第五話「自動人形の演舞」

　満員の観衆の面前で、少女はゆっくりとした演舞を続けていました。スローなテンポで技を繰り
出すその様は、師範が弟子に模範演技を見せているかのようです。しかし、唯一異なるのは、それ
を行う少女自身が一糸纏わぬ全裸だということです。彼女は体の動きだけではなく、その筋肉の動
きの全てを、女性の体の隅々までを晒していたのです。

「と、止めなさいよ！」

　少女が顔を真っ赤にして叫びます。まあ、当然かもしれませんね。こんなステージ上で、全裸を
晒しているのですから。前方に繰り出しているその両腕も、本当ならば自らの体を隠すために使い
たいはずです。

「いえいえ、別に私が強要している動作ではございませんよ」
「先程、お嬢さんご自身が行ったものですので」

　確かに魔術師の言う通りではあります。しかし、このようにスローでリプレイさせる事自体、動
作を強制しているような気もしますが。
　どちらにしても、少女の動きが止まる事は無く、ショーはそのまま進行していきました。小振り
の胸を揺らしながら、汗に濡れた全裸の娘は裸の演舞を続けます。拳の連打を終えた少女が、次の
動作を行おうとしていました。

「や、やだ」

　彼女の右脚が上がり始めます。少女の体は、あらかじめプログラムされた動作を忠実に再現して
いきました。少女の右脚が水平になるまで上がり、前方の虚空へと蹴り出されます。もちろん、少
女の脚の間はまる出しになっています。先程は一瞬の露出だった股間の器官が、今度はゆっくりと
した動作の中でじっくりと拝見できました。
　少女の薄い陰毛は、下の唇を一切覆っていません。肌色の大陰唇とその間にあるピンクの割れ目
がはっきりと確認できました。ぴっちりと閉じた割れ目から、中のひだがわずかに飛び出していま
す。若い乙女の初々しい秘所に、客席からため息が洩れました。

「うっ、うぅ」

　女性器を露わにした少女の顔が、羞恥に赤く染まります。しかし、彼女の演舞はまだまだこれか
らです。ミドルキックを終えた少女は、今度は体を反転させ、回し蹴りの体勢に入りました。体を
ねじった女体が、胸の膨らみをいびつに歪める所や、尻の肉に大きな窪みを作る所までを見せなが
らゆっくりと回転します。通常ならばバランスを崩して倒れてしまうほどのスピードですが、そう
ならないのは黒崎のマジックの力によるものでしょう。
　裸の少女が右脚を掲げ、まるで開ききった股を周囲に見せ付けていくかのようにゆっくりと回転
します。さっきよりも大きく開いた脚の間で、今度はその生殖講がわずかに口を開いていました。
少々濃い桃色の秘肉が、その間から覗けます。大量の汗をかいたためか、中は濡れて光っていまし
た。そんな陰部の様相を晒しながら、彼女はゆっくりと蹴りを放ちます。
　その後も鈴野嬢は演舞を続けました。乳房が跳ねる様を、様々な技の合間で秘部が覗く様をゆっ
くりと見せ付けながら、舞台上で全裸の体を踊らせていきました。
　そして彼女の演舞も最後に入ります。つい先程、彼女が放った大技。少女の体はその時の動きを
完全に再現していきました。

「や……、だ、だめ」

　ヒロインは必死にそれを抑え込もうとします。脚が震えるほどに力を入れ、その動きに抗おうと
します。しかし、そんな彼女の努力を嘲笑うかのように、脚が止まる事はありませんでした。これ
までにもましてゆっくりと右脚が上がっていきます。すらりとした腿が水平になり、膝が腰よりも
上に上がります。徐々に開いていく脚の間から、少女の秘部が少しずつ明らかになっていきました。

「お願い、もう止めて」

　驚くべき事に、少女の口から「お願い」という言葉が出ます。気丈な少女も、さすがに秘部を全
開にするのはかなり辛いようです。しかし、そんな彼女の懇願も虚しく、その脚が止まる事はあり
ませんでした。
　膝が胸の上まで上がり、少女の秘所が完全に晒されます。しかし、それでも彼女の動きは止まり
ません。曲がっている膝を伸ばし、さらに脚を開きながら、つま先を跳ね上げていきます。大きく
広げられていく両脚の間で、少女の陰唇が引っ張られるようにゆっくりと口を拡げていきました。
そして、つま先を頭上にまで掲げ、太腿が体に付く程に脚を上げた所でようやくその動きが止まり
ます。

「おお」

　客席から感嘆の声が上がります。先程は一瞬の露出だった少女の恥部が、動きを止めた股の間で
さらけだされたままになっていました。限界まで開かれた脚の間で、陰唇さえも口を開き、中の肉
を露出しています。口を開けた唇から、汗に濡れた秘部の全ての姿を確認できました。赤く色付い
た小陰唇、皮を被った陰核。そして、少女の膣口は観客の視線を恥らうかのようにひくひくと脈動
しています。
　本当ならば、この後すぐに蹴り下ろしのモーションに入るはずです。しかし、魔術師の計らいで
しょうか、いつまで経っても跳ね上げられた脚が下ろされることはありませんでした。

「あ、ああ……」

　先程までの覇気はどこへやら、少女は力なく吐息を洩らしただ体を震わせるだけです。そして、
己の秘部を全開まで開ききり、観客に観賞させるためにそれをステージ下に晒し続けていました。
もちろん客席の視線は全て少女の肉に集まっています。会場中が全てその小さな肉に集約していま
した。ヒロインにそれを防ぐ手立てはなく、ただ見られるに任せる事しかできませんでした。


「ふふ、見惚れているの？」

　いきなり、すぐ後ろから声が投げかけられます。ふりかえると後ろの席の少女が身を乗り出して
いました。手を背もたれに置き、その上に顔を乗せています。声の主はどうやら彼女のようです。

「あの子、体柔らかいのよね」

　間違いなく美人の部類に入るであろうその端整な顔が、息のかかりそうな程近くに存在します。
甘い香水の匂いが、誘惑するように漂ってきました。

「ほら見て。あんなに顔真っ赤にしちゃって」
「めぐみ、ああ見えて結構恥ずかしがりやだから」

　名前は確か由利と言いましたね。彼女は全裸で硬直した友人を、うっとりとした目で眺めていま
す。

「えっ、助けてあげないのかって？」
「そうね。純朴な親友のために、そろそろ助け舟を出してあげようかな」

　少々友情意識が希薄に見えた少女ですが、やはり友達ですね。ステージ上では、その友人が裸を
晒し続けています。観客の視線を浴び続けたその体は赤く紅潮し、呆けたような表情で客席を見つ
めていました。親友の娘は客席から立ち上がり、魔術師に向かって声をかけます。

「ねえ、マジシャンさん。そろそろめぐみを解放してあげてよ」
「その子、カッとなるとすぐ周りが見えなくなっちゃって。いいかげん直しなさいとは言ってるん
だけど」
「ショーを台無しにしたことは、私からも謝るわ。そのお詫びといってはなんだけど、続きは私が
めぐみの代役を務めるっていうのでどう？」

　その言葉に一番反応したのは、舞台上のヒロインでした。驚いた表情で、客席の友人を見ていま
す。黒崎のショーがどんな物なのか、由利という娘にも察しは付いているはずです。それでも彼女
は友人のためにその舞台に立とうと言うのでしょうか？

「いえいえ、こちらこそ少々強引な所がありまして」
「お嬢さんのようなお美しい方が引き受けて下さるのは、願ってもないことですよ」

　そう言うと、魔術師は右手を大きく掲げます。すると、彫像のように動きを止めていた少女の束
縛が解かれます。バランスを崩して倒れそうになった少女の体を、マジシャンのマントが、まるで
自らの意思を持つかのように動いて支えます。そのまま、彼女の体を隠すように少女の体を包み込
みました。そして、新たなヒロインが舞台へと上がってきます。

「どうも、お疲れ様です。どうぞ後ろでお休み下さいませ」

　黒崎の声は、果たして彼女の耳に届いたのでしょうか？　拘束を解かれたヒロインは、困惑した
顔を友人に向けていました。

「ゆり……」

　その目は不安そうに友を見つめています。

「だいじょうぶ。あとはまかせて」

　由利という少女は、すっかり気弱になってしまった自分の親友の背中を押します。

「それでは、みなさま。魅惑の姿を見せて下さったヒロインを、どうか拍手でお送り下さいませ！」

　マジシャンに促され、マントに包まれた愛嬢は舞台の後方へと下がっていきます。彼女は、もう
反抗することなくその指示に従っています。先程の事でその気力も失せてしまったのか、それとも
せっかくの友人の好意を無にしたくないからでしょうか？　しかし、その瞳は相変わらず友の姿を
追い続けていました。一方、その友人の由利には不安な表情は一切見られません。ゆっくりとした
足取りでステージの前方に出ると、微笑を浮かべながらマジシャンの言葉を待っていました。