少女の虚像が脚を開ききりました。
「へぇ」
客席から感嘆の声が上がります。美大生の性器が、会場中の視線にさらされていました。処理
をしているのか、左右の肉丘に陰毛はなく、やや顔を出したピンクの唇がはっきりと確認できます。
その上端には、鋭敏な陰核を包む肉の包皮が確認できました。
少女はキッとした顔で客席を見つめています。性器を見せることに気負いはせず、あくまで「見
せてあげている」という感じです。もっとも、ただの強がりかもしれませんが。その本心は、ま
さに少女のみこそ知る、という所でしょうか。
ある程度を時間を置き、黒崎が再び語ります。
「白沢さん、敏感な場所が表に出るようにしてもらえませんか?」
当然のことのように、魔術はその言葉を口にします。
「!」
魔術師の言葉に息を呑んだのは壇上の乙女よりも、観客達の方でした。確かに先程、黒崎は「敏
感な場所が表に出るような姿勢」と言いました。しかし、そこまで望むとは誰も考えていなかっ
たようです。
女性器さえも晒した今の状態で、さらに敏感な部分をさらけ出す方法。ステージのヒロインに
も容易にそれが理解できたようです。
「いいわ。全てを見せればいいんでしょう?」
簡単に言い放つ壇上の少女。自暴自棄になったのか、何かふっきれるものがあったのか。相変
わらずキッとした表情で客席を見つめ続ける彼女からは、その内心を伺い知ることはできません。
「見せて……あげる」
この最前列にだけ聞こえるような声で、少女の口が言葉を紡ぎます。彼女の指が肉の唇にかけ
られ、陰唇の覆いをゆっくりとめくっていきました。
美少女の痴態に会場から声が消えます。少女の全てが、自らの手であらわになっていました。
もちろん、虚像の方も同じ姿勢をとっているはずです。後方の席の者には、人の頭ほどに拡大さ
れたヒロインの秘部が目に入ってることでしょう。
「ピンク……」
誰かが声を上げます。多少赤みがかった友人のものとは異なり、少女の秘めた肉は薄い桃色で
した。白めの肌といい、色素が薄い体質なのかもしれません。大きく開ききったせいで中の唇ま
で拡がり、膣口や尿道口もあらわになっています。陰核の包皮さえも捲くれ上がり、敏感な肉粒
さえもさらけ出されていました。
「濡れてる、よな?」
「やだ、やらしい」
「でも、キラキラ輝いてて。ちょっとキレイ」
確かに、由利嬢の陰部は透明な液で覆われています。膣口に近づくほど濃くなるぬめりとした
その液体は、汗の類のものではないようです。秘所を視線から守るかのようにあふれ出したその
液体は、少女の部分をかえっていやらしく輝かせていました。
その顔に視線を戻すと、少女の頬が桃色になっています。裸に抵抗ないような素振りをしてい
た彼女も、さすがにこのポーズは恥ずかしいようです。少女が知るであろうヌードモデルも、こ
こまでのポーズはとらないでしょう。彼女はそれを越えた姿勢を、大勢の人間の前でとっている
のですから。
観客がヒロインの秘所を堪能しきった頃、魔術師はショーを進行させます。
「これで、準備は整いました。それでは、次のマジックをお見せ致しましょう」
この少女の痴態も準備にすぎなかったようです。全てを晒したヒロインに、マジシャンは術を
かけようとしていました。
第八話へ